栄光を求めて。 |
最高の栄光をもとめて、走らせるんだ。 そう言い放った老人の目は光り輝いていた。 春 雪が降るある朝、足元おぼつかない一匹の仔馬がいた。年老いた母馬は彼を産んで、初乳を与えて亡くなった。残された仔馬には義理の母が付けられた。年老いた老人、蔵之介は杖をついて東京からやって来、見た。今年最初の仔馬は夜のように黒い毛皮をしていたのを。 仔馬たちはたくさん産まれ、まだ雪が残る牧草地で遊び育った。義母の彼は大きく育ち、他の仔馬たちとかけっこをしていた。彼が一番速かった、牧場主が蔵之介にその事実を伝えたが、蔵之介はわらい、早生まれだからだろう、といった。 夏。春競馬を終えた馬たちが避暑地の北海道へやって来た。天皇賞二着の彼は生まれ故郷の草を食し、寝た。宝塚記念を勝った彼はフランスだ。蔵之介は無理をして彼について行ったそうだ。 義母の仔は背が高くなっていた。黒い毛並みは産毛を捨てて、大人の毛並みへと変わっていた。 秋。 仔馬たちは母親と別れた。少し大人になった仔馬たちは競走馬になるための訓練を始めた。彼らが競馬場に姿を表すのには まだ時間がある。しかし、皆は競走馬としての第一歩を踏み出していた。 フランスの彼は、栄光を手にすることは出来なかった。その栄光は近いようで遠い。目の前に見えるのに手を伸ばすと消えるファントムのような。蔵之介は「あきらめない」 と 一言だけ言った。 冬。フランスに行った彼は引退して、神の誕生日に彼の生まれ故郷に戻ってきた。次の世代に彼の偉大な血を伝えるために。そして蔵之介は無理をしてでも馬について行き、最高の栄光を求め続けるだろう。 義母の仔、あのフランスの彼の弟が栄光を手にした日、蔵之介は眠るように亡くなった。「勝ててよかった」とテレビを消しながらつぶやいたのが最後の言葉だった。偉大な調教師は最後まで馬たちの事を考えていたそう。 |
ローズ
2014年09月17日(水) 12時49分19秒 公開 ■この作品の著作権はローズさんにあります。無断転載は禁止です。 |
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No.2 ローズ 評価:--点 ■2014-09-24 16:38 ID:JRdJZW/4KHM | |||||
感想 ありがとうございます。 次は名前を入れて何か書いてみます。 文章の交通整理に力を入れてみます。 |
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No.1 片桐 評価:10点 ■2014-09-23 21:22 ID:n6zPrmhGsPg | |||||
こんにちは。読ませていただきました。 作者には思い入れがあるのだろうと思いつつ、なにが書かれているのか把握しにくかったです。 義母の彼、天皇賞二着の彼、宝塚記念を勝った彼、フランスの彼、と短い中でいろいろな「彼」が出てきます。 注意して読めばそれぞれが別なんだと分からないではありません。 しかし、混乱しやすい書き方をしているのは間違いないと思います。 名前を明示すれば、少なくとも分かりやすくなると思います(あえてそうしたくなかった、のだとしても、効果を上げているとは思えません)。 春夏秋冬に分けて、牧場の様子や、活躍するサラブレッドのことを描こうという試みは好きでした。 ただ、今のままでは、内容理解自体が辛いので、もう少し尺をとって、具体的に書いていったほうが、読み手には優しい作品になるのではないかなと。 蔵之助さんって、結局どういう人なのか、よく分かりませんでしたので。 基本的な情報整理ができているだけでも、読み手の印象はかなり変わってくるはずなので、自分だけが分かる形から、伝わる形へと意識をシフトしていくといいのではないかと思います。 私からは以上です。これからのご健筆をお祈りします。 |
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