感想です ( No.2 ) |
- 日時: 2012/10/05 21:18
- 名前: 朝陽遥(HAL) ID:JdfDenEE
- 参照: http://dabunnsouko.web.fc2.com/
うおお、きかさんだー! ……おっと、こほん。こちらでは初めましてになりますね。このたびはご参加ありがとうございますー!(営業用)
ところでこれ、いったいどの辺が中二なんでしょうか……?(賛辞)……っと、中二の定義はきっちり決めないといったのはわたしなので、返信無用。恥ずかしいポイントを詳細に自己分析して説明しろとは申しません。
二人の感覚のズレが、うわあいいなあーと思います。この、言葉が通じるのに通じない感じ。生活、金銭に対する意識の違いって、何気にすごい大きな壁ですよね。 彼らの未熟さ、大人になりきれなさがいいです。さと子ちゃんもかなり子供っぽいというか、たいがい自分本位なんだけど(半分は世間知らずのためかな)、それに苛立っている主人公の、腹の立て方がいいです。さりげない描写から、彼の気の優しいところがちゃんとこっちに伝わってくるんだけど、その優しさが、大人の包容力というような器用な優しさじゃなくって、そこがいいなと思います。怒ってはいても、一方では罪悪感を持ってもいて、そういうむしゃくしゃを、なあなあにごまかして流してしまえないところ。若いって、いい……。
ところで、けっきょく耳ちゃんは何だったんでしょうか……まさかのホラー展開(異常な生物とか人間とか)かと思って、途中けっこうどきどきしながら読んでました……気になります。読み手的には、さと子ちゃんが不注意で死なせちゃったっていう事実の重さが、そこでけっこう変わってくると思うんですが……!
それにしても、あいかわらずの美文と描写力に嫉妬。(知ってたけどさ……) 執筆おつかれさまでした! ひとり三作まで投稿可なので、年末までに気が向いたらまたぜひどうぞー!
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心のどこかにフランス人を ( No.3 ) |
- 日時: 2012/10/07 09:29
- 名前: 無線不通 ID:oqA9/gMY
はじまりはゴールデンウィークだったと思う。でも実は父の中では会社に行きたくないとか、生きる意味が見出せないとか、生活に興味がもてないとか、そういう気分が真冬の夜にしんしんと降り続ける雪の様に心の中に積もっていて、五月の初めになって身動きできなくなるほどの量になっただけなのかも知れないが、それはわたしには解らない。とにかく、父がどうかしている、とわたしが気付けたのは五月の初めだった。 わたしと妹と妹の友達のサツキちゃんは、父に遊園地に連れて行ってもらった。こどもの日のことだった。わたしはもう十六歳で、もはや、ジェットコースターで早く動いたからってキャーとかフリーフォールで高いところから低いところに落ちてワーとかはしゃぎ倒す年でもなかったが、まだ中学生でケータイに猫のヌイグルミを付けている妹とサツキちゃんは絶叫マシン以外でもギャーとかヒャーとか、ひどい時はジュースをちょっとこぼしただけで悲鳴を上げて、直後に爆笑していた。わたしはそんな2人にくっついてアトラクションに乗り、父はわたしたちのSPのように少し離れて後をついてきていた。 ここまではなんともなかった。 少なくとも表面上は。 帰る段になって、父が車の鍵を車の中に入れたままロックしていた事が発覚した。わたしはそうでもなかったが、妹とサツキちゃんはすっかり遊びつかれていて、その上、車を駐車した位置を誰一人憶えていなかったから、広い駐車場を30分以上歩いて不機嫌になりつつあった。父はわたしたちのご機嫌伺いをするほど親馬鹿でも子煩悩でもなかったし、なにがあっても泰然とした態度を崩さない人だったが、この時は少し慌てているようだった。ドアノブを何度も引っ張ったり、窓に掌を押し付けて下ろそうとしていた。よその子供を預かっているから時間を気にしているのかな、と思った。 「こういう時ってどうするの?」 とわたし。 「うん。大したことはない。要はドアを開ければいいのだ」 父はこちらを見ず、運転席の下に落ちている鍵に視線をやったまま言った。 しかし、それが出来なくて困っているのだ。 「業者さんとか呼んだら?」 