今年も残すところ後わずか。これはやっとかなければいかんでしょう、ということでやります。一時間三語。お題は「ジャパニメーション」「姉萌え」「親子丼」「鴉」です。以上四つの中から三つ以上を使って作品を書いてください。締め切りは十二時。例によって、多少の時間オーバーは問題ありません。作品が途中まででも投稿OKです。それぞれが楽しめる形で参加してください。ではスタート。健闘を祈ります。
はばたく鴉の背に乗って親子丼を食べていた。鴉は半分鳥類で出来ていたので、それがいたく気に入らなかったようだ。「それ以上俺の背中でそのくだらねえ反吐みたいなもん食い散らかすんなら、おもわず宙返りしちまうまえにとっとと降りてくんねえかな」「けれどね、きみ。ぼくは食べ物を食べないと飢えて死んでしまうのですよ。そしてこの親子丼は四日ぶりにありついた食べ物なのです。いくらきみの気に入らないからといって、捨てることなんて出来やしないね」「ごたくはいいんだよ。捨てるのか、それともその反吐抱いたままどこまでも落ちていくのか、ふたつにひとつだ。選びな」「やれやれ」 ぼくは昨日まで読んでいた村上春樹氏の書く主人公の口まねをしながら、ぽい、と親子丼を投げ捨てた。そうして、どんぶりが米粒と鶏肉と卵とを吐き散らかしながら(それこそ反吐のように!)虚空を落下していくのをじっと見つめていた。「へ、ざまみろってんだ」 鴉は言った。「やれやれ」 ○ 地球上から大地が消えた、と言われはじめて何年たったのかは知らないが、確かにぼくは土というものを見たことがない。それどころか、森だとか、海だとか、そういったものも見たことがない。それらはすべて書物から得た知識だった。そういう「知っているだけの知識」のようなものは他にもいくつもあって、たとえば昨日まで読んでいた村上春樹氏が住んでいた日本に関して言えば、萌え(これはどうも好意をあらわす言葉らしい)、ジャパニメーション(ものすごい言語センスだ、とぼくは思う)、フジヤマ(とても大きいらしい)、ハラキリ(とても痛いらしい)、ゲイシャガール(とても可愛いらしい)、しじみ七十匹分の味噌汁(しじみとはなんなのだろう)、等々、それはもう多岐にわたるものがあるのだった。これらすべては、今ではもう完全に失われてしまって、ぼくみたいに暇な人間がときおりふっと思い返すくらいの意味合いしかもっていない。それはとてもとても悲しいことだと思った。けれども仕方のないことだった。仕方のない、という響きはあまり好きなのではないのだけれど、仕方のないものは仕方のないのだった。 ○「しかしね、きみ。捨てたのはいいが、依然としてぼくが餓死寸前だという事実にかわりはないのだ」「……じゃあ俺の羽、そこらへんにあるやつ二、三本ちぎっていいから、それを食えよ」「気持ちはありがたいが……食えるのかい?」「さあ?」「やれやれ」 鴉の羽は全長で三メートルほどある。これを全部食べることができたら、それはきっと素晴らしいことなのだろう、と思った。さっそく目の前に生えている羽をひとつ掴んで、おそるおそる引っ張ってみた。が、根が深くまではっているようでなかなか抜けない。両手でつかみ、全身の力をこめると、ようやくずぶずぶ動き始めて、やがて唐突にとっかかりが消えたようにするんと抜けて、ぼくは後方三十メートルほどにまで吹っ飛んでしまった。この三十メートルのうち、二十八メートル分は風のせいだ。ぼくは世界の果てで風を作り出しているという巨大な天狗の姿を思い浮かべた。せめて空想の中で一発殴ってやろうと思ったのだが、あまりに背たけが違いすぎてできなかった。天狗は鴉よりも大きかったのだ。 羽は、食べるとほのかに甘く、そしてわずかに辛みがきいて、なおかつどこか酸っぱく、そして非常に苦いのだった。それは空をゆうゆうと泳ぐ鯨のように勇壮な味だった。「うん、美味いよ」「そうかい。そりゃよかった」 ぼくは一本あっというまに食べてしまって、おまけにもう一本そっくり腹におさめてしまった。「ちょっと食い過ぎたかな」「なに、かまいやしないさ。どうせたくさんあるんだ」「鴉萌え」 ぼくは鴉の好意に感謝しながら、満腹感とともにおとずれる気怠い眠気を楽しんでいた。そしてある種の心地よさを枕にして、やがて深い眠りに落ちていった。 ○ 目覚めるとそこは夕暮れだった。その赤色はどこまでも深く、強烈な色彩でぼくのこころを昂ぶらせるのだった。「よう、起きたかい」「起きたよ」「んじゃあ、尾羽のほうに来てみろ。珍しい人がいるぜ」 なんだろう、と不思議に思いながら尾羽へと向かった。ここ数十年来客などというのはなく、ぼくはこのまま鴉とともに笑い、ともに泣き、そしてともに死んでいくのだ、とそう信じ込んでいた。が、どうやら違ったらしい。 尾羽へとつくと、視界一杯の赤い太陽を背景に人影がひとつぽつんと立っていた。「誰だい?」 人影にたずねた。「わたしです。姉さんです」 それは姉さんだった。腰まで伸びた長い髪、釣り目がちな青い目、肉感的なくちびる。それはたしかに姉さんだった。「けれど姉さん、あなたは火星に移住したのではなかったのですか?」