本当にあったかもしれない昔話 |
ここはうっそうとしたジャングル。 獰猛な野獣との戦い、部族間の闘争。 数えればきりがない危険の中で、何十年も生き抜いてきたここの酋長は本当に尊敬する。 そういえば俺もこの過酷な世界でいままで生き抜いてきたんだな… んっ?なんだか外が騒がしいような… 「アサテタ起きろー!起きろー!!」 ガンダタのいきなりの大声に俺は飛び起きた。 「うるさいな、もうちょっと寝かせてくれよ。あっちへ行ってくれよ。」 と俺が言ったときにはガンダタはテントから飛び出し全速力で逃げている。 えっ?まさかと思った俺は槍を持ちテントの外に出た。 やっぱり、となりの部族が襲撃してきたんだ。木々の間に華やかな装飾で着飾った戦士の大集団が見える。 ガンダタは臆病で逃げ足が速い。だが俺は違う。 俺には俺のプライドがある。ここで逃げるわけにはいかない! だけどなんだか様子がおかしいぞ?いつもなら仲間がいるはずだが。 この日は屈強な仲間もいない。酋長さえいないじゃないか… 俺はサバンナを見まわした瞬間、驚きで足がすくんだ。 あれはこの地域じゃ無敵のカサイ族じゃないか! 逃げよう!プライドもくそもあったもんじゃない。 俺は槍を捨て、全速力で走った。 だがカサイ族は速い!しかも目の前は川、そのとき俺は何も考えず川に潜った。 幸いカサイ族は姿を消した俺を追いかけては来なかった。テントにある宝物に気を取られたみたいだ。 セーフ、あとはどれだけ息が続くかだな…。水面に顔を出さないように下流の方へと泳いでいく。 苦しさが限界まで達した時、俺は川を出た。 「くそっ俺たちの住処が。」 「しかし困ったなぁ俺たちの部族がばらばらになっちまった。」 その時どこかで俺の名前が聞こえたような気がした。 「アサテタ、アサテタ。こっちだ。」 「ガンダタじゃないか。今行く」 「どうしたんだガンダタ珍しく真剣な顔だな」 「酋長が部族の者を招集してるんだ。今から反撃だぞ、敵が油断しているところを突くんだ。」 「それは面白そうじゃないか、腕が鳴るぜ。」 「ところでアサテタはなんで戦うんだ?」 「そりゃあ、自分の部族の平和を守るためさ。スリルを求めているのもあるけどね。それに男に生まれた限り戦うのは義務だろ。」 「そういうお前はなんで戦わない。周りから認められずいつまでも雑用でいいのか?」 「ただ単に平和を求めてるだけさ。争うのは性に合わないしね。」 「なるほど、でもいつかはお前も部族のために戦う時が来るだろ。部族がなくなれば元も子もないしな。」 「部族がなくなればそこらの猿と一緒に暮らしていくよ」 「はっはっはお前らしいな。ところで酋長のいる場所はもうすぐか?」 「そうだな。もうすぐ開けた土地に出るからそこに集まってると思うよ」 「分かった」 俺はうっそうとしたジャングルを見つめながらそう言った。そして心の中で考えていた。 本当に平和を求めることがいいのか?いや、もちろん平和なほうがいいに決まっている。 しかし、平和になったところでそこに残るのは堕落した能なしどもばっかりではないのか? 目の前の問題から逃げるばかりでいいのか?むしろその問題に真正面からぶつかっていくべきじゃないのか? ガンダタの性格は考えれば考えるほど分からない。でもガンダタはいいやつだ。それなりの考えがあるのだろう。 そうこう考えているうちに酋長のところに着いた。 続々と逃げ延びた仲間が集まってきた。そして俺は槍を渡された。いよいよ反撃だ。 無言で指揮を執る酋長は神々しかった。 対するカサイ族は油断しきっていた。俺らが一目散に逃げたので戻ってくるとは思っていなかったようだ。 油断しているカサイ族に味方の弓兵が一斉に矢を射た。何人かが矢を受けて倒れた。 次は槍をもった歩兵が突撃した。もちろんアサテタも加わった。 味方の槍はカサイ族の弓兵を蹴散らした。アサテタも二人の敵を打ち倒した。 いよいよ歩兵同士の戦いになった。敵のカサイ族はつわものぞろいだが二回の不意打ちでかなり人数が減っていた。 数で勝っていたので味方のほうが圧倒的に有利だった。 だが、アサテタは運悪く敵の酋長と当たってしまった。 アサテタは勇敢に戦った。だが力及ばず殺された。 その後カサイ族は戦闘に敗れ、敵の酋長は残った仲間を引き連れて命からがら逃げかえった。 ガンダタはアサテタの死を悲しんだ。 だが心の底では嘲笑っていたに違いない。 「俺と同じ道を歩んでいれば死ぬこともなかったのに」 ガンダタは小声で呟いた。 |
白装束
2013年06月07日(金) 20時58分10秒 公開 ■この作品の著作権は白装束さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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No.5 SHIRIAI 評価:20点 ■2013-07-03 07:34 ID:HT2.kl6grIg | |||||