「ダメだ。やつらは暗黒パワーに心を支配されている」 「は?」 「業者は暗黒パワーで洗脳されているからダメなんだ」 「うん? ごめんなに? あんこく?」 わたしは聞き間違いであることを願いつつ、聞き返した。 「しっ。何度も言わせるな。やつらはすぐそこに隠れているんだ……盗聴されているかもしれない」 「お父さん?」 父はわたしを無視して駐車場の外れの方まで行って何かを拾い上げて戻ってきた。大きな石だった。 「お父さん?」 また無視されてちょっと傷付いていると、 「こおおお……」 石を持った腕を上げ、それからゆっくりと下ろし、肘を九十度に曲げて右手を反時計回り、左手は時計回りの円を描き始めた。 「ちょっとお父さん?」 「ひゅぅううう……」 父はなおも胡散臭いヒッピー白人がやる太極拳のような動きを続けた。例え泥酔していても、いくら頭の打ち所が悪くても絶対にわたしの父はこの手の冗談なんてやらない。ということは……。 そこでわたしはにわかに戦慄した。 発狂だ! 狂った! お父さんが狂った! わたしは急いで唖然として立ち尽くしているとサツキちゃんの前に立ちはだかって視界を遮った。狂った父をこれ以上見てショックを受けないように。直後、「ハアアッ!」 という裂帛の気合とともに硬い物が砕ける大きな音がした。振り返ってみると、父は石をゴトリと落とし、ガラスがとんどなくなった窓に手を入れロックを外していた。
とにかく帰らないといけないのでわたしたちは車に乗った。最初は少し引いていたが妹とサツキちゃんは車が走り出してしばらくすると眠っていた。 夕暮れ時の風に激しく吹かれながら(窓がないから) 父は順調ハイウェイを飛ばしていた。その横顔は、いつもと変わらない冷静な父のものだった。さっきのはいったいなんだったのか。16年間知らなかった父の隠れた一面が表に現れたに過ぎないのか。うん、多分そうだ。そういうことにしておこう……。ショッキングかつ早く忘れたい光景だったのでわたしは目を閉じて眠る体制を整えたが、 「佳那」 待っていたかのように父がわたしを呼ぶ。これから言うことは重要だぞ、とでも言いたげな改まった声音で。わたしは返事が出来なかった。父のそんな声ははじめて聞いた。 「お父さんな、サイボーグなんだ」 「ちょっと待って」 わたしはペットボトルをホルダーから取って一口飲んだ後、目を閉じて3秒数えた。目に映る車内の様子はなにもかも変わっていなかった。車は100キロちょうどで走行し、車窓の景色もほとんど同じだ。 再び父が口を開く。 「母さんがなくなって少ししたある日、世界征服を目論む秘密組織、黒幻団<ブラック・ファントマ> に拉致された父さんは、やつらの人体改造実験に試験体にされた。どんな改造をされたのか、お父さんは気絶していたから解らなかったし、体を確認しても見たところ前とほとんど変わらないようだったから誰にも言わずにいた……。だが追い詰められて記憶が蘇った」 「追い詰められたって、さっきの鍵を閉じこめた事?」 「ああ。佳那も見ただろう。お父さんの拳が光り輝くのを。そしてすべてを破壊し尽くすのを」 「……」 「あれが俺に与えられた能力なんだ。輝石拳<シャイニングストーンクラブ> 破壊だけが存在理由の呪われた拳……」 「……」 「一度発動すれば世界を壊滅させるまで止まらない。あるいは宇宙すら……」 「……」 わたしはエンジンの音だけを聞くようにして、これからのことを考え始めていた。 どうしたらいいのだろう。まず病院だろうか。そうだとして、何病院の何科なんだろう。こんなんでは仕事なんて出来ないだろうから、わたしは学校を辞めて働いたり、下手をしたら売春などをして家計を支えなければならないかもしれない。あまりにも嫌すぎるが、しかし現実とはそうしたもので、父が狂ったのも妻(わたしのおかあさん) が急死したり、それでも毎日朝から晩まで働いたり、なのに思ったよりお金が貯まらなかったりとか他にもさまざまな気掛かりが途切れなく付いて来て、ついに気違いになったのかもしれない。わたしはまだそんな風になるほど長く生きていないし苦労もしてないからわからないが、きっとそんなもんなんだろう。それが時代……。違うのかもしれないが、時代とかそういう手に負えないことに責任の所在をおいておかないと、わたしの気掛かりが増える。 「佳那、聞いているのか」 「うん」 ほんとはあまり聞いてないが。 「お前と由貴にはこれから教えなくてはいけないことが山ほどある。そう、来るべきバースト・ゾーンに備えて……」 お父さんはずっと世界の危機についてベラベラ喋りまくっていたが別にどうでもいいので聞かなかった。