「移住しました。むこうは大地もあって、親子丼も食べれて、空気はないけれどとてもいいところですよ。わたしはあなたを連れ出しにきたのです。つまり、一緒に火星で暮らさないか? ということです」 姉の背後にはおおきな(ただし鴉ほどではない)宇宙船があって、それに乗れば火星になど楽々ついてしまいそうな気がした。火星にさえ住むことが出来れば、ぼくは毎日親子丼を食べることができるし、鴉ではない普通の人間と普通に会話することができるのだった。もしかしたフジヤマだって見ることができるかもしれない。いったい鴉と比べてどちらが大きいのだろう。それはとても興味のあることがらだった。「けれど、ごめんなさい、姉さん。ぼくはまだ天狗の野郎を殴っていないのです。そういうわけでまだ火星には行けないのです」「あら、残念だわ。でもいいの。あなたがそう考えるなら、そうするといいわ」「ごめんさい」「何度も謝らないの。じゃ、わたしはもう帰るわ。風も強いし、夜も近いしね。でも心はいつもあなたの隣にいるから。それだけは忘れないで頂戴ね」「覚えておきます」「いい子ね。愛してるわよ」 姉さんは額にキスをして、宇宙船に乗り込んでいった。それが火星へと飛んでいくのをぼくはじっと見つめていた。ぎらぎら輝いてとても立派な宇宙船だった。あれをチャーターするのに一体いくらかかったのだろう。きっと莫大な資産が必要なはずだった。 ごめんなさい、姉さん。ぼくはもう一度謝った。すると、キスされた部分が甘く香ったような気がした。首をふった。姉萌え。ぼくは謝るかわりに精一杯の好意をむねにいだいた。それは宇宙だった。その時、ぼくは世界は萌えでできているのだと悟った。姉萌え。これから一生になんどこの言葉を用いるのだろう。記録しておく必要がある、とぼくは思った。たとえいつか忘れられてしまうのだとしても、きちんと書き留めておくべきなのだ。いずれ商人からペンと紙とを買わなければならないな、と思った。 ○「あれでよかったのかい?」 背中にまで戻ると、鴉が聞いてきた。「ここにいたらずっと親子丼は食べられないままだぜ」「やれやれ」 ぼくは首を振った。「べつにいいさ。きみの羽のほうがずっとずっと美味いんだ」 空はいっぱいの夕焼けだった。この世すべてをつつみこんで、真っ赤な愛情で燃えさかっていた。ぼくは鴉とともにいつまでもその赤色を眺め続けていた。空萌え。
部室のソファに腰掛けながら、『覚悟のススメ』という漫画を読んでいた。 土曜日だっていうのに遊びに行かずこんなことをしているのは、金曜日の部会のあと、たまたま手にしたこれが面白かったからだ。バイトしているわけでもないし、クラスの友達とは反り合わないし、基本的に土日はすることがない。 休日のサークル棟は静かだ。人の気配がしない。部室にある時計が、コツ、コツと秒針を刻む。自分がソファのうえで身じろぐ音とページをめくる音が目立つ。 どれぐらい時間が経ったのか分からなくなってきた頃、がちゃり、と部室の扉が開いた。見ると、黒っぽい服を着たもじゃもじゃ頭の男が立っていて、ていうか同期の田中が立っていて、私と目が合うと、「親子丼が食べたい」 と言った。 田中は片手にトラの穴っていう同人誌ショップのビニール袋を下げていた。私は読んでいた漫画を机に戻して、時計をちらりと見た。昼の一時を少し過ぎたくらいだった。今日は学食は開いてない。「天神に寄ってきたんだったら、どっかで食べてくればよかったじゃん」「いや」 と彼はいって、私の隣に腰をおろした。「食べたいって思っただけ」「だったら、」「お腹へってなかったし」 そういって、彼は視線を机に向けて、私が読んでいた漫画のタイトルを確認した。それから目を細めると、ちょっとだけ驚いた顔をした。「まじか」 と言った。「なによ」「・・・こういうの読むの?」「引かれるのは何となく分かるけど、あんたに言われたくないんだけど」「姉萌えは、ロリコンとかに比べたら少数派だけど、異常ではないさ。でも、これ」そういって田中は机のうえに置いた漫画を手にして、真ん中ぐらいのページを開いて、「グロいっていうか、危ないっていうか、国粋主義っていうかさ。香ばしいよ」 覚悟のススメは、青年が裸になったり、内蔵がはみ出たり、世紀末だったりする。たしかに日頃から、お姉ちゃんに甘やかされたいって言っている田中に比べたら、気持ち悪いかもしれない。でも、今日だけだ。「そうだけどさ、たまにはいいのよ。それにちゃんと面白いし」「そうなんだ」 彼は何となく手にしたままの『覚悟のススメ』の最初のページからパラパラと流し読みして、はい、と私に返した。それから本棚に目をやって、クッキングパパを何冊か手に取ると、読みだした。私もならうように、続きに目をとおした。 しばらく無言のままでいると、田中が急に、「ジャパニメーションっていうけどさ、そんなに持て囃されるものかな」「なによ」「それもアニメ化されているじゃん。なんかそれって、誇れるものかな、とね」「私が決めることじゃないから、どうでもいいかな」「それもそうだけど。ああ、お腹すいてきた」 そういうと、彼はクッキングパパを本棚に戻して、立ち上がった。私のことをじっと見下ろした。「親子丼でも食べにいく?」 と私は田中に聞いた。田中は、「行こう」 とうなずいて、歩き出した。私のそのあとに続いて、部室をでた。 サークル棟をでる。よく晴れていて、空が宝石みたいに青い。何となく、田中の隣にいき、並んで歩く。田中は一瞬だけ私に視線をむけると、彫像になったみたいに顔を前に固定した。少しだけ頬が赤くなった。 くすぐったいような気持ちが胸の底にうまれて、田中の手を握ってみた。すると、田中の顔はますます赤くなった。くすぐったさに耐えきれなくなって、私は笑いだして、田中の手を放し、「大学の裏に、どんぶり屋さんがあるんだけど、知ってた?」 と私は彼に聞いた。
