Re: 即興三語小説 ―梅雨明けも間近、本格的な夏がやってきます!― ( No.1 ) |
- 日時: 2014/07/18 19:49
- 名前: マルメガネ ID:p5Dnut0.
夕立
じりじりと照りつける日差しに耐えかねて、うるさく泣き騒ぐセミの声を耳にしながら、いくらか強烈な日差しを凌ぐ場所はないかとスマホをいじりながら歩く。 路面からは耐え難い熱気がゆらゆらと陽炎となって立ち昇るさまは、上と下から熱せられているようでそのまま干からびてしまうのではないかとさえ思われるほどだ。 暑さに辟易しながらしばらく歩いているとバス停が目にとまった。 そのバス停には三方をコンクリートブロックで囲まれていて申し訳程度にトタンの屋根が付いている待合室があった。 これ今幸いにと喜び勇んで駆け寄って入ってみたが暑さは変わらない。幾分上から照りつける光線が熱線に変わっただけだったが、そのまま倒れてしまうのも嫌なところだ。 ときおり「圏外」となって通信が途切れがちでフリーズを繰り返すスマホの画面から目を離し、ふと顔を上げると積乱雲が青空に立ち上っていた。 遠くから雷鳴が聞こえ、あれほど暑かった空気を追いやるようにして冷たい風がさっと吹いたかと思えば、セミの鳴き声も止み、辺りはみるみる薄暗くなった。 遠かった雷鳴も近くなり、やがて激しい雨が遠くから音を集めて叩きつけるように降り始めた。 夕立である。 それに追われるようにして学生がびしょ濡れになりながらスポーツバッグを傘代わりに頭に乗せてバスの待合室に入ってきた。 激しく叩きつけるように降る夕立は小一時間続いたが、積乱雲が去ってゆくと上がり、再びセミの鳴き声が戻ってきた。 ゆらゆらと陽炎になって立ち昇っていた熱気はそこにはなく、生暖かく湿った空気になって満ち、暑さも一段落した。 そのうちバスがやってきて、ずぶ濡れになった学生がそのバスに乗り込んで行った。
|
|