おはようございます。 んー残念ですね。念が残るということです。舞台設定が面白いので、三行目の「危険の中で」まで期待しました。「何十年も」で、おや、と目を細め、 >酋長は本当に尊敬する で、がっくり。 ⇒酋長は尊敬に値する または、 ⇒(私は)酋長を尊敬している が、いいでしょう。 ☆つまり、話し言葉と、語りは違う。たとえ、話し言葉で語るにしても、普段喋っていることばでは意味が伝わりにくいこと ●大変気になるのは、主人公がアッサリ死ぬことではなくて、語り手がコロコロと入れ替わること。 はじめは、主人公が語り手。しかし、 >水面に顔を出さないように下流の方へと泳いでいく。 ここで一瞬、第三者が語り手に替わり、その直後にまた、主人公に戻る。 >次は槍をもった歩兵が突撃した からラストまで、また、第三者になる。 ●次に気になるのは、状況に対する思考や行動が噛み合わない。 雑用係の大声(ビックリマーク二つ)に、過酷な世界で生き抜いてきたはずの戦士が、「ゆっくり寝かせてくれ」は、ない。 逃げた後の、雑用係と戦士の会話と、戦士の思考が噛み合わない。 最大の失敗は >だが心の底では嘲笑っていたに違いない。 ここまでの作者の苦労は泡と帰す。 なーんとなくしか考えていない。 もっとその世界の住人にトリップしなければ、読者がその世界に行けるはずがない。 作者は小説の世界へのツアーコンダクターでなければならないと私は思う。 初めてということなので、次回は、しっかりトリップしてきて下さい。 期待してます。 (点数甘め) |
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No.4 白装束 評価:--点 ■2013-06-09 07:57 ID:dJ/dE12Tc8A | |||||
ご指摘ありがとうございます。 今回は文章があまりにも短いので、さらっと読めるようにしました。 次回からはおっしゃる通り、文章作法に気をつけて書くようにしたいです。 |
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No.3 gokui 評価:0点 ■2013-06-08 21:19 ID:SczqTa1aH02 | |||||
読ませて頂きました。 まず最初にきびしい事書きます。この作品は文書作法を守っていないので、評価は無評価とさせて頂いております。 白装束さんは、段落の変わるときに追加で改行を一つ加えておられますが、文書作法では、段落の頭を一字下げるが正解です。 次に、……(三点リーダー)は文書作法では、二つセットで使うのが基本です。 TOTAL CREATORSの一般的な文書作法にも書いてありますので参考にしてください。 内容的には、戦闘シーンよりもアサテタとガンダタのやりとりが面白いですね。会話文が連続する場面などは、間に二人の仕草などを織り込んでいけばさらに面白くなりそうです。 もし文書作法に合わせて修正されるのでしたら、再度点数を入れさせて頂きます。また、新作の発表の時は一般的な文書作法をよく読んで投稿してくださいね。期待していますよ。 |
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No.2 白装束 評価:--点 ■2013-06-08 11:50 ID:dJ/dE12Tc8A | |||||
感想ありがとうございます。 展開が早い、もっともだと思います。 もっと厚みのある文章が書けるように頑張ります。 次の投稿では視点と展開速度に気をつけていきます。 |
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No.1 卯月 燐太郎 評価:20点 ■2013-06-08 03:56 ID:dEezOAm9gyQ | |||||
「本当にあったかもしれない昔話」読みました。 展開が早いですね。(その分、説明的になっている) 構成的には「起、承、転、結」問題はないと思います。 ジャングルでの部族通しの戦いといったところでしょうか。 プライドの高い主人公の「アサテタ」も「あれはこの地域じゃ無敵のカサイ族じゃないか!」ということで、驚いたことでしょう。 問題は「視点」ですね。 この作品「一人称」(俺)で読んでいると、ラストで三人称になりました。 >>だが、アサテタは運悪く敵の酋長と当たってしまった。 アサテタは勇敢に戦った。だが力及ばず殺された。<< ■作者からのメッセージ 初投稿です。 歴史小説なんかで良く出てくる 戦闘のシーンを書きたかったのですが、ちょっと変な思考が入ってしまいました。 ●戦闘シーンの雰囲気は出ていたのではないでしょうか。 >>ガンダタはアサテタの死を悲しんだ。 だが心の底では嘲笑っていたに違いない。 「俺と同じ道を歩んでいれば死ぬこともなかったのに」 ガンダタは小声で呟いた。<< ●このラストは、作品を締めていると思いました。 ●あと、女性を出したら、よいと思いますね。 それでは、頑張ってください。 |
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総レス数 5 合計 40点 |
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