リライト作品 夜想曲 (原作:紅月 セイルさん『黒猫夜想曲-BlackCatNocturne-』) ( No.12 ) |
- 日時: 2011/02/14 00:58
- 名前: 山田さん ID:44EMoiRA
原作がきちんとした完結した世界を持っているので、リライトが難しかったです。 結局は原作とほとんど変わらない内容になってしまいました。
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夜想曲 (原作:紅月 セイルさん『黒猫夜想曲-BlackCatNocturne-』)
ボクが真子さんとの同居を始めた夜もこんな感じだった。お月様の佇まいは柔らかい外套のようで、そんな月光の回りに群がってくる無数の星々は、両手ですくい上げたくなるほどにせわしなかった。夜風がボクの体をフワリと撫でていくと、その夜風を追いかけてこの静かな夜に飛び込んでいきたくなる。もちろん、飛び込んだりはしない。今宵は真子さんのそばにいるべき夜であり、そんな夜にボクと真子さんは同居を始めたんだ。 「クロー? あ、いたいた」 振り返るとそこには淡い桃色のパジャマに身を包んだ女性。お風呂上がりなのか、肩まで伸びた栗色の髪はまだ少し濡れて光沢があり、頬は薄紅色に上気している。首にかけたバスタオルでその薄紅色の頬を撫でながら近づいてくる。これがボクの恋する人であり唯一の同居人でもある真子さんだ。 「寒くないの?」 そう言いながらボクのいるベランダに出てくる。 「きゃ……。さ、寒い!!」 それはそうだろう。もう十月も終わるころ。晩秋というよりは初冬に近い夜風は、お風呂上がりの肌には余計に辛いに違いない。 心配して一鳴きしてみると、「あはは、平気だよ! 平気、平気!」とにこやかに笑ってボクの横に座った。と、思ったら「あっ! そうだ!」とすぐに立ち上がり部屋に戻っていく。相も変わらず忙しい人だ。まぁ、退屈しなくていいし、そんなところが好きなんだよね。 「ただいまぁ。はい、クロ、これ」 しばらくしてベランダに戻ってきた真子さんの手には、湯気が昇るマグカップとボクの水飲み用容器があった。その容器を真子さんは朗らかに笑ってボクの前に置いた。 はて、なんだろう。ボクの容器には、いつもは鏡のように透明な液体が入っているのに、今夜それを満たしていたのは真っ白な液体だった。 「ホットミルクだよ。もちろん温めのね」 ホットミルク……初めてだ。少し手で掬ってみる。 「温度は大丈夫だよ。ちゃんとクロが飲めるくらいにしたから」 なるほど。確かに温めだ。 「さ、さっ、ぐいっと」 いやいや、ぐいっとって……。さすがにそれはできないですよ、真子さん。 顔を近づけて、おそるおそる一舐めしてみる……暖かくて、ちょっと甘くて、優しい味がする……おいしい! あとはもう夢中でペロペロと舐めはじめる。そんなボクを見て真子さんもホットミルクの入ったマグカップを仰いだ。 「……ぷはぁっ。いいねぇ~、温まるねぇ、クロ」 ……うんうん。温まる。とてもとても温まるよ、真子さん。 それはそれは心地の良いノクターンであった。
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