アメンボ放送室 |
始めから話すと長くなるけれど、僕はアニメが好きだ。母親が働きに出ていて、自宅にあったDVDばかり観ていたせいかもしれない。とにかく僕は漫画より、アニメが好きだ。 アニメと漫画の違いって何だろう。アニメは動くけど、漫画は動かない。これは一つの違いだと思う。でも、漫画を読んでいる間は頭の中でキャラクターの動きをイメージしている気がするから、大きな違いとまでは言えなそうだ。 僕が思うに、アニメと漫画の一番の違いは、『声』の存在ではないだろうか。 アニメに声を入れる人たちのことを声優と呼ぶ。声優は、アナウンサーのように情報を伝えるのではなく、登場人物の個性や感情といった、もっと曖昧なものを伝える仕事だ。 そして、僕がアニメを好きな理由はそこにある。画面の中で動き回るキャラクターは、高速で切り替わる紙芝居と同じなのかもしれないけれど、そこに声の奥行きが加えられることで、彼らはより立体的に、生き生きとその存在を示してくる。 小さい頃は、日曜の朝が楽しみだった。母親とトーストを齧りながら、戦隊ヒーローとバイクに乗ったお兄さんの番組を観たものである。もちろん、僕が一番好きだったのは、その後に放送されていた魔法使いが出てくるアニメだった。 「お母さん、バイクかっこ良かったね」 「そうねえ……イケメンねえ……」 「早くアニメ始まらないかなあ」 さっきまでお兄さんの顔に釘付けだった母親は、アニメが始まると台所で洗い物に取りかかった。僕はテレビに齧りついて、わずか三十分間のアニメに夢中になった。 「おもしろかった?」 僕が名残惜しい気持ちでエンディングを見ていると、いつも母親はそう尋ねてきた。 「早く来週にならないかなあ」 「汝の願いに従い、正しき力を示せ!」 母親が泡だらけの両手でポーズを作りながら、魔法使いの師匠の決め台詞を叫ぶ。僕は悪役の声を真似て母親に応じた。こんな風に、昔はよく親子でアニメごっこをしたものだ。 そういうわけで、僕のアニメ好きは、こういう幼児体験に端を発するのだと思われる。 この趣味のせいで、少し困った経験をしたこともある。 例えば、これは僕が中学生の頃の話だ。その日、僕は仲が良かった女の子を家に招いていた。家には僕一人だけで、彼女を僕の部屋に案内することになった。 部屋に足を踏み入れた彼女は、驚いたような表情を浮かべて、こう言った。 「内海くんって、アニメとか好きだったんだ」 「うん。もしかして、春日井さんはアニメを見たことないの?」 「それはあるけど……」 「だったら、僕がおすすめを教えてあげるよ」 その日の彼女は、いつもとは様子が違った。学校の教室で話すときは、黒目がちな瞳を真っ直ぐ向けて話してくれるのに、僕が視線を合わせようとすると、ボクサーがパンチを避けるみたいに、するりと目を逸らされてしまうのだ。 「おすすめって、こういうやつでしょ?」 彼女がおもむろに天井を指差した。枕のすぐ真上あたりに、ポスターが貼られていた。とあるアニメの主要キャラクターが印刷された、集合写真みたいなものだ。 内容を知らない人でも分かるように僕が説明すると、彼女は分かったような分からないような返事で言葉を濁した。なんだか反応が悪かったので、僕は言葉を重ねた。 「他にもいろいろあるんだけど――」 「内海くんに、こういう趣味があるなんて知らなかった」 彼女はサイドボードに手を伸ばした。好きな声優のドラマCDが並んでいる一角である。 「今日知ってもらえてよかったよ」 「そうじゃなくてさ……」 まさに、奥歯に物が挟まったような言い方だった。 「ほら、こういうアニメって、ちょっと違うじゃない?」 「なにが?」 「こういうのは、ちょっと変わった人が見るやつで、普通のアニメっていうのはもっと」 「もっと?」 「だから、つまり……。私はあんまり見て欲しくないってこと」 僕はひどくショックを受けた。確かに、中学生になってから休み時間にアニメや漫画の話をする人が減ったような気はしていた。けれど、これが女の子に批判されるような趣味だなんて知らなかったのだ。NHKの教育テレビだって、アニメを放送しているのに。 彼女の滞在時間はそれから五分もなかったから、よほど僕の部屋にいるのが嫌だったのだろう。春日井さんは明るくて友達の多い子だった。付き合いがなくなってから、彼女が女子の間で僕の悪口を言っていることを風の噂で聞いた。 でも、僕がアニメ好きだということを彼女が周りに伝えてくれたおかげで、同じ趣味の人が声をかけてくれるようになった。だから、彼女とのことも悪い面ばかりではないのだ。 高校生になってから、新しく部活を始めることにした。友達が見に行こうと言うので、まずアニメ部の見学に行った。部員の先輩と好きなアニメの話をしているうちに、なぜか入部が決まっていた。話の分かる男だと褒められもした。 「内海は、他に兼部しないのか?」 友達はアニメ部以外に、漫画部にも入りたいと言っていた。僕はあまり漫画には興味がなかったので別の部活を見に行った。そうして立ち寄った部活の一つが、放送部だった。 掲示板に「見学者は放送室に来てください」とあったとおり、放送室に入ると、眼鏡をかけた女子生徒が椅子に座っていた。僕が扉を開けた音に気付いて、彼女は振り返った。 「入部希望者?」 「一年の内海です。まだ希望はしてないですけど、見学に来ました」 眼鏡の先輩は立ち上がって、慇懃にお辞儀をした。 「部長の宮野葉子です。この時間に来るってことは、他の部も見てきたのかな?」 部長らしき先輩からの鋭い質問に、 「もう入ってしまいました」と僕。 「どこ?」 「アニメ部です」 「アニ部か!」 眼鏡の先輩の顔に、明らかな焦りの色が見えていた。関係ないけれど、アニメ部という単語をアニ部と略しても、大した省略になっていない気がする。 「でも、兼部する気はあります」 「私は君みたいな一年生を求めてた」 すかさず、その先輩は入部届けのサインを求めてきた。しかし、僕はアニメ部のときの経験を踏まえ、簡単にはサインしないと決めていた。あのときはあまりにもスピーディに話が進んだため、選択の余地がなかったのだ。 「ちょっと考えてみます」 僕の反応が芳しくないと思ったのか、先輩は、次の手に打って出てきた。 「あのね、君が入ってくれないと、うち潰れちゃうんだ」 借金の返済が滞っている社長のように、先輩は眼鏡のブリッジを押さえ、苦悩の表情を浮かべて見せた。「ここからは愚痴だと思って聞いてちょうだい」と続ける。 話を聞くと、本当に愚痴だけだった。学校の決まりで、部員が二年連続で途切れた部は問答無用で廃部になる。去年は一年生が何人か所属していたらしいのだが、先輩に人望とビジョンがなかったので、みんな辞めてしまったらしい。 「籍だけでもいいから、入部してくれない?」 「そういうことなら」 僕は先輩の身の上話にすっかり胸を打たれていた。 「入部してくれるのね?」 「もちろんです」 入部届の用紙に名前とクラスを書きつけながら、僕は「そういえば」と先輩に尋ねた。 「なに?」 「放送部って、何するんですか?」 *** 「あめんぼ赤いなアイウエオ。浮き藻に小エビも泳いでる」 「柿の木栗の木カキクケコ。キツツキこつこつ枯れけやき」 高校から五分ほど歩いた先に、幅の広い川が流れている。川を跨ぐように架かった橋の袂から河原に降りていったところで、宮野先輩はこの怪しげな詩の朗読を始めたのだった。 「北原白秋のアメンボの歌。これ、毎日練習してね」 「早口言葉みたいですね」 「かんたんでしょ」 「舌を噛みそうです」 「噛み切るくらいのつもりで声を張るのよ」 結局、僕は放送部とアニメ部を兼部することになった。アニメ部の活動は、月に一度の報告会を除けば、部室でだらだらアニメの話をするだけだった。だから、こういう練習は部活をしているという実感があっていいと思った。 「でも、どうしてこんなところで発声練習してるんですか?」 尋ねると、先輩は少し顔を俯けて、 「部員がいた頃は、渡り廊下でやっていたわ……」 あまり愉快ではなさそうな顔をした。風が吹いて、足元の草花が葉を揺らした。土手の斜面には雑草が生い茂り、ざわざわと不穏な音を立てている。 「この練習以外に、何をすればいいですか」 「明日から、昼休みは放送室でお弁当を食べること」 放送部の唯一といっていい活動内容。それが、お昼の放送らしい。 「最初は私がやるのを見てるだけでいいから」 生徒からリクエストされた音楽を流したり、図書委員からのお薦めの本を紹介したり、委員会の連絡事項を伝えたり――放送の内容は、意外とバラエティ豊かだった。 「あれって、先輩が一人で考えてるんですか」 「だいたい形は決まってるけど、原稿を書いてるのは私」 お昼の放送がいつも同じ人だとは思っていたけれど、本当に一人でやっていたらしい。 「ラジオの構成作家みたいですね」 「内海くんはラジオ聴くの?」 「好きな番組は欠かさず聴きます」 好きな声優の番組、とは言わない。 「私もラジオ、好きだな」 「ラジオはいいです。情報が声だけしかないっていうのが」 「そうそう」 先輩の声は橋の裏側で反射して、山びこのように反響する。なるほど、自分の声がよく聞こえるし、周囲に人もいないので、練習場所としては最適である。 「さて、そろそろいってみよう。あめんぼ赤いなアイウエオ。はい!」 先輩が先を言って、僕が追いかける。