カバードピーク
カバードピーク 中里 与太郎


1日常
ああ、しょっぱい。現実はしょっぱい。
今朝、起きてガンのママンの隣で飯を食い、ヒゲもうちょっと綺麗にそりなさいよと怒られる俺は43歳の失業者だお。十年前にうつ病を発症し、何度も何度も休職を繰り返した底辺公務員。すぐ復職できるのが取り柄だったが、この度の休職はずいぶん違ったお。
なんとなく戻れなかったお。気分が悪くなったお。次第には職に行くのがこわくなって、ついには辞めてしまったお。
パパンとママンは猛烈に怒ったお。とりあえず中小企業診断士の資格取ることにしてごまかしてるお。

メシを食うと薬飲んで、もちろん抗鬱剤だお、目薬をさすお。緑内障の目薬だお。
ネットやって、御手伝いの茶碗洗いして、散歩に行くお。今日は彼女にできる可愛い女の子に出会えるかなと思ったけどやっぱり出会いはないお。

ペットボトルの水を買って飲んで帰ってきたお。憂鬱だお。中小企業診断士の企業経営理論の過去問やったがまるでわからんお。仕方がないから、ノートにまとめたお。ネットやって、ダランとしてガンのママンの愚痴聞いて、憂鬱になって、
またネット、寂しく、小説投稿サイト「作家でごはん」で感想つかない自分のクズ作品を読むお。


「若い頃うつ病にかかり、印刷営業、公務員と全てダメで失業者になり中小企業診断士を目指すが別にそんなものにはなりたくないとふときづくお。
。せめて夢を小説の中でみようと。現実逃避を小説で書き始める。
例えばガンの母親が陽気にうなぎを食べて死んでいく姿。
例えば2chメンヘルサロン板の鬱スレのみんなが治って幸せに働き恋する姿。
例えば、自分が作家になって好きな人と恋する姿
どれもありえない。現実はしょっぱい。」


仕方がないお。これが現実なんだお。
散歩に行き、出会えず、嫌な診断士の過去問を解き、適当にネットやって原稿を書きためる日々。自殺した方ましだけど。めんどくさいから死なない日々。




2事件 ある日新人賞に募集したら受かるお。


まあそんな感じで試験には落ち。順調にフリーターにもなれず、代わりに小説書いてたお。取り敢えず二千枚、小説を書いたお。そのせいか、ある日ふと神が降りてきて、自分でもない誰かが小説書いたような気がしたお。実は俺の正体は村上春樹だお。

これはいけるかもと新人賞に応募してみたお。
一次選考通過
2次選考通過。
最終選考通過。
受賞。

作家だ。やった。俺は信じられずとりあえずソープでぴゅっと抜いたぞ。
ああ栄光の日々。本屋に俺の本が並ぶ。

自分で10冊買ったお。
金がないので9冊ブックオフに売ったお。
何やってんだ。あはは。

だがそれはカバードピークに過ぎなかった
全然小説は売れず。
俺は鬱に悩まされるお。
次でおしまいですから。
出版社に冷たく言い放たれるお

俺は決意するお。小説を学ぼうと。


3だがそれは苦境の日々だった。

そもそも小説の書き方なんか俺は知らんお。
書いても書いてもダメなので
マスをかいてかいて仙人になろうとしたら珍宝から血が出たお。

小説はかけず、俺はクビを釣ろうと決意するお
まあ、死ぬ前くらいはママンに言われずともお掃除だお。
遺書をメールで書くお。

メールチェックもしない俺だが、ひさびさにチェックすると、ヤマダ電機の大量メールに混じって、村上春樹小説添削講座の知らせが。

村上春樹小説添削講座?


はて。





4、助けだ。

「はいほー、村上おじいちゃんだよ。
チッチッチ
すぐに諦めてはいけないぜ。
世界はロバのうんこだ。
ノーベル賞がわりに、一番ダメそうなやつにメール送ります。
任せなさい。
ベストセラーなんてすぐかける。僕はノーベル賞もらえないけど(≧∇≦)。」


本物かはわからない。

でもこの講座に俺はかけて見ることにしたお

何々、プロットの作成方法があって、背景、日常、事件、決意……
本格的だな。これはいけるかも。

5成長工夫する自作自演
つまりはこういうことだったのか、背景、日常、事件、決意、苦境、助け、成長工夫、転換、試練、破滅、契機、対決、排除、満足。これが村上春樹プロット術。

俺はそのプロット術で何作も書いては捨て、書いては捨てしたお。
そうやって推敲に推敲を重ね。ついに自信作ができたぞ。

「ボッキー」。正常位ができない男が、スクワットを繰り返し、ついにSEXする感動巨編。
出版社にこれでどうだと叩きつけたお。

7 転換
いいですね。編集者の田崎さんがびっくりしてたお。田崎さんは会社のお荷物で、
それで久々の仕事で、俺の小説の担当になったお、普段はリストラ部屋で過ごし、
決算期に会社を逃げ出したこともあるお。
本はじわじわと売れたお。
「ボッキー」
このタイトルには誰もかなわないお。
本は百万部売れた。

