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RSSフィード [161] 即興三語小説 ―ポッキーとは何か―
   
日時: 2014/02/09 22:14
名前: RYO ID:iJGY2yrM

 寒中水泳でもしたように、天麩羅になるべく海老は殻を剥がされて震えている。
 頭がついているあたりは唯一の救いだろうが? それとも地獄の一丁目か?
 海老は大きく、活きが良かった。まだ震えている。刺身でもいけたかもしれない。
 刺身にするなら、しょうゆより、塩のほうがこの海老の甘さは堪能できるかもしれない。
 隣では程よく温度の上がった油がそのときを待っている。手を振って、油の中で花を咲かせて、確信する。今だと。
 すっと海老を鍋に滑らせていく。ジュッと音がしたかと思うと、その音が一気にシンフォニーを奏で始めていく。次々に海老を投入する。
 一尾ごとにも物語があったのだろうか? 天麩羅になるまでの壮大な物語が。そう思うと、客の口に入るまでがこの海老の一生に違いない。美味しく揚がるそのときを逃してはいけないのだ。
 そうポッキー製造マシーンが、まっすぐ伸びた海老にアーモンドチョコレイトを纏わせるように、華やかに衣を彩らせなければならない。その一瞬を見逃してはいけない。
 緊張とともに集中が増していくのが分かる。
 海老と衣と油のシンフォニーの音が最高潮を迎える。油の音が、衣の色が確かに変わった。
 今だ!
 海老を取り上げようと菜箸を油に下ろす――
「あーさっきの天丼、間違ってたわ。一個多かった。別で、あなご丼一丁、お願いします」
 海老を持ち上げた菜箸を揺らすと、頭から泣くように油が落ちた。
 美味しくいただけば、問題はない。問題は、ない。
 

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●基本ルール
以下のお題や縛りに沿って小説を書いてください。なお、「任意」とついているお題等については、余力があれば挑戦してみていただければ。きっちり全部使った勇者には、尊敬の視線が注がれます。たぶん。

▲お題:「寒中水泳」「天麩羅」「物語」
▲縛り:なし
▲任意お題:「ポッキー製造マシーン」
▲投稿締切:2/16(日)23:59まで 
▲文字数制限:6000字以内程度
▲執筆目標時間:60分以内を目安(プロットを立てたり構想を練ったりする時間は含みません)

 しかし、多少の逸脱はご愛嬌。とくに罰ゲーム等はありませんので、制限オーバーした場合は、その旨を作品の末尾にでも添え書きしていただければ充分です。

●その他の注意事項
・楽しく書きましょう。楽しく読みましょう。(最重要)
・お題はそのままの形で本文中に使用してください。
・感想書きは義務ではありませんが、参加された方は、遅くなってもいいので、できるだけお願いしますね。参加されない方の感想も、もちろん大歓迎です。
・性的描写やシモネタ、猟奇描写などの禁止事項は特にありませんが、極端な場合は冒頭かタイトルの脇に「R18」などと添え書きしていただければ幸いです。
・飛び入り大歓迎です! 一回参加したら毎週参加しないと……なんていうことはありませんので、どなた様でもぜひお気軽にご参加くださいませ。

●ミーティング
 毎週日曜日の21時ごろより、チャットルームの片隅をお借りして、次週のお題等を決めるミーティングを行っています。ご質問、ルール等についてのご要望もそちらで承ります。
 ミーティングに参加したからといって、絶対に投稿しないといけないわけではありません。逆に、ミーティングに参加しなかったら投稿できないというわけでもありません。しかし、お題を提案する人は多いほうが楽しいですから、ぜひお気軽にご参加くださいませ。

●旧・即興三語小説会場跡地
 http://novelspace.bbs.fc2.com/
 TCが閉鎖されていた間、ラトリーさまが用意してくださった掲示板をお借りして開催されていました。

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○過去にあった縛り
・登場人物(三十代女性、子ども、消防士、一方の性別のみ、動物、同性愛者など)
・舞台(季節、月面都市など)
・ジャンル(SF、ファンタジー、ホラーなど)
・状況・場面(キスシーンを入れる、空中のシーンを入れる、バッドエンドにするなど)
・小道具(同じ小道具を三回使用、火の粉を演出に使う、料理のレシピを盛り込むなど)
・文章表現・技法(オノマトペを複数回使用、色彩表現を複数回描写、過去形禁止、セリフ禁止、冒頭や末尾の文を指定、ミスリードを誘う、句読点・括弧以外の記号使用禁止など)
・その他(文芸作品などの引用をする、自分が過去に書いた作品の続編など)

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Re: 即興三語小説 ―ポッキーとは何か― ( No.1 )
   
日時: 2014/02/15 07:08
名前: 苗穂乂 ID:iXhXjbno

飛び入り失礼します。今温めている拙作のアイディアが流用できそうだったので、20分ほどででっち上げてみました。6000字の十分の一程度の掌編ですがお目汚しお許しください。
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或る老頭兒の独白
 私は日本にいたころから、ずうっと同じものだけをつくり続けてきた。日本ではもっと若くて仕事の速い奴に仕事は奪われ、私はお払い箱になってしまった。それで、この湿気の高い密林の広がる国に払い下げられ、今でも同じものをつくり続けている。
 国は違っていてもいつも私がつくったもので子供たちが喜んでくれるから、それでいい。私は、この国でまた子供たちや母親との物語を紡ぐことができるのだから。
 それでも、私の終の働き場となるこの国にたどり着くまでは長かった。秋に日本の職場を追われ、引き取り手が見つかるまで日本海側の港の倉庫に放置され、やっと行き先が決まったのは雪の舞う冬。冬の時化た甲板では寒中水泳でもしているように体がしびれて体中に氷がまとわりついた。対馬海峡を抜け、ようやく南シナ海にさしかかる頃には、体中にはすっかり錆が浮いていた。
 そんな体たらくでこの国の建屋に収まったときには、制御系もオーブンのヒーターもコーティング槽もぼろぼろになっていた。
 この国のエンジニアの技術は未熟だ。そんな錆だらけになった私の制御系を修理しようとして、基板に山ほどの天麩羅半田をこしらえた。
 技術は未熟だが熱意はある。自分の国の子供たちの喜ぶ顔を見たいのは、私と同じだ。やがて、修理の腕もあげ、私は日本にいた頃と同じように、いや、それ以上に快調に仕事ができるようになった。それはそうだ。日本では、コーティングにも、チョコもあれば、抹茶もあったり、ムースもあったり。それが、この国では単純なチョコだけでいいのだから。
 そう、私はかつて、ポッキー製造マシーンと呼ばれていた。そして、この国でいま、「チョッキー」とか「ホッキー」とか呼ばれている菓子を作っている。

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