innocence



 スワイラは、おばあちゃんとふたりで暮らしていました。
 そこは、「死に損ないの絲切り歯」と呼ばれる四方を絶壁に囲まれた谷底にある村でした。
 ある日、スワイラが、小川の畔で、四つ葉のクローバーを探していると、川の精霊が現われて、こんなことをいうのでした。
「美しい娘よ、私は、この小川の精霊である。そなたが毎日、ここに水を汲みにくるのを私は、いつも心待ちにしていたのだ。どうだろう、私の妻となってくれないだろうか」
 こういうのです。
 しかし、川の精霊などというのは、真っ赤な嘘で、ほんとうはカッパとかではないのか、そんな風に思ったスワイラは、ひとつカマを掛けてやろうと思いました。
「それでは、小川の精霊さま、二三、お尋ねしたいことがございます」
「おお。それはそれは。なんなりと」
「不躾ながら、わたくしこう見えて殿方との秘め事が三度三度のごはんよりも、好きでございます。小川の精霊さまにおかれましては、毎夜まいよわたくしを愛していただけるのでございましょうか」
「はっはっは。なるほど、そういうことですか。ご心配なく、毎夜まいよ、そなたを朝まで眠らせることなく、愛しましょうぞ」
「まあ、なんともたのもしい、お言葉。わたくしは、なにやらすでに催してまいりました。はしたない女とお笑いくださいませ」
「いや、実に結構。子孫繁栄のため性欲があるのがあたりまえでしょうぞ」
「ところで、小川の精霊さま。わたくしは、上から90ー66ー92でございますが、よろしければ精霊さまのサイズをお聞きかせねがえませんでしょうか」
「なに? サイズとな? 男のサイズとは、つまり……」
「はい。むろんそうでございます。子孫繁栄には、殿方のサイズも非常に大切かと。わたくしこう見えて、長いものよりも太いものが大好物にございます。さて、精霊さまの、サイズはいかに? だいたいで結構でございます。例えば、魚肉ソーセージくらいだ、とか、チーカマぐらいだとか、あるいは、太巻きぐらいであるとか……」
「うーん。ストレートなご質問に多少戸惑いを覚えております、今日この頃。さて、ノギスなどで計ったことはないので、あれだが、たぶんエビアンの750mIのペットくらいでありましょうか」
「まあ、お素敵ですわ☆」
「それで。そなたの憂いは拭われましたか」
「いえ、それをお聞きしてさらに拭い切れぬほど濡れてまいりました。どうか、その葦の茂みのなかで、わたくしを愛してほしゅうございます」
 こうして、スワイラは、おばあちゃんに一言も相談することなく、河童と一緒になってしまった、というお話でした。


フラーニー
2012年10月08日(月) 16時27分05秒 公開
■この作品の著作権はフラーニーさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
作者からのメッセージはありません。

この作品の感想をお寄せください。
感想記事の投稿は現在ありません。

お名前(必須)
E-Mail(任意)
メッセージ
評価(必須)       削除用パス    Cookie 



<<戻る
感想管理PASSWORD
作品編集PASSWORD   編集 削除