ニコルソン |
せめて気がふれていれば良いのに、最初から最後まで正しかった。ニコルソン。なぜ正気でいた。 ニコルソンは殺し屋に生まれた。 元来両親がその家業だったというわけではない。ニコルソンは街で二番目に人気のパン屋の息子だ。裏通りにあるから知られていないが、実は一番目に人気のパン屋より美味いパンをつくる。しかしニコルソンは殺し屋に生まれた。 出会ったのは半年前だった。季節は夏だ。私はニコルソンに恋人を殺される。 「まだ朝じゃないから寝ていて良かったんだよ。そしたら俺が死体を外に埋めておいてあげたのに」 「……殺したの?」 「うん」 「なんで殺したの?」 「生活があるから。あと質問に答えるのは三つまでだ。全部教えて貰えると思うなよ」 真夜中の銃声で起きた。森の奥の小さな貸別荘で生活していたから、私以外には誰も気づかなかった。当然だ。誰もいないのだから。今にして思えば恋人は殺されることを予期していたのだと思う。 眠る恋人を探しに隣の部屋へ行くと、月の明るい夜を背にして男が銃を胸にしまっていた。見ると、人を殺したとは思えないような顔で笑う。 「復讐なら日が昇るまでに頼むよ」 キャスターを吸いながら男は言うのだ。煙硝と生臭さを特有の香りが満たす。 「あなたは誰ですか」 「ニコルソン。殺し屋をしている」 それからどうしてかニコルソンに連れられて、剥げかけの看板がかかった探偵事務所の横の、水槽のようなニコルソンの部屋に移った。部屋の真ん中に一人で寝るには広すぎるベッドがあって、あとは洗面所とシャワー室とそれだけ。電波は届かないらしかった。小さな丸いテーブルが、唯一ニコルソンの持ってきた家具だと言う。あるのはテーブルの上の灰皿と安っぽい赤のライターの二つで、それ以外には時計もラジオもなかった。 ニコルソンは、俺は他にも部屋があるから好きに使って良いと言ったきり出て行って、しばらく帰って来なかった。実際ニコルソンにはいろいろな場所に他の寝床があるようで、帰って来るのは稀だ。事務所は使われていないらしく、ニコルソン以外に誰も尋ねて来ない。 その日私は、腹が減ったら事務所のダイニングで料理をしろとはじめに言われていたので、不定期に帰るニコルソンから渡されたお金で卵と小麦粉を買ってきた。作りすぎたなあと二枚の皿に乗せたとき、ちょうどニコルソンが帰って来て、ほころんだのを覚えている。 「分量を間違えたの。作りすぎたから食べて。ねえ、パンケーキは好き?」 「あァ。好きだよ。……そういえば俺はパン屋の息子だったけどパンは一つも焼けなくてね、でもパンケーキならとびきり美味いのが焼けるんだ」 「へえ、じゃあ今度食べ比べてみようよ。どっちが美味しいか。良いでしょう?」 「うん。でもきっと俺が勝つよ」 二人して声をあげて笑いながら、テーブルの上に散らかった、いつのだかわからない新聞をどかす。私がパンケーキを置くと、ニコルソンはきれいなフォークを選んできて、向かいに座ると一緒にいただきますを合掌した。 胃がはちきれんばかりにパンケーキを押し入れると、あまりの苦しさにベルトが飛ぶ。それを見たニコルソンは子どものような無邪気さで笑っていた。 「夢を見るよ。起きたときにはどんなのか覚えていないけれど、でも、ひたすらに綺麗な夢だ」 いつの日のことだったか、水槽のような部屋で金魚みたいにシーツを漂って寝たことがある。 ニコルソンは背中を向けないから、いつも通り左を向いた私と向かい合ってベッドに入ったのだ。その頃私は、ニコルソンが帰って来た日には他にベッドがないから一緒に寝ていた。今にしてみればおかしなことだと思うが、当時、私とニコルソンの間には邪なところがなにもなかった。一度だって抱き合ったことがない。 ニコルソンはそれこそ夢見るようなやさしい声音を出す。 「最近はとくによく見る。それも、夢の中で同じ夢だと気づいているのに、覚めると忘れているんだ。……ばかばかしいかな。お前を見ると時々、夢のことを思い出しそうになる。そうしてもう一度見たいと思っているんだから」 横たわる前にニコルソンの吸った、キャスターの匂いがする。 「深層心理かもしれない。あなたが望んでいることを夢見ているとか」 なるほどね。俺が望んでいることを思い出せば、夢も思い出せるのか。 ニコルソンは気が違ったようにやさしく微笑む。ここで笑うのは、いくらなんでもひどいと思った。悪夢だ。こんなものは。 「お前は俺が怖くないか。俺はもう何人も人を殺したよ。きっとこれからだって殺していくよ」 「うん。最初に聞いた、生活のためだって」 「そんなもの……じゃあ、お前は今まで、そんなものを信じていたの。それならお前。