かくして、この発声練習は僕の日課になった。 それから、僕の声はいっこうによくならなかったけれど、先輩の声は一語一語が大切にされている感じがして、隣で聴いていて心地が良かった。それにしても、枝のように細い先輩の身体からあんな大きな声がひねり出されるのは、一体どういった理屈なのだろう。 お昼の放送は十二時十分から五十分までの間で、鐘が鳴ってから十分間のうちに準備を済ませなければいけなかった。この短い時間にお弁当をかき込み、機材の電源を入れて、マイクの音声テストをする。初めて見たときには、その早業に驚かされた。 「こんにちは。本日は晴れ、気温23度、湿度50%、小春日和の午後となりました」 慌ただしい準備が終わり、いよいよ先輩が全校生徒に話しかける。マイクに向かい合う先輩の姿を目にしたら、なんだか僕も、背筋をぴんと張らなければいけない気がした。 「それではさっそく、本日最初の一曲です――」 ――音楽入れて。 曲名紹介と同時に先輩の合図を受けて、僕は音声をCDの再生に切り替える操作をした。僕と先輩の間に、ふっと弛緩した空気が流れる。 「だいたい使い方分かってきたかな」 「そうですね」 機材の上に置かれたA4の用紙には、今日の放送の原稿が几帳面な文字で書かれている。毎晩、自宅で翌日の原稿を書くのが先輩の習慣らしい。本当に構成作家みたいだ。 「お昼の放送、一人でやるのは大変ですね」 賞賛のつもりで声をかけると、先輩は少し顔を俯けて、 「部員がいた頃は、交代でやってたわ……」 あまり愉快ではなさそうな顔をした。僕は食べかけの弁当箱に手を伸ばして、卵焼きを口に放り込んだ。 「夏休み前には、内海くんにもやってもらうから」 「僕にできますかね……」 「入部して三月保てば、うちではベテランよ」 「それ、三月以内にみんな辞めてるってことじゃないですか」 そもそもどうしてこの部活には先輩一人しかいないのだろう。先輩の同級生や二年生が一人も残らなかったというのは、ちょっと変だ。何か深い事情があるのかもしれない。 「あ、もう曲が終わるね」 「僕が切ります」 流していた歌が「だだだだだ」とドラムで最後を締めくくり、先輩はマイクの方に向き直った。音声が切り替わり、先輩は涼しい顔で原稿の読み上げを始めた。 中学生くらいから、僕は声優のラジオ番組に夢中だ。アニメのキャラクターとしてではなく、声優が自分の言葉で話しているということが初めは新鮮な体験だった。ゲストとのやり取りであったり、出演作品の制作秘話などを聴けるのも楽しかった。 部屋で聴いているのを母親に見られるのは恥ずかしいので、最近は録音したものを音楽プレーヤーに落として、通学中に聴くようにしている。 「さあ、今週も始まるよ。ミーナに、聴いてみいな!」 イヤホンを耳に差し込み、バスの吊り革に掴まりながら、目を閉じた。 水曜に聴いているラジオのパーソナリティには、特別な思い入れがあった。 「まずは、お便りのコーナーです」 お手紙の紹介という形で視聴者が参加することができるのも、ラジオの魅力の一つだと思う。僕も何度か別の番組で投稿した経験はあるけれど、一度も採用してもらえたことはなかった。リスナーの人は全国にたくさんいるので、確率が低いのだろう。 「ラジオネーム、葉子さん。――初めまして。毎週水曜いつも楽しみにしています。私は高校で放送部の部長をしているのですが、いつも次の日のお昼の放送の原稿を書きながら、ラジオを聴いています。――部長さんなんだー。放送の原稿を書けるなんてすごいね!」 「え?」 思わず声を出してしまい、正面に立っていたサラリーマンの人に睨まれた。 聞き間違いだろうか? 巻き戻してもう一度聞き直す。 ――部長の宮野葉子です。この時間に来るってことは、他の部も見てきたのかな? 先輩の名前は、宮野葉子さん。放送部の部長をしており、毎晩自宅で翌日のお昼の放送原稿を書いていると言っていた。 「――ミーナさんに相談したいのは、将来のことです。私は、ミーナさんみたいな声優の仕事に憧れています。でも私は上がり症なので、人前で声を出したり演技をするのは苦手です。慣れようと思って始めた放送部の活動なのですが、部員の子が放送室にいるだけで緊張して、一人でやるときのようにできません。声優さんは、人前でも堂々と演技をしていますよね。どうすれば、恥ずかしがらずに声を出せるようになりますか? ミーナさん、教えてください――」 *** ラジオの件があってから、数日が経過した。僕はもやもやとした気持ちを抱えながら、お昼の手伝いと放課後の発声練習を続けていた。 その日、お昼の放送の後片付けをしている先輩に、僕は思い切って訊いてみた。 「宮野先輩、ミーナのラジオ聴いてるんですか?」 陸に打ち上げられた魚みたいに、先輩の肩が跳ねた。 「な、なんのこと……?」 「先月、お便り紹介で採用されてましたよね」 「手紙? なにそれ知らないよ。さあ、片付けも終わったし戻ろう」 「家で放送の原稿書いてるって、言ってました」 そこでようやく諦めたのか、先輩は自白めいた呟きを発した。 「そうか、内海くんアニ部だもんね……ミーナ好きなんだ……さようなら……」 脈絡のない言葉を継いで、先輩は出口の方に進んでいく。お弁当の入った包みも置いたままである。僕は慌てて先輩に追いすがり、おそるおそる肩に触れた。 「いやあの、これは事故みたいなもので」 「将来は声優とか、バカだと思ったでしょ……」 扉のノブにしがみつくようにして、宮野先輩はその場から逃げ出そうと髪をふり乱す。僕は必死で彼女の両肩を押さえて、「落ち着いてください」と繰り返し訴えた。 「まさか先輩が僕と同じ趣味だったなんて知りませんでした」 先輩が半死人の面持ちで僕を見上げる。 「悪い?」 「悪くないです」 「そうよね……。内海くんだって声優のラジオとか聴いちゃってるんだもんね……。私を責められるはずないよね……」 先輩は何度か息を吸って吐き、ようやく落ち着きを取り戻した。 「みっともない姿を見せてしまってごめんなさい」 「いいえ」 「まあ、そういうわけなのよ」 「なるほど」 「では、今日をもって放送部は解散します」 「いやいや」 放送部の活動に支障はありません、と僕が慰めると、先輩は嬉しいのか悲しいのかよく分からない表情を浮かべた。 「とりあえず、今日は放課後の練習中止ね……」 先輩は肩を落として、とぼとぼと放送室から去っていった。その背中を見送りながら、僕はぼんやりした頭で、「お弁当箱忘れてるけどいいのかな」なんて思ったりしていた。 その日の放課後は久しぶりにアニメ部の部室に顔を出した。部員の人たちは、めいめい漫画を読んだりアニメの感想を話したりして、自由なひとときを楽しんでいた。 ふと、なぜか椅子に正座してこちらを見ていた石井先輩と目が合ったので、僕と先輩は今期から始まる続編アニメの話をすることになった。 「それで、前作のラストシーンについては、僕なりに見解があってだね――」 石井先輩の話を聞いていると、打ち出される考察の数々に、僕は目からぽろぽろと鱗が落ちるのを禁じ得なかった。確かな教養と知識に裏打ちされた、独創的な解釈を見せつけられ、自分の理解の浅さに打ちのめされた。 「内海くん。僕は君のことを高く評価しているんだ。以前君がノートに書いていた『もしアニメ監督がドラッカーを読んだら』なんて、あまりの出来に震えが走ったほどだよ」 「本当ですか?」 同じ学年の先輩の話では、石井先輩はアニメの知識だけじゃなく、模試では全国各地にA判定の旗をはためかせるくらい、学業成績も優秀らしい。そんな先輩に褒められるのは、悪い気がしなかった。 そういえば、宮野先輩にも同じように、あと半年もすれば大学受験が待っている。僕はまだ先だと気楽に構えていたけれど、放送部部長の役回りが僕に回ってくるまで、あまり時間は残されていないことに気が付いた。 「ところで、石井先輩」 「なんだい」 「僕、放送部を兼部してるんですけど、部長の宮野先輩って知ってますか?」 「宮野葉子か。知ってるも何も、小学校から一緒なのはあいつだけだ」 「そうなんですか?」 「あいつとは、よく古き良きロボットアニメについて語り合ったものだよ」 石井先輩の話によると、宮野先輩は小学生のときからアニメが好きで、僕と同じようにクラスの友達と漫画やアニメの話をしたり、DVDの貸し借りをしていたらしい。 「じゃあ、放送部の先輩たちが辞めた経緯って、知ってますか?」 「先輩たち?」 「宮野先輩が言ってました。去年までは部員が何人かいたけど、今年は宮野先輩しか残らなかったから、僕が入らないと放送部は廃部になるって」 「そう説明されたのか。まあ、あいつがどういうつもりなのかは知らないが――」 困惑したように、石井先輩は続けた。 「最初から、放送部は宮野一人だけだ。俺たちが一年のとき、放送部を作ったのはあいつだからな」 コンクリート造りの橋から河原を見下ろすと、暗がりで誰かがアメンボの歌を暗誦していた。声は橋の裏側と地面の間で反響し、土手のざわめきと呼応する。暮れかけた夕陽が、河原に敷かれた小石を斜めに照らしていた。 「先輩」 土手に降りる階段の中腹に腰を下ろして、僕は声をかけた。 「発声練習は欠かさないんですね」 「他にやることないから……」 先輩は茶色の鞄を持って、僕の方にやってきた。僕が階段の隣にスペースを空けると、少し離れた位置に先輩が腰を下ろした。 「放送室にお弁当箱忘れてましたよ。