下痢を漏らす人

 群生するセイタカワダチソウが、黄色い花を、目に痛いほどに咲かせていて、河川敷にあるガラパゴス化した汲取式便所へと駆け込む、下痢を漏らしそうな僕(僕は僕自身を定義するなら《下痢を漏らす人》とする。それくらいに僕にとって下痢を漏らすという非日常的な事象は、日常化していた。それは腸が弱いにも関わらず、執拗に《熱い期待》に似たウィスキーを、嬉々として、いや、鬱鬱として? そのいずれにせよ、琥珀色の(陳腐な表現だ)それを、咽喉に流し込むからである)の目に、鮮烈に焼き付き、朦朧とした意識の中で、ゆいいつ現実へと引き戻されるかのようであった。僕の意識という意識は、肛門へと集中していたのだった。
 下痢を漏らす人=僕は、ガラパゴス化した汲取式便所、通称ガラベンへと辿り着くことなく、激しくパンツの中に下痢を漏らし、神を(僕は神の存在を信じないが、憎しみが増長した時にのみ、呪いの対象として、信じる)呪った。しかしある種の諦めと共に「下痢を漏らし、人間から動物へと下降した」という事実を、真摯に受け止めてみると、マゾヒスティックな快感が僕を襲った。
 ここらでヒロインを登場させてみる。ヒロインは下痢を漏らす人=僕の、傍らを偶然に通りかかった。ヒロインは《まゆゆ》である。AKB48の《まゆゆ》であった。僕はAKB48に詳しくないし、興味もない。年齢が若いという以外に取り柄の無いクズどもという認識である。しかし、下痢を漏らす人=僕は、下痢を漏らしたことによって、ペルソナが崩壊して畜生に成り果てたので、不覚にも《まゆゆ》に希望を見いだしたのである(僕のペルソナはあっけなく崩壊する傾向がある。それはしばしば同性と不本意な性交をおこなうことでも明らかである。僕はしばしば同性とペニスを舐め合う)。それはピカソが描くところの、迷宮をさまようミノタウロスを光へと導く少女のように見えた……。
 下痢を漏らして倒れている僕の手を取り、《まゆゆ》は逆卍固めをきめた。それには殺意がこもっていて、僕=下痢を漏らす人の全身が激しく傷んだ。《まゆゆ》はさらに僕の顔面に痰を吐き、その場から立ち去っていった。
 このヒロインは失敗だった。いくらなんでも《まゆゆ》がヒロインとは……。他に何かのヒロインを登場させよう。新しいヒロインは雌豚だった。僕は雌豚とセックスをした。獣姦? いや、下痢を漏らした僕だって獣である。僕はこの雌豚と結婚しようと思った。そして結婚生活をしているうちに、やはり人間の女がいいと思いはじめてDVをした。DVをしまくった。最低、としばしば雌豚は言った。それがなぜだか快感だった。いつしか豚と離婚した。そして、美しい女性とお見合いをした。日本料理店だった。美しい庭園が見えた。僕はそこで下痢を漏らした。ズボンの裾から下痢が流れた。女性はその下痢を美しいと言った。僕は羞恥で顔が歪んでいた。その僕を女性が抱きしめた。その夜、僕は初めて異性とsexをした。同性とsexしたことはあったが、異性とsexするのは初めてだった(豚を除いて)。言いようのない快感とそして恐怖が僕を襲った。僕は女性から逃げた。そして夜の河川敷へと向かい、盛大に下痢を漏らした。
昼野
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2012年09月08日(土) 18時51分18秒 公開
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No.6  昼野  評価:0点  ■2012-09-22 15:21  ID:vo7V2Jn2DSQ
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>吉岡左右字さん

感想ありがとうございます。
下痢を漏らす人、うらやましいですね。素敵なアイデンティティーだと僕も思います。
マゾはものたりなかったですね。マゾなのにDVとかしてるしよくわからない作品になってます…。
まゆゆ、もおっしゃるとおりもっと暴れさればよかったなと思います。主人公の顔面に放尿したり。
ありがとうございました。
No.5  吉岡左右字  評価:30点  ■2012-09-20 13:00  ID:DVALcAb8JC.
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昼野さま

