裸婦
 まず目につくのは、黒々しい陰毛であった。白い表皮とは対照的な、黒い陰毛は、タワシのように硬そうな毛を、無節度に伸ばしている。およそ美の規範には外れるであろうその黒い毛は、女の動物性を露呈しているようだ。
 女はいかなるポーズをとっていない。女は動いている。時に徒歩し、時に座り、時にベッド横になる。ときおり足の間から垣間みえる性器が、ピンクトパーズのように輝く。
 女はコーヒーを飲む/女は軽食を摂る/女は排泄をする/女は労働をする/女は世界を破滅させる核ボタンを押す/そのすべてを全裸で、とにかく全裸で。
 女は醜く太っていた。乳だか腹だか、区別のつかない肉。重力に敗北した垂れ下がった脂肪という脂肪。顔には地図を思わせる青色の痣が覆っていた。膿のような黄ばんだ眼球。性格も悪く、世間から見放されていた。頭も悪く、満足に日本語も喋れなかった。
 教養どころか常識すらない、動物と人間の中間にあるような女。そこに僕は人間というものの本質を見たような気になり、デッサンをした。人間というよりは畜生に近い、理知の欠片も見つからない絵が描けた。
 デッサンを終えた後は、女の肛門に覚醒剤の結晶を挿入した。獣のように性交をし、女は何度もオルガスムに達した。
 やがて女は覚醒剤漬けになり、快楽の奴隷となるだろう。
 そのような女、あるいは僕。
昼野陽平
2012年12月08日(土) 23時15分30秒 公開
■この作品の著作権は昼野陽平さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
ありがとうございます。
よろしくおねがいします。

この作品の感想をお寄せください。
No.2  昼野陽平  評価:--点  ■2012-12-14 22:50  ID:/M49zwFIFX6
PASS 編集 削除
>zooeyさん

感想をありがとうございます。
なんか意図したように読んでいただいたという感じで嬉しいです。
自分につながるものが前の文章から滲んでこない、というのはおっしゃる通りですね。最初は女を描写するだけのものと考えて書いていたので…。
ピンクトパーズはねらって書いたので指摘していただいて嬉しいです。
ありがとうございました。
No.1  zooey  評価:30点  ■2012-12-13 01:27  ID:LJu/I3Q.nMc
PASS 編集 削除
読ませていただきました。

醜悪で知能の低い女に人間の本質を見た、というところがいいなと思いました。
文明によって薄められた人の獣性というかそういったものを感じ、
また、ラストで女と自身を重ねることで、
「人間」と一般化されてしまっていたものが、自分という具体的なものであることを意識させられ、
とても鋭さがあったと思います。

ただ、ラストの自分につながるものが、
そこまでの文章から滲んで来ないのがもったいないなと思いました。
それがあれば、ラストを読んだ瞬間に、作品全体にその鋭さが広がったかなと思いました。

ちらちら見える女性器をピンクトパーズにたとえた比喩がなんだか好きでした。
総レス数 2  合計 30

お名前(必須)
E-Mail(任意)
メッセージ
評価(必須)       削除用パス    Cookie 



<<戻る
感想管理PASSWORD
作品編集PASSWORD   編集 削除