リライト作品 ヨセフどん (原作:星野田さん『杞にしすぎた男』) ( No.11 ) |
- 日時: 2011/02/14 15:28
- 名前: 山田さん ID:44EMoiRA
悪ノリしすぎてしまったようで、星野田さんに怒られそうな気がして怖いです……ドキドキ。 なんかぼくの人格が疑われそうだなぁ(え? もう疑っているって……)。
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ヨセフどん (原作:星野田さん『杞にしすぎた男』)
眩しいほどに青い青い空を眺めながら、ヨセフどんはふとこう思いました。 「もしかしたらよ、空が落ちてくんじゃね?」 これはあながち突拍子もない考えでもありませんでした。 だって神様ときたら、この間も海やら川やら湖やらを氾濫させて、大洪水を引き起こしてます。 ノアどんのアークがなければ今頃みんな水の底に沈んで、文字通りどん底の暮らしだったわけです。 でもなんでノアどんはアークなんか買ったんだろう。キャバクラに行きたいんだけど奥さんが怖いから、キャバクラにいった「つもり貯金」をして小金を貯めているという噂は聞いたことあるけど、その小金で買ったのかな。それにしてもなんであんなでかいアークなんだ? キャバクラといえば「エデンの園」のイヴちゃんは元気かな? そういえば浦島どんはキャバクラ通いが祟って、水の底に沈んでいないのにどん底の暮らしを送っているよなぁ。 なんてことをツラツラと考えていたら、「ニュニュニュ」と空が少し落ちてきたように見えました。 「ヲヲヲヲヲヲヲヲ!」 もはやヨセフどんの「もしかしたらよ、空が落ちてくんじゃね?」という妄想は「落ちてくっべ! 落ちてくっべ! 空がよ、アソラソラ!」と確信へと変わりました。 なにしろ神様がやることです。あんなの計画性の欠如した気まぐれ野郎の何物でもありません。実際に後でリサーチしたところ、神様はこの時ほんの少し空を落としてみたそうです。発注した天窓と空の寸法が合わず雨漏りがひどかったので、空の位置をチョチョチョと調整してみたら、ニュニュニュと空がずれちゃったとか。発注した際に寸法を測り間違えたのが原因だったようですが、そもそも思いつきで空に天窓をつけようなんてのが計画性の欠如した気まぐれ野郎な証拠です。困ったもんですね。 それはさておき、ヨセフどん。空が落ちてきたら潰されてしまう、潰されたらもう明治製菓のアーモンドチョコを貪り食うことも、とんねるずのみなさんのおかげでしたのきたなシュランで紹介されたお店に食べにいくこともできなくなります。なによりもまだ「みひろFINAL 最後で最高のイカセ技、全部見せます」をレンタルしてないじゃないか! みひろパワー全開! 志村けんなんかに負けるな! ということでヨセフどんは空を支えるための竿をおったてはじめ……違った……柱を組み立て始めました。 「なんだ、ヨセフどん、朝もきちんと立たない奴に空を支える柱なんか組めるわけねえべが!」 「ソラを支える? いつからヨセフどんは巨乳好きになっだんだ? 蒼井そらちゃんはおめえにゃ無理だ。今まで通りみひろで我慢しとれ」 「だいたいが蒼井そらだとかみひろだとか言っていることが軟弱なんじゃ! やっぱり伝説のグラインド長瀬愛だろ!」 とまあカンカンガクガク。みんなヨセフどんに口は出すけど手助けはしない。そもそも空が落ちてくるなんてのは荒唐無稽な話じゃないか。水が溢れればこの間みたいに洪水にはなるけど、一体何が溢れれば空が落ちてくるんだい。雲が溢れるのかい? 虹が溢れるのかい? それとも風が溢れるのかい? エトセトラエトセトラ。 「じゃかましいやい! 俺は空がニュニュニュとほんのちょこっとだけど落ちてきたのを見てるんだよ。いいか、空が落ちてきたら潰されちまうんだよ。潰されたらチョコもきたなシュランもみひろもパーなんだよ。だからこの柱を組んで空を支えるんだよ。この柱を立てなかったら、お前らの○○○も一生立たなくなるんだぞ! それでもいいのかよ?」 ○○○が一生立たなくなって「いいのかよ?……はい、いいんですぅ」なんて答える男はそうはいない。みんな「アワアワアワ」とあわててヨセフどんの手助けを始める。