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RSSフィード [261] 即興三語小説 ―「半減」「クマゼミ」「桜」
   
日時: 2015/08/02 22:18
名前: RYO ID:lToMRwL.

 最近、小説を書きたいと思いながらも、
 書けるようなメンタルじゃないし、
 時間もなかったり。
 もう少し、余裕が欲しいです。

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●基本ルール
以下のお題や縛りに沿って小説を書いてください。なお、「任意」とついているお題等については、余力があれば挑戦してみていただければ。きっちり全部使った勇者には、尊敬の視線が注がれます。たぶん。
▲お題:「半減」「クマゼミ」「桜」
▲任意お題:なし
▲表現文章テーマ:なし
▲縛り:なし
▲投稿締切:8/9(日)23:59まで 
▲文字数制限:6000字以内程度
▲執筆目標時間:60分以内を目安(プロットを立てたり構想を練ったりする時間は含みません)

 しかし、多少の逸脱はご愛嬌。とくに罰ゲーム等はありませんので、制限オーバーした場合は、その旨を作品の末尾にでも添え書きしていただければ充分です。

●その他の注意事項
・楽しく書きましょう。楽しく読みましょう。(最重要)
・お題はそのままの形で本文中に使用してください。
・感想書きは義務ではありませんが、参加された方は、遅くなってもいいので、できるだけお願いしますね。参加されない方の感想も、もちろん大歓迎です。
・性的描写やシモネタ、猟奇描写などの禁止事項は特にありませんが、極端な場合は冒頭かタイトルの脇に「R18」などと添え書きしていただければ幸いです。
・飛び入り大歓迎です! 一回参加したら毎週参加しないと……なんていうことはありませんので、どなた様でもぜひお気軽にご参加くださいませ。

●ミーティング
 毎週日曜日の21時ごろより、チャットルームの片隅をお借りして、次週のお題等を決めるミーティングを行っています。ご質問、ルール等についてのご要望もそちらで承ります。
 ミーティングに参加したからといって、絶対に投稿しないといけないわけではありません。逆に、ミーティングに参加しなかったら投稿できないというわけでもありません。しかし、お題を提案する人は多いほうが楽しいですから、ぜひお気軽にご参加くださいませ。

●旧・即興三語小説会場跡地
 http://novelspace.bbs.fc2.com/
 TCが閉鎖されていた間、ラトリーさまが用意してくださった掲示板をお借りして開催されていました。

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○過去にあった縛り
・登場人物(三十代女性、子ども、消防士、一方の性別のみ、動物、同性愛者など)
・舞台(季節、月面都市など)
・ジャンル(SF、ファンタジー、ホラーなど)
・状況・場面(キスシーンを入れる、空中のシーンを入れる、バッドエンドにするなど)
・小道具(同じ小道具を三回使用、火の粉を演出に使う、料理のレシピを盛り込むなど)
・文章表現・技法(オノマトペを複数回使用、色彩表現を複数回描写、過去形禁止、セリフ禁止、冒頭や末尾の文を指定、ミスリードを誘う、句読点・括弧以外の記号使用禁止など)
・その他(文芸作品などの引用をする、自分が過去に書いた作品の続編など)

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Re: 即興三語小説 ―「半減」「クマゼミ」「桜」 ( No.1 )
   
日時: 2015/08/08 00:48
名前: ID:D5IA0Fp.

