Re: ふかみどりいろのおじさん ( No.3 ) |
- 日時: 2011/08/19 03:34
- 名前: もず ID:/UopN4e.
つるべおとしに日は暮れて カラスが鳴くから帰りましょ 長い尻尾を得意げに揺らしてネズミがさえずるものだから、ついからかいたくなって、まぁるい耳の後ろのあたりをこしょこしょとくすぐった。 「なにそれ? 意味わかんないし」 するとネズミは頬袋をぷっくりと膨らませ、尖った鼻先をつんと天に向ける。 「意味! くだらない、意味なんて!」 「じゃあどうして歌うの?」 憤慨するネズミの様子があまりにも滑稽だったものだから、吹き出すかわりに私も空を見上げて聞いてみた。 するとネズミは、私の手を乱暴に払いのけて、一度は天に向けた鼻先を私の耳の中に突っ込んで喚いたものだ。 「どうして! どうして! くだらないくだらない!」 その鋭い前歯が耳たぶに齧りつきやしないかとはらはらしたのだけれど、密やかで生臭い息がかかるだけだった。 「怒りっぽいネズミだね」 「歌う意味を考えていられるほど長い一生じゃない」 「それはわかるけど、どうしてネズミが歌うのさ?」 言ってからしまったと思った。でもネズミはもう怒らなかった。
息絶えていたのだ。
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