お前の恋人を殺したことも、そんなもので」 「そうだよ。それに、こんな震える殺し屋の、いったいなにが怖いんだ」 抱き締めてやるにはベッドが広すぎて、溺れてしまうそっちのほうが怖いだろうと思ったから、私は手を伸ばしてニコルソンの握りしめた拳を掴んだ。爪が、柔らかい手のひらの肉に食い込んで痛そうだった。ゆっくりと開く指が私をなぞる。 「俺は殺し屋に生まれたけどさ」 ニコルソンはぶるぶる震えたままで、けれどそれなのに、微笑む姿はあるべき姿のようだった。 「本当は殺したくないんだよ」 ニコルソンと汽車に乗って南へ向かったのは、確かに冬の終わりの明け方だった。ニコルソンが私を連れて歩くのは、あの真夜中から二度目になる。 停留している汽車の横にある売り場に向かうと、後ろから来たニコルソンを含めて二枚の切符を買った。その際、切符売り場のお姉さんにきょうだいですかと訊かれたので、恋人ですと勝手に答えたら、ニコルソンは腹を抱えて笑った。 「殺し屋ではいられなくなった」 降りた駅は、無人だった。 昔一度来たことがあると続けて、ニコルソンは以前の自分の発言をなかったかのような素振りで歩きだす。遠くなる背中を眺めていたら、ニコルソンが一度立ち止まって私を見て、けれどすぐ、また交互に足を動かした。今度はもう止まってくれそうにないから、あわてて追い掛ける。 「夢のことを思い出したんだ。だからお前を連れ出したんだけど」 唐突にニコルソンは白状する。 隣に並ぼうとすると駆け足になってしまうから、今さら、私に合わせてくれていたのだと思い知った。そのときふと、私がずっとニコルソンのやさしさによって生かされていたのだと気づく。 「なあ。お前は恋人のことを、ちっとも好きじゃなかったんだろ」 「うん」 「それも、本当は赤の他人で、恋人なんかじゃないんだろ」 「うん」 「どうして嘘を」 「かわいそうだったから」 高台の、破れたビニールハウスの中に入って、なにかの跡地となったその真ん中にニコルソンは寝転がった。隣に座って手をつけば、爪のあいだに腐葉土が入り込む。まるで隙間をひしひしと埋める日々のようだ。日々は淀んでうつくしかった。 「……誰かを愛するようにいたなら、こんなふうにはならなかったのか」 奪う側ではなく与える側であったなら、あるいは。 「でも。お前と出会わなければ良かったとは、どうしても、思えないんだよ」 ニコルソンはそう言って、ひどく豊かに微笑む。 それを見た途端、目の奥を熱が這いずった。あふれんばかりの涙が溜まって、なにもかも滲んでいる。ニコルソンの顔は、表情は、どこか嘘のような、微笑みは。すべてがこうなる運命だったのか。 せめて気がふれていれば良いのに、最初から最後まで正しかった。ニコルソン。なぜ正気でいた。 「俺の夢を叶えてくれ」 「……いやだよ」 「お前だけなんだ。お前にしかできない。俺の夢を、お前が」 「いやだ」 「後生だから、叶えてくれ。俺の。夢を」 差し出されたニコルソンの手には、銃が握られていた。はっきりと覚えている。これを見るのもまた二度目だった。 「夢の中ではこうして俺が空を仰ぐようなかたちで、その隣に、お前がいる。笑ってみせるとお前は泣くよ。だから余計笑ってしまうの」 「ねえ、いやだよ。こんなところじゃなくて、もっとずっと遠くに行こうよ。ねえ、二人で。ねえ」 「俺の体は水の底に沈んでいるみたいで、だのに、泥の匂いがする。日の光があたたかくて、花の蜜の、たおやかな春だ。どうしようもなく。そう。春だった。そうして俺は、いたくしあわせなんだよ」 「いやだよ、聞けよ、いやだって、ねえ」 おだやかに笑うニコルソンが心臓の上を撫でる、内側のそのポケットからキャスターを取し出して、安いライターで火をつける。キャスターの匂いが鼻先をかすめて、嗚咽が漏れた。肺を痛めながら煙を吐いた口が言う。トリガーを引け。 ニコルソンのその夢を、夢の話だと笑っていれば、なにか少しは変わったのか。殺した五臓六腑を思い出す。 「行こうよ、もっと南のほうへ下りて、それで」 「冗談を。行く場所なんてないくせに。お前は、あそこへ帰るしかない」 だからお前だけなんだ。 ニコルソンは繰り返す。手にした銃の重さに、手が、腕が、埋まっていくようだった。私はニコルソンの言葉のそのすべてを理解して嗚咽が止まらない。 私以外の誰にもわからないだろう。こんなひどい話は、誰にも。 「難しいことじゃない。一発で良い。心臓を狙うんだ。なに、お前ならすぐできる」 「死ぬしかないの? それしか、だめなの?」 「うん。俺はもう十分なんだ。……せめて最後に、お前に名前をあげるよ。地下室のような、真夜中のような、あの部屋と一緒に」 ニコルソン。舌に馴染んだ名前を、もう一度呼ぶ。本当は、銃の名前なんだとも。 「あなたは誰ですか」 丸めた人差し指を引く。最後に見た男の、かたち作った口の動きは。男の名前か、私の名前か、聞きなれた殺し屋か、そうではなくて、I love youだったのか。 銃声が鳴り響く。祝福のファンファーレにどこか似ていた。キャスターの匂いがする。キャスターの。ニコルソン、の。 絶えた命の傍らで、空腹を思い出したら、あの、地下室のような真夜中のような、水槽のような部屋へ帰ろうと思った。 なにも望まず、好きだと言ってくれたなら、一緒に生きることもできたのに。 |