うさぎさん、かわいいですね。石井先輩は変わってないって笑ってましたけど」 「石井くんか……。じゃあ、聞いちゃったんだね」 「どうして、去年は部員がいたなんて嘘をついたんですか?」 僕が尋ねると、先輩は鞄から、古びた人形のようなものを取り出した。 「うち共働きだから、小さい頃はよく、一人で留守番しながらアニメを見てたのよ」 「僕も同じです」 「私が小学生の頃、休みの日に駅前の百貨店に行ったら、その屋上でたまたま声優さんがイベントをやってたの。お母さんが買い物してる間に、お父さんとそれを見てたんだけど、たまたま整理券の番号がプレゼントの抽選に当たってね。声優さんと握手もできたんだ」 先輩は遠くを見るように、川面から視線を上げた。 「それがミーナでさ。抽選のプレゼントはこのフィギュアだった。これをもらうときに、握手をしながらすぐそばで言ってくれたの。『汝の願いに従い、正しき力を示せ!』って。内海くんならあのアニメ知ってるでしょ? それで私、憧れちゃって」 「そういうの、ありますよね」 僕が頷くと、先輩は僕の顔を一瞥して、 「でもね。知ってると思うけど、こういう趣味の人、女の子にはあんまりいないんだよ」 と呟いた。 「小学生のときはさ、男子も女子もなかったから、アニメが好きな男子と話せばよかった。少女漫画が好きな子も多かったしね。でも、中学に入ってからはうまくいかなくて……」 中学に上がり、先輩は友達との話題に悩むようになったらしい。周りの女子はドラマや恋愛の話に夢中で、先輩は自分の趣味を隠しながら、友達と付き合っていた。 「今でも覚えてる。中学の修学旅行で、友達が勝手に私の鞄を開けて、これを見られたの」 ――やだ、人形とか気持ち悪い。葉子ってオタクだったの? 「びっくりするくらい、みんなに引かれちゃって。もともと、『ついで』みたいに友達の輪に加えてもらってたところがあるから、同じグループの子に嫌われたら、行き場がなくなっちゃった」 「高校生になっても、同じだったんですか?」 「ううん」 先輩はゆるゆると首を振る。 「高校の友達には知られてないと思う。そのために中学から遠い高校に入ったんだから」 夏草が風に揺れ、そこに誰かが聞き耳を立てているような気がした。古びた塩ビ人形を握り締めた先輩は、なんだかまるで、ひとり迷子になった子供のようだった。 「放送部を作ったのは、発声練習のためっていうのもあるけど――本当は、お昼を一人で食べる理由が欲しかっただけ。みんなと何を話していいか、分からないから」 「でも僕は……」 「内海くんは、私が卒業するまでその居場所を守ってもらうために入ってもらったのよ。ごめんね。もう、解放してあげるから」 *** 先輩が放送部解散を告げてから、お昼の放送は無期限の中止を余儀なくされた。 夏休み前に一度だけ、たまたま図書室の読書スペースで先輩に会った。先輩は、受験の参考書を広げながら、 「恥ずかしいって思ってる時点で私に声優なんて向いてないんだと思う。もともと親にも、声優の学校に通いたいこと、言ってなかったし」 と零していた。先輩にとって、放送部の存在意義はもうないのだと言いたいらしかった。 でも、それはおかしい。だって、お昼を一人で食べたいだけなら、自主的にお昼の放送なんてする必要はない。一人で放送部を立ち上げ、発声練習を続けて、お昼の放送の原稿まで自分で考えて。そんな努力ができるのは、先輩に声優になりたいって目標が、誰かに自分の声を届けたいという気持ちが、あるからじゃないのだろうか。 新学期になっても、先輩が河原に現れることはなかった。毎日、放課後に日が沈むまで先輩を待った。ときどき、一人でアメンボの歌を口ずさんだりもした。 その日、諦めて家に帰ると、珍しく先に帰っていた母親が居間で洗濯物を畳んでいた。 「おかえりー。あれ、今日は例の発声練習してこなかったの?」 シャツの袖を折りながら、よく通る声で母親が尋ねてくる。 「先輩が、もうやりたくないんだって」 「ああ、恥ずかしがり屋の部長さんね」 鞄をダイニングの椅子の上に置きながら、母に訊いてみる。 「母さんはさ、どうして声優になろうと思ったの?」 「ははあ。息子からそんな質問をされる日がくるとはねえ」 老婆のようにしわがれた声音を作って、母親は笑った。こういうテクニックは、先輩が行きたかったという、声優の養成学校のようなところで学んだのだろうか。 「私だって、その部長さんと同じよ。本当はものすごい上がり症なの。人前に出ると緊張しちゃって何も言えなくなっちゃう。そういう自分を、変えたいと思ったから」 「週にラジオ二本も持ってて、よく言うよ」 アイロン台を引き出しながら、母は独り言のように言った。 「それで、その大好きな先輩のために、わが息子は何ができるのかしら」 「な、なぜそれを……」 「汝の願いに従い、正しき力を示せ!」 僕が小学生の頃に母親が演じていた、魔法使いの師匠役の決め台詞だった。母親の背中越しに、もくもくとアイロンの蒸気が立ち昇っている。 「正しき力って何なのかな」 「それは、正しい願いを叶えるための力でしょう」 先輩の声をもっとたくさんの人に聞いてもらいたい。それが僕の願いだ。それなら今の僕に必要な力って何だろう――。そう考えて、ようやくやるべきことが分かった気がした。 その日、僕は夜が更けるまで、夢中になって紙の上にペンを走らせた。 翌日の昼休み、僕は放送室にいた。先輩のいない放送室はとても静かだった。しばらく使っていなかった機材も、埃をかぶっている。その傍らにA4のルーズリーフを置いた。 マイクのチェックと、家から持ってきたCDの再生テストを終えて、時計の針が十二時十分を指す。ゆっくりと、マイクを握る。手のひらにじわりと汗が滲んだ。 「――こんにちは。本日は曇り、気温15度、湿度20%、少し肌寒い午後となりました」 これから、お昼の放送を始めます。そう言い切ったところでごくりと唾を飲み込んだ。きちんと噛まずに言えた。とりあえずは一安心。 「それではさっそく、本日最初の一曲です。今日は、アニメ部のおすすめで――」 曲名紹介に合わせて、僕は音声をCDの再生に切り替える操作をした。一人でやると、案外慌ただしい。僕が入部するまでは、先輩も今の僕と同じことをやっていたのだろう。 音楽が始まって最初のサビが流れたところで、放送室の扉が開け放たれた。その奥に、宮野先輩が息を切らして立っていた。 「あ、どうも」 「どうもじゃないよ、内海くん……。なんで、勝手に始めたの」 「だって僕、放送部ですし」 「部長は私よ」 「先輩は受験勉強で忙しいじゃないですか。しばらくお昼の放送は僕が代わりにやります」 先輩は機材に歩み寄ると、その上に置かれたルーズリーフを手に取り、目を丸くした。 「内海くんが書いたの?」 「先輩のようにはいかないですけど、形だけは」 「これ、なんか――」 内容がオタク趣味全開なんだけど……。先輩は呟くように言った。 「布教ってやつです。あ、書いてあるとおり、三十分からはうちの部の石井さんが、今期注目のアニメの紹介をしてくれます」 「何そのゲストトークみたいな……」 げんなりした表情で、先輩は椅子に腰を下ろした。 「別に毎日こういう内容じゃないですよ。ラジオみたいに、曜日によって内容を変えて、知られざる文化部の活動とか、生徒や先生の意外な趣味を紹介していく予定なんです」 「そんなの、ほとんどの人は興味ないよ」 「お昼の放送なんですから、興味なくていいんですよ。押し付けるんじゃなく、あくまでおすすめです。好きなものを好きだって言うのが、先輩はそんなに恥ずかしいですか?」 ……例えば、僕は宮野先輩のことが好きです。恥ずかしさを堪えてそう言い切ると、 「いや、内海くんをそういう目では見れないけど」と先輩。 「あ、そうですか」 間髪入れずに断られて、僕の心には青春の傷跡だけが残った。 「でも」 先輩が苦笑いみたいな顔をして、目を細める。眼鏡を外すと、目頭を軽く押さえた。 「そんなんじゃすぐネタ切れだからね。卒業までは、私が監修してあげる」 三月十四日は朝から雪が降っていた。 「あら、雪ね」 食卓を囲みながら、母親が最初に気が付いた。石油ストーブが置かれており、交換したばかりの灯油の匂いが部屋に満ちていた。喚起のために窓に近づくと、朝の空は厚い雲に覆われ、庭には霜なのか雪なのか判然としない白い斑点が広がっていた。 「卒業式に雪って、なんか漫画とかアニメの最終話みたいだなあ」 「結局、例の部長さんは進路どうするのかしら」 しんしんと降る雪の中、先輩方の卒業式は執り行われた。式が終わり、僕は先輩を探すことにした。しかし、先輩たちの教室や職員室、放送室や空き教室に至るまで、学校中を探し回ったにも関わらず、先輩の姿は見当たらなかった。 たまたま立ち寄った部室で、部員に囲まれていた石井先輩に聞いてみると、 「宮野なら式が終わってすぐに帰ったぞ」 という答えが返ってきた。石井先輩は、この春から東京の大学で医学部に通うらしい。僕が「合格おめでとうございます」と声をかけたら、「お前の抜けたアニメ部は、ダランベールなき百科全書派も同然だった」というよく分からない褒め言葉をもらった。 僕は高校の門をくぐり、そぼろみたいな雪が積もる道を歩いた。校外で唯一心当たりのある場所に向かうことにしたのだ。 川の水面に、花びらのような雪の欠片が落ちて流れていく。