Re: ご当地小説感想板! ( No.3 ) |
- 日時: 2011/12/16 15:06
- 名前: うんこ太郎 ID:vKvstO/A
>ふるさとの、空は狭く への感想
読ませていただきました。とても良かったです。長崎の香り(どんな香り!)がしました。
昔はそれぞれの地名がそれぞれの情を感じさせたと聞きますし、地名をタイトルに入れた昔の歌謡曲なんかもたくさんあるものですが、これだけ交通とメディアが発展すれば当然日本全国画一化するわけで、(画一化なんて書くと随分おおげさですけど……)でもこういう小説を読むと、まだそれぞれの土地に根付いた言葉が生きているんだと感じいります。
作中の方言での会話がいきいきしていて、ご当地小説ならではの言葉の魅力を堪能させていただきました。
好きな場面は、叔父との会話と、最後に母親がおみやげをもたせてくれるところです。以下の会話は生活感があってとってもいいですね! >「あんたちょっと、痩せたっちゃなかとね」 声を掛けられて振り向くと、ビール瓶とコップを載せた盆を持って、母が目を眇めていた。
>「家にいるときでも、鍵、開けっ放しにすんなよ。無用心だろ」 憮然としながら母にそういうと、「そうたいねえ」と、いかにも気のない返事が返ってきた。
>「おいちゃん、久しぶり」 「おう。どげんや、仕事は」 「まあ、ぼちぼち」
>「わい、本トに食いよっとか。刺身ば食え、刺身ば」 わざわざ買ってきたのか、テーブル並んだ刺身の皿を、叔父がおしやってくる。思わず苦笑がこぼれた。 「おいちゃん、俺の住んどるとこにも、港、あっとよ。あっちでも刺身、食うとっよ」 「なんな。長崎ん魚よっか旨かこたぁなかろもん」
* * *
あと、敢えて気になった箇所を指摘させていただきますと、
>「向こうは、どんな?」 → 質問の後で、どうして語り手が喉の奥で言葉を詰まらせてしまったのか? 胸をつまらせる理由付けが弱いというか私には読み取れませんでした。自分が今住んでいるところの良さを芙美に伝えるのに、何故胸がつまってしまったのでしょうか。
>どちらにしても、行く気はない。それが来年だろうが、五年後だろうが、きっと参列する気にはなれないだろう。 → 十年会わないでいた芙美に好意を持っているから、結婚式に参列する気にならないのでしょうか? もしそうであれば、過去の芙美とのエピソードもないし、ちょっと語り手の好意は現実味に欠けるかなと。結婚式に参列したくない別の理由として、故郷の止まっているような時間を動かしたくない、というものも考えてみましたが、それだと以下の「お前が、それを訊くか」という言葉の説明にはならないようですし……。
>「ほんとに、もうこっちには戻ってこんと?」 お前が、それを訊くか。いいそうになって、ぎりぎりで飲み込んだ。
> 十年。十年も経てば、それこそいろいろなことが変わっていて、当然なのだろう。目に見えることも、ぱっと見にはわからないことも。わかっているつもりで、心のどこかで、故郷の時間だけが止まっているような錯覚を覚えていた。そういう自分を、やっと思い知る。いまさら。本当に、いまさらだった。 → 故郷の町並みが変わったことと、母が痩せたことと、芙美が女性らしくなったことは分かりましたが、語り手と芙美との過去の関係がどう変わったのかがよく分からないので、私としては語り手に感情移入しにくかったです。この場面は芙美が結婚話を切り出して、語り手が動揺してのこの発言なのですが、「いまさら、本当にいまさら」という感情が切実に感じられませんでした。
>どうしてこれまで帰ってこなかったと、誰かに訊かれたら、変に里心をつけたなかったのだと、そう答えるつもりだった。本当のところは、いえるはずもなかったので。 → 本当のところはなんだったのでしょうか?ぼかして余韻を持たせるというより、あまりに漠然としているように感じました。父親をはやくに亡くし、家族は母親一人?の子供が十年も帰らない理由であればなおさらに。
私が読めていないだけであれば本当にお恥ずかしいです。そして、しつこいですけど私はとても好きな作品でした。HAL様にはもっと良い作品をバシバシ書いていただきたいと思っておりますし、日ごろから良心的なご感想をたくさん書いていらっしゃるので、大変差し出がましいようですが、私も良心に基づいて細かい疑問をぶつけてみたという次第です。
企画ものなので、作者様としては、完成度よりも楽しく書くことを目的とされたのかもしれないですけど……。
拙い感想失礼いたしました。 見当違いのことを書いていれば、本当にごめんなさい。
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