Re: 即興三語小説 ―多分祭り的な勢いがいるんだよ― ( No.1 ) |
- 日時: 2014/12/28 22:23
- 名前: マルメガネ ID:Co8Ar6jI
友人が長期滞在していたニュージーランドから帰ってきた。 季節が日本と真反対の国から帰国してきた彼は日によく焼けていた。 「これ、手作りらしいぜ」 彼がそう言って何かが入った小さなクラフト紙の箱を私にくれた。 「なんだい?」 私が聞くと、彼は 「で、ん、き、ゆ、う」 と答えた。 電球? エジソンでもあるまいし、誰が作ったというのだ、とばかりにクラフト紙の箱を開けてみると紛れもなく電球が入っていた。 しかもご丁寧に英語で書かれた手紙まで添えられている。それを読むにはわが語学力では不可能に近い。 友人にその手紙を渡して、読んでもらうと、大体はエジソンが最初に白熱電球を発明したような造りらしい。 「灯してみようぜ」 友人が言う。 「そうだな。でも規格が合わないからな」 と私。 いろいろ考えて、リード線をはんだづけして、カーバッテリーで点灯するかやってみた。 「おお。やるじゃん」 ほのかにそれは点った。しかし、その電球のフィラメントはすぐに焼き切れてしまい、はかなく消えた。 「もうちょっとだったのにな。で、誰だい? この電球を作ったのは?」 私が彼に聞くと 「十代にして大学院に行った天才だよ。でもなんだか足りなかったみたいね」 「ああ、ガス抜きがうまくいっていなかったようだけど、なかなか」 私はそう評価したのだった。 「で、どうするの? その切れた電球」 「記念にもらっておくよ。手作り電球の実験をしたという証にね」 私はそのように答えた。 数日後、友人はまた海外へ旅立って行った。 今度は何を持って帰るのだろう。ちょっとした期待と不安を私は感じるのだった。
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