サツキちゃんはしっかり家に届け、わたしたちも無事帰宅できた。父に隠れて親戚に電話をかけて事情を話すと、朝一番でこちらに来てくれることになった。弟が悪の組織にさらわれてサイボーグとなり、全てを破壊しつくすまで荒れ狂う悪魔の右腕を移植されたと真顔で告白した。と聞かされれば駆けつけたくなるのも無理はない。わたしからすればありがたい話だが。 居間に戻ると、そこでは暗黒パワーに侵された人間とそうでない人々を識別する方法を次女に熱心に教える父がいた。 「靴の汚れで大体は解る。普通の人間つま先がこう、筋を引いたように泥が付いているが、黒幻団<ブラック・ファントマ> やつらは踵が汚れていてつま先はピカピカだ。それに気付けるかどうかが、寿命の長短に直結する。お前は若く美しい。もし捕まったらバグシーシ山下顔負けのハードコア前衛性的暴行をされた上、女サイボーグとしてお父さんと同じような運命を送ることになるんだ。だから歩くときは人のつま先を見ろ。わかったな」 妹は頷きながらも、おびえた目で父を見ていた。 「お父さん、今日はもう寝たら」 とわたし。「疲れてない?」 父はわたしの言葉に不意を突かれたような顔を見せた。 「眠る……眠るか。しかしこれ以上暗黒の中に留まるのはいかがなものかな。昨日だって、休みをいいことに9時間も寝たのに……しかし案外、いや、やはりと言うか。そこに鍵が隠されているのか」 ふっ、と自嘲的に笑っている隙に妹の手を引いて部屋に連れて来た。 「お父さん、どうしたの?」 「うん、ちょっと発狂した」 「はっ?」 「大丈夫。明日朝一で叔父さんとお父さん連れて病院行くから」 「……」 妹は何か言いたそうにしている。この子はわたしに似てドライな性格だがさすがに父親が発狂したと伝えられて平静でいられるほど精神力が強くない。 「大丈夫だよ。すぐ治るんだから」 根拠なく言うわたしの声は揺ぎ無かった。わたしは嘘が上手い。履歴書の自己PRには書けないだろうけど。 これで少しは安心するかなと思ったが、 「ククク……ついに始まりおったか」 妹は薄く笑ってそういった。 「あ?」 「ようやく父上も前世の記憶が戻ったと見える。古より定められた約束の日が近づいておるというのに覚醒の兆しがちっとも認められぬので少々肝を冷やしたわ」 「由貴?」 「ククク……もはやその名は要らんわ……。我の名は、マギリッド・ハーシェル・ユキアメデス。闇を食う闇を食う闇。全ての闇の頂点たる闇の女王よ……」 「由貴?」 「ククク……姉上も早くかりそめの記憶から醒めるがいい。裁きの日は近い……」 「由貴?」 「我が名はマギリッド・ハーシェル・ユキアメデス……」 「違うでしょ。高橋由貴でしょ」 「ククク……あの娘ならもう用済みじゃったから闇と混沌への生贄としてやったわ。まあほんの前菜に過ぎぬがな」 「……」 「なんだその顔は……おっと、覚醒した予のオーラにあてられたか。お前にはまだちと早すぎるようだな……。しかし待ち遠しいぞ、再びお前と殺戮と狂乱の季節を巡る事が出来るのだからな。思えば我一族は有史以前からこの星をせ」 わたしは無視してドアを閉じた。 あーあ、って感じだった。 二人分の病院代がいくらになるのだろうか。どんな学校が妹を受け入れてくれるのか。リハビリの先生は妹にいやらしい悪戯したり黒ミサの方法が載ってる本を与えたりしないだろうか。温暖化現象がもたらす害はどのようなものになるのか。地球の自転はあと何回で止まるのか。 わたしは考えるのをやめて自室のベッドに腰を下ろし、横向きに倒れてそのまま気絶することにした。 目覚めたとき、私の頭はちゃんとおかしくなっているのだろうか。 叔父が私たち一家を三人まとめて病院に連れて行くところを想像しながら私は眠りについた。
※