品田
2013年04月20日(土) 15時10分16秒 公開 ■この作品の著作権は品田さんにあります。無断転載は禁止です。 |
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No.12 品田 評価:--点 ■2013-04-25 19:47 ID:zO/01Ct/wrY | |||||
卯月燐太郎さん> ご回答ありがとうございます。 未完成ではあるもののサスペンスを孕んでいるから読み手がつく、と受け取りました。サスペンス要素を増やすことによって今よりも完成に近づく、とも。 気を悪くしないので欲しいのですが、私はそれに対してあまり素直に頷けません。サスペンス要素がどうしても必要であると感じられないからです。どきどきはらはらといったような緊張感を出すよりも、なるべく平坦に、それこそ水底に沈殿する静かなもので良いと思っています。 どうせ悲しいことを書くのなら、あたたかに書きたいのです。私は悲しいことを悲しく書くことが一概に良いとは思えません。 もしかすると、ご指摘通り、サスペンス要素を盛り込んだほうがずっと面白くなるのかも知れませんが、しかしそれなら、これを書くのは誰だって良いと思いませんか。私がこれに評価を貰えるのは技術でも構想でもなく、見方だと思っています。それが違う視点になれば、得るものもありますが、損なわれるなにかも同時に存在するでしょう。 上手く伝えられずにもどかしい思いですが、このあたりで十分な気もします。 卯月さんのご意見は、私の考えとは重ならない部分が多く、新しい面を知ることが出来るのでとても勉強になります。意見交換(?)をする機会が滅多にないので、こうしてお話出来ることをうれしく思っております。 二度もいらしてくださりありがとうございました。何度もお越しいただくのは忍びないので返事は構いません。 |
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No.11 卯月 燐太郎 評価:0点 ■2013-04-25 01:09 ID:dEezOAm9gyQ | |||||
再訪 ●質問にお答えします。 ――――――――――――― どちらか判断しかねる部分がありましたので、最後に一つ。 >サスペンスがある作品をサスペンスがないように、描いています。 これは問題点として挙げてくださったのでしょうか? もしそうなのであれば、それは一向に構わないと、むしろそうであって良かったと思っています。 ――――――――――――――――――――――――― ●基本的に御作はサスペンス(緊張感)が必要な作品です。 ところが、エピソードなどが不足しているので、サスペンスの部分が足りないということです。 最初は主人公の恋人がニコルソンに殺されます。 ここで謎が出来ます、なぜ、恋人は殺されたのか? ここでサスペンス(緊張感)が出現しています。 ニコルソンが主人公へすぐに殺した理由を教えると、そこで緊張感が無くなります。 ところが、教えないで話を引っ張るとサスペンスは継続します。 そのうちにニコルソンと主人公の人間関係が出来るので、そこでまたサスペンスが発生します。(この二人これからどうするのだろうか? 確か彼女は恋人を殺されているはずだ、それにニコルソンは殺し屋だぞ)というサスペンスです。 御作の場合は、そういったサスペンスをいくらでも生む土壌がある作品です。 だから中途半端な作品にもかかわらず、惹きつけるものがあるのです。 御作は「説明」と「エピソード」不足のために、外枠しかできていないので、今後の書き方により、「サスペンス」「人間ドラマ」「社会性(地域の土壌)」など、いろいろな展開が可能だということです。 もちろん上に書いたすべてを含めた作品にすることが可能な作品です、現在のところは。 それでは、今後に期待しています。 再訪なので評価は「なし」にします。 |