ちなみに「○○○」には「メンツ」という三文字が入る。違う三文字を想像してはいけない。 こうして柱はあっという間に神様のところまで届いてしまいました。 面食らったのは神様。挨拶も手土産もなしになんなんだよ! だいいち、蒼井そらだみひろだ長瀬愛だとのたまっている奴らに侵入される筋合いはない! ちなみに神様のお気に入りは「なんといっても松島かえでだ!」。 激怒した神様は「二度とボーイズトークができなくしてやる!」と男どもの使う言葉をバラバラにしてしまいました。 例えばAさんはハナモゲラ語、Bさんは女子校生語、Cさんはコバイア語、Dさんは落語、Eさんは業界用語、といった感じです。 そして「目障りじゃ!」と柱に向かって昔話に出てくるようなおじいさんとおばあさんの、あんな写真やこんな写真をこれでもか、と見せびらかしました。 哀れ柱よ柱よ哀れ……あれよあれよと「フニャフニャシュポン」と崩れ落ちてしまいました。
さて困ったヨセフどん。もう仲間を集めて柱を組むどころか、ボーイズトークもできなくなってしまいました。しかもツタヤには「みひろFINAL 最後で最高のイカセ技、全部見せます」の在庫がありませんでした。もう泣きっ面に蜂です。 「それでも空は落ちてくるっぺ……」 そこでヨセフどんは以前、ダンテどんと一緒に煉獄・地獄食い倒れツアーに出かけたことを思い出したのです。 「そうか、上がダメなら下があるじゃないか」……短絡的というなかれ……。 ダンテどんと一緒にたどった道は何となく覚えています。だからその道をたどることにしました。ダンテどんと一緒なら心強いのですが、彼は先のツアーで親密になったベアトリーチェ嬢と駆け落ちをしてしまったのです。今頃どこで何をしているやら……ハァ。 はてさてとトコトコと地下へ降りていくヨセフどん。地獄の門を通り過ぎ、辺獄を抜け、ケルベロスに餌をやり、ブルネット先生と談笑し、アニェールの合身に拍手し、下へ下へと降りていきます。 そして贋金造りたちがたむろしているところまで降りていくと、そこに懐かしい顔を見ました。 「おお、ウェルギリウスどん、こんなところでお目にかかるとは!」 それはヨセフどんの幼馴染であるウェルギルウスどんでした。 「これはこれはヨセフどん。僕は今ここの管理人をしているんだよ。派遣社員だけどね。それよりもなんでまた地獄に?」 「いやいや実は云々(省略)」 「ははぁ、でもヨセフどん、ここから先の地獄はいま改装工事中なんだよ。アトラクションを増やすみたいだ」 「なんですと!」 「残念だけど、地上に戻ってもらうしかないな。ほんと、ごめんね」 せっかくここまできたのに、もう先へは進めないヨセフどん。不憫に思ったウェルギルウスどんはヨセフどんにお土産を手渡しました。 「これ、質流れの品なんだけどさ、玉手箱。よかったらもってかない? あけちゃいけないんだけどね」 そうです、キャバクラ通いの借金で首が回らなくなった浦島どんは、大切にしていた玉手箱まで質に入れていたんです。 「もらってくれる? 実は手に余っていたんだ。ありがとう。でもあけちゃいけないんだけどね……ウフフ」 こうしてヨセフどんは浦島どんの質流れの玉手箱をもって、地獄をあとにしました。
さて、地上に戻ったヨセフどん。悶々としています。空が落ちてくる恐怖や、あけたいのにあけちゃいけない玉手箱。それにいまだに「みひろFINAL 最後で最高のイカセ技、全部見せます」が在庫切れなんです。これで悶々としない男はいません。 「おい、あけろよ、この野郎!」 たまに玉手箱が悪態をつきます。 「それが人にものを頼む態度か!」 ヨセフどんは取り合おうとしません。 「てめぇ、食い殺すぞ! ゴルァ!」 「おおおお、上等じゃねえか、やれるものならやってみそ!」 ヨセフどんも負けてはいません。 「暗いよ~ 狭いよ~ 怖いよ~」 「お前は面堂終太郎か!」 わからない人はウィキペディアで調べましょ。 「わかった。わかった。じゃどうすればあけてくれるんだよ」 「じゃ『みひろFINAL 最後で最高のイカセ技、全部見せます』を借りてきてくれ」 「それは無理な相談。玉手箱は吉沢明歩ファンだと相場が決まっているんだ」 ボコ! 玉手箱に一発グーパンチを入れるヨセフどん。 