天使ちゃんマジ天使。 ( No.1 ) |
- 日時: 2011/03/07 23:53
- 名前: 弥田 ID:DUEu0/u2
ふと窓の外に目をみやると夜の暗闇に白い粒子が降り注いでいる。月光に照らされ蒼く透き通ったその物質は、風にやられて縦方向に横方向に、統一性もないまま回転している。 雪か、ふむ。 呟いて肩の力を抜いた。眼球の疲労感をどうにかして追いやろうと瞼を何度も開け閉めし、ついで周りの筋肉を指でほぐしてやる。ため息をつけば、くすんだ色合いをしている。深呼吸がしたくて窓際に寄った。ちゃちなアルミサッシを開けると、安っぽい音と一緒に冷たい空気が流れ込んでくる。目を閉じる。風がたんと吹き、一杯の雪が全身に、いや。 雪ではなかった。ならばなんだ。私は目を開ける。途端、天空になにかひどく怖ろしい気配を感じ、視線をめいっぱい下に、つまり両のつま先に向けた。床には綿毛が積もっていた。明らかに見覚えのないものであった。なればこそ、それは空を覆うあの白い粒子に違いないのであった。耳をすますと音がする。それを形容する術はもたない。すり潰すような、引き裂くような、断末魔のような、溶けるような、不可解な音。 もう限界だった。反転し背を向け逃げ出した。パソコンの前へすがりつくと、何事もなかったかのように仕事の続きをはじめた。窓はまだ開いている。漂う綿毛が部屋を満たす。私はひたすらにキーボードをタイプしている……。 しばらくたってふいに気付く。月光の色が変わっている。流れる血のように紅い。その薄明かりに濃密な手触りを感じる。深紅は蛍光灯を塗りつぶすように差しこみ、白と赤の層に境界線が出来ている。なんの気もなしに後ろを振り向いた。開いた窓の向こうには工場がある。煙突から出ている煙が月光に照らされてひどく紅い。さらにその上空に人影があった。それは天使であった。対の翼がはためいていた。綿毛も音もそこから湧いてきていた。あれはなんだろう。不思議と恐ろしさは消えていた。なにもかもがどうでもいいような、しかし投げやりというのでもない、静かな心地であった。私の視線に気がついたのか、天使が微笑みかけてきた。彼(もしくは彼女)とはかなりの距離があったが、笑った、とはっきり分かった。薄いむねにちいさな乳首が可愛らしかった。 ちくびーむ。私はいった。 ちくびーむ。天使はジェスチャーで返してくれた。わずかに恥じらいがあったところを見ると、あるいは女性なのかも知れない。そう思った。 へい、おまんこしないかい、べいべー。 オーケー、いいわよ。 やはり女性だったらしい。彼女はふんわりと綿毛のように私の部屋へと降り立った。 電気、消してくれる? おやすいごようさ。 スイッチを押すと蛍光灯がぷっつり消え、紅い光が天使の身体を照らしている。陰影の加減が美しく、綺麗だ、と思った。 ちくびーむ。もう一度言った。 ちくびーむ。その動きにはやはりどこか恥じらいがあった。私は笑い、彼女は笑わない。綿毛につつまれながらキスをした。メロンの甘い味がした。
------ 久々にちょっと固めな文体(当社比)に挑戦したのですが、どうにもこうにも上手くいきませんでした。後半は完全にヤケはいってます。ごめんなさいんぽ。
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