「アイヤー」 藤村さん「ほらねんね」 ( No.5 ) ( No.46 ) |
- 日時: 2011/02/07 03:16
- 名前: 星野田 ID:RB7Zt9Zs
今日も熊がわたしの部屋に来た。狭い階段を二階までわざわざ登ってきたらしい。お疲れさん。でもこの部屋には何もないよ。わたしが布団に入っているけど、そんなもんだ。熊は器用に前足を使い、押入れのふすまを開けた。私が寝ている布団分、広くなっている押入れの中。熊はがんばってそこに体を入れてみようとしたが、ごめんね、その隙間はもう布団で予約済みなんだ。 頭まで布団にもぐって、寝たふりをして、熊の行動をこっそり観察する。なぜこんなことをするのか問われても答えられない。あ、押入れをあきらめて漫画読み出したぞ。それ読むの五回目じゃないか。おい毛が落ちるから尻をかくな。実はあいつ、漫画なんてほとんど読んでいないんだ。ちらちらとわたしのほうを見てくるからすぐ分かる。でも目なんてあわせない。わたしは「コンセントの穴ってなんであんなに黒いんだろう」みたいなことを考えて、熊の目を見ない。 しばらくして、熊は何かをあきらめたように首を振った。 「Yo、ちぇけらっちょ、アイヤー」 そう吠えてから屁をこいて、熊は一階に下っていった。匂いだけが部屋に残った。
------------------------------------- なんて無力なのだろう……手も足も出ませんでした。熊の無力感を描いたつもり。
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