ついにベストセラーを出し、ファンの子からメールたくさんもらったお。
返事を書いてたら。やけに可愛い子からファンですと写真付きメールがきたお。
メールをやりとりして、付き合い始めたお。
まともに女と付き合ったことがなかった俺は彼女に夢中になったお。
彼女が欲しいものを買い。彼女のためにスクワットで正常位を覚え、彼女が入信する宗教に入信し。たくさんの書類にハンコを押したお。彼女は、うつ病者が教祖の宗教信者で、普段はリストラ部屋にいるお、将来の夢は女優で、そのためにはなんでもするというお。

二作目。ボッキー2も成功。

彼女のためにまたハンコを押したら
「死なないでね」と書き置きして彼女が消えたお。。借金の督促状がきて
携帯電話がプルプルなりだしたお。



8、破滅 抗鬱剤をぽりぽりとかじる日々。

今日、ママンが死んだ。が、葬式にもいけない。なぜなら、鬱で、動けないから。
借金、百億ってなんですかお。じ、自己破産するお。だが体が動かないお。
飯を作れず、何も食えず。マンションを引き払い。
実家で泣いてたお。
パパンに自己破産だけ頼んだお。
死にたい。
俺は本当に自殺計画を立てたお。
ひっそりとした山で首を吊るお。
だが夜中に決行するとき。
俺は人はなんで生きるのか考えた。教義その一
俺はブツブツ呟いてメモし始めたお。




9契機、俺の小説で嫁を探す。


再び小説を書き出す。
散歩を始める。
ペットボトルは買わない。水は水道水。
村上春樹小説講座と連絡不通。だがどうでもいい。
図書館でシナリオの書き方をむさぼる。
なるほど13フェイズ二重がけか。
俺は日々図書館で、小説を学んだ。
通う電車でガソリンを被った男が目の前で火だるまになった。ち、うちあわせ通りだお。
かろうじて俺は助かったが、
俺はトラウマと戦うお。
かかりつけの医師がアドラー派だった。
トラウマなんてないんだ。
目的が全て。
だめだこりゃ。余計に悪くなる。
転院して、まともな治療を受ける。

徐々に小説を書き
「俺は死を超える価値を探す」
を書き上げた。

10対決
電子書籍しか出せないが売れるか。
俺はブログで今までのことを書いた。SEOを工夫し、ネットで上位に検索させ知名度を上げ、なぜ俺が生きるのか書き続けた。あの焼身自殺事件でも有名人になっていた俺は、ついには電子書籍でベストセラー、「俺は死を超える価値を探す」も本当に自信作だった。自己破産で整理できない借金を返し、困難を排除。

11満足

「映画化されて女優と結婚する。」
「現実になったのね」
「ここから見えるあの山が自殺しようと思った山」
「ねえ、もうそんなことはしないで」
「ああ、二人で生きていこう。俺は死を超える価値をきっと探す。
この残された人生で。何を犠牲にしても。田崎さん」





中里 与太郎
2015年07月05日(日) 16時12分22秒 公開
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No.2  中里 与太郎  評価:--点  ■2015-07-06 19:53  ID:GiORvcoNz9o
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ゆうすけさま
ご感想ありがとうございます。
おというのは、2ch方言なのですがわかりづらかったですか。
考え直す必要がありますね。
基本的にこのようなメンタルを病んだ人間がおをつけて話し合う。
そこしか居場所がないというのはリアルな出来事です。
でも方言ですから、逆に購買層には使わずセリフでの見つかったほうがいい。
地の文では普通の日本語を使ったほうがいいのかもしれませんね。
リアルとリアリティは違う。学ばせていただきました。
この話は丁寧に作り込んだものではなく。シナリオ理論で13フェイズというものがあり、それの二重がげを試してみただけです。作者の説明をしなかったのも全く印象を持たずに読んでいただきたかったからです。
実は丁寧に小説を作る作法はさっぱり知りません。今勉強しているところです。
そこを勉強の上、もう一度、なんらかの投稿をさせていただくかもしれません。
ただしある種の勢いを感じていただいたのが本当ならば、それは13フェイズが本物なのでしょう。
拙い作品ですがお読みいただき、非常に参考になりました。ありがとうございました。
描写等勉強してもう一度書いてみます。

No.1  ゆうすけ  評価:10点  ■2015-07-06 16:48  ID:oTFI4ZinOLw
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拝読させていただきました。

私が老いたのか、新しい流れについていけていないのか、語尾にある「お」が意味不明で邪魔な気がします。全体的に投げやりで大雑把な印象です。
数字で11章まで分けてあるのもこの長さでだとぶつ切りな感じで無意味に思います。
43歳の失業者が作家として歩き始める筋書きは面白いと思いますし、充分に勢いもありますから、丁寧に読みやすく書いていただければ私のような43歳(来月で44歳)の読書ファンにも理解できると思います。
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