タコヤキ(改敲)
   * * *

 親方譲りの赤茶がすすけた屋台に、雨がぽつぽつと垂れた。五月雨というか、霧の都ロンドンというか、そんな感じの雨だった。まあ、今は七月で、ここは埼玉の「ゴリラ公園」なのだけど。こんな天気では客なんて来る訳もなく、俺のタコヤキ職人としての見せ場なんてある訳がない。
 さて、ここ「ゴリラ公園」はなかなかに広く犬の散歩に訪れる人も多い。緑の自然や黄緑の草むらや茶色のグラウンドと一体になれる公園だ。ただ、広さに比して、ブランコや滑り台といった遊具が足りないだけ。とも言う。
 何故「ゴリラ」かと言うと、公園の正面口の背の高い時計の柱に、テカテカ光る巨大なゴリラが、ぶら下がっているから。それだけで地元の人にはそう呼ばれている。正式の名称はあるにはあるけど、粟野町緑ガ丘第二運動公園、だったかな、第三だったかな、とみんなうろ覚えだから「ゴリラ公園」なのだ。
 しかし、本当に客が来ない。
 この雨は六月頃からだっただろうか。辺りを灰色混じりの白い雲が覆い、いっそのことパッと降れば良いものの、ジトジトと汗のように少しずつ雨を垂れ流していた。野球少年もサッカー少年も、この雨で訪れることはない。散歩をする人も右手に犬のリード、もう片手に黒い傘をさして歩いている。これでは、タコヤキを食べる手が空かない。ガキどもはきっと家でスプラトゥーンをやってるんだろう。その父親もスプラトゥーンでもやってるんだろう。その母親もスプラ。はは、ゲーム天国ニッポン、バンザイ……
 仕事帰りのヤスさんが来た。相変わらずスーツがピンと張っている。影が濃くなっている。俺は台の隅っこにある置時計に目をやる。ああ、そうか、もう六時か。
「タコヤキ一つ。もちろん焼きたてを、いっちょね」
 このアメリカンステーキみたいな分厚い雲のせいで、夕焼けは見えない。夏の夕焼けってとても綺麗なのに。薄雲だったら、一面に赤紫に染まってグラデーションのように柔らかい桃になって、それはそれで素敵なのに。この雲達は無表情だ。
「今日は珍しく部下がいい仕事をしてね」
 この仕事のいいところは季節や時間を感じられるところだ。日溜まりでの春風の心地よさ、風と共に夏草の匂い、秋の凛とした
「って聞いてる?」
 ヤスさんが唇を尖らせる。
「あっ…… ごめん、すいません」
 この天候のせいか、今の俺は気が抜けちまっている。炭酸の抜けたコーラのような甘さ。もう腐っちまってるのかもしれない。手は惰性でタコヤキを焼いている。でも、こんなものを商品、いや俺は作品だと思っている、としてOKを出すなんて職人としての意地が許せない。
「ちょっと調子が出なくて。作り直すよ。もうちょい待ってくれる?」
 ヤスさんは、怪訝そうな顔をくしゃっとさせて
「ああ。だってさ、日本で一番のタコヤキを食べに来たんだぜ。最高のを作ってくれなくちゃ」
「おう」
 鉄板に集中しよう。普通のタコヤキ屋は、三ヶ月かけてコツをつかむ。あとはロボットのようにそれを繰り返すだけ。だけど、俺は違う。一人前ごとに、いや一個ごとに、指先から頭の先まで全開にして、焼きの状態を確認し、反省し、上達しようとする。そうしてキャリアが十年と、あと一年、計十一年を研磨してきた。並みの職人など相手にもならない。もう実現できないけど、親方とだって今なら対等に勝負できると我ながら思う。スナップに合わせて玉が跳ねた。
 それに俺には信念がある。タコヤキは焼きたてに限る。作り置きなんかしない。プラスチックの箱に入れるなんて、持ち帰りもさせない。その代わりお客さんの口元に入る時に最高においしい状態をキープする。冷えて粉臭いわけでもなく、かといって火傷するほど熱くもなく、程よいコンフォートフード。そんなものを目指している。ころころと転がすと、キツネ色にタコヤキが焼き上がった。
「いやー、相変わらずの職人技だねー。普通なら飽きちゃうところだけど、もしかしてまた、腕、あげた?」
 ヤスさんは、一年半くらい前からの常連だ。週に二、三度やって来てくれている。今もふぅふぅと冷ましながら、屋台の食べ物としては贅沢な程ゆっくりとそれを口に運び、満足げに首を上げ下げしている。
「それじゃ」
 ヤスさんは傘を片手にゆらゆらと、去っていった。
 この屋台は、俺の店は他のとは違う。よくあるハンバーガーショップ、あれはダメだ。肉は外国のクズ肉を無理やり固めたもの。パンは遺伝子組み換えの虫さえ食わない小麦粉。
 子供にハッピーセット。ただ、てめーの化学調味料だらけの味に、幼い内から中毒させようとしてるだけだろう?
 スマイル無料。あんな機械じみたスマイルなんて誰も喜ばないよ。
 ああ、愚痴になってしまった。いけないな。止めよう。俺の悪い癖だ。

