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RSSフィード [3] 新サイト突発一時間三語・斬
   
日時: 2010/12/18 23:02
名前: 片桐 ID:a1xijYQ2

 新サイト一回目の突発三語ということで、少し説明させていただきます。
 突発一時間三語というのは、一時間で三つのお題を含んだ小説を書いて投稿しよう、というミニイベントです。
 三つのお題はチャット上で集められます。スレッドが立ち上げられると執筆開始となり、その後一時間以内にこのスレッドに返信する形で投稿してください。
 別板で行われている一週間内に書き上げて投稿する三語は、構想時間は自由で、書き上げるまでの目標時間を一時間としているのに対し(この制限はあまり守られていませんがw)、こちらは一時間以内に構想執筆をするものだとお考えください。
 もちろん、あくまで楽しむことを目的としたイベントなので、多少の時間オーバーは問題ありません。また、仮に作品が完成していなくても、一時間たった時点の成果として投稿するのもありです。
 とにかく一番重要なことは書くことを楽しむことです。一時間で自分がどこまでできるのか、焦ったり、頭ひねったり、変なテンションになったり、楽しんでみてください。
 
 では今回のお題です。
 「アンティーク」「茜色」「木目金」
 以上の三つのお題を使って作品を書いてください。

 一応の投稿締め切りは十二時。参加は自由なので、興味のある方は是非ご投稿ください。
 

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( No.6 )
   
日時: 2011/07/09 09:23
名前: 片桐 ID:uiCU7KM2

 五分おきになるアラームを何度も叩きつけ、ようやく思い腰を上げて眠気眼で自室のドアを開けると、僕の視界には地平線を境に恐ろしく澄んだ青の空と、果ての見えない砂漠が広がっていた。砂粒を含んだぬるい風が頬を舐めた。僕はどうやら空高くそびえる円筒状の建物のかなり昇ったところのいるのらしい。振り返ると僕が通ってきたドアがある。先ほど僕が間違いなく開けたはずの、しかし見たこともない外観のドア。アンティーク的とでも言うのだろうか、凝ったデザインのドアにはしゃれた木目金の細工がしてあり、少なくとも僕の自室のドアとは似てもにつかぬドアがそこにあった。見上げるとプレートが一枚嵌めこまれていた。そこに書かれているのは21という数字だ。何か思い当たるようで、そんな数字の書かれたドアはやはり僕の記憶のどこにもない。戻るべきだろうか、と僕は自問する。しかし思考は明晰とは程遠く、どういうわけかしらないけれど、ここに来た以上はこの塔らしき建造物を少しばかり探索してみようと眠気の未だ覚めない頭で歩き出した。
 僕は歩いている。どこへ? この建造物には階段がない。あるのは緩やかな傾斜だ。建造物の円周には角度があり、左回りに進むと昇っていくことになるようだ。どうやらこの建造物は螺旋状の構造をしている。歩みを進めつつ、外側の世界を眺めても砂漠が広がるばかり。なぜこんなところに、こんな建物が? そもそも僕はなぜこんなところで、わけもなく、わけもわからず歩もうというのだろう。
 僕が始めに訪れたドアから、ちょうどひと巻き進むと、そこには案の定ドアがあった。デザインは変わらない。しかしドアの上部に嵌めこまれたプレートの数字がひとつ増えていた。22。ドアを開けてみようか、と僕は思う。しかし僕の手が伸びることはなかった。僕はそのドアを尻目に、さらに建造物を昇り続ける。
 23。24。25。26。27。28。
 そこまで歩いて僕はあるひらめきを得た。まず21のドアを僕通ったのはなぜだろう? 21――それは僕の年齢ではないのか。
 では、もしそのひとつ上の階のドアを開けたのなら、そこに広がる世界とはどういったところなのだろう。僕は半ば確信に近い気分で、そこには22歳の僕があるべき世界が広がっていると思った。僕がそこで存在できるのかはわからない。それでも僕は、22歳の僕のあるべき世界を知る。けれど僕はそのドアを開けようとは思わなかった。僕はもっとこの建造物を登ってていきたいのだ。
 僕は再び歩み始める。
 ――30。
 ――40。
 ――50。
 まだ僕はドアを開こうとはしない。僕にはある直感があった。ドアを開けられるのは一度きりなのだ。
 そこで僕はもうひとつのことに思い当たる。この建造物が僕の一生に通じているならば、その最上階とは一体何階になるのだろう?
 僕はこれまで昇ってきた。漠然と、しかし僕の内なる意識が望むべくして進んできた。最上階の僕は果たして笑っているか、泣いているか、感謝しているか、悔いているか、周囲にはどんな人がおり、あるいは、独りで最期を迎えようとしているか。
 僕は息を呑み、残りそう長くないだろうという道のりを歩み始める。
 一体自分が今何階にいるのかさえわからず、朦朧とした意識で進んでいた時、出会いはあった。
 見たこともない男が上方から降りてきたのだ。挨拶らしき挨拶もせず、道を譲ろうという配慮もなく、僕と男は対面した。
「どいてくれないか? 僕はどうしてもこの先に進んでいきたいんだ」
 それは果たして僕が放った言葉か、男が放った言葉か。
 僕と男は、ついにどちらが道を譲るでもなく、周囲の景色が茜色に染まるまで、対峙していた。
「そうか、わかったよ」
 もう一度呟かれた言葉を聴くにいたり、僕と男はきびすを返して歩き始める。僕は降り、男は昇る。
 やがて僕は21の扉まで戻り、残念なような、ほっとしたような気分で、あるべき世界のドアを開けた。 

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