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No.10 品田 評価:--点 ■2013-04-24 18:13 ID:zO/01Ct/wrY | |||||
卯月燐太郎さん> 評価と感想をありがとうございます。 自分の中で完結させてしまう部分が多くあるため、卯月さんの中ではそれが目立ってわかりづらいと感じたのだと思います。読み解こうと思って5回も読んだら、当然流せない部分がたくさん見つかったことでしょう。それを思うと本当に恥ずかしいです。加筆修正の際には読み手を今よりもずっと意識して、ご指摘いただいた部分を重点的に見直して行こうと思います。 それから、私の至らなさで誤認させてしまったかもしれませんが、補足しておきますとニコルソンは死にたいというより死ななければならなかったのです。このあたりは自分でも卯月さんからのご指摘を受けてからハッとしたので、いまさらながら読みこみというか書き込みというか……甘かったのだと痛感しております。おっしゃるとおり「熟成させる必要」がありますね。ありがとうございます。 また、繰り返しご指摘いただくエピソードと背景についてですが、おそらく自分がくどくどと説明じみた文章を書くことが嫌いなので、意識的に行わないと読みやすさといった流れを重視したものになってしまうのだと思います。読み手を引き留めておく文章力がない、説明を入れて流れが止まるような文章しか書けない、と言えばそれまでなのですが、ただ長く書いていたくないというのが本音です。 しかしそんなことを言っても、その点を修正しなければなにも改善されないのだと頂いた批評で気づかされました。読み応えのある文章を書けるようになること、長く書くことに慣れることが必要なのですね。 130枚というのは現時点の私には技術不足であったり様々な面で難しいと感じられますが、確かにそのような気持ちで挑むぐらいはすべきだと納得しました。今後は卯月さんに言われたことを思い出し、一つ一つ意識して書いていこうと思います。 どちらか判断しかねる部分がありましたので、最後に一つ。 >サスペンスがある作品をサスペンスがないように、描いています。 これは問題点として挙げてくださったのでしょうか? もしそうなのであれば、それは一向に構わないと、むしろそうであって良かったと思っています。 重ねるようですが、丁寧な批評をありがとうございました。 zooeyさん> はじめまして、zooeyさん。評価と感想をありがとうございます。 焦点をあてる箇所! 「私」のことをもっと深めるべきだったのですね。自分で書いておきながらなにも考えていなかったのだと気づいてとんでもなく恥ずかしいです。読みかえしているうちに自分の中で成長していた違和感の正体はこれだったのかと。なるほど、すとんと胸に落ちました。 そのうえ、zooeyさんのご指摘でメインとサブに差を出す必要性をひしひしと感じました。「私」の色があまりにも薄くて、これならメインがこの女じゃなくても別段良いことになりますね……加筆修正の際には、「私」について深め、読み手にやさしい文章になるよう直していきます。 後半は特におっしゃる通りです。モチベーションが違ったというのもあり、流れが急に変わってしまったのかも知れません。会話や語彙、性別についても、ご指摘に従って一つずつ改善していこうと思いました。ありがとうございます。 貴重なご意見をありがとうございました。さらに良いものを書けるよう努力していきます。本当にありがとうございました。 らたさん> 恥ずかしいことに自分でも前々から自己完結が多いことには気づいているのですがまだ直せていなくて……おそらく、らたさんがつまづいたのは私のそういう部分が目立っていたからだと思います。すみません。もっと読み手にやさしい文章を書くことを心掛けて精進してまいります。 ですが、情景がすぐに浮かぶとのことで少し安心しました。そうなんですよ、暗くて四角い部屋と丸いパンケーキです。とにかくシンプルな部屋や質素な感じが良くて。パンケーキは、正直な話をしますと実は後半でも少し触れました。ただそのときに上手くまとまることが出来なかったので今回は省いたのです……加筆修正をするときには必ずいれたいと思います。ご指摘を受けた箇所はどこも自分の中で完結させていて説明不足なところなので、そのあたりもパンケーキと一緒に直していきます。 >序盤はなぜ恋人を殺したひとと笑い合っているんだ、とか、 おっしゃる通りです。書いていたときには流していましたが確かに説明不足が過ぎました。これでは混乱するのも無理ないですよね。説明を加える必要性を感じました。ありがとうございます。 本当はもっと鋭利なものを書こうと思っていたのですが、書いているうちに迷走してここに落ち着いたので、これはこれで良いと納得しています。鋭利さの追求は別のもので求めることにして、設定をいまより深め、満足いただけるようなものに仕上げたいなあと思いました。 評価と感想をありがとうございました。精進してまいります。 |
