つぶやき ( No.2 ) |
- 日時: 2011/01/08 23:50
- 名前: 天祐 ID:MMoyhFoA
「地球を守りましょう」
唐突に聞こえてきた声に私は耳を傾けた。どうやら街頭で環境保護のアピールをしているらしい。
「このままでは温暖化が進み、地球は生物が住めない星になってしまいます。みなさんで二酸化炭素の削減を推進しましょう」
なるほど。二酸化炭素が増えるとどうやら気温が上がるらしい。当然、気温が上がると生態系に影響を及ぼす。つまりは生物が住めない星になると。ふむ。まあ、わからない話ではないな。で、具体的にどうしたらいいのかね。
「まずは身近なところから。資源のリサイクルにご協力ください」
そうだね。所謂、限りある資源ってやつだね。特に石油製品とかを言うんだろうね。プラスティックとかペットボトルとか、かな。ん?それって温暖化と関係あるのかね。ただ、石油がもったいないから節約しようって話じゃないかな?
「エコカーに乗りましょう」
あ、それはなんとなくわかるね。使うガソリンの量が減れば排出される二酸化炭素もおのずと減るわけだ。だから、温暖化の防止につながると。うん、なるほど。
「エコ家電に買い替えましょう」
ほう。そうだね。使用電力量が抑えられれば、発電にかかるコストも抑えられる。火力発電の量が減れば二酸化炭素は減らせるね。うん。 でも、車を買ったり、家電を買い替えたりってずいぶんとお金がかかるんだねえ、エコって。
「二酸化炭素の排出量を取引しましょう」
おっと。これは車や家電だけの話じゃなくなってきたぞ。二酸化炭素の排出量が売買の対象になるんだね。これはすごく画期的なことだね。一般常識ではなんの役にもたたない気体に値段がつけられるんだ。それもとんでもない額の取引になるんだね。すごいな。人間の発想力って時に常軌を逸するよね。ここまで考えられるんならもう一歩踏み込んでもいいように思うんだけどな。 ん?今度は違ったアプローチでものを言ってる人がいるね。
「黒点の観測によるとこれから太陽の活動は縮小期を迎えるようです」
どこかの科学者みたいだね。これから数年間、太陽の活動が弱まるらしいよ。
「じゃあ、温暖化の勢いも止まるのでしょうか」
お、インタビュアーがいい質問をしたね。そうだよね。太陽の力が弱まればきっと温暖化の勢いも失速するはずだ。
「いえ、この縮小幅よりも人類が引き起こす温暖化のスピードは大きい影響を与えます。影響があるとしてもほんの少しでしょう。温暖化が止まることはありえません」
あ、いまこの科学者は本質を突いたよ。わかったかな?彼はこう言ったんだ。
「人類が引き起こす」
って。 解決方法は見えたじゃないか。お、科学者の話、まだ続きがあるようだぞ。
「われわれ人類は知恵を持っています。地球を救うために人類の叡智を今こそ結集するときです」
言いたいことはそれだけか。 あのさ、透明人間って知ってるかい?誰からも見えない。誰からも干渉されない。つまり、それは誰からも認知されない人間ってことだ。でもね、僕に言わせてみれば人間なんてもともと透明な存在なのさ。
「地球が泣いている」
「地球を守れ」
「宇宙船地球号」
ずいぶんと心に訴えるスローガンが並んでいるけれど、それは人間からみた道理に過ぎないんだよね。あの科学者は言ったんだ。人間がいなければ地球は温暖化しないってね。それってすごいことだよ。その論理で本当に地球を守りたいんだったら答えはただ一つ。地球から人間がいなくなればいいだけの話じゃないか。でも、話の本質はそこじゃない。地球が温暖化して困るのは地球じゃないのさ。 恐竜が歩き回っていたあの時代。二酸化炭素はいまよりもずうっと濃かったんだ。なにが言いたいかって?つまりは温暖化したって困るのは地球じゃないってことさ。 結局は人間が都合のいい道理を振り回してエコ商品の宣伝に躍起になっているだけなんだ。地球を守れなんてたいそうな看板掲げたって、本当は「自分たちが住める環境を守れ」ってことなのさ。つまりは自己保身に過ぎない。温暖化しようが寒冷化しようが地球は膨張した太陽に飲み込まれるまで存在し続けるんだ。人間がいようといまいとね。つまりあんたたちに守ってもらう必要なんてこれっぽっちもないのさ。スローガンを掲げるならもっと謙虚にしたほうがいいよ。
「僕たちは滅びたくない」
とか
「地球なんてどうでもいい。僕たちは生き延びよう」
とかね。 もう一度言うよ。君たちは透明な存在なんだ。いてもいなくても地球には何の関係もないのさ。君たちが二酸化炭素とやらをチマチマ減らしたって、ひとたび火山が噴火したらその何倍もの二酸化炭素が噴出するんだ。君たちはそんなバカげたことに躍起になってるのさ。君たちは透明な道化師なんだ。誰も関心を持たないところで必死おどけて見せている哀れな道化師さ。エコという名のエゴに気づかずに死ぬまでおどけ続けるがいい。
ん、僕かい?
僕の名前はそう「地球」さ。
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