川沿いの道を橋の架かった地点まで歩いたところで、寒空の下を縫うように、あの歌が聞こえてきた。 ――雷鳥は寒かろラリルレロ。蓮華が咲いたら瑠璃の鳥。 「卒業おめでとうございます」 水色のマフラーを巻いた宮野先輩が、河原に立っていた。声をかけた僕と目が合うと、やあ、とでも言うように手袋の嵌まった手を振る。 「あれ、今日は眼鏡かけてないんですね」 「コンタクトデビューしたの」 真っ白な息が先輩の唇の間から零れて、空気に溶ける。寒さに頬を赤く染めた先輩は、漫画やアニメのヒロインよりずっと素敵に(僕の目には)見えた。 「それで、結果はどうでした?」 「合格したよ。来年からは女子大生。声優の方は、大学に通いながら考えるつもり」 「そのうち、遊びに行ってもいいですか?」 「住所を教えるつもりないけど」 間髪入れずに断られて、僕の心には青春の傷跡だけが残った。 「あ、そういえば内海くん。ミーナの限定ドラマCDは、いつ貸してくれるの?」 「忘れてました。もし良かったら今からうちに来ます? すぐ貸せますよ。今日は母親が休みなので、お茶くらい出してくれると思います」 「内海くんの家って、ここから近いんだっけ」 「歩いて行ける距離です」 喋っている間に雪は勢いを増して、僕の学生服の肩に薄く積もっていた。先輩の手袋が伸びてきて、その雪を払い除ける。僕たちは土手を上がり、二人肩を並べて歩き始めた。 「驚かないでくださいね」 「どうして私が驚くのよ」 声優『ミーナ』の由来が、名字の『ないみ』を逆から読んだものだと知ったら、先輩は驚くだろうか。 「内海くん、なに笑ってるの?」 先輩は振り返り、訝しむように僕の顔を覗き込んだ。僕はこみ上げてくる笑みを堪えて先を急ぐ。淡い期待は舞い降りる雪のように、ふわふわと僕の目の前を流れていった。 おしまい |
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2015年02月20日(金) 23時59分04秒 公開 ■この作品の著作権はPhysさんにあります。無断転載は禁止です。 |
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No.18 zooey 評価:30点 ■2015-08-31 21:18 ID:L6TukelU0BA | |||||
読ませていただきました。 とても綺麗にまとまった、Physさんらしい作品でした。 特に「綺麗にまとまった」作品ではあっても、キャラクターがコマ的でなく生き生きとしていたのが良いなと思いました。 宮野先輩の小学生から中学生の頃のエピソードは、 私の経験的にも、こういうの分かるな、というリアルな内容でした。 脇役ですが、石井先輩のキャラと立ち位置が良かったです。 中盤あたりで母の正体がわかってから、しっかりとキャラクター配置が考えられ、 読み手を楽しませる仕掛けに富んだ、Physさんらしさがよく見えたように感じます。 その点も含めて、良作だなと思いました。 ただ、ちょっとサラリとし過ぎているかな、 というか、もう少し踏み込んでも良かったのかなと感じました。 やはりアニメオタクならもう少しアニメ愛が滲んできた方が良いような気がするんですよね。 また、主人公の一人称なら、もっと宮野先輩について細やかな観察が欲しかったなと思いました。 ちょっと客観的にすぎるかなというか、 主人公は宮野先輩に恋愛感情を抱くまでになっているのだから、 彼女について語る時にはもう少し力が入るのではないかな、というか。 もっと、先輩の人間的魅力を主人公が感じていて、それを語っている、みたいな様子が個人的には欲しかったです。 やりすぎると、読み手にはじめから恋愛感情がバレバレになって、 終盤での「あ、そうだったんだ」という楽しみがなくなってしまうので、塩梅が難しいのは分かっているのですが...。 ちょっと簡単な簡単な感想になってしまって申し訳ないのですが、 感じたことを書かせていただきました。 お忙しいと思いますので、ご返信は急がなくても全然構いませんので。 ありがとうございました。 |
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No.17 Phys 評価:0点 ■2015-08-30 00:09 ID:CvaayI9DSlo | |||||
皆様 せっかく嬉しい感想を頂いていたのに、長い間放置しておいてすみません……。 仕事楽になったとかいいつつ、今度は採用活動に駆り出されることになり、全然 思ったように休みが取れませんでした。(TCを見る余裕はあったんですけど……) 中里 与太郎 様 漫研。漫画研究会ですね。すごく高尚な響きです。研究って付いてる部活動には 惹かれるものがあったのですが、なぜか大して運動ができるわけでもないのに、 運動部に所属し続けた青春時代でした。漫画研究会が、どんな研究活動をされて いたのか気になります。 青春って人それぞれにあると思うので、自分が想像した世界、自分が作り上げた 物語がどなたかの青春に含まれているのであれば、それは不思議な奇跡なのでは ないかと、ちょっとスピリチュアルに感じました。(?) 中里様の作品も、投稿されているようですので後日読ませて頂きます。この度は 温かいご感想ありがとうございました。 ゆうすけ 様 お久しぶりです。以前「枯れ木も山の賑わい」などと仰っておられたのを覚えて いますが、ゆうすけ様はいつもエネルギッシュで、創作にもお仕事にも活動的な 方だと(感想欄や作品を拝見して)感じています。私もゆうすけ様のように仕事 趣味家族のバランスをとれる素敵な大人に近付きたいです。 > ピュアで、可愛らしくて というお言葉が、殺伐とした三十路寸前の私の心に逆フィードバックされました。 ありがとうございます。潤い、最近はだいぶ足りてません。 また、シナリオのアドバイス、大変参考になります。先輩はアニメ好きを隠して いたのに、主人公は堂々とアニメ好きを公言している、そこに好意を持たれて、 主人公が勝手に恋愛感情だと勘違いして、最後は振られる流れ……。完璧です。 すぐその方向で書き直したいと思いました。(それにしても、人にお勧めされた ストーリーにいつも「その手があったのか」と感心してしまう辺り、プロットを 考える能力が低すぎるのでしょうか……。) 母親の正体が実は……というオチは書き始めから考えていました。仲の良い母子 って街で見かけても微笑ましいので、個人的にすごく好きな設定なんです。とか いって、初めて書いたかもしれませんが。 ご感想大変うれしく思いました。私も山の賑わいに少しでも参加できるように、 頑張りたいと思います。 桜井 隆弘 様 ああ、同期の方がここに!ご無沙汰しております。長らく離れられていたのに、 稚作をお読みいただき、まして丁寧にご感想を頂けるなんて、これはTC愛が呼ぶ 奇跡、いや、運命でしょうか。笑 変な感じですみません。お読み頂き、本当に ありがとうございました。 『ミーナ』の由来は、確かに自分らしいというか、自分しかこういう変な遊びは しないだろうと言われて思いました。こういった言葉遊びは、完全にお笑い芸人 さんたちから影響を受けている気が致します。もちろん「フルハウス」みたいな アメリカンコメディからもです。 > 世間体を気にした虚勢だったりコンプレックスがあって、「人に知られたくない影」の部分 今回はそういうことをテーマに書こうと思っていました。日本って出る杭を打つ 文化が悪い方向に働いて、出る杭を打ち過ぎて地面より下までへこまされている 場合が多い気がします。そういう文化は合理性に欠けますし、誰かが好きな物を 自分は好きではないと言うことはできても、「自分たちと違うからおかしい」と して批判する権利は誰にもないですよね。そういったお節介な悪口を言う人が、 少なからずいるのは悲しいことだと思います。 > ほぼTC同期のPhysさんは、大学院を出られているんですね。 そうなんです。大して勉強も努力もできないくせに、数学か物理の研究者になる のが夢でした。今もそういう好み(?)を活かした仕事をしておりますし、私に とって大学・院で学んだことは、生きる上での指針というか、根幹になっている 部分です。(小説はダメダメですけど、根っこは意外と気真面目なんですよ。) 人生に彩りを添える創作活動は、これからも細々と続けていくつもりです。また 時間を見つけてタイプして、自分でにんまりとする。そしてたまには恥を忍んで 誰かに見てもらうのも素敵なことだと、ここTCで教えて頂きました。 なんだか散文的になりましたが、今後とも、TCの同期をどうぞよろしくお願い 申し上げます。 |
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No.16 中里 与太郎 評価:40点 ■2015-07-05 16:49 ID:GiORvcoNz9o | |||||
読ませていただきました。 懐かしい。 私漫研だったんです。 あーあの頃の青春だと懐かしくなりました。 |
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No.15 ゆうすけ 評価:40点 ■2015-05-12 09:03 ID:1SHiiT1PETY | |||||