小説であるとは言いません。「物語の流れが把握できる程度の粗筋」を目論んでいます。ゆえ、かなりの省略があります。
プロットを組むのに6時間、粗筋として起こすのに4時間程掛かっています。

*********************************

クマゼミ男爵とサクラ乙女          蒹垂 篤梓



 テーブルを差し挟んで座る二人。少年と青年。ぱちりぱちりと囲碁を指す。
「賭をしようじゃないか」
 と言いだしたのは青年。少年は訝しみながらも了承する。囲碁の盤面は少年が優勢だった。
「ここに、とある男女がいる」
 と指し示すのは何もない宙空。そこに浮かび上がる二つの光景は、光の屈折を弄って見せる、ちょっとした魔法のテクニック。青年は、老練な魔法使いだった。
「男は、ある事件を切っ掛けに故郷を去り、見知らぬ異郷で苦労しながらも身を立てようとしている」
 映し出されるのは、熊のような顔をした大柄な男。身なりは労働者階級のそれだが、大勢の人々に囲まれ、信頼を得ているのが見て取れる。
「女は、土地に残り土地の有力な商家に嫁いだ。彼女のお腹の中には、かの男の子が宿っていたが、夫となる男はそれを認めた上で彼女を娶り、家族三人で今は幸せに暮らしている」
 穏やかに微笑む家族の肖像が映される。
「さてここで、ちょっとした悪戯を仕掛けようと思う。この映像を互いの夢に見させるのだ。その上で、どういう反応を見せ、どういう結末に向かうのか。それが今回の賭だ。要は、彼は彼女の心を取り戻せるのか? ということだが、どうだね? 私はね、ダメだと思うのだよ。彼は彼女の元に向かうが、結局、今の幸せを捨てられない彼女に拒絶されると思う。君はどうだ」
「じゃあ僕は、彼は彼女の心を取り戻す方で良いよ」
「では、賭は成立だな。言っておくが、賭の対象に我々が直接干渉することはルール違反だ。倫理的にも許されない。分かっているだろうがね。直接干渉はダメだからな」
 なおざりの返事をする少年に、
「ルール違反はダメなんだからな」
 大事なことだからって、三度は言いすぎだろう。
   *
 とある「世界」の、とある片田舎。小さな街を取り囲んで広大な農地が広がる。そんなどこにでもある風景の中に、溶け込むことのない異風の者が一人、足取り重く歩いている。
 小高い丘の中腹にある垢抜けない邸。そこにいるだろう、とある家族に会うため、はるばる海を越えてやって来た。手には望遠鏡。邸を囲む森の木の一本に上る。
 蝉のようだと、ふと思う。彼の生家の家紋には蝉の羽のモチーフが使われる。クマゼミというあだ名は付きまとい、今でもクマゼミ男爵と呼ばれている。
 そこから覘く、穏やかな家族の風景。
 男は木から下り、その足で再び故郷を後にするため歩き出す。胸の中のうずきを押し殺して。
 男はすぐにでも発つつもりでいた。それを留めたのは一人の少年。不思議な雰囲気の少年で、気付くと翌日また会う約束をしていた。
 やむなく入った酒場を兼ねた宿屋で、男は旧知に出遭う。男は元々この地に生まれた。この地を統べる男爵家の三男坊で悪童として知られていたから、旧知とはそのいう連中のことだ。そのうちの一人が囁く。
「あの時、ミツバチのヤツが旦那をはめたって話ですぜ」
 クマゼミには苦い思い出がある。故郷を去らなければならなくなった事情が。無実の罪の嫌疑を掛けられ、罪には問われなかったが土地を追われた。
「馬鹿を言うな、ミツバチのヤツがそんなことをするものか」
「あっしも聞いた時は耳を疑いやしたが、どうやら本当らしいですぜ」
 男が押し黙ったのを潮に会話は途切れ、酒瓶の空くのと共に夜が明ける。男は一日眠り、気持ちを決する。なぜか現れた昨日の少年が、
「僕が渡りを付けよう」
 と申し出るのを、訝しむこともなかった。
 深夜、二人きりで会うクマゼミとミチバチ。
 真実を問うクマゼミ。
