リライト希望作品:つとむュー作「お父さんのススリ泣き」 ( No.10 ) |
- 日時: 2011/01/16 21:36
- 名前: つとむュー ID:INLWNZEQ
ご無沙汰しています。新年おめでとうございます。 某所の祭りに参加中で、しばらく三語をお休みしています。 昔、アサブロの企画に投稿してボコボコになった黒歴史作品(800字くらい)です。 自分でもリライトしてみたりしていますが、他の方がどんな風に料理されるか、とても興味があります。
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隣の部屋から、お父さんのススリ泣く声が聞こえる。 寝る前に、ひどいことを言ってしまった。だって、高校受験が近いというのに、風呂上りのパンツ姿で「週末、温泉でも行かないか」なんて、のんきなことを言うんだもん。私、頭に来ちゃった。だからつい言ってしまったの、「お父さんなんて不潔! だいっキライ! あっち行って!!」って。 今晩も隣の部屋からススリ泣きが聞こえる。昨日のことなのに、よっぽどこたえたのかなあ……。でも、今日のはちょっと長い。なぜだろうと思い、そっと隣の部屋を覗いてみると――お父さんは、古ぼけた何かを見つめていた。 それは、一枚の絵葉書だった。そこに描かれている風景には見覚えがある。青い空、白い砂浜――それは毎年、家族で出かけていた南の島の風景だった。そうだ、五年前まではみんなで楽しい夏休みを過ごしていたんだっけ。あんな出来事が起こるまでは……。 五年前、あの島での家族旅行は突然終わりを告げられた。火山活動が急に活発化して、全島民が避難することになったのだ。私達は夜中に起こされ、荷物をまとめて慌しく船に乗り込んだ。そういえばあの絵葉書は、避難する日の夕方、島のポストに私が入れたんだっけ。五年ぶりに帰島が実現したというニュースを最近聞いたけど、それまであの絵葉書は、ずっとあのポストに置いてきぼりだったんだ。 あの出来事以来、夏の家族旅行は中止になってしまった。それは私が「あの島じゃなきゃいや」とダダをこねたから。そうしているうちに私は中学生になり、お父さんとの距離もだんだん離れていってしまった。五年ぶりに届けられた絵葉書は、心の中のかさぶたを突然はがされたような、そんな気持ちにさせた。 春になって受験が無事に終わったら、ちょっと素直になってみよう。そして、あの絵葉書に書いた言葉を勇気を出して言ってみよう。「パパ、また連れて行ってね」と。
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