6月20日
ややもすれば返り血を浴びていた。返り血といったって、別段ぶっそうな話じゃなくて、たった今僕の目の前で弟が鼻血を出したのだ。鼻血にしてはなかなか見事なもので、僕の後ろの真っ白な壁が真っ赤に染まった。危うく僕も染まるところだったけれど、近くにあった妹のプーさんのぬいぐるみを盾にしたのでそうならずに済んだ。結果、盾になったプーさんはもうウォルトディズニーには雇ってもらえないほど殺伐としてしまった。まだ幼い妹は別段それを悲しむふうでもなく、むしろ鮮血に染まったプーさんが気に入ったみたいでプーさんを、ペロペロ、ぺろぺろとなめてはほほえみ、なめてはほほえみを繰り返した。気味が悪く思った母親がプーさんを妹から取り上げると、妹は火がついたように泣き出した。
妹が初めて愛らしく思えた瞬間だった。
藻朱
http://d.hatena.ne.jp/mosyu/
2011年08月26日(金) 02時19分06秒 公開
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■作者からのメッセージ
散文詩にちかいかなと、勝手に思っています。
よろしくお願いします。

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No.3  藤村  評価:20点  ■2011-09-04 02:19  ID:a.wIe4au8.Y
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拝読しました。
血まみれのクマって、グルーミーじゃないですか!とおもったのですけど、プーさんの体型を考えるとこっちのほうがよっぽどえぐい感じで、いいですね。
「愛らしく」というのがなんだか妙に頷けました。
No.2  tori  評価:30点  ■2011-08-28 22:43  ID:nyv4PhU4HKM
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 はじめまして、toriと申します。
 さて、早速ですが感想です。

 シュールさがいいですね。プーさんはもうウォルトディズニーには雇ってもらえない、がすごく好きな表現です。
 ただちょっと物足りないと思いました、もっとこの調子で読み進めていきたいです。最後の一文でお話として落としてはいると思うのですが、そうしないであと数分間は翻弄されたかったです。そうであれば、違った地平が見えたかもしれないですし。

 短いですが、以上です。
No.1  山田さん  評価:30点  ■2011-08-27 20:07  ID:HFtdYnGXEMs
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 拝読しました。

 HPを拝見すると、これは自動筆記で作成された作品のようですね。
 僕も以前、自動筆記による作品の作成をみたことがあるのですが、妙に纏まった変な作品になってしまった記憶があります(当サイトにはもう掲載されていません)。
 ちなみにアンドレ・ブルトンの「溶ける魚」を最後まできちんと読めなかったヘタレでもあります(汗)。

 当作品が自動筆記(あるいは自動記述)であろうとなかろうと、結構面白く読むことが出来ました。
「鼻血にしてはなかなか見事なもので」なんて表現も、ちょっととぼけた感じもしていいなぁと思います。
 妹の存在がまた妙にグロくて、なのに妙に可愛らしくて僕は好きです。
 ただ「ウォルトディズニー」という単語はちょっと興醒めでした。
 この単語から発想されるイメージがこの作品にはあまりマッチしていないように感じられたからです。
 とはいえ、なかなかに興味深い作品だなぁ、と思います。
 僕は好きです。
総レス数 3  合計 80

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