読ませていただきました。面白い、とても面白いです。
いいですね、下痢を漏らす人、羨ましいです。
私も、オムツを填められて強制浣腸、下痢ベンドバドバで自我崩壊。なんてマゾヒスティックで甘美なのでしょう。
なので、後半は物足りないのですね。
マゾであれば、あそこは牝ブタではなく、牡ブタに犯されてほしいものです。
そこで下痢ベンと精液のダブル放出ならOKでした。

でも、いい作品でした。まゆゆ、も、もう少しサディスティックにしてほしい。逆卍一本では弱いですね。

でも、楽しめました。
ではでは。
No.4  昼野  評価:--点  ■2012-09-11 23:43  ID:FJpJfPCO70s
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>弥田さん

感想ありがとうございます。

よかったとのお言葉うれしいです。画像もうれしいです。
描写はもうちょっと細かくやるべきでしたね。もっとじっくり書きたいと思います。

ありがとうございました。
No.3  弥田  評価:40点  ■2012-09-09 20:53  ID:ic3DEXrcaRw
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なにがどうとはうまくいえないのですが、とてもよかったです。
画像の挿入もよい効果をうみだしているのではないかな、と。
少ない文章量のせいか、展開が急すぎて噛み砕くのに時間がかかったのはあまりよい感じではなかったです。もっと細かく描写できる強度はある話だと思うので、ちょっともったいないな、と思います。
勝手にぺらぺらとすみません。以上です。
No.2  昼野  評価:--点  ■2012-09-09 18:12  ID:FJpJfPCO70s
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>蜂蜜さん

感想をありがとうございます。

ペルソナはおっしゃるとおり不適当でしたね。
なんか感性でだだーっと書いてしまったんで次から気をつけたいと思います。
重要なポイントももっと書くべきですね。

ありがとうございました。
No.1  蜂蜜  評価:20点  ■2012-09-09 01:02  ID:X5IOOPj01FA
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胃腸がとても弱く、数年に一度くらいは、猛ダッシュで便所に向かっても、すんでのところで間に合わず、『下痢をちびる人』になる蜂蜜です。アレはきつい。外出するときには、常に僕は緊急用下痢止め薬「ストッパ」を携帯しています。結構効いてくれますよ。トイレに間に合う程度には。

   ***

おおむね、興味深く読ませていただきました。

ただ幾つかの点に、違和感や疑問を感じました。その一部は重箱の隅をつつくようですが、一応、全部指摘させて下さい。

>(僕は僕自身を定義するなら《下痢を漏らす人》とする。

最初の「(」が閉じられていませんね。おそらくケアレスミスでしょう。大した問題じゃないです。僕も時々やらかします。

>ガラパゴス化した汲取式便所、通称ガラベン

これは好みの問題ですし、昼野さんの好みとは違うだけかもしれませんが、

>下痢を漏らす人=僕は、ガラパゴス化した汲取式便所、通称ガラベンへと辿り着くことなく、

は、たった一回しか作品に登場しない「ガラベン」の説明としてはやや冗長だと感じました。
これはあくまで「僕だったら」という意味であり、必ずしも優劣を示すものではありませんが、もし僕でしたら、たとえば、

>下痢を漏らす人=僕は、結局ガラ便へと辿り着くことなく、

くらいにさらっと略語を書いちゃったっても、ガラ便? なんだろ? あ、ガラパコス便所のことか、とすんなり読者に伝わると思うので、こっちのほうがスマートかな、と思いました。あくまで、好みの範囲ですが(「ガラベン」を「ガラ便」に変えたのは、こう書いた方が、このほうがスムーズに略語の意味を、読者に理解させることができるかな? と僕は感じたためです)。

次に、「ペルソナ」という言葉が、この作品中の状況で果たして最も的確な単語なのかな? とも思いました。

(御存知ない他の読者のために一応述べますと、「ペルソナ」とはユングが提唱した心理学用語で「自己の外的側面」を意味します。ようするに、社会生活上、上っ面でまとっているポーズ、というような意味です。会社ではコワモテの部長が、帰宅すればにこやかなパパに変化するような場合、この部長は、男らしさ、部長らしさ、という仮面を会社では被っているため、社会生活上はそのような「ペルソナ」を持っていると言えます)。

