Re: はんがったや三語じゃんむりじゃったじゃん ( No.5 ) |
- 日時: 2011/04/10 01:14
- 名前: 端崎 ID:QfTBP7Uw
日のささぬ、鬱蒼とした森のなか、樹木の枝葉に埋もれながら片膝立ちになって、砲身を宙にむけたまま動かない、赤茶がかった巨大な兵士。おまえはずいぶんながいことそうしているのだな、といって彼のくすんだ赤い一つ目にことばをかけるのは、彼と彼の捧げる砲身へと巻きついて、ずるずると延び続けてきたツタである。 兵士はなにも語らない。 ――星を打ち落とせ。 そんな理不尽な命を負うてこの森に居座り続けて、ほんとうにもうどれだけの夜が明けたろう。星など降ってきはしないのだ。たまさか飛び込んでくる石くれがあるとして、それと見る間にはるか彼方で燃えつきて、塵のひとつも残りはしない。そも、こんな筒ひとつでなにができるというのか。引き金を引かれないままでいる砲身は森の湿気に、毎年やってくる長雨にやられて、どろどろと土色に汚れ、錆びつき、とうにその用途を果たさない。 兵士はなにも語らない。 あちこちが欠け落ち、均整のゆがんでしまった身躯を硬直させ続けたまま、なにも語らない。 不動の姿勢をとり続ける身躯を、ツタはまんべんなく這いまわる。 わたしもずいぶんながいことこうしているな。 兵士はなにも語らない。
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