   * * *

 今日は早めに仕事から帰った。六畳半の安アパート。洗面所とトイレの一角が付いてるだけマシ。着いてすぐに、明日の天気予報をハシゴする。一週間前から見続けているのだ。ずっと晴れとのことだったけど、その天気予報というのが当てにならない。「晴天の日が続き猛暑になるでしょう、脱水症には気をつけて!」などと報じていたのに、じとじととした湿気った日が続いていた。
 だけど、明日は正真正銘100%晴れらしい。どこのニュース番組でも、イヤホン越しにカラッカラの晴れになると伝えている。隣との壁が板切れのような薄っぺらいものじゃなければ、嬉しさの余り雄たけびをあげていただろう。
 晴れてもらわなくちゃ困る。明日はゴリラ公園で祭りなんだ。祭り、心が踊る。その元は、花火よりも屋台の群れ。花より団子。値段を釣り上げても、何十日分の売り上げが数時間で見込める。これは俺が普段この公園で商売している故の特権なのだが、屋台を出す場所が良い。入口から三件目を毎年確保できている。今年も大丈夫だ。
 だが雨が降れば、全ては台無しになる。少しの雨なら花火も人間も耐えられるが、本降りになれば悲惨なことになる。俺は五日も前から久しぶりにテルテル坊主なんて作っていた。ティシュを丸めて輪ゴムで結んでニコニコ顔を書いただけのものだったが、それに向かって頼むから晴れてくれ、と願う。俺たちにとっては久し振りの稼ぎ時なんだ、ひとあし遅いボーナスなんだ。晴れてくれ。晴れてくれ。晴れろ。晴れろ!

   * * *

「でさー」
「うんうん」
「いいね、それ」
 溢れかえりそうな人の群れ。景色まで続く屋台の列。ガリガリと氷が削られている。笛の音が高らかに飛び、太鼓が重低音で響く。それらも些細なものと思えるくらいの

 ドォォォーン

 という花火の音。光の線が円を描いたと思ったら、流線となり、パッパッパっと小さな、でも綺麗な光の花を咲かす。スターマインというやつだ。赤だったり橙だったり、青だったり、緑だったり。そんなのが一杯の星空と三日月を完全に背景にしてしまう程、くっきりと浮かび上がる。余韻のような光の跡が、やけに胸に残る。春の桜を、時間も美しさも、何十倍にも圧縮したのが夏の花火なんだと思った。夜空の花。喉が渇く。花見酒が飲みたい。
 快晴だ。雲一つない。
 地の底から熱が、屋台の裸電球から熱が、空の花火から熱が、伝わってくるような。そんな暑い夜となった。灼熱の夜となった。あつあつの焼きたてのタコヤキなど食べる気も失せるくらいの熱だ。俺は何もできない自分に呆れながら、空を見つめている。
 売れないのは、不景気のせいだからじゃない、少子化のせいだからじゃない。そんなのは俺の隣のカキゴオリ屋を見れば、一目瞭然だ。恐ろしく客の回転が速いカキゴオリ屋には、それでも十を超える行列が絶えず続いている。氷塊を纏めて買ってきて、粉砕機にいれ、スイッチを押すだけ。そしてシロップをかけるだけ、とも言いたいが、シロップはセルフサービスになっている。イチゴ、レモン、メロン、ブルーハワイ。それぞれが台の上に乗っかっていて、お客が好きなものを好きなだけかける。中には二つの味を混ぜたり、全種類をかけにかけて、氷のシロップ漬けにまでしてしまうガキもいた。そんな自由な空気が好評の要因なのかもしれないが、なんてことはない。要は種類をオーダーされ、覚え、応える手間を省いただけだ。それにあれらのシロップ。ドギツイ着色料を付け、甘味料とフレーバーを配合しているだけのシロップ。果汁0%だ、ハワイ0%だ。ああ、それにしても何でブルーハワイっていうんだろう。とにかくこれらは幾らぶっかけても、原価など十円以内に収まる。俺のタコヤキソースには、もっと手間と拘りが、賭けられているのに。広島で配合されたソースに、信州産の唐辛子、塩は太和屋オリジナル、高級鰹節に、自家製マヨネーズ。でも、だれも口にしようとしない。大玉花火が上がった。オレンジに瞬いたかと思うと、柳のように暖かな帯が、さっと垂れていく。ああ、花火、綺麗だなあ。花火、綺麗
「ねぇ! ねぇ、おじさん」
 思いがけない言葉に視線を前に戻す。誰も見えない。もう少し下へと。背の低い女の子が笑っている。
「おじさんのタコヤキって、おいしい?」
「おう、メチャクチャ旨いぞ。焼きたては、外がこんがり、中がふんわり、タコがコリコリで、堪らないぞ」
「じゃあ、一つちょうだい!」
「おう、任せとけ」
 鉄板にハケで、油を多めに塗る。そうすると、皮がパリパリに揚がり、中身はしっとりとレアっぽく仕上がる。
 タコヤキの生地を流す。
 その中に、あげ玉、ネギ、タコをたっぷり入れる。あふれるくらいがちょうどいい。目を休めると、女の子が背伸びして心配そうな顔で覗いている。
 ここからが腕の見せ場だ。
 高速で玉を一個一個に分かち、続けざまにひっくり返す。傍目には上手に見えない位に、上手なのが一番いい。昔、親方に習ったコツだ。これを初心者が見ると、余りのあっけなさに自分でも出来そうだと錯覚する。中級者は手際の良さに「プロだな」と呟く。上級者はその域に感嘆する。俺はそういう腕を仕込まれている。誰にも負けるもんか。
「わあ」
 と女の子からテレビアニメを観ているかのような、楽しそうな声が響いた。
 タコヤキを縦に置く。半面だけが鉄板に焼かれ、半面がそこからハミ出す。三、四分、こうすると蒸れて、生地がしっくりと来る。
「ミカ! こんな所にいたのか!」
 のっぽな痩せた男が立っていた。黒いティシャツに硬そうなジーンズを履いている。髪は整えられている。
「パパ!」
「ダメだぞ、ミカ! 今年は買うのは千円までと決めてたじゃないか! それに綿菓子を買ったばかりだろ。迷子にもなったりして」
「えー、だっておいしそうなんだもん。少しくらい、いいじゃない」
 甘え上手というか、純粋というか、とても本能をくすぐる声で懇願する。これだから女は! とも少し思う。しかし父親は
「ダメだ! 我慢を覚えろ」
 女の子は、今にもぐずりそうになる。
「泣くな! あのな、これから先、もっと耐えなきゃならないことが、辛いことがドンドン出てくる。もう子供じゃいられない年なんだ。同級生のサキコちゃんを見ろ!」
 親父さんよ、そりゃ間違ってるよ。泣きたい時に泣くってのは、子供の特権だろ。笑いたい時に笑うのも。なぁ、俺はもう泣けなくなっちゃったよ。本当に悔しいのに。
 だからさ、ガキは泣くべきなんだよ。分かち合うことが出来ない赤の他人だけど、それでもさ、美味しいタコヤキが食べれないって、そりゃ本当に悲しむべきことなんだよ。ましてや、それが日本一のタコヤキだったら、さ。
「すいません、すいません、ああ、私の躾が行き届かないせいで」
 父親の、娘と俺との間での声色や態度の変え方が、尚更むなしく聞こえた。
 二人はタコヤキを手にせず、離れていく。パァンと赤い花火がルビーのように燃えた。二人はゆっくりと遠ざかっていく。やがて人ごみに溶け見えなくなったが、最後に女の子がこちらを振り向いた、気がした。

