馬と梅と海 ( No.1 ) |  
- 日時: 2013/02/17 21:32
 - 名前: マルメガネ ID:XRVgheHE
 
 馬のゴンザエモンを引いて、海の砂浜に向かう。  向かう途中の道すがら、梅が花を咲かせて香りを漂わせていた。  春はもうそこまで来ているのだ、と感じる。  ゴンザエモンが立ち止まり、伸びた梅の枝に咲いた花を愛でるような仕草をして、ぱくり、と一輪を食べた。  そして素知らぬ顔をして、またゆっくりと歩き出す。心地よい蹄の音を立てて。  誰もいない浜辺への道。  浜辺にたどり着くと、そこは寒々としていてまだ冬の様相を残していた。吹く海風が冷たく、あの真夏の賑わいもなくひっそりとして、波が打ち寄せる音のみが聞こえるばかり。  私はゴンザエモンにまたがって乗ると、脇腹を軽く蹴った。  ゴンザエモンは波打ち際を静かに歩きはじめ、やがて足を速めてきた。  広いのが嬉しいのだろう。  鬱屈した海原。どんよりと垂れこめた重い色をした雲の切れ間より日が差している。  走り出したゴンザエモンは休むことを忘れて思いきり楽しんでいる。  私も寒い海風をやがて忘れ、ゴンザエモンと一体になって楽しんだ。
   
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