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No.9 らた 評価:40点 ■2013-04-24 12:47 ID:9hhwgmk6ESY | |||||
拝読しました。 所々ひっかかり立ち止まってんん?と読み返すというような文章もありましたが、 なんだか情景だけはすぐに頭の中に浮かんでいました。 暗くて四角い部屋と丸いパンケーキ。 個人的な願望ですがパンケーキがまた終盤あたりで、ひょっこり顔を出さないかなあとか思いつつ読んでいました。 殺し屋と夜とパンケーキ。なんだかいいなあとか、思っていました。 ニコルソンが死んだ夜は満月が似合いますね。 読み終えて、「私」という人間のことがよく分かりませんでした。 序盤はなぜ恋人を殺したひとと笑い合っているんだ、とか、 終盤は「かわいそうだったから」という一言じゃその理由を把握しきれませんでした。単に私があほなだけかもしれませんが……。 だから、「私」がどんなふうにニコルソンに感情移入していたのかも、 想像しきれませんでした。 それでも、短いですがなにより力強さがありました。 短編なので、説明を省いて最小限のぼんやりとした輪郭をたのしむっていうのもアリなのかも……インパクトはありませんが、嗜むのにはちょうどいい。 これはもう好みの問題なのですかね。私はこういうのは好物です。 それと、文章から漂う、どこか隠しきれないやさしい雰囲気が好きです。どきどきします。 もっと鋭く、と思うなら、きっと設定からいじらなければならないですね。これはやさしいお話だと思います。 素敵な作品をありがとうございます。失礼いたします。 |
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No.8 zooey 評価:30点 ■2013-04-23 12:35 ID:LJu/I3Q.nMc | |||||
はじめまして。 読ませていただきました。 設定が面白いですね。 ニコルソンと「私」の距離感も良い感じだと思います。 ただ、少し楽しみきれなかったかな、とも思いました。 それは、私の想像力の乏しさもあると思うので、 一概に作品のせいと言うことはできない気がしますが、 少し、改善の余地があるのかなと思います。 まず、こういうタイプの作品は、 ニコルソン=孤独な人、という印象をどこまで強められるかが大きなポイントかなと思います。 その一つの手段として、素性を隠しミステリアスな感じにしたりする気がするので その意味ではニコルソンのことがよく分からないのは良いと 思います。 ただ、この作品では「私」の方がニコルソンよりも情報が少なくなってしまっているので、 「ニコルソンはよく分からない孤独な人」という印象があまり強くないんですよね。 冒頭、一段落目はカッコいいと思うのですが、 それ以降のニコルソンの説明の箇所は、後ろの二人の短い会話のやりとりだけでも十分伝わってしまうことなので省いてしまって、 むしろ「私」の説明、貸別荘を借りたいきさつなどを、なるべく短く淡々と書いた方が良いのかなと思いました。 とにかく、「私」の情報とニコルソンの情報にある程度の差をつけないと焦点がぼやけてしまうなと思いました。 シャープに、鋭い感じにしたい、ということですが、 後半はそういう感じが薄まってしまったなと思いました。 もう少し一文を短く、ぶつ切り感を出したり、 語彙を鋭くしたり、 会話を短く淡泊にしたりすると、さらに良くなるのかなと思います。 あと、性別のご指摘が他の方からありましたが、 私も最初「私」は男性だとばかり思っていました。 途中、違うのかなと思いましたが、はっきり女性だと分かったのは、終盤でした。 男性か女性かで相当イメージが変わってしまうと思うので 冒頭でしっかり分かるようにした方が良いと思います。 いろいろ書いてしまいましたが、 作品としてはさらによいものになる可能性を持ったものなのかなと思いました。 |
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No.7 卯月 燐太郎 評価:30点 ■2013-04-23 02:00 ID:dEezOAm9gyQ | |||||
