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RSSフィード [47] 一時間SANGOOOOOO、てきな。
   
日時: 2011/11/20 23:13
名前: 弥田 ID:hwurIi6k

『鉛筆』 『雪女』『スクール水着』です。1時までです。
ねばーねばーだーい! の精神を忘れずにきばっちゃってください><

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Re: 一時間SANGOOOOOO、てきな。 ( No.3 )
   
日時: 2011/11/21 01:00
名前: 桜井隆弘 ID:1kBm.Pf6

 世の中は、信じられないことが時に起こる。その原因は、そもそもそれが起こることを信じていないから、そして勝手な先入観を抱いているからだ――。

「カラン」
 木製の机に鉛筆が倒れ込んで、乾いた音を立てた。その音で靖史は目を覚ました。机の上には靖史の口からこぼれた水溜りがあり、靖史の目の前には授業中に居眠りする生徒に苛立つ先生が居た。
「靖史……お前の鉛筆は目覚まし時計か」
 先生は上手いことを言ったつもりだったのだろうが、周りの生徒たちの反応は極めて微妙だった。苦笑と失笑が入り混じり、妙な空気が教室を包み込む。先生は仕切り直すべく、改めて靖史に言った。
「そんな風に鉛筆を倒したら、マッキーが痛いだろ」
 鉛筆の持ち手の先端には、ネズミのマスコット人形が付いていた。先生はそれで笑いを取ろうとしたが、その試みも失敗に終わった。

 授業が終わり昼休みになると、靖史は強く思った――様々な方法を考えたが、いずれも障壁がありそうだ、やるなら思い切ったことをしなければ。そう、「犯行」するなら今しかない。窓から外を見やると、夏の日差しを反射させながら、プールの水面がゆらゆらと揺れていた――。

 昼休みが明け、次の授業はプールで水泳だ。みんなが教室から移動しようとしたその時、事件は起きた。
「無い!」
 声の主は、分厚いレンズのメガネを描け、体重は三ケタに達するのではないかと噂される米子だった。
「ちょっと、私の水着が無いんだけど!」
 瞬時に教室が騒然となった。
「おい、誰だよ」
「豚の水着返してやれよ」
「豚じぇねーよ」
 そこに先生が現れた。
「米子、どうした?」
「私の水着が無いんです」
「誰か盗んだんじゃね?」
 先生は必死に騒ぎを収めようとする。
「みんな、冷静になれ。こんな豚の水着、誰が欲しがるんだ」
「でも先生、世の中にはマニアが居るもんです」
「なるほど」
 至高の討論が終わり、先生は結論を述べる。
「この中にマニアが居ます。みんなの持ち物をチェックします」
 靖史は思った――まだだ。まだ時間が足りない。こんなんじゃ、フリーザをやっつけられない。
 マニア探しが進むと、その矛先はいよいよ靖史へと向けられた。
「先生、ちょっと待ってください。プライバシーの侵害です」
「靖史、俺達は家族みたいなもんだ。家族にプライバシーは無いだろ?」
「部屋のドアに鍵があれば、携帯にもロックする時代です」
「靖史の心の鍵は俺が持ってるんだ、さあ」
 コーナーフラッグ付近でボールキープするような時間稼ぎは、何とか功を奏した。もういい――靖史のカバンから、米子のスクール水着が出てきた。
「あったぞ!」
 先生が得意気に水着を天に掲げる。まるでワールドカップのトロフィーだ。靖史は先生の後方に、金の紙吹雪が舞っている気がした。
「おい、マジかよ」
「靖史、悪趣味だな」
「悪趣味じゃねーよ、王道だわ」
 非難の声の中で、米子は一人自分を擁護していた。
「よし、みんなプールに行くぞ! 靖史、お前は教室に残ってろ」
 先生の目は真剣だった。
「一つだけ先に言っておくが……米子が好きなら、美的感覚を疑った方がいいぞ」

 プールを目の当たりにした人間は、皆その光景に凍り付いていた――プール一面が凍り付いていたからだ。
「なんだ、これは!?」
 一番冷静さを保たなければならない先生が、一番動揺していた。
 その後ろには、コッソリ付いてきた靖史の姿があった。良かった――靖史は思った。そして、全てを語る決心をした。
「実はつい先ほど、プールが一瞬にして凍ったんです」
 靖史の言葉を、先生は信用できない。
「米子の水着を盗むあたりからして、お前はいかれちまったのか?」
 それでも靖史は主張を止めない。
「僕は小さい頃から、正夢を見るようで……あの午前の授業中、プールが凍る夢を見たんです」
「どういうことなの、靖史くん?」
 自分に気があると勘違いしている米子は、靖史に好意的だ。
「午後一時半くらいに、教室の窓から外を眺めていると、プールが一瞬にして凍る夢を見たんだ。もしそれが現実に起きれば、授業中で多くの死者が出る」
「はっ! だから時間を稼ぐ為に、わざと水着泥棒を演じて……」
 米子の顔は悪いが、頭は良いようだ。
「言いがかりだ、大体プールが一瞬で凍るはずないだろ。誰がやったっていうんだ」
「雪女です」
 とんちんかんな先生も、これには乗ってこない。
「雪女か、季節外れの雪女ね」
「先生、雪女が冬に現れるというのは先入観です。大体、雪女を見たことがあるんですか?」
 わけのわからない主張に、先生はついに堪忍袋の緒が切れた。
「どうせ、朝から何かして凍ってたんだろ? それ以外、物理的に有り得ない! 雪女が居たっていうんなら、証明してみろ!」
 靖史は黙ってプールの底を指差した。

 鉛筆の先端に付いたマッキーが、皮肉な笑みを浮かべていた。

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