拝読させていただきました。 丁寧な文章で、すんなりと物語世界に引き込まれて行きました。どの登場人物もピュアで、可愛らしくて殺伐としたおじさんの心に潤いをもたらせてくれました。こんな高校時代を送りたかった。恋愛までいきそうでいかない、この絶妙な感じ、繊細さがたまりません。 先輩はアニメ好きを隠していたのに、主人公は堂々とアニメ好きを公言している、そこに好意を持たれて、主人公が勝手に恋愛感情だと勘違いして、最後は振られる流れにした方が、最後のがっかり感が高まるかな。主人公が先輩に好意を抱く描写を中盤から追加するのもいいかも。発声練習をする先輩の横顔が、好きなアニメのヒロインと重なった的な。 母親の正体が実は……いいオチだと思います。小説なんですからご都合主義上等だと思いますよ。何でも伏線にしていくの私が好きなだけかもしれませんけど。 アニメおたく、私の高校時代あたりにこの名称が出てきたような。うーん、昔すぎてよく思い出せない。遥か遠くに過ぎ去った日々、こんな先輩がいたら……いや、切ないのでもう思うまい。 とりとめのない感想で申し訳ないです。色々思わせてくれた作品だということです。 |
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No.14 桜井 隆弘 評価:40点 ■2015-05-09 14:34 ID:RuUUFc66gwM | |||||
ご無沙汰しております。 自分もTCには長らく投稿していない身なのですが、感想だけ失礼させていただきます。 登場人物が皆謙虚で優しさに満ちていて、ストーリーの展開も流れるようで読み易かったです。 至る所に比喩表現がちりばめられた描写や、『ミーナ』の由来で読者をクスリとさせる辺りは、「Physさんらしいな〜」と懐かしく感じさせていただきました。 告白は意外でした。 部長に異性として惹かれる感覚が分からなかったのは、主人公が純粋で、誰とでも分け隔てなく接する人間性にもあったんでしょうね。 そして「切り札」に甘んじることなく独力で部長を立ち直らせ、卒業後まで楽しみを残してあげる主人公の行動力には敬服致しました。 「天丼」は、あまり拝見したことが無いような・・・どなたに悪影響を受けたのでしょうか(笑) 全体を通して爽やかで明るい雰囲気なんですけど、その中に世間体を気にした虚勢だったりコンプレックスがあって、「人に知られたくない影」の部分が良い凹凸感を際立たせているなと思いました。 社会に出て人と関わるということは、その中での自分の位置付けを再認識することでもあって、小説のテーマには人間の真理とPhysさんの深層心理が自然と滲み出たんじゃないでしょうか。 ところでほぼTC同期のPhysさんは、大学院を出られているんですね。 何年か前に「社会人になった」と知って、自分は「少し先輩だ」と思っていましたが大卒入社なので、実際にも同世代なのかもしれませんね。 今でこそアキバ系などオタクに陽が差すようになってきたのかもしれませんが、自分もアニメは敬遠される時代だったので感覚はよく分かります。 お仕事お忙しいでしょうけど、自分の好きなことは人生に彩りを添えるはずですので忘れないで下さいね。 ちなみに、「フルハウス」は20年ぶりにスピンオフが復活するらしいです。 |
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No.13 Phys 評価:0点 ■2015-04-04 23:23 ID:JNnTPYArX6k | |||||
ST 様 大したことは書けなかったのですが、ST様の作品に、感想を残させて頂き ました。ST様ほどは上手ではないものの、稚作をお読み頂けたこと嬉しく 思っております。 > 今から40年近くも昔のことになってしまった私自身の高校生時代 さっそく感想を拝見して、出だしのところで、大先輩だということに気付いて しまいました。なんと、私の父とST様はちょうど同世代かもしれません……。 父は生粋の職人気質というか、技術者で、文学に興味があるような人ではない ので、イメージは全然重ならないのですけれど。汗 いきなり私事ですみませんでした。ご友人の方のエピソード、素敵ですね。 「詩とメルヘン」、「パステルを粉にしてケント紙に乗せたイラスト」この二つ だけでも勝手に(薄幸の美少年的な)イメージが湧いてしまいました。自分の 書く文章にそういう種類の透明感があるかどうかはよく分からないのですが、 何か書き物をするときは、故郷の砂浜で波うちぎわを眺めているような感覚で 書いています。 今書こうと思っているものも、大好きな故郷の風景を小説に落とし込めたらと 構想(ばかり)を膨らませています。うまく書けたら、また投稿してみたいと 思いますので、機会があれば、またご指導を宜しくお願い致します。 また、宮野先輩という登場人物に感情移入して頂けて、大変うれしかったです。 周りからの評価に合わせた自分を演出するために無理をしているというのは、 自分にも重なる部分で、思春期の頃はたまに息苦しくなることがありました。 しかし、そういう多感な時期に思い悩んだことが、今の自分の糧になっている 気も致しますし、それが今、小説の真似事みたいな形で出力されているのだと 自分の内面を理解することもできます。 ほんのひとかけらでも、ST様の心に残る話になっていたのなら、この上ない ことです。温かいご感想、本当にありがとうございました。 例のあれ 様 個人的な話になって恐縮なのですが、最近になってようやく仕事に慣れてきて、 自分のペースをつかめるようになったので、今まで我慢していた映画や小説、 観劇などの趣味を楽しんでいます。その中の多くについて、驚天動地の展開、 設定の妙にいつも感心させられてばかりいます。 たとえば、ここ最近で一番すごいと思ったのは、つい先日まで映画が公開して いた「Psycho-Pass」というアニメーション作品でした。恥ずかしながらアニメ 作品はこれを合わせても大した数を観ることができていないのですが、本作の 奇抜な設定にはすごく引き込まれました。 小説で言うと「1984年」みたいな、監視社会ものなのですが、もしこういった 社会が成立したら、そこに生きる人々は何を考えて、何を失っていくのか、と いう部分がとても丁寧に描かれていました。私自身が、法律や社会制度に深く 関係する仕事をしているので、とても考えさせられました。(ただ、たくさんの 人が物語の中で簡単に死んでしまうのは、ちょっと見てて辛かったです……) 幼い頃にあまり多くの優れた作品に触れてこなかったというのもあるのですが、 それを差し引いてもやはり、自分にはそういうものは書けないなあ、と諦めて しまうのが本音です。小さな出来事が積み重なって、静かに終わる短編小説を 好んで書いています。そして、これからもその方向性で自分の感性をみがいて いきたいです。 なんだか、最後は選手宣誓みたいなお礼になってしまいましたが、お読み頂き、 ご感想まで頂けて大変感謝しております。ありがとうございました。 |
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No.12 ST 評価:40点 ■2015-03-30 05:27 ID:l.nBYleUREE | |||||
何を隠そう、今から40年近くも昔のことになってしまった私自身の高校生時代、ムサい男子高にありながら『詩とメルヘン』と言う雑誌を愛読し、パステルをカッターで削って粉にしてケント紙に乗せて行く、と言う気が遠くなるほどに面倒な手法で、淡く透明感のあるイラストを描いていた友人を思い出しました。 主人公の姿がなんとなく彼にかぶるだけでなく、物語全体が彼のイラストの中での出来事のようなイメージで読めました。 特に何か大きな事件があるわけでもなく、さりげない日常が過ぎていくだけなのですが、その中で緩やかに変化して行く気持ちをしっかり描ける力量に感嘆します。 それと言うのも登場人物がそれぞれ魅力的だからなのでしょう。 とりわけ、宮野先輩には惹かれます。 彼女もおそらく優等生なのでしょう、周りから『勉強の出来る子、しっかりした子』と評され、その評価に合わせた自分を演出する為に少々そっけない感じを装っている、と言うのがラジオで紹介された手紙から読み取れます、そしてその内面に潜む願望を知ったときから少しずつ惹かれて行く・・・主人公の気持ちがよくわかります。 遥か昔のことになってはいても、そんな淡い気持ちを私も抱いたことは何度かあり、その頃の自分が蘇りました。 今は見苦しいオッサンですけどね、私にもそんな時代はあったんです。 思い出させていただいて感謝です。 |
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No.11 例のあれ 評価:50点 ■2015-03-03 01:37 ID:ZGeUHlfOL9Q | |||||
こんばんは。はじめまして。 凄い良かった。とても優しい時間を貰いました。 大きな事件はないけど、一つ一つの出来事が積み重なっていく。 内側から嬉しい感情が大きくなっていきました。 うまく言えなくてごめんなさい。一言、面白かったと伝えたかったので。 では、また機会があれば。 |
