選択ーbadend改訂版ー |
「はぁっ、はぁっ、はぁっ。」 もう何がなんだか分からなかった。 俺はただ、ひたすら現実から逃れるためにがむしゃらに走り続け、そしてある教室にたどり着いた。 すべての始まりだったあの部屋に。 この前の月曜日、俺はいつもと同じように学校へ行って、アイツらと馬鹿やってたんだ。 なのにいきなり気持ちの悪い怪物と男の人が現れた。 まるでそこに前からいたかのように。 そしてその男の人は俺たちに向かって、 「殺し合え。最後まで生き残ったやつにはどんな願いをも叶える力をやる」 なんていってきやがった。 当然俺たちは信じなかったし、先生は学校から追い出そうとしてた。 そしたら急にあの怪物が先生に寄生して、他の先生達を殺して。 皆そりゃパニックになるし、あんなもん見せられて戻しちまうやつだっていた。 混乱していることには変わりないが、周りに比べ俺は比較的冷静な方だったと思う。 あまりにも現実離れしすぎたのか、それともその男の人に見覚えがあったからかもしれない。 どこで見たかは覚えてないし、本当に会ったことがあるのかさえあやふやだが。 寄生された先生以外のすべての先生が殺された後、怪物は先生から出てきて、その瞬間 寄生されていた先生も死んでしまった。 誰も、何も状況を理解出来ないまま、その男の人と怪物はまるでそこに存在していなかったかのように消えていった。 それからどれくらい経ったのか分からないが、ある生徒がポツリと呟いた。 「本当に最後まで生き残れば願いを叶えてくれるのかな。」 俺は耳を疑った。 あんな怪しいやつ、しかも先生らを躊躇なく殺すようなやつが言った事を信じる人がいるとは思わなかったのもあるが、なによりそれを言ったのがアイツだからだ。 「お前、今なんて言った。」 「本当に願いを叶えてくれるのかなって言ったんだよ。僕には叶えたい願いがあるから。たとえそのためだった悪魔だろうが怪物だろうが命を売っても構わない。」 信じられなかった。 目の前で先生達が殺されるより、あの怪物の存在より、なにより優しかったアイツがこんなこと言うことの方が。 でも、アイツの目は覚悟を決めたような、今まで見たことのない目をしていたから、 俺はついその場から逃げてしまった。 あれからどうなったかは詳しくは知らない。 けど俺の予想通りなら...。 それから何日経ったのか。 幸い食べるものや飲むものは体育館に用意されてあり、俺は必要な分だけを持ってグ ラウンドの脇にある倉庫に立てこもっていた。 ホコリっぽかったが、特に困ることもなかった。 だが、どうしてもあいつのことが気がかりで、寝ることはほとんどできなかった。 そろそろ精神的にも、身体的にも限界が来そうで、いつまでもこうしている訳にはいかないと俺が思い始めた時、トビラを叩く音がした。 アイツかと思って警戒してたが、君の声で、俺は安心したと同時に少し落胆した。 君は俺とはクラスも違ったし、もしかしたらこの状況とは無関係な所にいるかもしれないと少し期待していたのに。 とりあえず外にいたら危ないとトビラを開けたら、そこにいたのは俺が想像していた君と違い、血だらけで、倒れそうな君だった。 俺は急いで中に入れ、倉庫にあった布などで傷口を塞いだ。 けれど血は止まることなくどんどん溢れていく。 俺の手のひらも、そして君も、真っ赤に染まっていった。 君を失いたくはなかった、だから必死で血を止めようとしていると、君は少し目を開けて、俺の手をつかんで、言った。 「ねえ、もう分かってるでしょ。私はもう死ぬの。だから、私と最後の約束して?貴方は誰も殺さないし、死なないって。アイツにもう誰も殺させないで。アイツはもう貴方にしか止められない。わたしの言葉なんか聞いちゃくれなかったもの。だからお願い。アイツをとめ...て......。」 彼女は悲しそうに微笑んだまま、目を閉じた。 もう、俺は何も考えられなかった。 いや、考えるのを放棄したの方が正しいのかもしれない。 もう、なにもかも限界だった。 親友も、好きな人をも失った。 耐えられなかった。 トビラを叩く音がした。 俺がトビラを開くと、そこにはアイツが立っていて......。 「は、ははっ、はははははっ」 俺は狂ったように笑いだした。 いや、もう狂ってしまったのかもしれない。 もう、なにもかも壊してしまいたい。 「お前が最後の生き残りだ。お前が叶えたい願いはなんだ。」 俺の願いは......。 言いかけてふと思った。 「なぁ、アイツの願いはなんだったんだ......?」 「アイツ?あぁ上原志郎のことか。あいつの願いはこの学校の奴らとあいつの家族を生き返らせることだったはずだ。そうすればこのゲームも終わるから、らしい。まぁ このゲームが始まったのは上原志郎の親が死んだことがきっかけだったからな。俺らとしては終わらなくて安心したが。で、お前の願いはなんだ。」 俺は耳を疑った。 俺はアイツのことを心のどこかで最低最悪の殺人狂だとか思ってたんだ。 本当は叶えたい願いなんかなくて、今までの親友としてのアイツは演技で、アレが本性なんじゃないかと。 けどちがったんだ。アイツはきっと優しいままだったんだ。 きっともがき苦しんで、覚悟を決めたんだ。自分でこのゲームに終止符を打つために。 そんなヤツを俺は......。 アイツは最低最悪なんかじゃない...。むしろ俺こそ最低最悪なんだ。 アイツのように誰かの為じゃない。自分自身の保身のために...。 「はやくお前の願いを言え。」 俺の願いは......。 下から吹いてくる風が心地いい。まるで俺の罪を吹き飛ばしてくれるみたいだ。 きっとこの先に足を踏み出せばもう元には戻れない。 ごめん、俺君との約束破っちゃうね。 でも、アイツらの夢や願いも台無しにして、俺にはここに存在する理由が見つからなかったんだ。 それに2人だったらお似合いだしね。 だからきっとこの選択が俺にアイツに、そしてなにより君にできる唯一の...。 「ねぇねぇ志郎、そういえばもう1人誰かいなかったっけ?」 「え?なんのこと?」 「だから何時も遊んでたメンツにだよ。なんか居たような気がするんだけどなぁ。」 「言われれば確かに......。けど覚えてないし気のせいじゃない?何時も遊んでて覚えてないとかありえないし。」 「ま、そっか。そりゃそうだよね。あ、あのさ、その、言いたいことがあるんだけどさ......。」 「ん?どうした?」 「あの、さ、付き合ってほしいんだ。その、志郎のこと好きだから、さ。」 「え、まじ!ほんとに?ほんとに僕でいいの?よっしゃ!もちろん喜んで!」 「やった!んじゃ改めてこれからよろしくね志郎!」 「うん!」 |
tama
2015年09月07日(月) 15時09分51秒 公開 ■この作品の著作権はtamaさんにあります。無断転載は禁止です。 |
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No.1 時雨ノ宮 蜉蝣丸 評価:20点 ■2015-09-10 23:16 ID:WTIMKAhaPbM | |||||
こんばんは。 前作よりも、流れはストーリーらしくなってると俺は思います。 が、シークレット要素が多くて感情移入とかの余地が無い感じがやっぱり強いです。こういうタイプの小説は、スピード感と同様に背景や心理描写があってこそ読者を殴りつけるだけの威力が出る気がします。 お気持ちはわかるのですが、これだと「さっさかカットの進む映像を外側から眺めている」感が強くて消化不良になりやすそうです。 頑張ってください。ありがとうございました。 |
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総レス数 1 合計 20点 |
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