 真実だと答えるミツバチ。
 クマゼミが決闘を申し込む。それを受けるミツバチ。翌日の深夜零時にこの桜の木の下で。
 二人は別れる。
 少年が問う。
「彼は奥さんに真実を告げるかな? 僕はそうは思わないけど」
「告げるだろう。アイツはそういうヤツだ」
「かもね」
 そして、時が来る。
 立ち会いがいるだろう? と微笑む少年。クマゼミとミツバチ、そして、かつてサクラ乙女と呼ばれたミツバチ夫人とその娘が会する。あの初々しくも儚いまでの可憐さは影をひそめたものの、魅力が半減することはなく、活き活きと凜凜しくも成熟した美しさに目を見張る。春は過ぎ、夏が訪れていた。自分は春の頃の彼女を失い、今、夏の訪れによって再び巡り会えた。
「なぜ、連れて来た」
「彼女が来ると行ったから」
「そうか」
 剣を構える二人。合図と共に剣を交える。一合、二合、そして、クマゼミの剣が折れる。
「俺の負けだ」
 静かに立ち去ろうとするクマゼミ、何も言わず見送ろうとするミツバチ。
「ちょっと待って」
 呼び止めるのはサクラ。
「あなたの娘です」
「良いのか」
 ぎこちなく尋ねるクマゼミ。デリケートな割れ物でも扱うように、優しく娘を抱き締める。
「僕の負けのようだ」
 ミツバチがどこか晴れ晴れと言う。
「勝ち負けなんて勝手に決めないで」
 ぴしゃりと言うサクラに誰も反論できない。
「私はあなたの妻で、商会の嫁です。そのことに悔いなどありません。あなたにも、とても感謝してますし、家族としても、一人の女としてもあなたを愛しています」
 うぅぬと渋面を浮かべ唸るクマゼミ。
「ですが、かつてこの人と愛し合った頃のあったことも、認めて頂きたいのです。分かれたといえども、憎くて別れたわけではありません。あなたを責めるつもりはありません。でも、今でもこの人のことを尊敬する気持ちは消えません。あなたへの気持ちとは違う意味で、この人のことも愛おしく思っています。それを認めて欲しいのです」
 今度はミツバチが、うぬと唸る。
「いけませんか」
 ミツバチは静かに息を吐き、
「いや、心のつっかえが取れた気がする」
「わたしの心を知った上であなたの妻でいさせてくれますか?」
「もちろんだとも」
 夫婦としての抱擁を交わす。
「じゃあ、約束の物を」
 少年の催促に対しサクラが渡したのは、自身の髪の一房。それを、クマゼミに渡し、
「約束の物だよ」と。
「二人とそれぞれ賭をしていてね。一勝一敗、ちょうど良かった」
 と笑う。
「その髪を握って、彼女のことを思い浮かべれば、彼女の気持ちが伝わってくるはず。どんなに離れていても、彼女のあなたへの気持ちが分かるはずだよ」
 大事にしまい込むクマゼミ。
「さて、もう一人賭に負けたヤツがいてね。そいつからの戦利品は、これだ」
 と天に向けて掌を掲げると、そこに、へんてこなワッペンが二つ。かなりセンスが悪い。が、半永久的に摩耗しない材質は魔法による物だ。
「これがあるとね、年に一回、夏にだけ二人は夢の中で会える。二人が互いに望む限りね。今回は特別に、三人で会える仕様にしておくよ」
 クマゼミとサクラが最後の抱擁を交わし、ミツバチと固い握手をする。
 その朝早く、クマゼミは再び故郷を去った。
   *
「直接の干渉は違反だと言っただろう」
 囲碁盤を挟んで講義する青年。少年は、
「良く言うよ」
 と呆れ顔を浮かべる。
「あれで良かったのか」
「何の話だ、君がズルをして賭に勝ち、私が負けた。それだけのことだろう」
「まあ、それでも良いけどね」
 ぱちりと碁石を置く。
「こっちも僕の勝ちってことで、よろしく」
 悔しげに臍を噬む青年は、ぶつぶつ文句を言いながら、やがて、
「ありがとう」
 と聞こえるか聞こえないかというくらいの声で呟いた。

(。・_・)ノ

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