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No.10 Phys 評価:0点 ■2015-02-26 23:51 ID:vKYW8QwzakM | |||||
徒然太郎様 ご感想ありがとうございます。徒然様のような方に褒めて頂くと、嬉しい一方 自分の書いたものの稚拙さが恥ずかしくもあります。ここで書くのもおかしな 話ですが、「最後の嘘、涙の味」とても良かったです。本当に感動しました。 もともと短い会話文を基調としてコメディ風に書こうと思っていたので、その 雰囲気がうまく伝わっていたのなら、一生懸命書いた甲斐がありました。文章 自体は、推敲の過程で自分が読みやすいようにどんどん削っていってしまった ので、逆に軽すぎるのではないかと心配していました。あとがきで子供向けの ものだから、なんてごまかそうとするあたり、姑息な作者ですみません……。 徒然様もアニメがお好きなんですね。なんとなくですが、小説を書く方はサブ カルチャー全般に通じてらっしゃる方が多いと思うので、他にもアニメ好きの 方が読んでいるのではと考えて冷や汗が出てきました……。女性が嫌悪するか どうかというと、たぶん一般的には中身を何も知らずに嫌っている人が大多数 だと思います。 大人になってから、私も友達に勧められた深夜アニメ(まだ両手で数えられる ほどの数なのですが……)を実際に観て、日本のアニメーション技術が本当に すごいレベルにあることを知りました。ディズニーにもひけをとらないくらい 美しい映像に圧倒されました。また、内容も本当に様々で、とくに「灰羽連盟」 という作品に感銘を受けました。あの作品を観てから、いつかああいうお話が 書けるようになりたいと思うようになりました。 そして、徒然様も参考になさっていると仰っていた伊坂幸太郎さんや綾辻行人 さんは、私も何冊か読んだことがあり、「小さな嘘や些細な隠し事」の物語には 惹かれるものがあります。私みたいな素人がやろうとすると、どうしても道具 主義的になってしまうのですが、徒然様ならあのレベルの作品が書けるのでは ないでしょうか。 最後になりますが、お読みいただき、本当にありがとうございました。 |
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No.9 Phys 評価:0点 ■2015-02-27 00:02 ID:vKYW8QwzakM | |||||
鈴茶様 はじめまして。ご感想ありがとうございます。お言葉にとても励まされました。 鈴茶様の書かれた投稿作を見つけられなかったのですが、よろしければ作品の 所在を教えて頂いてもよろしいでしょうか?(それとも、読む方のご専門なの でしょうか?汗) 青春アンソロジーの中に。お世辞だとしても嬉しかったです。作者は(根気が ないので)読書でも壮大な長編よりちょっとした時間で読める短編の方が好み でして、小さい頃にもグリムやイソップ童話、日本昔話みたいなものを読んで いました。それゆえ、いろいろな作家さんの短編が詰まったアンソロジーは、 それはもう大好物です。そんな中に自分の考えた話が加えてもらえるなんて、 想像するだけで頭の中がお花畑化してしまいそうです。 アニメが好きな方のご意見をうかがうことができて、大変勉強になりました。 今回は象徴的というか、イメージで書いているところがあるので、もし不快に 思われた点があれば申し訳ありません。ただ私自身「自分の好きなことを追求 する好奇心と、夢に向かって努力するひたむきさ」だけは忘れてはいけないと 思っているので(最近忘れかけていますが……)、それを内海くんや宮野先輩に 投影して、こういった形で表現できたことは、良かったです。 関連して、物理学者のリチャード・ファインマンという方の言葉に、「『できる けどやらないだけだ』と自分に言い聞かせている間は、『できない』ことを別の 表現で言っているに過ぎない」というものがあります。この言葉は私が高校生の ときに物理の先生から教えてもらったもので、今もときどき思い出しています。 ということで、言い訳せずに、なんとか仕事と趣味を両立していきたいです。 また、主人公の告白がさっぱりしすぎている点のご指摘ありがとうございます。 やはりここはもっとインパクトがあった方がいいんですね。ラジオについては、 「進撃の巨人」が流行っていたときに聴いていた一度きりだったので、具体的な 情報を頂けて大変参考になりました。(というか、この程度の理解で書いている こと自体が恥さらしだとだんだん分かってきました……) 最後になりますが、ご感想とても嬉しかったです。 ありがとうございました。 |
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No.8 Phys 評価:0点 ■2015-02-26 23:47 ID:vKYW8QwzakM | |||||
楠山様 お読みいただきありがとうございます。ご無沙汰していました。TCを撤退 とのお言葉に少しショックを受けましたが、楠山さんからの感想をうれしく 思います。 透明感のある文章、なんてお言葉をかけて頂けるほど上手ではないのですが、 あまりにも久しぶりに小説を書いたので、書き始めのあたりは、どうやって 書けばいいのか、台詞はどう入れるのだったかなど、自分のスタイルを思い 出しつつ、試行錯誤しながら書き始めました。 私はもともと、小学生の頃に見ていたNHK教育の「フルハウス」みたいな コメディがとても好きで、お笑いも舞台っぽいものの方が好みです。とくに 「ラーメンズ」という人たちのシュールな言葉遊びにすごくときめく(?) ものがありまして、会話文はそういった趣味に影響を受けている気がします。 こういうのって、あんまりやるとそれこそ引かれちゃうとは思うのですが、 もし一つでも笑ってもらえたなら、がんばった甲斐がありました。 それから、おジャ魔女ドレミ、お好きなんですね。まさか書いている作者が 「魔法使いの出てくるアニメ」として想定していたものをぴたり当てられて しまうなんて、予想だにしていませんでした。私はおジャ魔女世代なので、 内海くんのようにテレビに噛り付くというほどではないものの、毎週日曜に 弟と一緒に楽しく観ていました。ああいった子供も大人も楽しめるアニメは、 いつの時代も愛されて欲しいですね。 また、難癖どころか、たいへん的を射たアドバイスありがとうございます。 今回、私自身に時間と根気がなく、描写は最低限に会話中心で書きました。 その結果、キャラクターの描写をかなり端折ってしまいました。宮野先輩の 魅力が感じられないことや、告白の説得力が薄いことについては、そのせい かもしれません。頭の中で描いたプロット先行で一気に書いてしまったので、 次に書くときは、もっとゆったりと書いてみることにします。 最後に、感想を頂けて大変嬉しかったのですが、楠山さんがご自分の作品を 駄作だと仰られるのはどうしてなのだろうと思いました。詩板に投稿されて いた野鳥観察のものや、独特の世界観が広がるファンタジーなど、私には、 強く記憶に残っているものばかりです。ご自分で区切りを付けられたという ことでしたら他人がどうこうと言うことではないのかもしれませんが、また 機会がありましたら、楠山さんの書かれた作品を読んでみたいです。 ありがとうございました。 |
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No.7 徒然太郎 評価:40点 ■2015-02-24 22:28 ID:WoGSmdefeYQ | |||||
面白く読ませていただきました。主人公達の年代特有の淡さ、青さが全面に出ていると思います。また会話のテンポもよく、全体を通して流れがすんなりと入ってきます。 自分はアニメが好きでも環境に恵まれていたので理解ある友人が出来ましたが趣味としての市民権を得る所までにはまだ行き届いていないでしょうね(実際女性の方はかなり嫌悪されてる方も少なくないようで。それでも数年前に比べれば大分と警戒は和らいでいるようにも思えます)。お話の本質自体はそこではないと思いますが。 やっぱりこういう小さな嘘や些細な隠し事っていうのを扱った作品は心が温まりますね。良いものを読ませていただき感謝します。 |
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No.6 鈴茶 評価:40点 ■2015-02-24 10:14 ID:6jDp/VvhCUs | |||||
拝読しました。 正直書店に置いてある青春アンソロジーの中にあってもおかしくないくらいに完成度の高い物語だと思いました。 私はオタク側なのですが、小学校から中学校に上がるときのエピソードで「あーそんな感じだよな」と納得し、その当時くらいのことを思い出して切なくなりました。 主人公の告白について、恋愛重視の物語ではないようですがさらっとし過ぎて勿体ないきがしました。ガッツリ告白シーンにまでしなくても、もうちょっと文を割いていい気がします。 また、気にしていらっしゃったアニメやネットのことですが、だいたい書いてあることで間違っていないと思います。そこまで深いところまで踏み込んでいませんし。 ただ、最近は声優さんがなさるラジオはラジオというより、ネット番組のように映像付きのものも多くなってきているということも頭に置いていただければ幸いです。そうすると主人公があえて声のみにこだわる理由も書けてより物語に深みが出るのではないでしょうか。 自分からは以上です。楽しく読ませていただきました。お仕事が忙しいようですが、また物語を書かれたならぜひ読ませていただきたいです。 |