 午後十時。花火は終わり、祝祭も終わった。大部分の屋台は、既に片付け作業に入っている。隣のカキゴオリ屋なんて、もうすっかり跡形もない。
 たんまり儲けやがって。
 俺は祭りの後のハイエナを狙って、タコヤキを売り続ける。材料が余って余って性がない。しばらくは三食タコヤキとお好み焼きの毎日だな。それでもポツポツと売れた。
 長袖をひっかけた男がやって来た。おや、とよく見ると、さっきの女の子の父親だった。
「すいません、ほんとね、ウチの娘のわがままで。妻がいなくなって以来、どうも、男手一つで育ててきたんですが、どうも、うまく行かなくて」
 父親は頭をポリポリとかく。こちらこそ、とは俺は言えない。
「これ、無駄になった、たこ焼き代です。お釣りは、少ないですが、迷惑料ってことで、お願いします」
 と千円札が差し出された。
「お客さん、うちもプロです。お金はタコヤキを買っていただいてから、貰うのが筋ってもんです。お客さんのやろうとしていることは、プロとしてのわたしの仕事を侮辱してるようなものです」
「じゃあ、一つ、たこ焼き、お願いします。娘の為にも」
「それもですね、ウチは焼きたてしか食べさせないんですよ。あんなに楽しみにして頂いた娘さんに冷めたタコヤキを食べさせるなんて、わたしのプライドが許しません」
「そんなに焼きたてが美味しいんですか?」
「ええ。普段公園でやってるので、食べに来てみてください。焼きたて、美味しいんですよ」
 親父さんは、ちょっとまぶしそうな顔をして、ゆっくりと背中を遠ざけていった。
 ああ、俺もまだまだガキだな。変なのに、無駄なのに、こだわってる。
 いや、大人になっちまったのかな。大人ってエライって子供の時に思ってたけど、すごく不器用なだけなんだ。エライってのは偉く見せようと、必死に取り繕ってるから、そう見えるだけなんだ。

   * * *

 レモンのように真っ黄色な屋台で、俺はタコヤキを焼いていた。鉄板をじいっと見つめていた。鼻歌が聞こえる。慎重に且つ手早く手先を動かすと、タコヤキがどんどん玉となっていく。少し蒸らし、冷めさせ、ベストの頃合を見計らい、置いていく。鼻歌が聞こえる。その声は懐かしく、陽気なテノール。親方だ。
「どうです? 親方」
 俺は首を上げタコヤキを差し出そうとする。
 ぞっとした。
 それには目も口も耳も髪もない。鼻もない。なのに鼻歌を発している。親方は、のっぺらぼうだった。皮膚だけの顔が歪み
「これは、ダメだ。ダメなたこ焼きだ」

 手際が悪かったのだと思った。そこで鉄板に全神経を集中させ、明日にも筋肉痛になるほどのスピードでタコヤキを作りあげた。
「どうです? 親方」
 親方は、のっぺらぼうだった。皮膚だけの顔が歪み
「これは、ダメだ。ダメなたこ焼きだ」

 では、味が原因だと思った。一度に焼く数を半人前の四個にし、その分、一つ一つに倍の注意を傾け、タコヤキを焼いた。
「どうです? 親方」
 親方は、のっぺらぼうだった。皮膚だけの顔が歪み
「これは、ダメだ。ダメなたこ焼きだ」

 三度も似たような、でも結末は全く同じ夢を繰り返すと、俺は眠るのが怖くなった。いや、タコヤキを焼くことすら怖いものとなっていた。それから俺のタコヤキへの接し方が変わってしまったのだった。