中二病という言葉を私が最初に耳にしたのは、恐らくですが15、6年ほど前、伊集院光の深夜ラジオ番組だったと思います。 当時の私は中学生(今にして思うと、深夜にAMを聴くのも中二病の症状のひとつかも知れません)で、まさに中二病まっさかり。同属嫌悪でしょうか、『中学生日記』 や『真剣十代しゃべりば』 を見てはNHKのビルに放火する計画を立て、「昨日の『金八』観た?」 と友達に訊かれれば、聞こえないふりをしたり、同世代の人間が人を殺せば「断頭して校門に置く、か……。やるねえ」 等と思いながら熱心にニュースを見たり、家で中段蹴りの練習をしたり、髪をセンターで分けたり、上級生に殴られれば相手の自宅住所を調べて待ち伏せして襲撃しようとして怖くなって止めたり、放送部が給食の時間にかける日本のポップスを軽蔑したり(でも尾崎豊は嫌いになれなかったり)、全校集会で生徒会長かなんかが「我々生徒一同は」 みたいな事を言えば「誰が我々だ」 と舌打ちをして、全方位に念力を放射し、みんなの脳の血管を破裂させようとしていました(スキャナーズ)。 つまり私は典型的(男女で症状に差があると思いますが) な中二病を発症していたのです。しかも頭が悪い。 自覚できるようになったのは15の時だったと思います。 「こうやって大人になっていくのだな……。きっと10年位したら、休みの日にはガキとヨメとジャスコで買い物したりするんだな、まあそれもいいか。あーあ……」とそのときは思いましたが、そうはなりませんでした。 十代後半、二十代の半ばに至っても、あまり改善が見られないことに気付き徐々に不安になってきました。 何もかもつまらないし(これは自分が退屈な人間であることが原因だと後に気付いた)、毎日のように誰かの死を願ったり、協調性が必要とされる場面を全力で回避したり……自分でもちょっと驚きます。 月並みな言い方ですが、三つ子の魂百まで、とは本当だなと、最近は思います。 あるいは中二病とは病気ではなく単に性格の一つなのか……というか、まあ実際のところは人間って全員病気で、私が一番軽症の部類だと思っています。
※ 今回は大変すばらしい企画に参加させていただいてありがとうございました。 他作品の感想は、大分後になるでしょうが、出来るだけ書かせていただきます。 ではさようなら。
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「心のどこかにフランス人を」への感想です ( No.4 ) |
- 日時: 2012/10/07 22:09
- 名前: 朝陽遥(HAL) ID:fBBKKEwo
- 参照: http://dabunnsouko.web.fc2.com/
ご参加ありがとうございます! 拝読しました。中二というツールをこういう形で使ってこられたか……! と、思わず唸ってしまいました。「中二設定だが燃える!」ではなく、中二病を罹患してしまった家族に苦悩する主人公。
技などの名前がまた絶妙に中二っぽくて、シリアスなんですけど、つい笑ってしまいました。 淡々とした語り(とそれを紡ぐ端正な文章)と、上記のようなコミカルな要素のおかげで、するすると軽く読めたのですが、しかし要所要所でけっこう怖かったです。お父さんが、壊れてしまったあとも運転は普通にしていたりとか、まったく平常に見えていたのにそのままのテンションで唐突におかしいことを言い出すところなどに、妙にリアリティがあったりして……
妹さんの喋っているシーンの途中くらいで、「これもしかして、ふたりは精神を病んだわけではなくて、彼らの電波っぽい発言のほうがほんとうだったりして、主人公はただ目覚めていないから光やなんかが見えなかっただけで……」なんて怖い想像をついしてしまいました。
> 「誰が我々だ」 と舌打ちをして、 ……のところで思わず、自分なんかいまでもわりとそうかも……と思って、おもわず明後日の方角に視線が泳いでしまいました。思春期の頃って、他人に勝手なカテゴライズされたりレッテルを貼られたり、わかったようなことを言われたりするのに、ものすごく嫌悪感があったなあと、つい自分の過去を思い出してみたり。
執筆おつかれさまでした! ひとり三作まで投稿可というルールでのんびりやっておりますので、年内にもしお気が向かれましたら、またぜひよろしくお願いいたします。
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Re: みんなで書けば怖くない! 中二病イベント開催します! ( No.5 ) |
- 日時: 2012/10/09 02:52
- 名前: 陣家 ID:ULfAXgq.