「ニコルソン」読みました。 1 タイトルは適正か タイトルは「ニコルソン」でよいですね。 響きがいいです。 字面からイメージがわきそうです。 2 文章が読みやすいか 読みやすかったですが、内容はわかりにくかった。 おかげで五度読みましたが、まだわからないところがあるようです。 3 興味を惹くストーリーをテンポ良く展開しているか 興味は惹かれました。 ストーリーはテンポがよすぎて、説明不足になっています。 したがって、「展開」もあれよあれよと言っているうちに、変化する。 だから主人公の「私」と「ニコルソン」そして殺された主人公の恋人の背景がわからない。 ニコルソンはタイトルになっているだけあって、少しばかりは背景が描かれている。 ●この作品の面白さは、ニコルソンと恋人(実は恋人ではなかった)を殺された「私(女性)」と言う「人物の心の通うところ」だと思う。 そしてニコルソンの死を求める人生学。 4 シチュエーション(状況)をわかりやすく示しているか 「いつ、どこで、誰が、誰と、何をしたか」骨組み以外、ほとんどわからない。 これは、かなりの問題です。 状況設定について 上にも書きましたが、御作は「説明とかエピソード」がかなり抜けています。 骨組みだけになっているので、深いところが楽しめない、というレベルを通り越して作品の練り込みが出来ていない。 外見だけしか描いていないので、ニコルソンと主人公の私がどういった行動を取ったかと言うことはわかるが、登場人物の背景を描いていないから、感動の一歩手前で「わからん、どうしてニコルソンは死にたがるのかとか、主人公は寂しいのだろうが、どうして寂しいのか、どんな人生を彼女は送ってきたのか、そして偽りの恋人は、なぜ、偽りだったのか? ニコルソンと汽車に乗って南へ向かったのは、どうしてか? とか、あまりにも説明不足=エピソード不足になっています。 基本的には作者の頭の中でこの「ニコルソン」という作品を「熟成させる必要がある」と思う。 登場人物、背景、どんな森で最初の事件(恋人暗殺、また彼はどうして殺されなければならなかったのか)は起きたのか。 「世界観」の構築も必要。 5 魅力的なテーマか 上に説明不足と書きましたが、骨組みは興味をそそるものがあります。 それは私と言う女性の主人公と「哀しみの殺し屋ニコルソン」との「恋愛でない人間関係」が面白い。 他愛のない会話が面白い。 6 主人公および主要登場人物のキャラクターは魅力的か ニコルソンも主人公の私も魅力はあるのですが、それを出し切っていない。 それは、彼らの背景や世界観の背景が描かれていないから。 作者様、寝る前に頭の中で「ニコルソン」という作品世界のイメージを膨らませてください。 映像を浮かべてください。 すると、彼らの住んでいる町並みや周囲の人々が見えてきます。 そこで構成をイメージする(起承転結)。 きっと面白くなるから。 7 ストーリーにサスペンスはあるか サスペンスがある作品をサスペンスがないように、描いています。 基本的にエピソードと背景の描き方が足りません。 どうしてニコルソンは主人公の私の「恋人」を殺さなければならなかったのか? ニコルソンは、殺し屋としての腕前はどうだったのか、彼をどのようにして雇う(殺人依頼)のか? なぜ、死にたいのか? 8 イメージ豊かな描写はしているか 最低限の描写しかしていないようですね。 ほとんど、説明に近いです。 描写をたっぷりと入れて、読み手に映像がイメージできるようにするぐらい作品は練りこんだほうがよいと思います。 9 細部に臨場感はあるか ありませんでした。 主人公たちの、日々の生活が読み手にわかるように描いてください。 10 ユーモア・ウィット・ギャグはあるか 人間関係(主人公とウイルソン)がウィットに富んでいた。 フランス、イタリア映画を思わせるような雰囲気でした。 >>見ると、人を殺したとは思えないような顔で笑う。 「復讐なら日が昇るまでに頼むよ」<< 11 ドラマに「深さ」はあるか 深さが描ける作品を描いていない。 背景があまりにもなさすぎるし、構成なども練りこんでいない。 12 その他 作品の骨組みだけを作っている。これからそれを膨らましてエピソードと背景創りが必要。 基本的には、興味をそそる作風です。 イタリア、フランスの名画の香りがします。 御作調べてみると原稿用紙13枚の作品ですが、10倍の130枚ぐらいに膨らましてください。 出来ないかもしれませんが、それぐらいの気持ちで作品を練りこまないと、もったいない。 ちなみに原稿用紙130枚の作品といえば、映画で言うところの2時間上映です。 