Re: 1時間即興三語はじめました。「悶絶」「ホルマリン漬け」「文字化け」 ( No.1 ) |
- 日時: 2017/02/19 22:36
- 名前: 朝陽 ID:79zmDOWw
勢いで書けるところまで書いてはみたものの、オチが思いつきませんでした……(不完全)
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その夜ははじめから、何かがおかしかった。
柏教授に呼び出されて実験棟に侵入したのが二十二時を回ったあたりだった。 教授に呼び出された学生が大学施設内に立ち入るのに、侵入、という言い方をするのもおかしな話だが、気分的にはまるきりそうとしか感じられなかった。もうひとつの、南側の実験棟であればたいてい遅い時間にも誰かが居残って作業をしているのだが、こっちの棟はたいてい夜には無人になってしまう。 いきなりの電話だった。とはいえ、教授の気まぐれは今日に始まったことじゃない。何か思い立っては興奮して周囲のことなど目に入らなくなるのは彼にとって日常茶飯事のこと。つきあいきれない学生がひとりまたひとりとゼミを去った結果、残る数少ない奇特な学生のひとりがぼく、というわけだ。なぜ柏教授が大学を辞めさせられずにいるのかについては、だいぶ前から七不思議のひとつになっている。 電波の調子が悪いのか、教授の電話は途切れがちで、ところどころ単語が聞き取れなかった。それでも、いますぐに実験棟にいくつかの資料と、それから備品のデジカメを一台持ってくるようにという、その指示だけは理解できた。 電話があったとき、もちろんぼくはとっくに大学を出ていた。上京してきた地元の友達とひさしぶりに会って、大学近くの居酒屋で飲んでいたのだ。 気づかないふりをして電話をとらなければよかったようなものなのだが、そうしたらそうしたで、翌日になってひどい目にあわされることは間違いなかった。柏教授はおとなげがない。そしてぼくは単位が惜しい。 どのみち友人も、明日が早いからそろそろ宿に戻ると言い出したところだったから、級友との再会を邪魔されたというほどでもないといえばそうなのだが、ひさしぶりの気の置けない友人との飲みで、アルコールがすっかり回っていた。足元がじゃっかん怪しい。手持ちの小さな懐中電灯で、廊下の電気のスイッチをさぐった。 だが、スイッチを押しても、電灯はつかなかった。 「停電?」 とっさの独り言が、無人の実験棟に気味悪く谺する。びくりとしてから、怯えた自分が恥ずかしくなった。 窓の外を覗くが、守衛室らしいあたりや、構内の街灯は、ふつうにあかあかと点っている。たまたまこの棟だけ、電気系統のトラブルがあっているんだろうか? あきらめて、懐中電灯だけで歩こうとした。なぜそんなものを常備しているのかというと、深夜の教授の呼び出しが今日はじめてのことではないからだ。なれっこになりつつある自分が癪ではあったが。 歩き出してすぐに、スマホが震えた。 何気なくメールを開いて、ぎょっとした。
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教授のいたずら、だとは思わなかった。柏教授は変人奇人のたぐいには違いないが、その手の趣味の悪い遊び心には持ち合わせがない。 差出人に心当たりはない。というか、差出人の欄も文字化けしていた。スパムメールのたぐいだろうか。それともおかしなウイルスにでも感染したか。最近、何かあやしげなサイトにアクセスしたことはあっただろうか? 薄気味悪く思いながらも、教授に指示された地下の実験室に向かう。ぼくもゼミをうつることを真剣に考えたほうがいいかもしれない。家は経済的に余裕があるわけでもなく、留年すれば両親に迷惑がかかるという自覚はあったが、こんなことがあと半年も続くと思ったら、自分の神経がもたないような気がする。 地下に下りる階段の電気も、やっぱり点かなかった。 自分の足音がエコーする。進む先は暗く、教授が実験室にいるのなら、その照明が漏れてきていてもおかしくないのに、足元を間遠に照らす緑色の非常灯があるだけで、あとはまっくらだった。そういえば、非常灯は点いているのだなと、ようやく気がついた。電源がわかれているのだろうか。 小さな懐中電灯で、各部屋のプレートをさぐりながら歩く。電話で教授に言われた番号が、なかなか見当たらない。だいたい、そんな教室があっただろうか? 柏教授の言い間違いの可能性を考え始めた。教授は悪戯心の持ち合わせはないが、痴呆の可能性はいまいち否定できない。普段の言動は奇抜ながらもしっかりしているが、それなりの高齢であることには違いないのだ。そうとは思えないバイタリティーに、日々苦しめられているわけではあるが。 E2b。あった。その部屋は、奥のつきあたりだった。 手をかけると、ドアは軽々と開いた。 「教授? 和泉です」 知らず、声が掠れた。中で柏教授が倒れているのではないか、という妄想が一瞬、脳裏をよぎった。それも、卒中とかそういうのではなくて、鈍器で殴られて倒れているところ。ミステリ小説の読み過ぎかもしれない。 だが教室は無人のようだった。 何か、おかしなにおいがする。さっきの妄想のように、血の臭いがどうのというわけではないのだが、やたらに薬品くさい。 手探りでスイッチを入れるが、やはりここも明かりが点かない。 懐中電灯の光を向けて、ぎょっとした。広いはずの教室に、ところせましと棚が並べられて、そこにみっちりと、大小様々の標本が並んでいる。 その部屋の異常さは、形容しがたいものがあった。生物標本、なのだろうが、ライトが掠めた奥のガラス瓶のひとつには、ぎょっとするような大きさがあった。まるで、 人間ひとりがまるごと入ってでもいそうなくらい。 もう一度懐中電灯を向ける勇気は、なかなか出てこなかった。 「教授? どこにいるんですか?」 声ににじむ怯えを隠そうという余裕はなかった。もう一度声を張り上げて、柏教授を呼ぶ。だが返事はない。 背中が冷や汗でびっしょりと濡れていた。膝が情けないほど震えている。さっき照らしかけた大きな瓶が気になった。見なければ見ないで、想像力が悪いほうに暴走した。懐中電灯を取り落としそうになりながら、もう一度、奥に向けた。 羽が見えた。 鳥、にしては大きすぎた。世界じゅうのどこかには人間より大きなサイズの鳥がいてもおかしくはないが、そんなものがここで剥製でもなく標本になっている理由は思いつかない。 だいいち、そいつには手足があった。 ぬるりとした、肌色の皮膚が見えた。羽毛が生えているのは、翼、あとは肩と背中の周りだけで、ほかのパーツは、人間のように見えた。 その表情は、おそろしげに歪んでいた。 はじめ、そのなんだかよくわからない生きものが、苦悶の表情で息絶えたまま、ホルマリン漬けになっているのだと思った。 だがすぐに自分の思い違いに気がつかされた。 薬品の満たされたそのガラス容器の中で、そいつはもがいた。 苦悶のうちに死んだのではない。いまも生きて、悶絶しているのだ。 緑色の瞳がこちらを見た。 悲鳴が喉からあふれ出した。逃げなくてはならないと思うのに、腰を抜かして、
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すごい中途半端なところで時間切れしました。そのうち思いついたら書きあげようかな……
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