100枚を超えてしまったので、ファンタジー、童話板にアップします。
タイトル 同伴下校とソーサラーズ
一応落ちらしきところまでは書いたつもりですが、背景設定、設定説明はほとんど描写できませんでした。 一般板では連載禁止だったと思いますが、 もしもこれを第一部だとすれば第三部くらいまで書ければ、一応の完結にはできるプロットはあります。
サブタイトル予定 第二部:アービターとイグナイター 第三部:オブザーバーと同伴世界
第一部を読んで続きが読みたいというお声がいただければ書いてみたいと思います。
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陣屋さまへ ( No.6 ) |
- 日時: 2012/10/09 21:44
- 名前: 朝陽遥(HAL) ID:y1DFOqBY
- 参照: http://dabunnsouko.web.fc2.com/
わー、ご参加ありがとうございます! さっそく読ませていただきました。感想は一般板に書かせていただきますね。
そうですね、一般投稿版を利用される場合は完結ルールが適用されてきますので、単独でも読める形式でお書きいただくか、ご自分のサイト・ブログ等にUPしていただければ。何ならほかのSNSさんでも……(そちらの規約に違反しなければ) どうしても投稿場所に困られるようでしたら、百枚ここにどーんと載せていただいてもかまいません。たしか文字数制限は相当余裕があったはず……もしも投稿できない等のトラブルがありましたら、お申し付けくださいませ。なにか考えます。
個人的にはぜひとも、きっちり伏線を回収した第二段・第三段まで読ませていただきたく思います。投稿期間は年内いっぱいまでですので、どうぞよろしくお願いいたします!
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Re: みんなで書けば怖くない! 中二病イベント開催します! ( No.7 ) |
- 日時: 2012/10/13 19:17
- 名前: 陣家 ID:9rDrIEh6
きかさんの作品への感想です。
一見荒唐無稽なやりとりのようでいて、男女関係の機微をうまく表現していると感じました。 電波に見える彼女と現実をしっかり見据える彼氏。 仕事と私とどっちが大事なの? というテンプレートな問い。 でも金の切れ目は縁の切れ目だということも本能的にお互い分かってたりする。 実際は本当に現実的なのは彼女のほうだというのは彼氏も心のどこかで分かっているんですよね。
男はどこまで女に譲歩すればいいのか。 きっと模範解答は絶対にしないことなんですよね。 ある意味罠みたいなものです。 身につまされるお話でした。 感慨深い内容でとてもよかったです。
ではでは
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Re: みんなで書けば怖くない! 中二病イベント開催します! ( No.8 ) |
- 日時: 2012/10/13 19:46
- 名前: 陣家 ID:9rDrIEh6
「心のどこかにフランス人を」への感想です 無線不通さん、拝読しました。
この何気ない日常が、何の前触れもなく突然瓦解する展開は大好きです。 文章がとても読みやすくて安定しているので、主人公の冷静さが際だって表現されているところがいいなあと思いました。ツッコミの偉大さを改めて思い知りました。 ただ。個人的には父親の世界観と妹の世界観がまったく違っているせいで、実際は本当にただの精神錯乱と読めてしまうところが残念に思いました。 父親も妹も、同じ世界の住人であった方が、異世界への旅立ちを心のどこかで望んでいる主人公の気持ちが表現できたんじゃないかと。 はたまた遊園地という舞台を生かして、父親と妹がなにがしかのすり込みを与えられる伏線を張っておくのも面白いかもしれません。