   * * *

 蝉の声はピークを終えようとしていた。俺はタコヤキそのものに集中できなくなり、鉄板よりもお客の顔色を伺おうと、前を向きながら手を動かすことが多くなった。幸い、屋台での調理道具の位置、手順は長年の習慣からか肉体が覚えてくれていた。
 でも、時間を気にして慌てている顔、胃も心も眠たそうな顔、ジョギング後の小腹が空いたような顔、そのような沢山の顔を見ることが多くなった。それには目も口も鼻も付いているのだけど、とにかく気になって仕方なかった。自然、絶対の自信があった俺の味、俺だけの味、もお客さんに引きずられ始めていた。それは今まで確かだったものが揺らぎ、足元ごと落ちていく感覚だった。
 お盆明けに見たヤスさんは髭面だった。無精髭とメジャーリーガーの髭の中間。何というか中途半端な髭面だった。汗がダラダラ滲んでいる。ちょっと疲れを感じさせる表情だった。でも、嫌味ではなく、それを楽しんでいるようなヒョウキンな顔だった。もたれたらと少しソースは減らした。俺はそんな常連さんに甘え、問いを吐き出す。
「どうです? 最近、俺の味、変わったかな?」
「うん、変わった」
「そうですか……」
 その声には、なるほど、と溜息が混じった。ヤスさんは慌てて
「いや、いやいや、よくなったんだよ。前よりずっと美味しくなった。日本一のタコヤキだと思ってたけど、今じゃ世界一も狙えるんじゃないかってくらい旨いよ」
「おべっかは、止めてください!」
 思わず声が大きくなった。
「えと、なんというか、そんなん使うと思ってる? 何時だって素直に思ったことを言ってきたと、我ながら思ってたんだけど……」
「すっ、すいません」
「何か、味に悩みでもあるの?」
「俺、タコヤキに拘れなくなって。お客の顔色ばっか伺っちまうようになって。自分でも上手く言えないけど、全国チェーンのハンバーガー以下のものしか作れなくなった気がして」
「へぇ」
 愚痴になってしまった。取り繕おうと思ったが、正直な気持ちは隠すことができない。ヤスさんがゆっくり
「そういう時はね。そのマックに行けばいいんだよ。特に嫌ってそうな、でっかい店をね。頭ん中でグダグダ何度も仮定するよりは、一の実践ってやつ」
「はぁ」
「まっ、人事部の係長の経験則ってやつかな?」
「ヤスさん、人事部だったんですか?」
「そっ、話してなかった? 大変なんだよ、こっちも」
 離れゆくヤスさんの背中は、何処か頼もしかった。

   * * *

 宮尾市は埼玉とは思えないほどの都会だ。駅前に伊勢丹もロフトもソフマップもダイエーもある。中々に高いビルが並列していて、早い足取りで通行人が通りすぎる。ダサイタマの意地を感じる。そんなビルの一つにマクドナルドビルがある。全四階の小さなデパートみたいな設計だ。それでも昼時になると、お客をどんどんと吸い込む。俺は久しぶりにそのお客の一人となった。事務的な「いらっしゃいませ」を受けて、「チーズバーガーセット」と返す。「お持ち帰りになりますか?」冗談だろ!
 清潔感あふれる階段を上り、清潔感ある席に着く。ライトが白いテーブルに反射している。
 俺はハンバーガーを見つめる。トコロテンみたいに、個性のない何処にでもあるチーズバーガーだ。口にしてみると妙にパサパサしているが、味は平均を超えて、安心感をもたらすものだった。癖のあるチーズを使っているはずなのに、それは標準化されたマクドナルドのチーズだった。
 不味いという訳ではなく、かと言って格別に美味しいとは言い切れない。そんな味だった。
 拍子抜けし、何だか安堵した耳は、周りのお客の声を捉える。

「でさー、田中ってやつがまた」
「あー、あいつ? でも、根はいいやつなんだぜ」
「本当かよ?」
「おう、ホント、ホント。一緒にメシ食って、それから酒でも交わしゃ、打ち解けれるって。俺らの時もそうだったろ?」

「海行こうよ、海!」
「いまさらー?」
「それで、ボートに乗るの! 大きなボート! 沖のブイまで行っちゃって」
「えー?」
「男ひっかけに行くより、ずっと面白いよ!」
「わたしは、そっちの作戦会議したい……」

 みんな、楽しそうだった。

   * * *

屋台の色がブルーハワイのように、真っ青だった。俺は親方を見つめている。のっぺらぼうの顔が習字の紙みたいにくしゃくしゃとなった。時々、その一部が何故か笑い顔になる。目が離せない。
 手元でタコヤキを転がそうとする。けれど、上手く回らず、タコヤキは潰れ、タコの足がはみ出した。それを手元で確認しながら、でも顔は親方から離せない。そっと静かに、のっぺらぼうに浮かんだ顔は、予感に反して随分と若いものだった。その時、俺はこの夢は今までの作り物とは違って、ずっと昔の修行を再現したものだと知った。過去と鬼ごっこをしているような夢。
 何度も何度も転がそうとし、失敗し、ぼろぼろのタコヤキが出来た。
 堪らず捨てようとすると、親方が手でその一個を摘んで、口にした。何時の間にかあの時の親方だった。髪も目も鼻も口もある。
「いいぞ、これ」
 修行中の俺は舞い上がって、その続きを聞き逃していた。何か大切だったはずなのに、記憶の底に沈み、ヘドロまみれに埋もれてしまった。今度こそ忘れないように
「美味しかった、ですか?」
「いんや、不味い」
 親方はそれでも穏やかな細い目のまま
「でも、いいぞ、これ。いいか? ここからが肝心なんだが

 ゆるりと日が差している。夢から覚めると、無性に喉が乾いた。洗面所に行くと、充血していて、目が赤くなっている。思いっきり顔を洗い、水をコップに並々と注いで、一気に口に流し込む。

 ここからが肝心なんだが、嬉しいんだよ。可愛い愛弟子が、必死になって俺のために作り上げたタコヤキって。
 いいか! 美味しいか不味いかって言うのは、大した問題じゃない。大切なのは嬉しいかどうかってことだ。味は舌先と脳ミソの先っちょで決まっちまう。でもな、嬉しいってのは、もうちょっと奥の、胃袋の底のそのまた奥から生まれるものなんだ。

 夏休みの最後の宿題。自由研究が終わったかのような、清々しい気持ちだった。俺は、今の俺を、受け入れた。自然なものとして。俺は、変わった、のだろうか?

