顕微鏡越しの過去。
もしかしたら。いつか。
マンモスがシベリアのツンドラの上を歩み、ニホンオオカミやエゾオオカミが日本の野山を駆け巡りニホンカモシカを食する時が。
北米の上空にはリョコウバトが舞、人々が趣味で制限された羽数を撃ち落とす。もしかしたら生け捕りにして面白半分にカワラバトと交配させてみたりするかもしれない。
地上にはスミロドンがたむろし、その牙で動物園の賑やかし役になっていて、その頭は剥製にされてどっかの金持ちのリビングの壁にかかっているかもしれない。
タスマニアにはタスマニアタイガーが影の中をうろつき、サバンナにはグレイビーシマウマに混ざってクワッガの姿が認められるかもしれない。
南アメリカの農場は恐鳥類から農場荒らしにあっていて家畜が食われて、そして家畜を守ろうとしたやつも喰われているかもしれない。この肉食で地獄から来たティラノサウルスもどきニワトリみたいなのを相手にするのは大変だろう。
そして同時にマダガスカル島沖のナントカ島では猫不可になっていて野生のドードーが住んでいて、南アメリカ本土ではドードーが食料として飼われ、流通しているかもしれない。ってかドードーってただの飛ばない太った鳩の亜種だ。食って何が悪い。旨いかどうかは謎だか猫どもは好きならしい。猫の味覚がどれほど参考になるかは不明だが。

そんなこんなを実現させるのが僕の仕事だ。大学の研究所に昼夜問わず閉じこもって顕微鏡越しに小さいじゃ言い表せないほど小さい細胞の中をつつきまわしてアジアゾウの細胞をマンモスっぽく改造しいている……大概、成功しないが。成功したとしても長続きしない。細胞がすぐに死んでしまうのだ。細胞をうまく分裂させて胚にしてアジアゾウの胎内に突っ込んで二年後生まれてくれれば成功なのだが……そのアジアゾウ♀も


ん?あれ。ああそうだ。恐鳥類とかスミロドンは復活無理かな?危険だもの。たぶん。今いるひとのなかじゃ奴らと会ったやついないからな。ダイヤウルフやらタスマニアタイガーやらテラーバードやらスミロドンやら下手しなくても殺させるかもしれない。多分一発で殺してくれない恐鳥類のナントカに襲われるとか悲惨過ぎるだろ。最悪生きたまま喰われるぞ。


ってかなんで僕こんな事やっているんだろう。別に絶滅種が復活したからって世界は平和にならないし犯罪率は下がらないし就職率は上がらないし政府は腐ったままだし借金は減らないし僕を振った彼女は帰ってこない。
マンモスがシベリアに復活したら地球温暖化が止まるとか言われているけれど誰も証明出来ないし、マンモス復活によってかなりの経済効果が認められはするけれど彼ら一頭を製作するのにかかった費用はどんだけ頑張ったとしても回収は出来ないだろう。
マジで。なんで僕はこんな事をしているのだろう。



「………さん!わさん!春川さん!」
「………?まゆ。黛。はよ。」
研究所の机。僕は後輩の黛に乱暴に揺すり起こされる形で目を覚ました。体が硬く、そこら中が大声で苦情を叫んでいる
「体バッキバキだ。」
「そりゃ熟睡していましたから……寝言凄かったですよ」
そういえば誰か相手にめっちゃ何か話している夢を見た気がする。恐鳥類に喰われる馬鹿が居るとかなんとか。
「あ、春川さん、お昼ご飯を持ってきましたよ」
「え?」
「もう12時ですよ、春川さん」
マジか。窓の無い研究所だと本当に時間の感覚がなくなる。黛ははい、と下の売店に売っているポピュラーなハムチーズサンドを渡してきた。
「ドードーのハムサンドか……」
「何言ってるんですか、春川さん。」
黛が怪訝そうな顔をし、書類の間に埋もれているように存在する昔は白かったドアの方を見た。
「昨日、遺伝子解析できそうなドードーの骨が来たからって呆けてるんですか?ドードー復活はまだまだですよ」
「わかっている」
そうだった。マンモス関連の実験は一度終了し、資料はハーバードに引き渡されて僕は飛ばない太った鳩の遺伝子を相手している。僕は例のハムサンドを口に押し込み、部屋を出た。廊下を数十メートル進んだ先には遺伝子サンプルや顕微鏡が置いてある、研究室bがある。。昨日はここで遅くまでドードーの遺伝子を見ていて、多分日付が変わったあたり書類関連の事をするためさっきの研究室に戻って寝落ちしたのだろうか。
ドアを開け、清潔な一室に入る。部屋の片隅にある大きな電子顕微鏡は僕の大切な宝物で仕事道具だ。
今日も、僕は顕微鏡越しに明日を見ている。マンモスがシベリアのツンドラの上を歩み、ニホンオオカミやエゾオオカミが日本の野山を駆け巡りニホンカモシカを食する時を、北米の上空にはリョコウバトが舞、人々が趣味で制限された羽数を撃ち落としたり生け捕りにしたりして面白半分にカワラバトと交配させてみたり。
地上ではスミロドンがたむろし、その牙で動物園の賑やかし役になっていて、その頭は剥製にされてどっかの金持ちのリビングの壁にかかっている。
タスマニアにはタスマニアタイガーが影の中をうろつき、サバンナにはグレイビーシマウマにクワッガが時々混ざっていて。
そんな、あるかもしれないし、ないかもしれない、そんな未来を僕は見ている。顕微鏡越しの昨日を見ながら。

何故?分からない。いつの間にか、誰かの目標は僕のになって、僕は理由も分からないまま情熱を持ってマンモスを動物園で見ながらドードー鳥サンドを食し、リョコウバトを空から撃ち落とす日を、何故か、心から待っている。


願わくば、孫あたりにはマンモスやらを見せたいものだ。




ああ、顕微鏡越しに、ドードー鳥が微笑んでいる。
ローズ
2015年08月03日(月) 14時09分56秒 公開
■この作品の著作権はローズさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
お久しぶりです。ローズです。ドードー鳥って美味しいのかな。
絶滅動物をクローン技術によって復活させる研究があるので、それを題材に。

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No.3  ローズ  評価:--点  ■2015-08-04 23:35  ID:te6yfYFg2XA
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>中里さん
「もしかしたら、いつか」を後に繋げるの忘れていました。すみません
No.2  中里 与太郎  評価:0点  ■2015-08-04 23:40  ID:GiORvcoNz9o
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冒頭で、書き出しがダメだと読まないんですが。
意味もなくもしかしたら。いつか。
ってのはやめといたほうがいいと思います。

普通に、もしかしたら、いつか、なになにと書いたほうがいいと思います。
もしかしたらーー
いつかーー
もやめといたほうがいいかな。
引っかかりという意味で書き出しがダメなのは全部ダメです。
漫才でもつかみというものがありますし
掴まないと読んでももらえません
No.1  しょぼ  評価:0点  ■2015-08-04 00:47  ID:02vdbEm/EVA
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総レス数 3  合計 0点

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