電波なセリフの数々は、いかにもそれらしくて良かったです。 作者さんがいろいろな作品に精通していらっしゃることが伺えて今後の作にも期待がふくらみます。
それでは
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森は静まりかえり ( No.9 ) |
- 日時: 2012/10/21 20:36
- 名前: 朝陽遥 ID:aQZQAwRA
- 参照: http://dabunnsouko.web.fc2.com/
流血描写があります。苦手な方はご注意くださいませ。 ----------------------------------------
森の中は、驚くほど静謐だった。 ほんの少し離れた場所では、いまも怒号と悲鳴が飛び交っているはずだ。興奮した馬のいななきの合間に剣戟が響きわたり、地面を這いつくばる兵士の命乞いの嘆願が、別の兵士が怯えを隠すために上げた罵声に掻き消され――そうした混乱の只中にある戦場から、たいして離れてもいないというのに、彼のいるこの森は、まったくもって静まり返っていた。時おり風に梢がざわめき、遥かな頭上で鳥たちが鳴き交わしているのが、かえって静寂を深めている。 兵士は樹の幹に凭れて、しきりに瞬きを繰り返していた。 まだ若い。少年といってもいいような年頃だった。よく日に焼けた顔はむき出しのまま、血と泥にまみれている。鎧のかわりなのだろう、粗雑なつくりの胴当てを巻いてはいるが、そのような形ばかりの防護では、たいして彼の身を守ってくれるとも思えなかった。実際のところ、脇腹の部分の革は大きく裂けて、かなりの血が滲んでいた。 兵士の視線の先では、草花が一本、風もないのにかすかに震えている。白い花弁を揺らすのは、そこに乗っている一匹の虫だ。花芯に頭を突っ込んで、蜜を吸っている。余所見することなど考えもつかないふうに、一心に。
※ ※ ※
彼の村に新しく徴兵の触れが出たのは、ほんのひと月ばかり前のことだった。 前のときには一定年齢以上の、それも健康な者だけでよかったのが、今度は否が応でも各戸から一人、誰か男を出さねばならなかった。父親は何年も前に屋根から落ちて死んだ。弟は二人ともまだ幼い。与えられたたった一晩きりの猶予に、彼は身支度をしながら、何度となく逃げることを考えた。 谷間の痩せた土地しか持たない、ちっぽけな村だ。逆らえば領主からどのような沙汰があるとも知れず、残された母や弟妹が他の村人たちからどのような眼で見られるかを思えば、彼に選べる道は多くなかった。 ――ひと殺しなんか、まっぴらだ。 剣を構えて敵兵に対峙する自分を、彼は思い浮かべようとしてみた。想像もつかなかった。これまで鍬や鑿以外の刃物を手にしたことなど一度もなかったし、ましてそれを他人に向けるなんて、考えるだけでも気分の悪くなることだった。 夜中、母親のしのび泣くのに耳をふさぎながら、彼は鬱々と考えた。そのときが来たら、真っ先に殺されよう。 それが一番ましな考えのように思えた。戦死したのなら、残された家族には補償も出るはずだ。雀の涙ほどの額だというが、何かの足しにはなるだろうし、それに、他の村人たちから白い目で見られることもない。 荷作りはすぐに終わった。持っていくようなものは、元よりたいしてなかったからだ。着るものがほんの少しと、古布がいくらか、それでお終いだった。父親の使っていた鑿を探し出して、迷い迷い一旦は着替えの間にしのばせたけれど、すぐに出して、もとどおり戸棚に仕舞い込んだ。 そんなものが、武器になると思ったわけではない。父親の形見を身につけていれば、いくらか心強いような気がしたのだった。だが、どうせ死ににゆくのに心強いもなにもなかろうと、そう思い直したのだ。 それに、残しておけばゆくゆくは、弟の助けになるかもしれない。彼自身と違って、弟は手先がすこぶる器用だ。死んだ父親に似て、いい大工になるだろう。 ――あとはどうやって、うまいこと殺されるかだ。 じっと暗い天井に眼を凝らしながら、彼は考えた。必死で戦った末に殺されたと、そういう体裁を取らねばならない。