   * * *

 それでも季節は巡っていく。秋、になった。今年は早めに残暑を超え、嘘みたいにすっかり涼しくなった。穏やかな、いわし雲が浮かんでいる。ゴリラも気持ちよさそうだ。
 子供たちもその母親も公園に戻り、ウチのタコヤキ屋も大繁盛とまでは言えないけど、そこそこ儲かるようになった。
 そんな中、忘れようとしても忘れられないお客が来た。あの時の祭りの女の子だ。
「おじさん、タコヤキちょうだい!」
 それから屋台をまじまじと見つめ
「300円? 安くなってる。祭りの時だけ、400円だったでしょ? ずるいな」
「あれはな、おいちゃん、他の店に合わせてやったんだよ。おいちゃんのところだけ安かったりすると、他のタコヤキ屋からクレームが殺到するだろ?」
「ふうん」
 話を交わしながら神経を指先に集める。
「ほら、焼きたて美味しいぞ、食べてみな、きっとあったかくなれるから」
 女の子は首を傾け、すまなそうに
「ごめんなさい。おうちに帰ってパパと食べるんだ、半分こにして」
「そっか、ごめんなウチは」
「あのね、パパがタコヤキ代くれたの、夏休みの宿題、さぼらずに頑張ったからって」
「そっか」
「焼きたて、きっと美味しいから食べてこいって…… でもね。わたしわかってるんだ。パパもタコヤキ食べたいって。だってパパ、薬局に行くときにオコヅカイいあげるから「キレジ」のクスリ買ってきなさいって言ったんだよ」
 脈絡のなさも手伝って、堪らず笑った。
「切れ痔か。恥ずかしがり屋なんだなあ」
「こっちはなんにも知らないと思ってんだから……」
 ククッと笑う。俺も何だか愉快な気持ちになった。それを壊したくなかった。こんな時、俺の中のプライドはちっぽけなものなんだと、俄かに思えた。
「ああ、ごめんな、おいちゃん、ちょっと失敗しちまった。作り直すからもうちょっと待っててな」
 油を少なめにする。油は焼きたての時はパリパリ感を演出するが、時間を置くとグシュッとなり周りをベタつかせてしまう。具となるあげ玉も、冷めると香りがしつこくなる。だから控えめに。代わりにネギを多めに入れた。
 ソースとマヨネーズと青のりとカツオブシをかける。
「出来た」
 仕入れの時に余った、大きめのビニール袋に入れる。
「それとな、こいつもお父さんに持ち帰りな! タダだぞ、スマイルだ」
 唇を曲げると、妙に不格好な顔になった。鏡を見るまでもない。顔面の筋肉がそう言っている。
「くくっ、おじちゃん、おっかしい!」
 もっと笑顔をつくろうと思った。だけど、ありがたいことに、自然と口の端は持ち上がり、目は細くなった。
 不器用な笑顔がひとつ、つられてもう一つ笑顔、それを受け取って俺の顔はもっと深く。
 てやんでい! そうして俺は今日も生きていく。そう決めたんだ。
えんがわ
2013年07月26日(金) 23時52分24秒 公開
■この作品の著作権はえんがわさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
よろしくお願いします。

8/16 21:36
8/1
人知れず改敲。
雰囲気や軽さは、消えてしまっただろうけど、自分の目指したものに一歩、近づいた感じ。

この作品の感想をお寄せください。
No.18  えんがわ  評価:0点  ■2013-11-24 19:04  ID:31Q5QOLXqEI
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>青空さん
食欲を刺激できたら、本望です。よかった。
たこやきとかうどんって、関西の方がダシが効いてて旨そうって感じがします。関東な自分には羨ましいっす。

夏を書いてたので、冬でも何かしら通じたのが、すごく嬉しく、心強く、勇気づけられ、ありがたい。
No.17  青空  評価:50点  ■2013-11-22 23:44  ID:wiRqsZaBBm2
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おいしそう(笑) 執念だ。執念。食べ物は万人のためにある。
そして、私の好物ということもあり、読める。そして、お腹がすく、関西の大事なたこやきが食べたいです。ちなみに、うどんも。
No.16  えんがわ  評価:--点  ■2013-08-21 20:34  ID:1rXVLSXzIUI
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>帯刀穿さん
お久しぶりです。わー、また会えて、足跡まで残していただけるなんて。

>感情が文章に乗って伝わってくる。
勿体ないお言葉、恐縮です。ここら辺は自分でもコツはわかってないんだけど、目指す文章は多分こんな感じなのだと思います。

>のっぺらぼうの師匠や、他のお客さんたち。
>膨らんでくるもやもやとした不安感
改敲の時に、思い切って足してみたのですが、こう、印象に残していただき、無駄じゃなかったとじぃんと浸ってしまいました。

>物語としての歯切れは悪い。
その代わり、分量やジメジメを大きくしたために、このようなアキレス腱を抱えてしまったようで。テンポが落なかったようなのは幸いですが、切れ味が落ちちゃった感は自分の中にもありました。

鋭くするアドバイス、ありがとうございます。
この中で今の自分の力で出来そうなのは、「お客さんへの対応している時の台詞と内心のギャップ」かな? ダラダラでも楽しいダラダラを作りたいな、って思ってます。

区切りは、一区切りごとの文章が短めになってしまい、常に弱点になっています。雨は……帯刀さんにも目を通してもらった雨の日がメインの文章を、身の程知らずにも書いたりしてて、ほんと無謀なことを。読書量と読む時の意識を高めなくちゃ!

