Re: 即興三語小説 -そうか、これを夏バテというのか- ( No.1 ) |
- 日時: 2014/08/03 20:20
- 名前: マルメガネ ID:K67WFs2o
夏のひとこま
携帯が激しく振動し、賑やかに着信音を奏でる。 部屋の暑さに加えて、彼女と大喧嘩を演じてダウンしたケイスケは、賑やかに鳴る携帯に出た。 その電話は実家からの電話だった。 調子悪そうに話す彼に電話の向こうの彼の母は何事かと聞いてきた。 「ちょっと、彼女と喧嘩してしまってな…」 決まり悪そうに頭を掻き、ベランダに置いた鬼灯が植えられた鉢を眺めながら話す。 くどくどと何度も聞き返す母にしては珍しくあっさりとしていた。 短い会話を交わして、携帯を切り、彼は立ち上がろうとしたがふらついて立ち上がれなかった。 エアコンも間の抜けた作動音を発し、ため息に似たような音を立ててようやく冷風を吐き出す。 板敷のリビングを這って、そこにちょこんと置いた小さなちゃぶ台に置いた熱中症対策の飲料を手にすると、冷えていたのに生ぬるくなっていたが、構わずそれを飲む。 多少なりともいくらかはましになったが、体のだるさは抜けなかった。 ため息をつき、目を閉じると外から賑やかに花火の音が聞こえてきた。 誰かが触れる指の感触が伝わってきた。 誰だろう、とだるそうにケイスケが目を開けるとそこに彼女がいた。 「ごめんね…」 彼女が短く謝った。 「急にどうしたんだい?」 彼が彼女にそう聞いたが、彼女はちょっと寂しそうな顔をした。 「あなたともう少し居たい…」 彼女がそう漏らした。 「いいよ。仲直りだ」 彼はそう言って許した。 「ところで、大丈夫?」 「夏バテしたらしい。だるいよ」 彼が正直に彼女に言う。 「起き上がれる?」 「うん」 ケイスケはそう言って体を起こした。 リビングの大きな窓から打ち上がった花火が見えた。
|
|