自ら進んで殺されたというのが誰の目にも明らかになっては、補償金どころか、反逆者ということになりかねない。 暗闇の中、彼はぶるりと身ぶるいをした。自分が死ねば、ただでさえ男手の足りない家のことだ、みな難儀をするだろう。 狭い畑からは、毎年かつかつの麦しかとれない。今年は夏になっても、風がやけに冷たい日が続いていた。仮に兵隊にとられなかったところで、冬には飢えて死ぬ運命が待っているのかもしれなかった。 凶作になっても、そのときに彼の命であがなった金で、となり町から食べるものを買えるのならば、あるいはこの触れは彼らにとって、幸運なのかもしれなかった。たとえそれが、ひと冬かぎりの苦しいつなぎにしかならずとも。
※ ※ ※
それだというのに、いざいくさ場に放り出されて、敵の刃先がおのれの腹を薙いだとき、彼は頭のなかは真っ白になった。 不幸なのは、目の前にいた相手も彼自身と似たりよったりの新兵だったことだろう。 気がついたときには、がむしゃらに振りまわした彼の短剣が、相手の首を掠めていた。かえってきた手ごたえはわずかなもので、ほんのちょっと掠めただけとしか思えなかったのに、相手は首から驚くほど大量の血を吹き出させ、どうと音を立てて、背後に倒れた。 心臓は壊れんばかりに拍動を打って、内側からあばら骨を叩いていた。柄を握る手のひらは、冷たい汗でびっしょり濡れていた。 仰向けになって倒れた敵兵の死に顔を、彼は見てしまった。まだ年若い――下手をすれば彼よりもまだ下かもしれない、ほんの子どもの顔――血の気の見る間に失せて、真っ白になった顔を。 自分が悲鳴を上げたのかどうか、彼は覚えていない。 気がついたときにはどこへとも知らず、無我夢中で走っていた。いくさ場はどこも、ひどく混乱していた。彼が話に伝え聞いて想像していたような戦場の場面とは、まったく違う光景がそこに広がっていた。兵士たちは指揮にしたがって整然と行進するのでもなければ、鬨の声をあげて一斉に突撃するのでもなく、てんでばらばらに剣を振りまわし、乱れ飛ぶ矢に倒れ、逃げまどっていた。歓声や鬨の声よりも、癇癪を起したような罵声や、命乞いの声のほうがよほど喧しかった。眼をぎらぎらと光らせて、とっくに死んだ敵に何度も刃を打ち込むものがいた。馬に踏まれて頭蓋を半ば砕かれながら、どういうわけか死に切れずにいつまでも呻いているものがいた。 ときおり見咎められて敵兵から打ちかかられ、そのたびにまろぶように逃げまどい、むやみやたらになまくらな刃を振りまわして、また走って、走って――走って――そうしていったい、どれほどの時間が経っただろう。 あるとき気がつくと、彼はひとりになっていた。 見渡せばそこは合戦場になった平原ではなく、いつのまにかすっかり森の中に分け入っていた。自分がどこをどう走ってきたのか、まるきり記憶になかった。覚えているのは敵の死に顔と、刃が撫でていった腹の焼けつくような痛みと、手にした剣が人の肉を割いた瞬間の鈍い感触だけだった。やけに足が痛むと思ってふと見下ろせば、折れた木の枝が靴を破って足に刺さっていた。 ついさっきまで耳のすぐ横で響いていたようだった怒号も、悲鳴も、いっそ不思議になるほど、いまはまったく耳に届かなかった。森のなかはうそ寒いほどに静まり返り、いくさの気配を嗅ぎつけて逃げたものか、鳥や獣の気配さえも遠かった。 残された家族はどうなるだろう。彼は痺れたような頭の片隅で、そのことを考えた。脱走兵という言葉が、頭の隅をよぎる。冷たい風――狭い畑に力なく揺れるわずかばかりの麦――幼い弟妹が、遊びと区別のつかないようすでかき集めてくる薪材――冬の谷間を吹き抜ける風は痺れるほど冷たく、薪をいくら蓄えても追いつかない。 けれどもう一歩たりとも、足を踏み出す力は残っていなかった。まして後にしてきた戦場にふたたび戻る力など、体のどこにもあるはずがなかった。 ずるずるとその場にへたり込み、這うようにして、傍にあった樹の根元に、彼は寄りかかった。