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RSSフィード [5] 「あ、三語が止まってみえる」的一時間三語
   
日時: 2010/12/25 22:57
名前: 片桐 ID:uMXlTGA2

今晩もあります。一時間三語。

お題は、「豆炭」「誰のために」「サーチライト」「麻痺」「クリスマスってあったっけ」
です。以上五つの中から三つ以上を使用して作品を書いてください。
締め切りは十二時(約一名だけ特別に72時間後です)。
完結してなくても、多少時間オーバーしても問題ありません。とにかく楽しんで執筆してください。

この板を確認したら執筆スタート。健闘を祈ります。

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サーチライト いず デッド ( No.5 )
   
日時: 2010/12/26 00:02
名前: 弥田 ID:PylxrUTI

 冬の午前二時十七分は闇にとざされている。窓の外は真っ黒に塗りつぶされて、ネオンの極彩色だけが細胞のようにくっきりとまばゆい。空には月光がぼんやり淡くて、無数の星は遠く彼方に消えてしまっている。
 静かだった。遠くから響く工場の稼働音以外は何も聞こえない。犬の吠える声や、どこかを走る車の排気音、夜の無窮がどろどろとうごめくかすかな轟きすらなかった。僕がいて、世界があって、それだけだった。
 ――てめえらぶっ殺してやる。
 僕は暗がりに隠れてしまったなにもかもに思いを馳せた。想像のナイフを慌ててつかむと、右手がふるえて、まるで麻痺してしまったかのように動かなかった。刃先を見つめる。研ぎ澄まされたそれは鉛筆の芯よりも尖って、視界にはいるだけで眼球が潰れてしまいそうだった。慌てて目をそらした。力がすうっと抜けて、右手がナイフを取り落としてしまった。落ちたナイフは右のつま先に刺さった。そこにはなんの感触もなかった。そこにはなんの感情もなかった。想像のナイフはどこまでも無力だった。
 ――てめえらぶっ殺してやる。
 声には出さずに叫ぶ。のどがきしむ。秒針が一周して、時刻、午前二時十八分。
 窓の外はあいかわらず真っ黒だった。豆炭のような色合いで、どこまでも奥まっていた。そんな中、ネオンと月だけが貼り付けたシールのようだった。
 ――もっと光を。
 サーチライトがあればよかった。まっしろな光ですべてを永遠にしてしまえればよかった。
「サーチライトが欲しいのかい?」
 声がした。幻聴だった。そして幻覚だった。月の上に小人が座っていた。眼が四つあり、口が五つあった。僕は声が出せなかった。
「シカトはよくないよ、きみ。私が声をかけたのだから、こんにちはセニョール、と挨拶するのは当然のことだ」
「……あなたはスペイン人なんですか?」
 やっとのことでそれだけ言った。
「そんなことは問題ではない」
「サーチライトが欲しいのかい?」
 小人が再び聞いた。僕はうなずいた。
「なんのために?」
「すべてを照らすため」
「誰のために?」
「ここにはいない誰かのため」
「そして自分のため」
「ええ。自分のためです」
 小人はふむふむと頷く。そしてにっこりと笑って、こう言うのだ。
「ならばことは簡単だ。きみ自身がサーチライトになってしまえばいい」
「そんなこと……」
「なに、たいして難しいことではないよ。そうあれかし、と望んだのならば大抵のことは叶ってしまう。そういうものなのだよ」
「しかし僕は」
「大丈夫。安心したまえ。最初は私が手伝ってあげよう。そら、眼をとじたまえ」
 言われるまま、思わず眼をとじてしまった。
「頭の中にサーチライトを思い浮かべたまえ」
 言われるまま、頭にサーチライトを思い浮かべた。
「息をすいたまえ」
 息をすった。
「息をはきたまえ」
 息をはいた。はけなかった。口がないのだから、はけるわけがなかった。その時、僕はサーチライトだったから。息の代わりに光を吐いた。まっしろな光を吐いた。光は、夜も、ネオンも、月も、すべてをのみこんですべてを永遠にした。圧倒的な輝きだった。
「……あはは。あはははは」
 小人はいつのまにか消えている。特に気にはならない。ただ夢中で辺りを照らした。視界はまっしろで、世界はまっしろだった。見わたす限りの無明を端から永遠にしていった。すべてが白に塗り込められて、僕はその中で首を振り続けるサーチライトだった。

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なんかごめんなさい

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