早春の堤防を歩いていた。 昼となって多少は気温が上がったものの、やはりまだ肌寒い。先日降った雨のため、河の水嵩は高く、黄土色の水がいきよいよく流れていた。せっかく気分転換に散歩に出たというのに、春の訪れに気分を解すとはいかないようだ。冷えた指先にかゆみを感じ、自販機でホットの缶コーヒーを買っては、手で揉みつつ暖を取る。ああ、寒い、などと誰にでもなく呟いていた。 歳を取ったものだ、などと今更己の有様に戸惑うことはないが、自分が今どんな格好、どんな仕草を今しているのかと思うと、苦笑を禁じえなかった。どうも最近自分というものに小慣れすぎている。 ええい、と思った。 私は缶コーヒーを一気に飲み干すと、甘ったるい息を吐く。そして冷たい空気を盛大に飲み込み、顔を上げる。せっかくここまで来たのだから、普段歩いていかないところまであるこうと思い立った。 普段使わぬとなり町の橋の下まで歩いた時、私はある姉弟を目にした。 二、三歳だろう幼児が小学校低学年ほどの姉らしき少女と手を繋ぎ、なにやら楽しそうに会話をしている。よほど姉が好きなのだろう、幼児は私にはいささかまぶしいほどの満面の笑みを浮かべていた。「アネモエ、アネモエー」 え、と思った。 幼児が姉にいったい何を言っているのかと聞き耳を立てていたとき、確かにそう聞こえた。 姉萌え、姉が極めて好きであり、姉に子猫をみたときに感じるような心がきゅうとする感じを覚えるということだろうか。時代も変わった、と私は思わざるをえなかった。若者がどんな言葉で喋ろうとしったことではない。しかしあんな年端のいかぬ幼児までもが、萌えだなんだと言うとは。 しかし私はそれが勝手な思い込みだと気づく。 姉弟が立ち止まって見つめる先に、ある花を見つけたのだ。 アネモネ。 まっ紅な花弁があたりを威嚇するように花開いている。 どうしてあの子がアネモネなどという花の名前を知っているのか。おそらく花が好きな姉から教わり、それを自分はちゃんと覚えている知っていると自慢したかったのだろう。多少のいい間違いを含みつつも。 私はかの有名なジャパニメーションの巨匠の作品の中で、饅頭みたいな顔をした幼女が、とうもころし、とうもころし、と騒いでいたのを思い出す。子供というのは、観察していればあのような言い間違いを事実するものらしい。「たかし、偉いねー」 姉にそういわれて満足したのだろう、幼児ははにかむように、誇るように笑みを浮かべていた。 ーーーーーーー ええっと、この後アネモネの花言葉と絡めて鴉を出そうかな、と思ったのですが、ここにてタイムオーバー。ごめんなさいー。今回めちゃくちゃだなー。来年だー、来年。
三人の男が森を歩いていた。そして、その先頭を歩く篠崎ハヤトは参っていた。というのも、後ろを歩く二人のクラスメートの会話が、あまりにも不愉快だったから。「つまり、けい《ピー》の面白いところは、あまりにも日常すぎるところなのデス。あまりにも日常デ、それが楽しいのデス」「いやいや、けい《ピー》はアニメによる成功だって。特に第一期のOPはよかったです。二期は私的には少し残念だな」「けい《ピー》に限らズ、二期に絶望する人は多いデス。絶望といえば、絶望《ピー》は面白かったデスガ、ほぼ同じ内容の勝手に《ピー》がアニメ化しなかったところをみマスト、ジャパニメーションにはやはり女の子の多さが必要になってくるのデショウネ」「さっきからピーピーうるせぇっ!」 金髪碧眼、日本語ぺらぺらのエセ外国人、国籍はフランスなのに名前はトーマス。 もう一人は隼人と同じ日本人、鈴木二郎。 二人は先ほどから、ずっとアニメの話をしているため、効果音がずっと鳴り響いている。「なら、隼人も一緒に話マショー。隼人はハ《ピー》が好きなんですよね。おっと、効果音が入ってこれだけだとわかりませんか? 涼宮ハ《ピー》ですよ」「知るかっ! てか、俺はアニメなんて見ないって言ってるだろ!」「またまた、入学式のあいさつで、『普通の人間には興味ない』なんて言うのは、ハ《ピー》にゃんファン以外考えられないって。あそこまで堂々と言える同士はめったにいないよ」 後から聞いた話だが、「普通の人間には興味ありません」というのは、とあるアニメのヒロインの名セリフらしい。「言っておくが、俺は本気で言ったんだ。優秀な魔術師以外に興味ない。俺に近づくなって意味で言ったんだ。