樹皮はささくれて硬かったが、根の近くはやわらかい苔に覆われていた。そこに体を預けると、ひんやりと湿った感触が胴巻きごしに伝わって、彼の体温を奪った。汗が流れ込む眼を瞬きながら、彼は自分の心臓の音を聞いた。 上がりきった息は、なかなかおさまらなかった。ようやく呼吸が整い、彼の眼が焦点を合わせることを思い出したとき、その視線のちょうど先には、白い花がぽつんと一輪きり、静かに咲いていた。 どこにでも生えているような、ありふれた草花だ。彼の村のまわりでも、同じものを時おり見かけることがあった。ほっそりとした茎でも充分に支えられるだけの、みすぼらしいほどちっぽけな花を咲かせて、遠くのいくさのことなどまったく知らぬげに、身じろぎもせず花蜜を吸われている。 吸いこまれるように、彼は手を差し伸べた。立ち上がるほどの力は、体のどこからも湧いてこなかった。それでも彼は、まるで何かに操られてでもいるかのように半身を起こし、無心に指先を伸ばして、そのちいさな花に触れた。 白い花弁が、血で汚れる。 彼がびくりとして手をひっこめたときには、虫はもう、どこかに逃げていた。 唐突な吐き気に襲われて、彼は身をよじる。自分の服の裾を汚しながら吐いて、吐いて、滲んだ涙をぬぐいもせずに、何度も地面に手をこすりつける。下生えのぎざぎざに尖った葉先が、子どものころから鍬を握ってきた彼の皮膚の厚くなった手のひらを、いとも容易く傷つけて、そこから湧きだした真新しい赤い血が、もとからついていた乾きかけの血の上を、雫になって流れ落ちた。その色を見て、彼はまたえずく。 森は静まりかえり、そこに彼の荒い息だけが響いている。戦場の喧騒は、いまだ近付いてこない。
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いかにも切れっ端な感じがすごいのですが(汗)、本命の話のほうが書くのに手間取っておりますので、ひとまず一本目を。これも恥ずかしさを振り切る修行と思って、開き直って投稿しておきます。 お目汚したいへん失礼しました!
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森は静まりかえり の感想です ( No.10 ) |
- 日時: 2012/10/22 22:24
- 名前: 陣家 ID:3T4xxpWQ
読みました。
うーん……ショックです。 正統派と言うか、現実的な戦役における一兵卒の葛藤を描くリアルな反戦的なドラマのプロローグじゃないですか。 いやいや、あえてここからの超展開があるのですよね。 厨二っぽさってのは明確な定義は確かにあるわけではないですが、少なくともこの編からは朝陽遥 さんが煽り文句でおっしゃっていた要素は感じとることが出来ませんでした。
やはり! 俺Tueeeeeeeeee! あたしKireeeeeeeee! 必殺技Sugeeeeeeeeee! 謎の組織Koeeeeeeeeeee! ハーレム展開AriEneeeeeeeee! のどれか一つは欲しいかなあ、と……。 読んでるだけでお尻がむずむずしてくるようなすばらしいお手本を期待しています。シリアススタートならこの後は逆行展開?U-1?スパシン? いえ、そう来ると信じてます。
と言うわけで、どうかハシゴはずさないで……と涙目で祈ってたりします。 続編、期待して待っています!
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Re: みんなで書けば怖くない! 中二病イベント開催します! ( No.11 ) |
- 日時: 2012/11/10 19:49
- 名前: 楠山歳幸 ID:FLL2VoeI
すみません。 イベントに参加したいと思います。
たぶん100枚どころではすまない量と思いますので、ファンタジー板に投稿します。
タイトルは「それは満月の三日前」です。
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