本作では、畜生になった僕の「ペルソナ」が崩壊した、と書かれていますが、ペルソナは仮面や殻のようなものなので、崩壊したら、内面が外面に出るだけです。その内面が「畜生」なのだと思いますが、もしそうであれば、内面が外面に出ますので、「クズである」と認識しているまゆゆに希望を見いだすことは、おかしなことです。ペルソナ崩壊後に主人公が見いだすべきは、まゆゆへの激しい嫌悪感でなければなりません。それなのに、ペルソナ崩壊後はまるでまゆゆを「迷宮をさまようミノタウロスを光へと導く少女のよう」と感じているので、この文章は、意味がわからない文章、ということになります。

では、この作品中の状況で、最も適切な単語を考えてみましょう。
主人公は何かが崩壊した結果、心理状態に変化をきたし、完全に畜生に成り果ててしまったので、ここでは「自我」が崩壊した、というのは、そのひとつです。あるいは、主人公は畜生(=人外の獣)にまで変貌してしまった結果、まゆゆのような「クズ」ですら、「迷宮をさまようミノタウロスを光へと導く少女のように見え」てしまっていることから、畜生になった結果、知覚現象や認識活動が低下していた可能性が考えられます。そのような状態のことを「ゲシュタルト崩壊」と心理学では言います。この単語も、適切かと考えられます。同じように、

>(僕のペルソナはあっけなく崩壊する傾向がある。それはしばしば同性と不本意な性交を〜

という部分も、ちょっと理解が難しいです。同性と性交することが「不本意」であるというのが主人公の本心であれば、ペルソナが崩壊したなら、同性とは絶対に性交しないはずだからです。ここもまた、自我が崩壊したか、ゲシュタルト崩壊が発生したと考えるのが、自然です。

いずれの文章においても、何故昼野さんがあえて「ペルソナ」と言う単語を使用したのか、理解に苦しみました。
もし何か、上記の指摘とは全く別のことを言い表したかったのであれば、それが何なのか、ぜひ教えて下さい。

次に、

>日本料理店だった。美しい庭園が〜

美しい庭園がある日本料理店ならばそれは料亭のことです。普通に、「料亭」じゃダメなんでしょうか? わざわざ、日本料理店、という、普段、日本での日常生活であまり使わない単語に違和感を感じました。海外では、日本料理を出す店のことを総称して「日本料理店」と言うことはよくあるんですけどね。

あとは、ちょっと前に戻りますが、

>群生するセイタカワダチソウが、黄色い花を、目に痛いほどに咲かせていて、河川敷にあるガラパゴス化した汲取式便所へと駆け込む、下痢を漏らしそうな僕(僕は僕自身を定義するなら《下痢を漏らす人》とする。

という文章は、ちょっとわかりにくいと思います。
要約すれば、「群生するセイタカワダチソウが、黄色い花を、目に痛いほどに咲かせてい」た結果、主人公に便意を生じさせ、主人公を「ガラパゴス化した汲取式便所へと駆け込」ませたものの、結局間に合わずに主人公が《下痢を漏らす人》になった、という内容だとは理解できますが、ちょっとわかりにくいかなと思いました。

最後は、

>言いようのない快感とそして恐怖が僕を襲った。僕は女性から逃げた。そして夜の河川敷へと向かい、盛大に下痢を漏らした。

という部分も、何故主人公が「恐怖」に襲われたのかが一切書かれていないので、わけがわかりませんでした。いったい何が怖かったんでしょう? 肝心なラストなのに理解に苦しみ、また、いろいろ思いを巡らせてみても、「恐怖」の理由は、想像すらできませんでした。

   ***

上記を除けば、突飛な発想が多くて面白い展開が続きましたので、作品全体としては、面白かったです。

ただし、読後に何か、特に強い印象を僕は感じなかったので、面白い作品とは思ったものの、それ以上のことは感じませんでした。多分、最大の原因は、最後の「恐怖」の理由が、何だかサッパリわからなかったからだと思います。

読者が上記で記したような思考をして(特に「ペルソナ」の用法)、初めて意味がやっとわかる、というのは、読むのはつらいものです。

また、ここ2作を見る限りでは、昼野さんは、作品の中で、もっとも重要なポイントを、全く書かない、という傾向があるように感じました。場合によってはそれでも作品として成立する場合もないわけではないですが、本作と前作に関しては、そこが欠けていたため、作品として、説得力のないものになっていると感じました.いたずらに読者に混乱を与えるのは、いかがなものかと思います。

面白いのですが、正しく内容を理解するのに、上記のような思考を巡らせなければならなかったので、得点は、その部分減点10といたします。

僕からは以上です。
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