私なりの生き方
 6月中旬のある日のこと。私こと、宮野まことは帰り道を自転車で急いでいた。文化祭の準備で、すっかり帰宅時間が遅くなってしまったのである。
 途中で寄る予定だった図書館を取りやめ、人や車に気を付けながら猛スピードで走っていた。
 そのせいで体は汗でグッショリと濡れ、無理をして今にも悲鳴をあげそうな足など気にもせず、ただただ「暑い……早くお風呂に入りたい」という気持ちで頭はいっぱいだった。

 ――けれど、いったいいつからこんな、誰もが思うようなことで頭の中を満たすことができるようになっていたのだろう。
 ほんの3ヶ月前までは、毎日毎日不安と絶望が私の全てを支配していた。自分に自信がなかったために、自ら周りを遠ざけ、結果的に遠ざけられ、さらに傷つきより消極的で身の回りに無関心になっていく……という悪循環の繰り返しだったのに。
 この短期間でよくここまで改心できたものだ、と自分でも心底驚いている。
 
「高校生活は人生の中で一番楽しかった!!」と周りの大人がそろって言うものだから、せめて高校だけでも、と思うようになったのが性格を変えようと思
った一番の理由だった。
 これでも小学校低学年まではクラスの中心人物的な存在だったので、またあのころのようになれるのでは……というような期待とともに高校へ入学したのである。
 
 やはり、上に書いたようには上手くいかなかったけれど、今のクラスでの立ち位置には十分満足している。
 最近では、休憩時間に友達が机の周りに集まってくるようになった。中学の時には経験できなかった嬉しさと満足感で、初めは目の前で起こっている光景に頭が真っ白になった。

 女子の間では常識とも言えるべき「団体行動」にも困らなくなった。とは言っても、まだ周りと比べて積極性に欠ける私には、一人で動かざるをえない状況が少なくもない。
 昔の私なら、独りになるというだけで、一日中自分の情けなさやら絶望感で悩まされていたことだろう。
 ……しかし今では、その理由もはっきりとわかっていて、これは故意であることを自覚しているためにそんなことは無くなった。
 むしろ、一人で居られる時間を提供してくれている周りに感謝したいくらいである。

 よく言う「積極的に周りとのコミュニケーションをとろう」とか、そんな重荷を増やすような言葉に従う必要は無い。会話というものは、無理をしてするものではなく、楽しむためにあるのだから。
 興味が湧き、ふと疑問に思ったことを口に出して聞く。相手の返答に対しては、納得がいけばわかったという姿勢を示し、さらにそのことについて新たに思い浮かんだ疑問をぶつけていく。わからなくとも、わかるまで聞いて理解を深める。
 相手の振ってきた話にもよく耳を傾け、ある程度限度はあるが、その内容に対しての自分の意見や感情を表に出す。ただ、それだけでいい。

 ――もっと自分に素直になろう。そうすれば、私なりの幸せが見つけられるはずだから。
 そんな想いを胸に、今日も私は、なんの変哲もない一日を終えようとしているのであった。
 
アイスティー
2016年06月16日(木) 00時34分06秒 公開
■この作品の著作権はアイスティーさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
みなさん、初めまして!
今回初めてこのサイトに小説を書かせていただいた、アイスティーという者です。
私は現在、現役で高校生をやっております。ほんの興味本位で投稿した作品ですが、どうか温かい目でみてやって下さい。

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No.1  灰梅  評価:10点  ■2016-07-06 16:17  ID:wdH7c1G.dEQ
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 日本語は語順に寛容だから、その並べ方の癖みたいなものが作品の雰囲気につながる。句読点が適量で、書いてあることがすらすらと頭に入ってくる。読みやすい文章だと思う。
 書かれている内容は、まだ物語になっていない。読み手が知りたいのは具体的な出来事である。主人公に何が起こり、それをどのように考え、どうアクションして、結果的にどうなったか、だ。
 もうひとつ、読み手は興味をなくすと読み進めるのをやめる。読ませるためのエンジンが必要。それはスリルやサスペンスだったり、謎だったりする。
総レス数 1  合計 10

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