改敲後のものは誰の目にも留まらなそう、と思っていたので、こんなに丁寧に読んでくださっただけで、心が弾むほどに嬉しいです。ありがとうございました。
No.15  帯刀穿  評価:30点  ■2013-08-20 19:24  ID:DJYECbbelKA
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相変わらず、テンポのよい話の展開。感情が文章に乗って伝わってくる。
のっぺらぼうの師匠や、他のお客さんたち。
縁日でのタコ焼きは、それなりに売れると思う。膨らんでくるもやもやとした不安感をうまく書いている。ただ、物語としての歯切れは悪い。そういうところは俺に似てしまったのだろうか(苦笑)
もう少し、イライラ感と鬼気迫る表情とか、無心で焼いている時とか、お客さんへの対応している時の台詞と内心のギャップとか、鋭くできるかもしれない。日付をあまり気にせず、「お客さんとの対話シーン」で切っていった方がよいかも。何しろお客さんは一人一人精神状態が違うから。
あと、霧とか、雨などの描写はもっと表現があるはず。どこの小説でもよいので学ぼう。
No.14  えんがわ  評価:--点  ■2013-08-15 21:49  ID:1rXVLSXzIUI
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>昼野さん
ああ! ありがとうございます。
以前から、昼野さんの作品は時々、覗かせていただいて、自分では行けない所を切り開いてて凄いなー、と思ってました。
特にクックドゥドゥーしか喋れない女の子の話? はとても刺激を受けました(パクってしまいました。すいません)
キレジが与えた縁なのかな?

私生活、人間性とのこと。
やっぱ、この文章は無駄な部分があったり、かといえば足りない部分があったり、推敲不足をひしひしと感じます。もっとガンガン慎重に行かねば!
えと、まさか声をかけてくださるとは思ってなかったので、興奮してます。
ありがとうございました。
No.13  昼野陽平  評価:30点  ■2013-08-15 15:47  ID:NnWlvWxY886
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読ませていただきました。
何かにひたむきなってる人はかっこいいなとか思いました。
キレジというギャグもいい感じでした。
注文をつければもうちょっと主人公の私生活について書くと、人間性に厚みが出るかなと思います。
自分からは以上です。
No.12  えんがわ  評価:--点  ■2013-08-09 22:02  ID:1rXVLSXzIUI
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>坂倉圭一さん
はじめまして。
冒頭ですか。他の物でもかなりの頻度で冒頭のご指摘を受けるので、悪癖になってるみたいです。
自分は比喩を多用する傾向があって、それも安易に使ってしまっていると気づきました。
特にロンドンを出したのは、埼玉っていうのを繋げて舞台説明しようという小細工のもとに行われたのでした。うー、いい加減。

>比喩というものは、物語の雰囲気を決めてしまう
とても心に響きました。出来る範囲で改敲して、これから文章を書くときにも意識できたら、と思います。

全体は何とかなったようで嬉しい。
冒頭の粗でめげずに、最後まで読みすすめていただいて、ほんとありがたいです。ありがとうございました。
No.11  坂倉圭一  評価:30点  ■2013-08-09 19:33  ID:md7rtEPfapg
PASS 編集 削除
読ませていただきました。

冒頭ですが、雨が「ぽんぽん」と垂れたと表現がされてありますが、次の文章では「霧の都ロンドンの濃霧」という言葉で比喩的な言い回しがされてあります。「ぽんぽん」と「濃霧」に少し相性の悪さを感じました。
また比喩というものは、物語の雰囲気を決めてしまう、ということを何かで読んだことがあります。こうしたことも配慮されてみてはいかがでしょうか。

全体のお話はとても良かったです。
ありがとうございました。
No.10  えんがわ  評価:--点  ■2013-08-06 03:24  ID:1rXVLSXzIUI
PASS 編集 削除
>gokuiさん
読みやすさと面白さが両立できたようで、何とか形になったんだなって実感して。嬉しいです。
情景は浮かんでくれたようで、うん、よかったよかった。
深みは…… あー、元々あさい自分があさい意気込みで書いたんで、無いっす。
もう志の時点で水溜りみたいに浅いです。
どうもここら辺を欲張ると、好感を持っていただいた部分がスポイルさせれしまうようで。でっかい課題。
でも挑まなきゃ! ってパワーを頂きました。失うものなんて無い! 基本、脱力で、でも何時かはっ。

>藍山椋丞さん
「主人公の矛盾」これは悩みました。

一つ一つに、20行くらい費やして何か書こうとしましたが、見苦しい言い訳にしかならなそうなので、ボツりました。

その中で「焼きたて」は、この文章の中心としたい部分というか、主人公のこの変化こそが自分が文章に込めた肝でした。
なので「少しは納得」、っていうのは、ズシンときました。十分に納得させなきゃと。
前フリが長い割に、後半はちょっと展開が急すぎたかな、慎重さを欠いてしまい、そこが原因かなと、思うのですが。うーん。

もう一つズシリときたのが。
この主人公のアイデンティティーの確かめ方が前を向いていなく「他者を蔑んだり、下に置くことで保たれている」ってのに気づいた点です。
本来なら、ご指摘いただいた「修行時代の失敗や成功、親方とのエピソード」が、自信の中心になければいけないと。
ここは無自覚でした。
ただ無自覚なりにそうした価値観の変化を軸に置こうとしていたのが、この駄文の救いかなと思いました。
でも、もちろん、こんな生っちょろいもんじゃなく、もっと劇的に破壊的に、かつ丁寧に描かないと奏功しないとも気づきました。
そこが「深み」かな。こんなん自分には無理だ。あー、でも、そんな高いハードルがおぼろげながら見えた気がして、感謝! です。きっと何時かは飛びたい。

