| 太陽の子 |
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「生まれて来た理由を知っていますか？」 宣教師二人に声をかけられた。悪意のない笑顔に僕ははっきりと安堵感を感じたが、話してみると納得のいく答えを聞くことはできなかった。彼らの言っていることはつまり死んだあとの事が大事なのだということだった。 帰途につくとすぐに庭に出て空を見上げてみる。母のおかえりの一言を聞いた時ふと何か答えを得られるかもしれないと思ったからだ。太陽は既に西の空に沈み、空には星がちらちらと微かに見えた。あと数日で半月を迎えようとする反った輪郭が雲の合間から覗いていた。 太陽の光に比べて夜の光はこんなにも少ないものなんだとはじめて思う。街の光に負けてしまう天体なんて地上に暮らす僕らにしたら何も意味がないと感じてしまう。人の作った光に屈する光なんて明るいなんてとても言えないや。僕はサンダルを脱ぎ捨てて家の中に戻る。 母にそのことを話すと笑われた。 「星の光はずっと遠くにあるだけで太陽の光よりもずっと明るいわよ」 確かにそうかもしれない。僕は少ししょげてもう一度考え直したが、どうしても納得がいかなかった。 「でも……」僕は言う。「星の光は地球を温めたりなんてしない。月の光だってそうだ」 目を見ると母はまだ笑っていた。しかしその目は僕の魂を見ているのではなく、ベールのようなものを通して僕でないものを見ていた。 しばらくは母に揶揄されて太陽の子と呼ばれるようになった。しかしこの呼び名は嫌いではなかった。なぜなら人は死んだあと太陽のように明るい場所に行くと聞いたことがあるからだ。死んでからも暗い場所に行くよりかは良い。 しかしその時僕は思った。どうして死んでからのことを考えたんだろう？ もうそこに太陽はあるじゃないか。わざわざ死んでからのことを考える必要はないのに。それとも死んだ人が見る太陽があるから、ここにも太陽があるんだろうか。 |
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・w・
2012年09月08日(土) 02時21分26秒 公開 ■この作品の著作権は・w・さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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| No.2 ・w・ 評価：--点 ■2012-09-17 22:02 ID:wmb8.4kr4q6 | |||||
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静寂感と言われるとは思ってませんでした。 ありがとうございます。 短編の中の一ページっていう感想がわかりやすかったです^^ |
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| No.1 星野田 評価：30点 ■2012-09-14 00:54 ID:p72w4NYLy3k | |||||
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こんにちは 何とも言えない、静寂感のある作品ですね。 なんかの短編集の中に、一ページだけまぎれていても違和感ない感じ。 嫌いじゃないです。 |
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| 総レス数 2 合計 30点 | |||||
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