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RSSフィード [3] 新サイト突発一時間三語・斬
   
日時: 2010/12/18 23:02
名前: 片桐 ID:a1xijYQ2

 新サイト一回目の突発三語ということで、少し説明させていただきます。
 突発一時間三語というのは、一時間で三つのお題を含んだ小説を書いて投稿しよう、というミニイベントです。
 三つのお題はチャット上で集められます。スレッドが立ち上げられると執筆開始となり、その後一時間以内にこのスレッドに返信する形で投稿してください。
 別板で行われている一週間内に書き上げて投稿する三語は、構想時間は自由で、書き上げるまでの目標時間を一時間としているのに対し(この制限はあまり守られていませんがw)、こちらは一時間以内に構想執筆をするものだとお考えください。
 もちろん、あくまで楽しむことを目的としたイベントなので、多少の時間オーバーは問題ありません。また、仮に作品が完成していなくても、一時間たった時点の成果として投稿するのもありです。
 とにかく一番重要なことは書くことを楽しむことです。一時間で自分がどこまでできるのか、焦ったり、頭ひねったり、変なテンションになったり、楽しんでみてください。
 
 では今回のお題です。
 「アンティーク」「茜色」「木目金」
 以上の三つのお題を使って作品を書いてください。

 一応の投稿締め切りは十二時。参加は自由なので、興味のある方は是非ご投稿ください。
 

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彼女の美しい別荘 ( No.2 )
   
日時: 2010/12/18 23:41
名前: HAL ID:qB.BimAY
参照: http://dabunnsouko.web.fc2.com/

 立ち尽くしたままぼんやりと、古い友人の貌を見上げていた。
「きれいね」
 そういって可憐に微笑む執行美弥子は、うつくしいものが好きだ。
 木目金の指輪、銀細工の食器、純白の骨片。耽美な画風の絵画、陽光のきらめく水辺を写した風景写真。毛並みのつややかな猫、羽を切られた籠の小鳥。およそ美を感じさせるものならば、その興味はどこへでも向くし、何をしてでも手に入れようとする。この部屋にずらりと並んでいる、まさにこれらの品々のように。
 ――みやこはきれいなものが好き。
 そういえば昔からこの子は、いつもそういっていたのだった。花を摘んで髪に挿し、実を潰して幼い唇に紅をさして、水溜りの鏡をうっとりと見つめていた。きれいなもようのビー玉を周りの子どもから奪い、きらびやかな子ども服がウインドウに飾られていては、あれがほしいと裕福な親にねだった。そしてそれがかなえられなければ、功名な計画を練って、手に入るように周囲を仕向けたのだった。癇癪を起こすのではなく、確実に手に入れられるように。思えばはじめから、そういう子だったのだ。
「とってもきれい」
 美弥子の美徳は、嫉妬をしないところにあると思う。美しいものの蒐集家であるならば、自分のほしいものを持つ他人を妬み、自分より美しい第三者を憎んでも、何の不思議もないというのに、どういうわけか、美弥子は違う。誰かからそれを奪う為に、その相手を陥れることはあっても、それは彼女が必要としているからやむをえずすることであって、相手そのものを憎むことは、一度もなかったのだ。また美弥子は美しい青年にも愛らしい少女にも、等しく見蕩れる。それがわたしには、いつでも不思議でならなかった。
 窓から茜色の夕日がさし込んで、それが美弥子の可憐な睫毛を輝かせている。窓辺からは、漣の音。ここは海辺の美しい邸宅。彼女の城。
「不思議ね。あなたがこんなに美しくなると知っていたら、もっと昔から、大事にしたのに」
 美弥子は首を傾げて、わたしの顔を覗き込む。彼女のいうように、昔のわたしは醜かった。痩せすぎて骨ばっていたし、顔を見ても男の子にしかみえないような(美少年ではなく、普通にそのへんにいる男の子に)調子だった。だから美弥子はわたしに関心を向けなかったし、ともすれば平気で踏みにじった。
 けれど成長とともに人間の顔立ちは変わる。それがいささか予想をこえたところで、何も不思議なことはない。それが、幸運なのか不運なのかはべつにしても。
「でも、いいわ。ちゃんとつかまえたから」
 わたしはぴくりとも動かずに、美弥子の可愛らしい笑顔を見つめる。もっと邪悪な、魔女の顔に見えてもおかしくはないというのに、どう見ても美弥子は可憐だった。愛らしく小首を傾げて、うっとりとわたしの目を覗き込んでいる。そこには何がうつっているだろう。眼球を取り出したあとの眼窩に埋め込まれた、プラスチックの義眼には。
 夕陽に照らし出された、彼女の美しい部屋には、ずらりと美しい剥製が並んでいる。小鳥に虎に蛇、美しい容貌をした少年少女たち。調度品に凭れているもの、壁に埋まったもの、アンティークの椅子に腰を埋めているもの。そのなかではわたしが一番年嵩だろうか。
「もう離さない。ずっと美弥子のそばにいてね」
 美弥子はいとおしむようにそう囁いて、可憐に微笑む。窓から入る光は徐々に弱まり、部屋に宵闇が落ちようとしている。いっときすれば、彼女のお気に入りのガラス工芸品が、差し込む月光をはじいてきらきらと輝くだろう。無言で佇む剥製たちの精巧な義眼とともに。

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