「いてーなこの野郎。暴力反対! 暴力反対!」 「わかったわかった。じゃみひろはあきらめるとして、空が落ちてくるのを止めてくれるか?」 しばし沈黙……玉手箱の思考がグルグルと回っている様子……そして。 「それは難しい。しかしやってみよう」 ということでヨセフどんはそっと玉手箱のふたをあけてしまいました。 どこかからウェルギルウスどんの「ウフフ」という笑い声が聞こえた気がしましたが、もうあとのまつり。 玉手箱の中からは白い煙がモクモクとモクモクとモクモクとモクモクとモクモクと……とにかくいっぱい出てきました。 あわてて蓋をしめるヨセフどん。でも時すでに遅し。その白いモクモクは部屋いっぱいに広がると、家の外へ漏れ始め、国を覆い、山河を越え、やがて全世界一面に広がってしまいました。 「ワワワワワワワ! なんじゃこれ!」 「こうすれば空は見えないでしょ? だったらもう空はないも同然。落ちてくる心配も無くなったでしょ?」 「お前は一休さんか! トンチくらべしてるんじゃねえんだ。だいたいこの白いモクモクはなんだ?」 「それではお答えしましょ。このモクモクは "嫉妬" "疑い" "憎しみ" "嘘"" 欲望" "悲しみ" "後悔"。つまりありとあらゆる負の感情の盛り合わせで構成されております」 「そうか、そうだったのか……騙された……お前……玉手箱じゃなくて……」 ヨセフどんは以前は玉手箱だったものをキっと睨みつけるとこう言い放ちました。 「玉手箱じゃなくて……パンチラの箱だったんだな!」 ボコ! ヨセフどんにグーパンチを入れる以前は玉手箱だったもの。 「アホか! パンチラじゃなくて、パンドラじゃ! チラじゃなくてドラじゃボケ!」 「……シャレのわからん箱だ……。騙しやがって……」 「……」 「おい、なんとか言ったらどうだ?」 「……」 「おーい!」 「……」 パンドラの箱からの声が消えてしまいました。 「パンドラさん?」 「……」 「パンドラさぁんってばぁ?」 「……」 「おい! パンチラ!」 ボコ! 無言のグーパンチ。 「あーあ、どうしよ……」 途方に暮れている、というかもはや諦めきってボーっとしているヨセフどん。すると先ほどとは違う声がパンチラの……違った……パンドラの箱から聞こえてきました。 「ねぇねぇ。僕も出してよ!」 「ふん。声色を変えたってもう騙されないもんね!」 「いいじゃん。騙されたと思って出してよ」 「人はそう言われて本当に騙されるんだよ」 「そんなこと言わないでさ。さっき出払っていった負の感情を拭い去ることはできないけど、モクモクを吹き払うことくらいはできるよ」 「だいいち、お前誰なんだよ?」 「本名は "希望"。 ニックネームは ”期待”。ペンネームは ”未来”。ハンドルネームは……」 「わかったわかった。もうどうでもいいや」 再び蓋をあけるヨセフどん。すると箱から一陣の風が飛び出し、あっという間に世界中のモクモクを吹き払ってしまいました。 「これでもう安心。嫉妬しても耐えることができます。疑う事はあっても、信じる心も持っています。嘘を言われても、見破る目をもっています。欲望に負けそうでも、勝とうとする意志があります。悲しみに沈んでも、次への希望があります。後悔の念を抱いても、明日という未来があります。とにかくまぁ……そういうこと。それでは……ドロン!」 モクモクの消えた家の中。ヨセフどんは窓から身を乗り出しました。そして上を見上げます。 眩しいほどに青い青い空が見えました。でももうヨセフどんには空が落ちてくるという恐怖はありません。恐怖に打ち勝つための希望に燃えているからです。 そうです。希望に燃えるヨセフどん。 「そうか。こうしてメラメラと燃えているうちに行ってみよう!」 ということで希望に燃えるヨセフどんは再度「みひろFINAL 最後で最高のイカセ技、全部見せます」を借りにツタヤに向かいました。 ツタヤに向かう道すがら、希望に燃えながら再び空を見上げるヨセフどん。 そこにはやはり眩しいほどに青い青い空が見えました……そしてそれはニュニュニュと少しずつ落ちているのでした……ウフフ。
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