冬のある日のこと ( No.1 ) |
- 日時: 2010/12/25 23:15
- 名前: マルメガネオヤヂ ID:yJKoWFMs
サーチライトが暗い土蔵の中を照らす。 凍えて麻痺しそうな手は冷たくすでに血の気を失っている。 突然だった。その停電は。 石油ファンヒーターも止まったし、単なる巻き芯式のストーブは壊れていて使えない。 踏んだりけったりだ。 と、ぼやきながら私は暗い土蔵の中を物色する。 土蔵の中には、昔の今では使われなくなった物が山積していたりする。 その中から、豆炭こたつを発見した。 誰のため、とは言わないが子供の頃の暖房器具といえばこれだった。 埃まみれのこたつを何とか引き出し、燃料である豆炭を探す。 あった。しかし、袋はネズミに齧られてボロボロ。果たして中の豆炭に火が着くかどうか怪しい限りなのだがそう言っていられない。 とにかく寒さを凌ぐにはこれしかないのだ。 こたつを引き出し、豆炭を発見した頃、停電は復旧していた。 そして、ガタガタとまた土蔵に収める。 今回は活躍しなかったが、次回いつになるかは分からない。ただ役に立つことはあるだろう。 それが何事であっても。 ちょいとくたびれた顔をして、絡まった蜘蛛の巣を払いのけて家に入ると、石油ファンヒーターの温風がやけに熱く感じられた。
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