機動ヤクザ「池本組」
 今日は本部当番だった。本部当番とは、本部を当番する事である。その内実を語るつもりはない。だるいからだ。それよりも重要なのはオナニーである、性処理である。ふだんは事務所で生活をしている僕たちは、オナニーをする機会がない。長いあいだ便所などにいると「オナニーしてたの?」と聞かれる。仕方がなくミニスカートの看護婦とかが出てくる他愛ない夢でもって夢精したりしていた。男色がはびこっていた。まるで黒顔のペストのように、はびこっていた。アナルセックスをしすぎると肛門がゆるんで糞を漏らしやすくなる。緩んだ肛門は、人間から動物へ下降した悪の象徴のように、準構成員たちを悩ませた。あたりは糞まみれだった。そういう僕たちにとって、本部当番は絶好のオナニー場所だった。その理由を語る気はない、だるいからだ。
 僕はひさしぶりのオナニーをし終えて、本部の清掃をしていると、本棚から破門状が出て来た。いかにもだらしなさそうな男の顔が印刷してあり、こいつは破門されるだろうと妙に納得していると、二本のペニスを持っているのが自慢のタカシが声をかけて来た。
「本部って巨大ロボに変形するらしいぞ」
「そうなんだ」
 僕はそう言って元泥棒で虚言癖のあるタカシを相手にせずに、清掃の続きをした。

 タカシがペニスをつめられる事になった。清掃中に組長のベンツのあのマーク?みたいなのをへし折ってしまって、しかもタカシはシラをきり通そうとしたからだった。若頭が「道具もってこい!」と叫ぶと、まな板と出刃包丁が用意されて、まな板の上にタカシの二本あるペニスがのせられた。寿司みたいだなと思っていると、若頭は出刃包丁をまな板に突き立てた。その下にはタカシのペニスがある。タカシは泣いていた。やがて若頭は出刃包丁を倒して、タカシの二本あるペニスの、一本を切断した。切断されたペニスは血を吹いて、やがて収縮して妙に青黒い色になって、死んだ芋虫みたいにだった。僕はタカシの二本あったペニスに劣等感を抱いていたので、愉快な気分になった。

 再放送のドラゴンボールが終わって、なんとなく暇だった。本部での仕事が終わって、僕たちは事務所にいた。タカシは切断されたペニスに包帯を巻いていた。それとなく窓の外を見ていた。夕焼けだった。ふいに事務所から見下ろせる本部が、巨大ロボに変形した。巨大ロボは夕焼けを背景にして、堂々と立っていた。
「本当に変形するんだな」
 僕はそう呟くと
「ああ」
 とタカシは言った。
昼野
2012年06月02日(土) 19時10分18秒 公開
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読んでいただいてありがとうございます。
感想などあればよろしくお願いします。

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No.6  葉津京一  評価:40点  ■2012-06-21 03:26  ID:VUwYl4dKtx.
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前作を読んで、今作も読んでの感想ですが、
一言、「題材がユニーク」です。

男色の性表現もたくさんあるのに、いやらしさは全く感じず、むしろシュールさを高めるいいスパイスになって。
こんな文章は今まで読んだことありません!
(いい意味ですよ、勿論!)

ときには常識を打ち破る突飛なアイデアが必要だなぁと改めて感じました。
本当に勉強になります。
No.5  昼野  評価:--点  ■2012-06-10 17:29  ID:FJpJfPCO70s
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>Physさん

いつも感想ありがとうございます。
自分で書いててもアハハってなりました。
気持ちが楽になるとのお言葉嬉しいです。
ありがとうございました。

>境さん

感想をありがとうございます。
虚飾のなさは惰性だったりしますが、効果があったようで良かったなと。
元気が湧いたとのお言葉嬉しいです。
ありがとうございました。

>ゆうすけさん

感想をありがとうございます。
そうですね、ペニスが二本キャラはもうタカシで統一しようかと…。
忘れられない印象を残すとのお言葉嬉しいです。
小説に絵画性とか持ち込みたいなと思ってます。
ありがとうございました。

>朝倉浮羽さん

感想をありがとうございます。
タイトルは狙ったんでそう言っていただけると嬉しいです。
自分で書いててもなんか目が点になりました…。
ありがとうございました。
No.4  朝倉浮羽  評価:30点  ■2012-06-06 11:10  ID:pSLzVsBfrQE
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初めまして。私の価値観が音を立てて崩れていきました。シュールすぎてコメントできないです。タイトルがえらく光ってました。釣られて読んで、恐ろしい物を見てしまいました。とても面白かったです。ではでは。
No.3  ゆうすけ  評価:30点  ■2012-06-05 08:58  ID:1SHiiT1PETY
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 二本ペニスのあるタカシって、鶏頭の女の子が憧れていたあの人?
 凄いですね。プロが書いた小説だって忘れてしまうものがあるのに、忘れられない印象を残す作品が、このTCにあるってのは。
 昼野さんの作品は、衝撃的な絵画のようなイメージをもっています。映像として脳内に想像すると、もう脳みそぐじゃぐじゃになりそうな。

 細かい事で気に病んでいる自分が矮小な気がしてきました。
  
No.2  境  評価:40点  ■2012-06-04 18:59  ID:gNCXE32rH2E
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 読ませていただきました。

 長らく寝込んでいたちょんまげが、寂しげなカラスの鳴き声で不意に屹立したときのような、上手くいえないですが、とりあえずそういう心持ちになりました。

 僕という一人称が最高に似合う作品であるというように思いました。この文章の余計な虚飾のなさ具合も、素晴らしいと思います。

 読んで元気が湧いてきました。
 
No.1  Phys  評価:40点  ■2012-06-02 23:07  ID:23ii74h.ekI
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拝読しました。

絶句しました。もう、これは……。

すごかったです。いろんな意味で……。笑 何と言っても最後の主人公さんと
タカシさん二人の会話がシュールすぎて、不覚にも飲んでいたホットミルクを
吹き出してしまいました。

まず「機動ロボ」+「ヤクザ」+「不条理描写」という3点の組み合わせが、
新しすぎて衝撃でした。本当もう、自分がこれまで築き上げてきた価値観が
揺らぐくらい衝撃でした。夢に出てきそうです。本部の変身シーン。

笑っていいのか、なんか笑ってる自分ってどうかしてるのか、ちょっと複雑な
心境になる小説でした。昼野さんの小説を読んでいると、日常の些事や常識が
全部どうでも良くなるような気がして、気持ちが楽になります。

こういう読み方をして良いものかどうか分かりませんが、大いに笑わせて頂き
ました。また、読ませてください。
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