日付は小細工しすぎたようで。書いてる内に区切りが欲しくなってしまい、それをそのまま残しちゃいました。甘甘でした。

>ゆうすけさん
「変なプライドがあって不器用なところと、愚痴っぽい」ってのはマイナスイメージかな? って思ってたので、
「おー、好感持つ人もいるのか!」って凄く肩が楽になったっていうか、いやー、じぃんときました。

あっ、はい。もちっと主人公を絶望させないと、光は際立たない感じで。
ドラマっぽさと現実っぽさのどっちを取るかというと、現実っぽさを選んでしまい、そこら辺カタルシスが薄くなりましたです。
前と同じく、劇的に破壊して、再生させるような荒療治が必要だったのかも。でも現実との地続き感は大事にしたくて、両立する腕前は今の自分には無くて。

ひねくれてしまったところは、あれですね。
最後に女の子が主人公の目の前でタコヤキを食べて「美味しい!」って言って締めって感じだったら、美味しさは幾らか伝わったかな?
でも、そうせずに、読者さんにタコヤキの味をお持ち帰りにしてしまいました。
ここはこの文章を書く大きなモチベーションとなった部分なので、変えれませんでした。
ほんと、其のくせ、そんなヘマをフォローする描写が出来ず、ここらへんはムズイと痛感するところです。
でも、食欲のために生きているような自分なので、何とかここをクリアしないと先に進めないようにも思いました。うん。

たこ焼き、実際に食べて下さり、ありがたいです。メチャクチャありがたいです。たこ焼き、美味しいですよね。そんな体験が少しでも幸せに繋がったら幸いです。
No.9  ゆうすけ  評価:30点  ■2013-08-05 16:36  ID:1SHiiT1PETY
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拝読させていただきました。

主人公のキャラが面白いですね。変なプライドがあって不器用なところと、愚痴っぽいところがいい味だしています。
「俺は真面目に仕事に取り組んでいるのに、あんな連中ばっかりが儲けやがって悔しい」仕事一筋の職人さんは誰もがこういった切ない感情を抱くものだと思います。
展開がやや短調だと思います。「もうやめちゃおうかな→いや、やっぱりやめない」ありきたりですが、一度挫けそうになってからの気力回復の方がカタルシスがあると感じました。 

日付によって進むやり方は私も無意味だと思いました。普通の小説としてつないでいく方がスムーズだと思います。

たこ焼きを美味しそうに思わせる描写がもうちょっと欲しい気もしましたが、どう書けばいいか私も分からないですし、描写って難しいですよね。
お客さんが食べたにしても一人称視点だと書きようもないし。むう。

これ読んでから屋台のたこ焼きを買って家族で食べました。食べ物を題材にするのも面白いですね。
No.8  藍山椋丞  評価:20点  ■2013-08-05 12:50  ID:i/iCocdcxPo
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初めまして、藍山椋丞と申します。
読ませていただきました。
全体を通して最初に思ったことは「主人公、スゲー矛盾してるなァ」です。
まず、この仕事は時間が感じられる、と言っておきながら「もう六時か」とつぶやいたり、利益主義のハンバーガー屋やたこ焼き屋を批判していながら、自分も売り上げ、つまり金を儲けることを熱望していたり、焼きたて以外は食わせないと言っていたのにすぐに前言撤回しているところが、うーんと感じました。
といっても最後「焼きたて以外〜」はちゃんと理由(らしきもの)が描写されているので少しは納得できましたが。
あと、日記風な書き方の必要性はあったのかな?と。普通に書けばいいと思いましたね。
主人公も客商売とは思えないほどの上から目線で感情移入するのが難しかったです。(私自身も客商売を長くやっておりました)たこ焼きの素晴らしさをアピールするのはいいと思うのですが、同業者や異業者をこき下ろすのは読んでいて気持ちの良いものではありませんでした。そもそもその描写が必要だったのか?という疑問が消えません。
文章は分かりやすく書かれていて良い感じでした。強いて言うなら「タコヤキ」というタイトルなのでたこ焼きを焼く風景、描写をさらに増やして厚みのあるものにすれば、もっと良かったように感じました。例えば修行時代の失敗や成功、親方とのエピソードなどなど。そうすれば深みが出たかもしれません。
偉そうなこと言ってすみませんでしたー。


No.7  gokui  評価:40点  ■2013-08-04 22:14  ID:3.rK8dssdKA
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読ませて頂きました。
うん、これは読みやすくておもしろくていいですねえ。
読み始めて、これはナンセンスギャグ小説かなと思いきや、最後はちゃんときれいに締めてくれました。
情景もちゃんと目に浮かんでくるように丁寧に描けていると思います。あとは、物語にもう少し深みが出れば満点でも良かったかな。
それでは、これからも楽しみにしています。頑張って下さいね。
No.6  えんがわ  評価:--点  ■2013-07-30 20:02  ID:1rXVLSXzIUI
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>かたぎりさん

あああ、ありがたい!
とにかく好きなものをグツグツしたものを、語るように、喋るようにやってみようと、やってみました。
それがパッションなのかな? かなり荒削りだったろう文章をそう受け入れていただき、なんだろう、とてもホッとしました。

語り手との距離感。ですかー。
これは殆ど無意識だったので、新たな視点をいただき、むしろ自分の方が勉強になりました。読み直してみると、なるほど暑苦しいほどに近い。
目線の移動や会話調の考え事あたりは、頑張って入れてみたのですが、それがそう作用したのかな。
「シンクロしていく感じ」ってのは、ほんと思ってもみなかった言葉で、「そうそう、そう言うの書いてみたかったんだ」と、発見した感じです。
共に歩むような共感しやすい文章、のような?
ここら辺の距離感を遠ざけたり、近づけたり、統一させたり、もうちょい意識していけたら、と指針が見つかった感じです。