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No.5 楠山歳幸 評価:40点 ■2015-02-23 21:10 ID:3.rK8dssdKA | |||||
お久しぶりです。 TCを撤退した身ですが懐かしいHNに驚き、恥知らずですが感想を書かせていただきました。とは言え、上の方たちが的確な感想を書かれているのでたいしたことは書けないのですが……。 えんがわさんが良い表現をなさっていますが、透明感のある文章で女性のせつなさなどを素敵に書いていた方がコメディーを入れている、そこにまず驚きました。掛け合いというか、タイミングみたいなものも絶妙で何度か声を出して笑わせていただきました。何年かぶりに書いたそうですが、本当に神経が行き届いていてクオリティー高かったです。 総じて面白かったです。今まで自分が書いていたのは駄作ばかりだったと思わされました。 アニメ好きのため友達を失ったという点は、この場合キッズアニメらしいので問題ないかなあ、と思います。 私事ですか、「おじゃ魔女ドレミ」のファーストと「どっか〜ん!」は親子で楽しめる名作と思っていて、こういう話はなかなか書けないと思っています。テレビのへたなサスペンスドラマのほうがガキっぽいように思います。水彩画風の背景も美しかった、しかしスポンサーの意向を組まなければいけないのは仕方なく、熱弁を振るうほど、増してやカラフルなステッキでお馴染みの呪文を唱えるとなると少なくとも自分と同年代の人たちは去っていく危険があると自分は思います。 あえて難癖をつけるなら、うまく説明できませんが、先輩の魅力がもう少し欲しいかなと思いました。こんな彼女が欲しい、女性ならこんな女の子が幸せになって欲しく感じる落とし所みたいな。がんばっているのは十分伝わるのですが、一人称で書かれているため部の活動止まりの印象になってしまうかなあと思いました。告白も本気なのか冗談なのか少し迷いました。華奢な身体つきも出合った時に書かれていたほうが後々ギャップを感じやすいような気がします。 なにも書かなくなったモノが生意気書いて申し訳ありません。久しぶりにPhysさんの作品が読めて嬉しかったです。 では。 |
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No.4 Phys 評価:0点 ■2015-02-22 23:54 ID:ZE3fOikIC/U | |||||
陣家様 ご感想ありがとうございます。的確なご指摘の数々に、なんだか書いている私 よりも陣家さんの方が(作者の未熟さを含めた)話の本質をとらえている気が しました。お忙しいと伺っていたのですが、無理をおして読んでくださったと したら、申し訳ない気持ちです。ですが、今の私が出せる全力をもって書いた ものなので、手抜きはしていません。(していないのに、このくらいが限界と いうことです……) 主人公についてのご指摘もありがとうございました。実は、私が初めて自分で 小説を書いたのは大学3年のときで、「男子学生」が主人公の学園ものでした。 (投稿はせず、今もマイドキュメントに固く封印されています……。)しかし、 なにか上手く書けないというか、読書が好きな友達に見てもらったら「なんか 人間っぽくない」と評されてしまいまして、そのトラウマからか、大学院生に なってTCに参加しているときには「男子学生の一人称」を避けていた覚えが あります。 私は、小説を読むときは、主人公に自分を重ねずに読むタイプなので、書いて いるときもなるべくそうしたいと思っています。しかし、やはり人間が書いて いるので、神の視点には成りきれないみたいで……。このあたりには、本当に 自分の至らなさが恥ずかしいです。 また、個人的に気を付けて書いた細かい部分や、主人公のフラッシュバックの 分かりにくさのご指摘ありがとうございました。陣家さんの読解力の高さに、 改めて驚きました。私は、小説のあとがきや裏表紙を読んでから買うかどうか 決めたりするのですが、TCもまた、「感想欄に寄せられる方のコメント」に とても惹きつけられることがあります。陣家さんの感想は正にそういう本質に 切り込んだものが多く、いつも尊敬する思いで読んでいます。 「壁ドン」って男性が女の人を追い詰めるあれですか。笑 えんがわさんにも 指摘された通り、あの放送は話の山場なので、陣家さんの壁ドンか、あるいは えんがわさんの放送で愛の告白のような方向にいつか改稿したいと思いました。 貴重なアドバイスをありがとうございます。 また、女子の間でアニメ趣味がつまはじきにされるかどうか、という点には、 やっぱりリアリティがないのですね。実は(そもそも時代が違うのですが)、 私の周りには、漫画やアニメが好きであることを公言している友達がほとんど いなかったので、世間的に言われる(信憑性の薄い)イメージみたいなものを 借りて、書いてしまったところがあります。 この部分は一番不安だったところでもありまして、「アニメが好きな人を擁護 するように見せかけて、本音は差別しているのか」と捉えられかねない題材で あったかもしれません。私自身もときおり、こういうお話はちょっと嫌だな、 と感じるアニメがあったりするので、そういう方に心から共感できているかと いうと、自信がありません。(この前、綾辻行人さんのAnotherを借りてきて 観たときには、小説まででやめておけば良かったと、後悔してしまいました。 お好きな方には本当に失礼だとは思いますが……) とはいえ、何か一つでも自分がこれだけは譲れないというものを持っている人 には、憧れを抱きます。自分にもそうやって誇れるような何かが欲しいのかも しれないですね。今急に思い出したのですが、以前ねじさんという方がTCに 投稿されていた小説の「好きなことや楽しいことをずっとしてしたい。私は、 普通の女だ」みたいな台詞(うろ覚えです)が、私の中でとても印象に残って います。どれだけ割り切っているように見える人でも、結局近くにいる誰かに 自分と同じ世界を共有してもらえないと生きてはいけないんだ、という感慨を もった覚えがあります。 最後になりますが、こうやって自分の作ったおはなしにご感想を頂く体験に、 懐かしさにも似た感情を覚えました。そしてこれがTCの魅力であったことを 思い出しました。 ありがとうございました。 |
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No.3 Phys 評価:0点 ■2015-02-22 11:53 ID:8ZyYqGxnfpo | |||||
えんがわ様 こんなに早くご感想を頂き、ありがとうございました。含蓄のあるコメントで、 楽しく読ませて頂きました。私の書いたものより、えんがわさんのコメント欄 の方が読みごたえがありますね……。笑 こんなにたくさんのお言葉を頂けて 感激しています。 特に、文章が「声」のようだと言ってもらえたのが嬉しかったです。私は劇団 四季の劇場が近い路線に住んでいるので、時間がある休日には観劇に出かけて いるのですが、帰り道はいつも、小説でしか表現できない世界(叙述トリック などでしょうか)と同じように、声や歌でしか表現できない世界で活動ができ たら素敵だろうな、なんて子供みたいなことを夢想しています。(もちろん、 そんな世界で活躍できるほど文章や歌に才能があるわけではないのですが) 放送番組のところで、ちょっと押しが弱かったのは失敗してしまった!という 思いでした。言うまでもなく私の力不足です。前にSF的なものを書いた時も そうだったのですが、私は自分の知らない部分をごまかすために、可能な限り 固有名詞や具体的な描写を避ける傾向があるようで……。 お話の中で石井先輩に対して内海くんが「確かな知識と教養に裏打ちされた」 と評するのは、映画やミステリー小説を読んだ後に、インターネットで作品の 考察をされている方のコメントを検索したときに、いつも私自身が感じている ことです。世の中には私より作品を深く理解している人がいて、そういう方の 前で知ったふりをして、批判されるのが怖いのかもしれません。宮野先輩には 恥ずかしがらずに、なんて偉そうに書いておいて、作者自身が一番いくじなし なのかもしれないですね……。 ご意見を頂いたことで、私ももっと経験(?)を積んだら、改稿できるのでは ないかと励まされる思いでした。小説に限らず、日々一歩ずつでも、何か成長 できたらいいなあ、と考えています。温かいお言葉がとても嬉しかったです。 都合のいいパーツにしてしまったのも、ちょっと反省しました。最初は設定に 加えるつもりはなかったのですが(実際なくても話の起承転結は成立します) どうしても、私自身の読書体験が海外や国内の叙述ものに偏っているために、 味付けの邪魔になるのに「隠し味だからいいよね……」ってスパイスを足して しまいました。このへんの傾向、以前から色々な方に指摘してもらっていて、 やめた方がいいとは思っているのですが、どうしてもやめられない癖みたいに なっています。 マニアックな書きなぐりも面白かったです。風立ちぬ、クレヨンしんちゃんは 見ていないのですが、興味が出たので借りて観てみようと思います。まだまだ フィクションの鑑賞経験が浅い私には、少し難しい題材を扱ってしまった感は あるのですが、これを書いたことは後悔していません。いつかもっとえんがわ さんをわくわくさせられるようなお話にできたら、と思っています。 最後になりますが、本当に丁寧な感想を頂けて感激しました。大して役に立つ 感想は残せないかもしれないですが、また、えんがわさんの作品も拝読させて 頂きたいです。 ありがとうございました。 |
