ミッキーマウスマーチ
 彼女と別れたのは三日前の事で、彼女の浮気が発覚したからだった。
 三日前は彼女の誕生日。僕は愛する彼女の為に、良い彼氏でいる為に、サプライズで彼女の家にピアスを持って訪れた。インターホンを鳴らすが彼女は出なくて、僕は彼女が留守であると思い少し落胆したが、なんとなしにドアノブを捻った。するとすんなりとドアノブは回り、もしや彼女は寝ているのではないか。どれ起こしてやろう。とドアを開いた。ドアの奥には暗闇があった。
 「おーい?おーい?」
 何度か暗闇の奥に眠っているはずの彼女に声を掛けたが彼女からの返事はない。
 「入るぞー」
 と僕は暗闇に相応しい声量で言い、彼女の家へと入って行った。幸い、愛する彼女の家だから、暗闇でもなんとなく物の位置が把握できる。僕は不安を一切孕まずに軽い足取りで、ミッキーマウスマーチの鼻唄を歌いながら彼女の家の廊下を歩いた。
  彼女の部屋の前まで鼻唄は続き、部屋のドアを開けながら僕は
 「やぁミッキーだよ!」
 と裏声で発した。
 部屋は明かりが着いていてベッドの上では、彼女と知らない男が接合していた。二人は接合したまま、交尾を邪魔された犬のように、真顔でこちらを向いていた。接合部分は部屋の明かりに照らされ、二人の体液がぬらぬらといやらしく光っている。
 「ごめん」
 と僕は言うと、ピアスを包んだ箱を持ったままそっとドアを閉じた。そして彼女の家から出て、一人ミッキーマウスマーチの鼻唄を歌いながら、自分の家へと帰った。
 帰りの途中、何十回と携帯が振動したが僕は無視をし、ミッキーマウスマーチの鼻唄を歌った。
 家に着くと飯の準備がされていた。僕はそれを咀嚼した後に、自分の部屋に戻り携帯を開くと、案の定彼女から大量のメールと電話が来ていた。
 「ごめんなさい。さっきのは違うの。無理矢理なんだって。まんこはまだ入れてないから。ね?好きなのはあなただけなの。許しください」
 僕はこのメールを読み終えると、再びミッキーマウスマーチの鼻唄を歌いながら、彼女の家へと向かった。プレゼントのピアスは片手にしっかりとある。
 彼女の家へ着き、インターホンを鳴らしたが誰も出ないので、鼻唄を続けたまま家に上がり、彼女の部屋のドアを開けた。
 またしても、セックスの最中で彼女は僕を認めると、見知らぬ男と接合したまま腰を振りながら
 「ちがうの!ちがうの!ね?ちがうの!」
 と叫んだ。
 その日、僕は彼女と別れた。
 後日、彼女から結婚式の招待状が僕宛に届いた。
 
com
2012年08月29日(水) 05時57分48秒 公開
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No.8  com  評価:0点  ■2012-09-07 17:05  ID:L6TukelU0BA
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>>そうちきさん
意外な好評価ありがとうございます。
僕もデタッチメント好きです。
シュールも。
No.7  そうきち  評価:40点  ■2012-09-06 22:46  ID:oE2tK3DWyuo
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かなり好きです。
村上氏の文脈で読んでしまったのですが、つまりデタッチメントの文脈で読んでしまいました。
傷はつかないけれども。。。とか。
No.6  com  評価:0点  ■2012-09-06 12:51  ID:L6TukelU0BA
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>>蜂蜜さん
そのアイデアは頭にありませんでした。
良いことを聞いた!
なんせ普段小説なんて全く読みませんので、私にはそういったアイデアの浮かぶプロセスの根本すらないです。
今後に生かして行きたいです。
No.5  蜂蜜  評価:30点  ■2012-09-05 19:34  ID:X5IOOPj01FA
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拝読しました。

幸運にも、今のところ僕は、浮気をした経験もされた経験もなく、この半生で、幾名かの女性と交際する機会を経て、現在に至っております。ですが、伝聞によると、(……さすがに二連続、というのはちょっと聞いたことがないですが)、この種の誠に不運な遭遇をしてしまった経験をお持ちの方も世間には少なからずいらっしゃるそうで、何ともはや、心中お察し申し上げます、としか言えない気分です。

僕自身の中では、小説というものは、いわゆる論説や主張などとは異なり、ただただ、「その読書体験の中で、どんな体験をさせて貰えたか」、が肝要であると考えています。「意味」や「主張」を求めるのであれば、エッセイや演説でやれば良い、小説とは、ディズニーランドの中のアトラクションのひとつひとつのようなもので、ただそこには入り口と出口があり、出口を出たときに、お客様(=読者)の一人一人が、たとえそれが笑いであれ、恐怖であれ、悲しみであれ、驚きであれ、何かしらの感覚を感じ取ってさえいただければ、ただそれだけで良い、と考えています(これはあくまで、僕個人の主観であって、一般的な方法論や文学論を論じているわけではありません)。ですので、作者様が感想コメント欄で述べておられる、「特に意味はありません」、という言葉も、僕は一読者として、支持し、共感することができます。

さて、本作品の魅力は、恋人の浮気……それも性交の現場を目撃するという、という生々しさと、その一方であっけらかんに明るいミッキーマウスマーチと極端にドライな主人公である男性との間の、まるで正反対に位置するギャップであると感じました。

ただ、僭越ながらあえて一つだけ本作品へのアイディアを提供させて頂くならば、プレゼントとして登場する品物(本作品においてはピアスですね)に、もうちょっと物語の中で、本筋に絡み合う素材として、何かしらの「機能」を持たせてあげたら、もっと良かったかもなあ、と思いました。
本作では、ピアスは、主人公が彼女の部屋を往復するという「機能」をきちんと担っていますが、もし仮に、ピアス=貫く=男根の象徴、という読み筋を想定してみたとしても、(あくまで僕の個人的な好みからすると)、やや弱い。もう一歩踏み込んだ「何か」が欲しいな、と、読後に感じました。

以上は、あくまで個人的な感想です。
もしお気に召さなければ、どうぞ読者の数だけ存在する感想の中のひとつとして、お気軽にお聞き流し下さい。

僕からは以上です。
No.4  com  評価:0点  ■2012-09-04 14:55  ID:L6TukelU0BA
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>>おさん
ご感想ありがとうございます。
笑っていただけるとはなんとも嬉しいです。
きっと私はこれを彼女にやられると、殺します
No.3  お  評価:20点  ■2012-09-04 14:38  ID:.kbB.DhU4/c
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どうも、こんちわ。
えーと、うぅん、なんというか、
ド直球のメールに吹いた。
まぁ、ここまで露骨にやられた男は苦笑いするしかないでしょう。
でなければ殺しに行くか。
まぁ、ありふれた日常なんですかねぇ。
No.2  com  評価:0点  ■2012-09-03 19:45  ID:L6TukelU0BA
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>>YEBISUさん
とくにこの作品に意味はありません。
最近ディズニーのハロウィンのCMを目にする事が多く、私の頭の中でもミッキーマウスマーチがローテーションしていたので、なんとなく書きました。
とはいえ、ご感想ありがとうございます。
No.1  YEBISU  評価:20点  ■2012-09-03 17:46  ID:hugVebm6UOc
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 初めまして、YEBISUと申します。
一読して、まずは、え〜っと‥、とか想ってしまいました。
内容が在るような無いような、意味が在るような無いような。
ただ、読み終えてしばらくの間、頭の中でミッキーマウスマーチがぐるぐると回り続け、ちょっとだけ頭が、クラっとしました。
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