bad end |
「はぁっ、はぁっ、はぁっ。」 もう何がなんだか分からなかった。 クラスメイト同士で殺し合いなんておかしい。 確かにこの戦いが始まる前に、最後まで生き残れば願いを叶えてやる、なんて言われた。 けれど、クラスメイトを殺してまで叶えたい願いなんかないはずだ。殺し合わなくてもこの戦いを止める術があるはずだ。 そう、ずっと考えていたんだ。だからこそあの子ともう誰も殺させないと約束した。 ならいま俺の手の中にいる冷たいモノはなんだ。 さっきまで俺はアイツから逃げていた。アイツは俺とは違ってたくさんの人を殺していて。それで最後の標的として俺が狙われたんだっけ。アイツは誰よりも命の重さを知っているはずなのに。 そしてついにさっき襲ってきた。 けれど、俺には戦うつもりなんてなかったから逃げてた、そう、逃げてたんだ。そして逃げている最中にアイツに足を撃たれて。アイツはそれを見てやっと仕留められるって笑ってたんだ。 その後俺は...。 「は、ははっ、はははははっ」 なんだよ、なにがアイツとは違うだよ。 俺だって我が身可愛さに人を殺したんじゃないか。 結局は俺とアイツは同じなんだ。俺もアイツもただの最低最悪の人殺しでしかない。 「お前が最後の生き残りだ。願いを言え。」 俺には人を殺してまで叶えたい願いも、満たしたい欲もないんだよ。 ただ、あの子と一緒に幸せでいられればそれで良かったんだ。 そういえば...。なぁ、アイツが俺を、みんなを殺してまで叶えたい願いを持ってたのか。アイツだけじゃない、この戦いに参加していた奴ら全員に命をかけてまで叶えたい願いがあったのか? 「さぁな。ただ、自分の家族を生き返らせる。それがアイツの叶えたい願いだったようだ。」 なんだよ、それ。 アイツはただの殺人狂じゃ無かったのかよ。なんで、夢も願いも何も無い俺が、アイツを、皆を...。 アイツは最低最悪なんかじゃない...。むしろ俺こそ最低最悪なんだ。アイツのように誰かの為じゃない。自分自身の保身のために...。 下から吹いてくる風が心地いい。まるで俺の罪を吹き飛ばしてくれるみたいだ。 きっとこの先に足を踏み出せばもう元には戻れない。 今から君のところへ行くよ。けど、先に謝らなくちゃね。 ごめん、俺君との約束守れなかった。結局2回も破ってしまうなんて彼氏失格だよね。これ以上君を悲しませたくはなかったんだけどさ。 でも、アイツらの夢や願いも台無しにして、俺にはここに存在する理由が見つからなかったんだ。 だからきっとこの選択が俺にアイツらに、そしてなにより君にできる唯一の...。 |
tama
2015年08月31日(月) 00時36分14秒 公開 ■この作品の著作権はtamaさんにあります。無断転載は禁止です。 |
|
この作品の感想をお寄せください。 | |||||
---|---|---|---|---|---|
No.3 Phys 評価:30点 ■2015-09-06 23:10 ID:nTlMBohGGrk | |||||
拝読しました。 主人公のセリフから始まる、映画の一場面を切り取ったような臨場感のある滑り 出しが良かったです。長さとしては掌編だと思いますが、背景説明がなくても、 設定が分かるように工夫されていると感じました。 設定としては、クラスメイトで凶器を使った殺し合いをしており、生き残った人 だけが願いを一つだけ叶えることができる、というものだと解釈いたしました。 すこしだけありがちな設定だと思ったので、点数は30点にさせて頂きます。 初めての作品なんですね。私も初めて自分で作った話をアップロードするときは とても緊張したことを覚えています。そして、本作が自分の書くものよりずっと 上手いことにちょっと落ち込みました……。 zooeyさんのおっしゃる通り、肉づけをすればどんどん面白くなりそうな作品だと 思いますし、作者さまも初めて書かれたとは思えないくらい文章が上手い方だと お見受けしました。書き加えたり消したりを繰り返して、さらに上達されたら、 きっともっと素敵な作品になるような気がいたします。 個人的には、主人公さんの独白だけでなく、他の登場人物との動きがあった方が より物語として読みごたえがあるような気がいたします。 また、読ませてください。 |
|||||
No.2 tama 評価:--点 ■2015-09-02 19:37 ID:FVNkHzi1xs2 | |||||
zoonyさん感想ありがとうございました 私が思っていた以上の高評価でほんとうに嬉しかったです。 指摘していただいたところもなるほどと思うような点ばかりで、まだまだ練習しなければいけないなと思いました。 zoonyさんの御意見を参考にさせて、これからも頑張っていきます。 |
|||||
No.1 zooey 評価:30点 ■2015-09-01 18:06 ID:L6TukelU0BA | |||||
読ませていただきました。 初めて書かれた作品ということですが、 はっきり書かずにも行間から、語り手が「あいつ」にしてしまったことを読み取らせることに成功していて、 その点がとても良かったと思います。 また、「逃げている」と思わせておいて、実は......というのも、 予想を覆す技術が自然に使われていて、お上手でした。 文章も読みにくいこともなく、最後まで進みました。 ただ、改善点も見受けられたように思います。 まずは、設定の曖昧さにより、物語に入り込めない点です。 なんとなく、バトル・ロワイアル的な戦いが繰り広げられている、というのは分かるのですが、 起こっている出来事がはっきりしないまま、ジェットコースター的に速い回想形式での物語進行で、 ちょっと追いつくのが大変かなと思います。 戦いに勝てば願いが叶うとはどういうことなのか、 首謀者は誰なのか、なんのために仕組まれているのか、 「君」や「あいつ」とは誰か、一体何があったのか、 そういった点がはっきり書かれていないと、なかなか感情移入が難しいかなと。 特に、人間関係や彼らとの間で起こったこと、彼らの人となりなどがわからない点は、 それがラストで主人公が命を断つという決断を下すきっかけになっているだけに、 大きなマイナスになっているように感じます。 逆に言えば、その人間関係とか人物描写だけでもしっかり構築して、丁寧に提示していけば、ぐっと読み応えのあるものになりそうで、 その意味では僭越な言い方ですが少しもったいなかったかなと思います。 あとは、より臨場感を作品に与えるためには、 逃げている(走っている)場面と回想の場面を分けた方がいいかなと思いました。 普通、必死に走っている時って、他のことを考える余裕がないと思うんですよね。 なので、走っているのだったら、その様子を描写することに徹底し、 洞窟とかどこかに身を隠して息を整えながら思い返す、 という方が自然な気がします。 その方が単純に読み手にスリルを感じさせられますし。 また、はじめにも書いた通り、ちょっと早足の展開なので、 もう少し出来事を細かく描くことでスローダウンしてもいいかもしれません。 早い展開で読ませる作品にするのは、書きなれた方でも難しいと思うので。 最後に、文章の書き方として、 「...」や「―」は二文字分つなげて使うのが一般的です。 なので特に表現上の意図がないのでしたら「......」「――」とした方が無難かと思います。 いろいろと書いてしまいましたが、 伸びしろのある良作だと思います。 ありがとうございました。 |
|||||
総レス数 3 合計 60点 |
E-Mail(任意) | |
メッセージ | |
評価(必須) | 削除用パス Cookie |