そこにお前たちが近づいてきたから優秀な魔術師だと思い、仲間になったんだ。なのにお前らは――」「日本人の男性は姉萌えと妹萌えに分かれマスガ、二郎はどちらデスカ?」「僕はやっぱり妹萌えだね。俺い《ピー》は全部ブルーレイに焼き付けて自己編集バージョンとノン編集バージョンとわけてるよ。あと、DVDは予約済み」「さすがデスネ。私はお金がないのでブルーレイだけデスガ、いつか全部そろえてみせマス」「まぁ、金のかかる趣味だからな。でも女に貢ぐよりはマシな使い方だと僕は思うよ。ヒロインは裏切らないよ。桐《ピー》たんは永遠に俺の妹だから」「うるせぇぇぇっ!」 隼人は力の限り叫び、二人を黙らせた。「だから、ピーピーうるせぇっ! てか、なんで学校もこんなシステムを作ったんだっ!」 三人が通う学校は日本にある。が、日本にはない。 という、まるでなぞなぞの問題のような言い方をするが、具体的にいえば、日本の位置からいける別次元に彼らの学校は存在する。 昔から、日本には妖怪が存在し、かぐや姫は月からやってきて、鬼が桃太郎に退治されたりしている。それらの多くは童話と呼ばれるものだが、中には事実のできごとが存在し、それらの話は、別次元に迷い込んだ人間、もしくは別次元からやってきた異世界の住人によるものであるらしい。 明治維新のさい、西洋の文化が伝わると同時に、異世界への行き来を制する手段が伝わり、妖怪や幽霊などの魔と呼ばれる存在は、創作物として人々の間に浸透していった。 そして、時代は流れ、異世界の扉をくぐる人間が現れる。 彼らは居世界の魔と交わる術を持つ者として、魔術師と呼ばれることになり、異世界に居る間、特別な力を使うことができることができるようになる。 それは第二次世界大戦時にさらに研究され、超能力研究として、日本だけではなく、ロシアやアメリカでも調べられた。 戦後、その研究は別の形となって残ることになる。 魔術師専門学校。 本来ならありえないけれども、専門学校だけれども、受験資格が中学校卒業している魔術師としての素養のあるものというものだけれども、卒業すれば大卒の資格が得られ、さらに東大卒という嘘の経歴が得られ、さらに願えば国家公務員になれるという。しかも、彼らは幹部コースにのる。 だが、それが事実である。「というわけで、俺は将来日本を率いていきたい。こんなところで躓くわけにはいかないんだ」 俺は宣言した。それに対し、トーマスと二郎は真剣は表情で、「アニメを見るなら、やっぱりネット環境は必須だけれども、それはクリエーターに対してどうかと思うんだ」「確かに、日本の著作権問題には私も心を痛めてマス」「わかってるな。さすがわが友。さっそく部屋で一緒に過去のドラ《ピー》ボールZのDVDを全部見よう! 改もいいが、Zもいい!」「だから、ピーピーうるせぇっ!」 この《ピー》というのは学校のシステムの一つで、授業中の私語を防止するために取り入れたシステムである。だが、システム管理者の趣味なのか、なぜかゲームのタイトルやアニメタイトル、ゲームやアニメのキャラにしか反応しない欠陥品だった。ちなみに、アニメキャラと同名の生徒の名前を呼んでも鳴らないところを見ると、単なる言葉に反応するシステムではなく思考を読みとり、アニメ関係だと反応するらしい。 そして、その音はひどくうざい。「まぁまぁ、慣れてしまえば楽なものデスよ」「そうだぞ。そもそも、魔術師なんて、オー《ピー》……あ、あれは魔術しの“し”が、武士の士だったか。なら、スレイ《ピー》は……魔導師か」「うるせぇっ! アニメの話題はもうやめろっ!」 何度目かの叫び声に、二人はようやく黙りこむ。そのころ、ようやく森が抜け、岩山が眼の前に広がっていた。「ふぅ、ようやくか。さぁ、材料をとりにいくぞ」 今日の授業の課題は、学校の裏の森(埼玉県と同じサイズ)の中の材料で卵と鶏肉をとって、親子丼を作ること。それがなぜ魔術の修行なのかわからないが、とにかくそういうことで、鶏の住むという山にやってきていた。「ていうか、本当にここに鶏がいるのか?」 隼人がうめくように言うと、後ろで二人が、「親子丼のような簡単な料理を作るタメニ、こんな山に――まるでアト《ピー》シリーズの採取みたいデスネ」「あぁ、面白いよな。俺もエ《ピー》のアトリエから遊んでるよ」「だから、アニメの話題はやめろっていってるだろ!」「いえいえ、これはゲームデス。PSデス」「そうだぞ、これは女の子が錬金術士になって遊ぶという」「黙れっ!」 隼人は二人を黙らせ、山を登ろうとする。岩山であり、道はないため登るのはかなり疲れそうだ「ここは僕に任せて。浮かぶロープ、君に決めた!」 二郎が荒縄を取り出し、山頂に向けて投げる。すると、ロープの端は山の十メートル上の岩にくっつき、さらに二郎が手を離しても、ロープはちょうど地面から一メートルくらいのところに浮かんでいた。まさに浮かぶロープ。「説明しよう! 浮かぶロープの原理は――」「先週の授業で聞いたからもういい」「デスね。私もアニメの説明やイ《ピー》さんの説明は好きですが、授業の話は好きではありまセン」「うぅ、悲しい」 こうして、三人はゆっくりとだが、確実に山を登っていく。