ニコニコ♪ ( No.4 ) |
- 日時: 2011/01/09 00:04
- 名前: 水樹 ID:jMqFvSqc
「言いたいことはそれだけか」「透明人間」「道理」です。
付き合いだして一ヶ月の彼女は怯えていた。 「私もう、我慢できないの。あなたがいつも傍に居るような気がして、気が気じゃないの。いつもどこかで見はられてる気がしてならないの。ごめんなさい、あなたはとても良い人だけど、存在感があんまりにも無くて、私は無理みたい。本当にごめんなさいね、別れましょう」 「ごめん、僕、今君の後ろにいるんだ」 「何故移動したッ! ニャーッ!」 彼女は振り向き、指から爪を出し、僕の顔を思いっきり上下に引っ掻いた。 「ついて来ないでよねッ! この透明野郎めッ! 隠れストーキングめっ! どっかで生き絶えろっ! フニャーッ!」 散々な言葉を吐き捨て、彼女は猫のように颯爽と闇夜に溶け込み、消えて行った。 ああ、彼女は化け猫だった。猫耳がとてもキュートな彼女だった。 僕は無色透明の透明人間、妖怪たちの合コンで僕達は知り合った。今度こそ上手くいくと思ったのに無理だった。 親父は僕に、 「いいか、男はハートだ、誠意を見せろ、根性を見せろ、度胸を見せるんだ。まあ、わしらは透明だから何も見えんけどな、ガハハ、なあ母さんや」 声だけの親父はいつもそんな道理を言い、僕を励ます、いや、励ましているかどうかも分からない、透明で何も見えない。母さんは無口で忍び足だから本当にいるのかどうかも不明だ。難儀な家族だ。 僕はそんな事を思い、茫然と立ち尽くしていた。あまりのショックで本当にこの世から消えたいと闇夜の空を見つめる。 「にゃー! やめてぇー! やめニャいかッ! この下衆共めっ!」 襲われているのに強気な彼女が木霊する。 僕は急いで向かう。全力疾走だ。わき腹がすぐいたくなったので早歩きですぐに彼女に出くわした。 狼男達が彼女を壁際に追い詰めていた。彼女の服は引き裂かれ、まさしくケダモノの所業だった。 僕はそれを許さなかった。ぬき足差し脚の忍び足で近づくと、げんこつを一振り、思いっきり殴ってやった。 ケダモノ二人は抵抗も空しく、僕に殴られるまま、泣きながら消えて行った。ワオンと一つ遠吠えが聞こえた。 彼女は、不思議そうに辺りを見回す。 「あなたなのかニャン?」 僕は何も言わないまま、存在を消して彼女を見つめていた。 「ありがとニャン… さっきはヒドイ事言ってごめんニャン… 許してくれないかニャン…」 言いたい事はそれだけか? などとは言わない、そんな渋いキャラでもない、僕はじっと立ちつくす、彼女の猫目が潤んでいた。僕の眼からも不思議と涙が零れていた。 頬をつたい、顎から落ちる雫。 「そこにいるニャンね」 僕は彼女に抱きつかれた。ふくよかな胸だ。Fカップはあるだろう。僕は満面の笑顔をしていた。ニヤけている顔を見られなくて本当に良かった。 透明人間で良かったと思った一瞬でもある。
フニャ♪
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