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No.2 陣家 評価:40点 ■2015-02-21 23:53 ID:T2P12kB.Ed6 | |||||
拝読しました。 Physさんの作品に置いては主人公がバラエティに富んでいたと思いますが、高校生男子の一人称というのは初めて読んだ気がします。 そういう意味でも、とても興味深く読ませていただきました。 久しぶりの投稿と言うことで、作者さん自身も無意識に気合いを入れてしまうんじゃないだろうかという懸念もあったのですが、それは取り越し苦労という物で、そんな気負って読む必要もないゆったりしたお話が続くので、読み手の自分もゆったりほんわかしながら楽しめました。 文書も相変わらず平易で分かり易くて、良かったですが、高校生男子の一人称としてはちょっと素直すぎる感じもしました。 もうちょっとひねたところもある方が自然な気もしますね。 いや、何というか、ちょっとマザコンっぽいかなあ、と。 主人公さん、めっちゃお母さん好きですよね。 趣味は合って意気投合したものの、宮野さんにその辺で引かれないかと心配になります。 ストーリーは、弱小風前の灯火クラブに、いやいや参加という、安定のプロットですね。 お昼の放送で一人がんばる姿とか、河原でアメンボ赤いな〜、の発声練習する姿とか、とにかく先輩がかわいかったです。 特に、後半の趣味が露見したシーンでの、 >「そうか、内海くんアニ部だもんね……ミーナ好きなんだ……さようなら……」 この辺のセリフとか、キャラが出ていて好きです。 >「母さんはさ、どうして声優になろうと思ったの?」 Physさんの作品ですからきっとなにかサプライズが用意してあるのだろうなとは思っていたのですが、そういうことだったんですね。 やられました。 読み返してみれば、冒頭、家にアニメのDVDがいっぱいあったとか、ちょこちょことヒントはちりばめてありましたね。 特に、 >僕も何度か別の番組で投稿した経験はあるけれど、 こういうところ、したたかと言うか、神経が行き届いているなあ、と思わされました。 >――部長の宮野葉子です。この時間に来るってことは、他の部も見てきたのかな? >先輩の名前は、宮野葉子さん。放送部の部長をしており、毎晩自宅で翌日のお昼の放送原稿を書いていると言っていた。 ここは回想というか主人公のフラッシュバックなのですが、ちょっと分かりにくい感じはしました。 > ……例えば、僕は宮野先輩のことが好きです。恥ずかしさを堪えてそう言い切ると、 ここはもう、壁ドンしちゃっても良かったんじゃないでしょうか。 ちょっともったいないですね。 とは言え、チョロインに成り下がらなかったところは、とても良かったです 一つだけ設定に苦しいところがあるとすれば、今時の中高生はアニメ好きを憚る人は少ないんじゃないかというところでしょうか。 潜在的なものも含めて、オタクな女子は普通に多いと思います。 それだけでつまはじきにされることは、あんまりなさそうな気もします。 ラストからこの先を想像すると、なにやらまた一悶着起きそうな波乱含みなのに、それに気づかない主人公が少し笑えました。 ではでは。 |
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No.1 えんがわ 評価:30点 ■2015-02-21 17:14 ID:DR2hIgqKGrg | |||||
転部で、うぉっと、泣きそうになってしまいました。 文章だけでそうなったのは凄く久しぶりです。 きっと「素晴らしい」って評価に置くところなのでしょうけど、自分は得点付けるのにトラウマがあって申し訳ない。でも「素晴らしい」という声は残せたらと思います。 文章は綺麗で上品で、なのに分かりにくいところが無く流れていて、その文字が流れる感じが声に似てるなって思いました。澄んだ声のように。羨ましいです。自分はここまで透明度のある声は出せないのですけど、やはり声を意識した文章を書きたいな、目指していくと、この小説みたいな祝福があるのかなと思いました。 自分は声優を詳しく知らないんですが、つまりオタクキモーって言う最初の女の子の目線よりなんですが、その文章の上品さが、主人公への好感を支えたんだと思います。それと、これは意図してやったのかなと思ったんですが、そのアニメの具体例とかこう実在の名前、アニメ談義みたいなのが、ぼやけてる感じがありました。そこをつまりオタクっぽさを無くしてテーマを伝える純度を上げたいのかなと思ってたのですが。詳しくなくてもここまで書けるなんて、凄いです。 あのです。それで本当にうるうるして、「もしかして自分、泣いちゃうかも」って思ったのが、その主人公の放送番組が始まる高揚感。 ここであとひと押しして、主人公が今までアニメで培ってきた知識を恥も外聞もなく晒すのかな、とか、あの主人公の脚本とか。もしかしたら部長との馴れ初めエピソードやエッセイ的なもの。どんどんどんどん、高揚感があがったんんです。それであの、それなのに意外と早く部長さんがやってきて。ドラマとして部長さんが聞いているかわからない、でも主人公は全力で。例えば愛の告白のようなものは、やり過ぎでしょうけど、ここは見せ場だと思ったんです。もしかしたら作者さんがそこまで主人公のアニメ知識に追いつけてないのかもしれませんが(これは憶測で申し訳なく)、ぜひぜひそのインターネットででも調べた知識、或いは時が許すなら作者さんがアニメを見始めて声優さんを追うことなどを体験して、数年の年月がたち。それがフィードバックされたら、これはもちろんアニメに限った事ではないのですが。 焦る必要はないよって浮かんだんですが、それでもそれ以上に今、こうして自分にこういう風に伝えていただいてありがとうと思いました。ううってね、ほんと思い出しただけで込み上がるものが。 あとは、どうなんでしょう。最後のお母さんは、ちょっとアニメっぽく見えました。と言うのはどうしても設定先行というか都合のいいパーツというか、そういうのがありました。丸っきりノーマルな主人公でも感情移入とかやりやすそうですし、もうちょっとここを足して描写に説得力を足すとか、もうちょっと調理していただけると、自分の好みにどストライクっぽいです。 ここからは余談というか、自分は書きなぐるようにタイピングしていて。(そうすることで自分には得るものがありそうで、でも受け取るphysさんにははた迷惑ですよね) やっぱり昨日の、「風立ちぬ」で声ってすごいなと思いました。賛否両論、すっごいですよね。あの主人公のキャスティングはもちろん、飛行機の効果音をボイスでやっているとかなんとか。何も知らないで観た初見では凄いオーラがあって、良い悪いを超えた飛行機の存在感。とか、どう思うのでしょうか? あとあと、昨年の「クレヨンしんちゃん」の「嵐を呼ぶロボとーちゃん」でした。あれは本当に、「とーちゃん」役と「ロボとーちゃん役」の声優さん、こちらも名前は知らないんですが声ははっきり浮かびます。あの二人のとーちゃんを成り立たせた最後のスパイスとしての声の存在感。うわー、すごいなーって思いました。あっ、マニアックになってお返事大変になりそうですいません。書き流しているので、聞き流していただければ。 でも、こういうところも、つまり「アニメってひいちゃう?」みたいに思われても熱弁したい衝動は自分の中にもあって、そういうのをPhysさんは上品に包んでいてそれは素晴らしいんですが、もうさりげなくでもいいので、もうちょっとにじませたりあげたりすると、それはトータルな評価はマニアックすぎと下がるかもしれませんが、自分はより感動するんじゃないかなとか。でも、どのような道であれ作者さんの歩みをワクワクしております。こんな素晴らしい方がこのサイトに数年も前からいたんですね。どこかでお会いしてたでしょうか。ほんとうに作者さんにとっても今の自分にとっても失礼なやつでした。ほんと、ぺんぺん、グラウンド10周、うーだりーからダメダー、しょうがないなー。 うー何を言いたいんでしょうか。取り敢えず感動して燃えたってことです。ありがとうでした。 |
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