中腹にさしかかったところで、三人は休憩をとることにした。「水でも飲みマスカ?」 水差しを持って、トーマスが言う。水差しの名前は無限の水差しといい、出した分だけ水が出てくる。原理としては、周囲の水の空気を集めて水にしているらしい。だが、水蒸気ではなく水の空気を水に戻すため、最初はかなり熱い。「あぁ、助かるよ。それにしても、早く本当の魔術が使えたらいいのにな」 隼人は注がれた水に、氷滴と呼ばれる水薬を一滴入れる。すると、沸騰していた水が冷たい水にかわった。 熱いお湯に一滴たらすと冷たい水に、冷たい水に一滴いれると氷に代わるという薬だ。間違って飲んだら体が凍って即死するか仮死状態になる。 魔術師の一年生は、こういう簡単な魔法道具を使うだけで、俗にいう魔術、超能力の類は使えない生徒が多い「じゃあ、そろそろ鶏を探すか。親子丼作らないとな」 とそのとき、影が動いた。「あれ? あれって鶏?」 二郎が言う。トサカのようなものがみえる「いえ、トカゲデスヨ」 トーマスが言う。確かに、トカゲのしっぽも見える。 そして、彼らの意見がどちらも事実であるから……「やばい、鶏ってこいつのことか! 逃げろ、岩陰に隠れる!」 隼人は駈け出し、近くの大きな岩の陰に飛び込む。二人もそれにならってやってきた。「なんデスカ? 隼人サン」「あれは……コカトリスだ」 コカトリス。トカゲと鶏とをあわせたような姿の生物。架空の生き物といわれるが、異世界に実在し、コカトリスが見たものは岩になるという。「なんで、あんなものがここにいるんだ?」 隼人がうめくようにもらすと、二郎は冷静に「いや、確かに一年生向きだよ。コカトリスはヒトを岩にする。岩になった人は先生が元に戻すことができるから死ぬことはない。だから、ある意味じゃ安全なんだけど、岩になったら困ることが一つある」「なんだ、それは……」 神妙な面持ちで隼人が訊ねる。 二郎は静かに口を開いた。「先生が来るまで三日、僕は明日の深夜アニメの録画予約をしていない」「Moi aussi(ワタシモデス)!」「そんなことかぁぁっ!」 二人の、真逆の叫びが岩山に響いた――それが引き金となった。 コカトリスが、金切声をあげて、こちらにむかって突進してきた。「僕が囮になる! 隼人、作戦を考えてくれ」「おい、二郎!」 言うや否や、二郎が岩陰から飛び出し、別の遠くの岩陰へと隠れる。それで、コカトリスはそちらに向かうはずだった――が、「え、おい! こっちだ!」 二郎が叫ぶが、コカトリスは一向に方向を変えず、隼人二人に向かっていく。「くそっ! 聞け! ご《ピー》様二宮君、まほ《ピー》、フル《ピー》パニック、伝説の《ピー》お伝説」 不快な効果音が山中ひびきわたった。それに反応し、コカトリスが向きを変える。 それをみて、二郎も移動をしながらさらに叫び続ける。「生徒会の《ピー》存、スレイ《ピー》ズ、ギャラク《ピー》エンジェル」「どうして同じ出版社のラノベのアニメばっかり言うんだよ、あいつは」 隼人がうめくように言うが、同時に考えていた。 こちらの道具は浮かぶロープ、氷滴、無限の水差しだけ。「無限の水差しの熱湯をかけるというのはどうデスカ? コカトリスは変温動物ですから有効デスヨ」「いや、かけるまえに岩にさせられる。氷滴を食べさせるのも同じだ」「うぅ、八方塞がりデスね」 三つの道具。これらがあるのには理由があるはずだ。倒せない相手に対して先生は課題を出さない。「……一つだけ手がある」 俺は生きてるロープを反対側の岩になげた「二郎! このロープの下をくぐってこい!」「わかった! 鋼殻の《ピー》オス」 二郎は叫びながらロープの下をくぐる。「でも、こんなロープ、コカトリスなら十分に飛び越えられるぞ」「それでいいんだよ。トーマス、いけ!」「わかりまシタ」 コカトリスが威嚇の声をあげながら、おいかけてきて、ロープを飛び越えた。その着地点も確かめずに。「凍ってる!」 二郎が思わず叫んでいた。そう、水差しの水を地面にぶちまけ、氷滴で凍らせた。 コカトリスはそれに足をとられ、思わずその場に転ぶ。「いまだっ!」 隼人はそこで氷滴を一粒投げた。 それはコカトリスの口に入り、コカトリスは寒さで動けなくなっていく。「よし、終わった」 勝った。そう思った瞬間、コカトリスは悲鳴をあげて、こちらにやってきた。 しまった、こんな近距離で見られたら、「危ないデス!」 隼人が伝えた最後の手段。 透明度の低い氷を作りだす。それは鏡のように光を反射し、そして―― 気付いた時、コカトリスは岩になっていた。「勝った」「ええ、勝ちましタネ」「あぁ、勝ったよ」 勝利の余韻にひたる三人。「二郎、トーマス、助かった、二人のおかげだ」「いえ、隼人サンのおかげデス」「隼人、ナイス判断だ。おかげで録画予約ができる」「じゃあ、チームワークの勝利ということで、コカトリスの卵をさがして、あと肉を――」 隼人は気づいた。「肉……石になってるじゃん」 こうして、三人の最初の課題は失敗に終わった。 一応、コカトリスを倒したことで及第点扱いだが。「俺の課題がぁぁぁっ!」「録画予約間に合いそうだぁぁぁっ!」「よかったデス!」 三人の叫び声は山に響き渡った。 後日談「そういえば、よくあのアニメのタイトルが同じ出版社だとわかりマシタネ」「俺、ラノベだけは読むからな」「やっぱりあなたも仲間デシタカ」「二郎には黙っとけよ」