天気予報はかなりねじ込んだ力技だー。ほんと自然な繋がりで自宅まで案内できていたら、と猛省。
力量が至らなかったところです。何とか、粗い感じで、下手ウマで、お願いします。

不出来な文章でしたが、笑ったり、熱くなったり、そうお伝えしていただき、ありがたいです。とても幸せです。

(今更ながら、「夏と冬のオリオン」読みました。突然で間接的な別れを実感していく過程、起伏がありながら丁寧に優しく綴られていて。目頭が熱くなりました。
こんな繊細な小説を書くかたぎりさんに、こんな勿体ないお言葉をいただけて、何か照れちゃうというか恥ずかしくなってしまうー、うう)
No.5  かたぎり  評価:30点  ■2013-07-29 01:29  ID:n6zPrmhGsPg
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こんにちは。感想を送らせていただきます。

熱い小説ですね。夏が舞台の、たこ焼きに命をかける男の話だからそう感じた部分もありますが、何より文章に込められたパッションに胸打たれました。漢の料理ならぬ、漢の文章。つっかかる部分、整いきっていない部分も少なからず見受けられましたが、それを補ってあまりある、俺はこれを書きたいんじゃ! というような表現へのこだわりがとても良かったです。作品ともリンクするものがありますしね。
また、特に前半部分について感じたのが、文章の距離感です。
一人称小説でも、少し離れた感じがするものと、もっとダイレクトに「私」を感じるものがあるんだな、などと思いました。この作品の文章はとても近い。
あっちいったりこっちいったりというリアルな視線、リアルな独り言を覗き、読むほどにシンクロしていくような感じがして、とても新鮮でした。

構成としては、天気予報のあたりは、ドラマを展開するために少し強引に入れ込んであるように思います。日記を抜き出すという形式ではありつつも、ワンクッションなり前後の繋がりなりがあれば、また印象が変わったかもしれません。もっとも、そういった粗ささえ、この作品の魅力だとも思えるのですが。

笑える部分、熱くなれる部分が多くありました。ひとつひとつ抜き出すことはしませんが、読んで良かったと思える作品だったとは、最後にあらためてお伝えしたいです。
これからのご活躍を期待しております。それでは。
No.4  えんがわ  評価:--点  ■2013-07-28 19:03  ID:1rXVLSXzIUI
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>書記長島耕作さん

こんばんは。
文章は上手とのこと、うーんそう思われるほど上手くはないんですが、それでももっと下手でも旨いものを書きたいなーって思いました。
上っ面だけの人間になってしまったんだろうか。
構成はもう反省です。10のものを考えて、7、8に削るのが理想なんでしょうが、12くらいにまで膨らんじゃって。
特に女の子が出るまでの助走期間に、全体のバランスでかなりの枚数を使ってしまったのは、大失敗です。
でも、個人的にタイトでメッセージが明確な作品よりも、だらだらした感じで何となく感じるような方が自分には合ってるんじゃないかなとも思います。
書記長島耕作さんのおっしゃるスマートでズバッとした作風には挑戦したことはあるんですが、キーボードも乗らず、思ったように書けなくて。
あー、醜い自己弁護。ほんと。
最後まで読んでいただきありがとうございます。それに応える読後感を提供できず、ひらすら申し訳ない。です。
No.3  書記長島耕作  評価:30点  ■2013-07-28 01:43  ID:cM0bPnvGwjU
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拝読しました。文章とかお上手だなあ、と思うんですが、構成にタイトな感じがなくて、行き当たりばったりに書いたものを読んでるかのような印象を受けてしまいました(そんなことはないんでしょうけれど)。全体を通して何をやりたかったのか、何を伝えたかったのかがよくわからず、うすぼんやりした読後感になってしまいました。やることを絞り込んで、もう少しコンパクトにまとめたら、もっとよくなるんではないかな、と勝手なことを思いました。
以上です。
No.2  えんがわ  評価:--点  ■2013-07-28 00:26  ID:1rXVLSXzIUI
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>楠山歳幸さん
ほんとにもったいない言葉、ありがたい。自信喪失気味で削除癖がある自分には最高の薬です。
こちらの都合で、最近いろいろなの削除し続けてしまい、すいません。もっと強くなりたいです。

おもしろいってのは最近の自分でもよくわからなくなってしまい、そう思っていただき嬉しいです。
食べ物知識は、付け焼刃のニワカ知識です。間違いと嘘ばっかだと思われます。
シメは湿っぽくなって感動路線を狙っちぇ的な悪癖があって、楠山さんの小説みたいな笑いの味が出てたら、嬉しいです。

描写はむずいですね。ちょっと浅いかな、でもテンポ良く進めたいなと、そこら辺のさじ加減がわからず……
どうにか好みに合ったようで、この調子でやってみようかなと、思いました。

タコヤキが食べたくなる、っていうのはすごく嬉しいです。読んだ人を少しでも太らせることが出来たら本望です。
なんというか毎度、食べ物だらけで、すいません。ストレートばっかで、そろそろ肩を脱臼しそうです。
No.1  楠山歳幸  評価:50点  ■2013-07-27 00:22  ID:3.rK8dssdKA
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 読ませていただきました。消されると悲しいので、ざっとですが(失礼)感想を書かせてください。
 主人公の心意気や事情、少女とのやりとりがテンポもあっておもしろかったです。
 タコヤキへの愛情?もひしひしと伝わって来ました。ハンバーガーやかき氷の知識も、うんそうそうと思わずうなりました。笑顔のシメも良かったです。
 描写も良かったです。雨の公園、屋台の雰囲気が伝わって来ました。
 白状すると、わたしはあまりグルメには興味がなかったりしますが、タコヤキが食べたくなる作品でした。
 失礼しました。
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