星を落とす ( No.4 ) |
- 日時: 2011/04/10 00:45
- 名前: 片桐 ID:Nyb.Di1w
一つ目、片目で夜を見ていた。 右の目はもういない。もういないことにして、自宅を抜け出し、協会の墓地まで歩いてきた。昨日降った雨のせいで、足元はどろどろとなっていたが、かまいやしない。今ぼくらの成果が試されようとしているのだ。星落としを持ちかけてきたのはエバンズで、<星を落とすためにぼくらにはなれが必要なんだ>と力説していた。ぼくはエバンズの話に納得し、それからというもの、毎日ふたりで片目の訓練をした。片目でスープを飲み、片目で走り、片目で獲物を打つ。獲物となったのは、空き缶やお皿だけど、ぼくたちの一番の目標が動かない相手だから、それでも十分訓練にはなった。これまで空き缶やお皿を指に掛けたゴムで打ち、イメージトレーニングを重ねてきたのだ。 今、となりにはエバンズがいる。右どなりで、左目を閉じている。それを片目で確認する。興奮しているだろうけど、それをエバンズは見せない。ぼくも同じようにする。手をつなぐ。ふたりで夜空をあおぐ。エバンズも片目だから、あわせて両目、ぼくらはふたりで夜空を見上げる。どちらのものともいえない汗の滲んだ手をかかげ、ひとつの星に狙いをさだめ、ふたつの目の焦点をしぼる。 ――星を打ち落とせ! 夜空に向かって弾丸を放つ。それは瞬時に標的を狙い撃ち、ぼくらの足元に落ちてくる。まばゆい光を放った熱い球が、あの子の体に滑り込み、彼女は深い眠りからさめ、僕らに笑顔を向ける。 「おはよう、ミゲル。おはよう、エバンズ」 ぼくらは彼女に抱きつき、やさしく頬にキスをした。 明くる朝日がすべての嘘を照らすまで、ぼくらはずっと、そうしていた。
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くう、仕方ないか。またがんばります。
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