うっ……。自分で書いていて心が痛いんですけどなんでしょうこの気持ち……。---------------------------------------- オタクに向かって、そいつの専門分野の話題を振ってはならない。すくなくとも、自分がその内容に本気で興味を持っているのでなければ。 これまでの教訓から、そのことは重々わかっていたはずなのに、失敗した。小学生のころから同じようなことで何度も後悔してきているにもかかわらず、だ。俺っていうやつは、なんでこう成長がないんだろうな?「いや、だからさあ。あのマンガはさあ、フェティシズムがいいんだって。本筋も面白いけどさ、出てくるキャラの、指先とかね、足のラインとか、ちゃんと見てる? あんた」 滔々と語る実希子は、目をきらきらさせている。 俺の辟易とした態度は、ちゃんと周囲に伝わっているのだろう、男子からは、同情に満ちた目が投げかけられている。だけど救いの手はやってこない。友達甲斐のない連中だ。 なんで俺ひとりが犠牲者になっているのかっていうと、ものすごく残念なことに、俺とこいつは家が近くて幼稚園時代からの腐れ縁という、いわゆる幼馴染というやつで、そして同じクラスにいま、実希子と仲のいい女子がいないからだ。 去年まではまだ、同じくマンガやアニメの話題で盛り上がれるやつがいて、そいつらと固まってきゃいきゃい騒いでいたのだけれど、クラス替えで離れてしまってから、休み時間のコイツがひとりでマンガなんか読みながら、その手の話題を振れる相手に飢えているのは、よくわかっていたはずなのだった。なんせ、長い付き合いだ。学校にいるときには、無難な話題以外では話しかけないようにしていたつもりなのに、うかつだった。「通りいっぺんにストーリーだけ追ってたって、あのマンガはだめよ。先週号のさいしょに出て来た鴉なんて、なんでもない小道具みたいにしてて、伏線になってたの気づいた? ちゃんとそういう、端々の構図とかね、演出なんかまで丁寧に見てたら、表に出てこない深い裏側がね、ってちゃんと聴いてんの?」「いや、知らねえし」「あのね、もったいない読み方してるんじゃないわよ、ああいうマンガはねえ」「ミキ、ちょっと」 女子の声が割り込んでくる。救いの神かと、ほっとしながら振り返ると、同じクラスの佐々木が、何か本を指でつまんで、にやにやしていた。「これ、あんたのでしょ」 文庫本の表紙は、アニメチックなイラストがつけられていて、そこでは小学生の女の子が、ほとんど半裸で頬を染めている。帯には、兄妹の禁断の関係がどうのこうのと、あまり直視したくないようなアオリ文句が載っていて、思わず目を泳がせた。 それを汚いものでも持つようにつまんで近づいてきた佐々木は、意地の悪い笑みを浮かべている。反対側の手には、書店でくれるような紙製のカバーがあるから、拾った本からはがして中身をあらためたんだろう。「あたしのじゃないし」 実希子がつめたくそういうと、佐々木はわざとらしく眉を上げて、さらににやにやした。「あら、勘違いしてごめんね。だってミキって、こういうの好きなんじゃないの?」 ぜんぜん悪いと思っていない、その小馬鹿にした口調に、カチンときた。 たしかに実希子はオタクで、人の話にはつまらなさそうな態度しかとらないくせに、自分が好きな話になると、相手の気持ちなんて無視して一方的に語り続ける。まわりとコミュニケーションをとる気がないのも、人に冷たいのも、嫌われるのも、こいつにも責任がある。だけど、こういうのはあんまりじゃないのか。人前で笑いものにしてやろうっていうのは。「あのなあ、いくらこいつが救いようのないオタクだからって、いっていいことと悪いことがあるんじゃないのか?」 いって、即座に後悔した。周囲にいた数名から、「なに、杉山君は普通の人だって思ってたのに、コレの仲間なわけ?」というような視線が飛んできたからだ。一緒にするな、といいたい気持ちでいっぱいになる。「そうだよ、それにあたしはどっちかっていうと姉萌えだ!」 胸をはっていうなよ。っていうか、姉っておまえ。「おまえ、そういう趣味なの?」 思わずドン引きしながら聞くと、何が悪いのと、虫を見るような目で見られた。「悪い? ほんものとフィクションの区別がつかないようなガキじゃあるまいし、現実の同性愛者の差別問題を引き合いに出してどうこういう気はないけど、二次元の女の子にときめくくらい、個人の自由でしょ」「いや、まあ、そうなんだろうけど」「いっとくけどあんたが観てるAVだって、親子丼なんて都合のいいシチュエーションはそうそうそのへんには転がってないし、ナースものの看護師だって、あんなもん現実には存在しないんだからね」 ちょっと待て!? 教室の空気が一瞬で冷え切って、周囲が波のように引いていく。「なんで知……じゃなくてあれは兄貴のだって!」