テレビドラマの1時間ではこの作品は描ききれません。 2時間のドラマで、描ける世界です。 点数は30点にします。 5回も読まなければ、分析(欠点、問題点、課題の提示)できなかったので。 最後によい点を一つ書いておきます。 こういった世界をイメージできるということは、自分の中で目標があるということです。 文章を書くのがいくら上手でも、世界観が陳腐では、その方は人生勉強が足りていないので、作品が2流になってしまう。 御作の場合は、世界観がよい。 要するに作者の物の見方が、物書き向き(本物志向)ということかな。 おまけ 上にいろいろとしんどいことを書きましたが、この「ニコルソン」だけにとらわれることなく、息抜きに掌編を含め短編小説を書きながら、気長に構えた方がよいかもしれません。 では、頑張ってください。 出典 使っているテンプレートは、三田誠広著書の「深くておいしい小説の書き方」という本の中にある「新人賞応募のコツと諸注意」の「おいしさの決め手十カ条」に一部追加したものです。 作者には許可を頂いております。 |
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No.6 品田 評価:--点 ■2013-04-22 21:36 ID:zO/01Ct/wrY | |||||
gokuiさん> 評価と感想をありがとうございます。 性別は各所で言われているため、そこは加筆修正時にもっと丁寧に書こうと思います。描写が足りないというところは読みかえすと確かにうなずけるところばかりでした。読み手にやさしくない作品となってしまったのを反省しています。 それでもかっこいいと言っていただけて良かったです。さらに良いものを書けるよう努力していきます。 |
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No.5 gokui 評価:40点 ■2013-04-22 20:51 ID:SczqTa1aH02 | |||||
読ませて頂きました。 いいですねえ。ハードボイルド感抜群、一文一文がかっこいいです。 加筆修正予定ということですので要望を少しだけ。人物描写と背景描写を増やすことを望みます。二人とも男性なのか女性なのか最初のうちは分かりませんでしたし、一場面一場面も情景が目に浮かんでくるまでの描写はありませんでしたので。 次回作も期待しています。頑張って下さい。 |
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No.4 品田 評価:--点 ■2013-04-22 20:42 ID:zO/01Ct/wrY | |||||
小方さん> シャープな文章が書きたいと思っていたので、かっこいいと思って貰うことができ、少しほっとしています。より満足出来るような鋭利さを求めて精進してまいります。 保存されるだなんて、なんという羞恥プレイでしょうか。光栄ですがとても恥ずかしいですね……さしあたってお礼申し上げます。ありがとうございます。 評価と感想をありがとうございました。 |
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No.3 小方 評価:30点 ■2013-04-21 23:54 ID:wxwaeJFv2JA | |||||
かっこいい。 もっと研ぎ澄ませて下さい。 期待してます。 コピってスマホに遺しとこ。 |
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No.2 品田 評価:--点 ■2013-04-21 07:35 ID:zO/01Ct/wrY | |||||
山田花子アンダーグラウンドさん> 評価と感想、ありがとうございます。 もっと鋭利な文章が書きたかったのですが、それでもイケてると言ってくださるならそれもまた良いのかなと思いました。 繰り返しますが貴重なご意見ありがとうございました。 後ほどそちらにもお邪魔させて頂きたいと思います。 |
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No.1 山田花子アンダーグラウンド 評価:30点 ■2013-04-21 04:12 ID:BrBj.1iOdwk | |||||
殺し屋と銃と夢。これだけでもうイケてますぜ。 | |||||
総レス数 12 合計 200点 |
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