「どうせお兄さんのいないときにこっそり観てるんでしょ」「みてねえし!」 周囲から聞こえてくるひそひそ声が痛い。なんでおれはこんな背後から刺されるような目にあってるんだ。 涙目になりながら周囲をみわたすけれど、クラスメートたち、特に女子は、目があわないように、視線をさっと避けてしまう。幼馴染だからってこんな女に、同情したのが間違いだった。次は何があったって、二度とかばってやるもんか。「おまえら、何騒いでるんだ」 担任の荻が入ってきた。とっさに隠しかけたアレな表紙の小説を、佐々木は思い直したように、高々と持ち上げた。「せんせー、こんな本が落ちてました!」 勇者だなこいつ。思わず自分の窮地も忘れ、固唾を呑んでなりゆきを見守っていると、荻の顔が、さっと青ざめた。え? と思っていると、その顔が瞬間的に赤くなる。「え、あ、なんだおまえら。そういうのに興味があるのをどうとはいわないけどな、学校に持ってきちゃいかんぞ」 微妙に棒読みだった。教室中の視線が、荻の顔に集中した。生徒からの疑惑の視線に気づいているのかいないのか、荻は咳払いをしていった。「ともかくそれは、とりあえず先生があずかっておく。持ち主は、あとで職員室にくるように」 生徒たちのあいだで目配せが交わされる。誰がその文庫本を持ってきたのか、荻の顔色を見ていたら、バカにでもわかる。一時間後、校内をどんなうわさが駆け巡っていることやら。「フィクションの世界で妄想を楽しむのは、個人の自由。そうじゃない? 悪いのは現実と混同するバカと、全部のオタクがそういうバカだと思っているバカだけよ」 醒めた口調の小声で、実希子がいった。 荻のおかしなシュミの濡れ衣を、着せられそうになったわりには、荻をかばうようなことをいう。思わず振り返ると、実希子はしらっとした顔をして、授業で使うノートを開いていた。 おれのエロビデオ所持疑惑が、荻の変態シュミ露見騒ぎで紛れてくれないだろうかと、そんなみみっちいことを考えていたおれは、思わずちょっと反省してしまった。「変態だろうとなんだろうと、堂々としてればいいのにさ。荻もだけど、アンタもよ」 前言撤回。やっぱりもうちょっと空気読めよてめえ!
「お母さん。今日、鮭フレークといくら、買ってきて」 焦げた黒い部分を隠すように、トーストに大量のバターを塗ったくりながら、高校生の娘は呟く。「珍しいわね、日向子。料理でもするの?」 まぁ、という軽い返事に、明日は空から魚が降ってくるわね、と更に軽い口調で返す。日向子の反応を横目で窺うも、娘は表情一つ変えることはない。日向子の代わりに、私の戯言を息子が拾う。「姉ちゃんだって、料理くらいするよな。勿論、可愛い弟のために」「ブタは共食いでもしてなさい」 その言葉に、陽太の上向き加減の鼻が、ヒクヒク動いた。それを見た日向子の眉間の皺も、ピクピク動く。そしてクスクス笑う私。 微笑ましいとは言い難い光景であるものの、こうして私達の朝に、僅かだが光は差し込んでいく。「ほら、急いで食べないと、また遅刻ギリギリになっちゃうわよ」 やべぇ、もうこんな時間。陽太がそう叫び、口にトーストを詰め込む。同時にスープをすする音が、やけにけたたましく聞こえた。 ○ 仕事が終わり、日向子に頼まれた買い物を済ませ、家に帰る。十年以上経った今でも、この静かな空間に慣れることはない。 時計を確認すると、まだ五時過ぎ。早めに仕事が終わったため、夕飯の支度をするには少し早い時間である。『独りが怖い そんな君とふたりひとりぼっち』 気晴らしにつけたラジオが吐くのは、センチメンタルな音楽だ。私は、その旋律に身を委ねるように、ソファに寝転がった。 ○ 目が覚めると、毛布がかかっていることに気がついた。時計の針は、ちょうど7時を指している。寝ぼけ眼で辺りを見回すと、鴉色の長い髪を束ねた日向子が、台所にいるのが見えた。「日向子」 呟くように名前を呼んだが、日名子は振り向かない。もう一度名前を呼ぼうと、ソファから起き上がろうとすると、母さんと、後ろからもうひとつ声がした。「今は姉ちゃんのこと邪魔しないであげて」 息子の言葉の意味がわからず、私は首をかしげる。すると陽太は、無理矢理私を二階の部屋まで引っ張って行った。 そしてしばらく沈黙ができ、事態を飲み込めずにいると、突然陽太が正座をして、喋り始めた。「母さん、今まで俺ら三人で頑張ってきたよね」 久しぶりに聞く自分の息子の真剣な声色に、私の背筋がしゃんとした。「母さんは仕事を頑張って、姉ちゃんは、勉強とバイト両立させて。俺さぁ、まだ中学生だから何もできないけど、高校生になったら姉ちゃんみたいにバイト頑張るから」「急にどうしたのよ。そんなこと突然言い出して……」 改まって物を言う陽太に、中学三年生の息子の成長ぶりに驚きながら、上手い言葉が見つからず、返す言葉がなかった。「母さん、今日は父の日だよ」 ○「お父さん。元気にしてるかな。今日はね、お父さんのために親子丼作ってみたの。親子丼って言っても、お父さん、卵アレルギーだったから、鮭といくらの海鮮丼なんて作ってみちゃった。お父さんのご飯のおかずは、いつも鮭フレークだったよね。味気ない病院食に、たくさん鮭フレークかけて。日曜日の夜、面会に行く度、それだったから、私覚えてるよ。あ、そうそう、あの小さいテレビで家族全員で、サザエさんを見てたのもいい思い出かな。私達もさ、あのアニメみたいに、いつまでも親子でいられるよね」 高校二年生になる娘も、仏壇の前では真剣ながらも幼い表情をしていた。ぽつりぽつり、と零れる言葉の端々に、あどけなさが感じられる。「私、お父さんがいなくなってから、もっと無愛想になっちゃってね。そんな私を、陽太は笑わせてくれるし。お父さんの代わりになろうとしてるのかな。姉ちゃん、姉ちゃんってうるさいの。だんだんお父さんに似てきて、さ」「お母さんも、仕事頑張って、私達を養ってくれてるよ。あたしが、いくら冷たく接してもね、お母さんはいつも優しいんだ。やっぱりお父さんが好きになった人はすごいんだね。ね、お父さん。私もいつかあんな人になるから、そこでずっと見ててね」 仏壇に絶えず喋りかける娘の姿に、私は泣かずにはいられなかった。ぽろぽろと泣く私の肩を、息子は強く抱く。 私達はこれからも、愛するあなたに見守られながら、この世界を生きていけるような気がしたのです。 PCのフリーズ時間を抜いても15分オーバー……かな。
感想です。>弥田様不思議な雰囲気ですが、なんか、暖かい話のような気もします。こういう話はセンスが必要ですから、弥太さんの才能がうらやましいです。空萌えとか、鴉萌えとか言ってるせいで、姉萌えといっても、ぜんぜんやらしい感じがしないのがまたいいなぁと思いました。また、こういう小説楽しみにしてます。>tori様青春ですね。どこにでもありそうな、だけれども物語として成立する青春話。まっとうな青春を送れなかった私としては、とても読んでいて気持ちのいいものです。ただ、私自身が覚悟のすすめの内容を知らないのが少し残念でした。>片桐様 最初はあれ? これって本当に片桐さんの作品? と思いつつ、後半で、あ、やっぱり片桐さんだ、と思う作品でした。いや、いい意味で。 序盤の空気、とても綺麗です。片桐さんが本気でシリアスムードだったり青春だったりする話を書いたらと思うと、いろんな意味で身震いします。>HALさん 笑いました。私もどちらかといえばオタク資質があるのですが、やはりその専門の人の話にはついていけませんので、最初の一行には、うんうんと頷きます。 タイトル&最後の一行のコンボが良かった作品ですね。>千原葵さん 暖かい話は三語では希少種です。 ということで、暖かいですね。涙がほろりです。 親子丼で、素直に鶏と卵にせずに海鮮丼に行く人は、言葉を器用に操る才能があるとおもいますので、これからは言葉の魔術師と名乗りましょう。 と、普通のと不純の親子丼しか思い浮かばなかった自分をフォローしました。 >自作 長すぎ! 一時間で書ける量じゃない、て仰って下さったかたもいらっしゃいますが、残念ながら、そのしわ寄せがきているのか、かなり文章が雑になっております。 さて、私はこの作品の中に出てくる作品のタイトル、ほとんど読んでないので笑いふられても困ります。
ちょ、なんでこのお題で普通にシリアス話がちらほら混じってくるんですか。な、なんかすごい悔しい。どうしてわたしはすぐ諦めたんだろう……!>弥田様 ちょっとマジックリアリズム的手法なんでしょうか、でかい鴉の背中に乗って空を飛んでいる、という非現実的な設定の中で、細かい描写が生々しいのが、なんともいえない不思議なてざわりです。>tori様 覚悟のススメ、未読なのですが、ちょっとググっただけでも濃そうな画像が。一回読んでみたいような。 淡々としているようななんでもない風景なんですけど、セリフにせずに飲み込んだところから、かすかに滲む影、みたいなものが、いいなって思いました。うーん、どうやったらそういう行間の空気を出せるんだろう……。>片桐様 舌足らずな幼児が可愛い!(ショタコン的な意味でなくて)ちっちゃい兄弟が仲良くしてるところって、すごい癒されますね。 ジャパニメーションの強引さに思わず笑いました。 贅沢をいえば、主人公の、年寄り臭さみたいなものの描写が、もうちょっとほしかったかなって思いました。>ウィル様 脅威の文章量に愕然。なんで一時間で起承転結つけてこれだけの量がかけるんですか!? 銀魂やガンパレみたいな(ってたとえが偏ってますが)もし「~だったら」というパラレルワールド的SFファンタジーですね。 悪ノリの加減が、ああ、三語だなあという感じでなんていうか嬉しくなりました。そして懐かしいラノベのタイトルにもニヤリ。>千坂葵様 わっ、けなげ……! ちょっと表現が露骨で、直球で泣かせにきすぎているなっていう感じはしたのですが、しかし、一時間制限下でのことですもんね。肉付けが少なめになるのはしかたないかなっても思います。 それよりこういう感動ものをストレートに書けるということは、大事な資質と思います。いいお話でした。>反省文 ……穴を掘って埋まろうかと思いましたが外が雪で寒いのでやめました。いたい、こころがいたい!(←なにかがトラウマらしい)