彼女の話
 彼女の話をしよう。年齢は20代前半。地方都市の短大を卒業し、建築関係の会社に勤めているOLだった。恋人なし。アパートで一人暮らし。会社へは実家から通いたかったが、ここから50キロ以上離れた場所にあるので諦めた。ひとり暮らしは楽しいところもあったが、金を持っていなかった。洋服も欲しいし本もCDも欲しい。けれど会社からの給料だけは生活が苦しく、本気で副業を考えねばならなかった。社則では副業禁止だったが、女性社員の中には生活のため夜水商売で働いている者がいた。それは社長も知っていて、仕事がおろそかにならないのなら特に何もいわない。それらにまったく興味が無いわけでもなかったが、彼女は人とのつきあいが苦手で、夜の仕事、ホステスやキャバ嬢は無理だと考えている。趣味は読書と小説を書くこと。子どもの頃は作家になりたいと思っていたが、大学生のころある作品を読んで打ちのめされ、自分には作家は無理だと諦める。趣味で書いた小説をネットで発表しているが、とくに反響はない。ライトノベルを書かないとネットではウケないんだと考えるようにして、単につまらない小説だったという事から目をそむけた。

 彼女の親しい友達は進学や就職で皆都会に行き、彼女の周りには誰もいなくなった。就職したての頃は仕事についていくのが精一杯で遊ぶ余裕などなかったが、半年ほどすると寂しさを感じはじめる。そんなとき知人から誘いを受ける。土曜の夜などに社会人が集まってDVDの鑑賞会やゲームなどをしているサークルがあるという。その知人とは学生時代の知り合いだったが、あまり親しくはなかった。知人がいうには文化系の集まりだというのだが、彼女はそれはオタクの集まりにしか思えない。あまり気が乗らなかったが、寂しさに負けた。彼女はそのサークルに顔を出すことになる。

 夏が始まりかけのころ連れて行かれた場所は市内から車で30分ほどかかる場所だった。そのサークルのメンバーの溜まり場は畑の中にぽつんと建っていた。もとは農家が住んでいた、かなり古そうな2階建ての借家だ。まわりが畑で隣の家が見えず、しかも夜だったので奇妙な凄みがあるように見える。その分安くて広く、騒いでも問題ないという。

 居間に入ってすぐ目がいったのはスクリーンと巨大なプロジェクターだった。彼女にはよくわからなかったが、家庭用のそれではなく業務用のものに思えた。それを個人で持っている人を始めて見た。

 ぱらぱらと人が集まってくる。ここに集まる女の格好は普通だったが、男の格好はいかにもそれだった。知人は彼女のことを特に紹介するわけでもなく、他の誰かと話し込んでいた。彼女は知人の配慮のなさにむっとしていたが、顔に出ないようにした。心細い。そうしているうちに、年上の男性に声をかけられる。こんにちは、はじめまして。本が好きなんだってね。どんな本を読んでるんです? 趣味は読書なんていうものなら「どんな本を読んでいるんですか?」と無邪気に聞く人がいる。相手はどんな本を読んでいるか知りたい、ということではなくて、ただ単に会話をしたいのだ、ということを彼女は苦い経験で知っていた。その質問は彼女にとって憂鬱だった。この人は私と会話のキャッチボールをしたいのだ、たぶん。そう思ったもの、彼女にはオタク知識がない。川上弘美さんが好きなんです、なんて答えても会話が広がらないことを、うんざりするほど知っていた。でもこの場でドラゴンボールやワンピースが好きなんですというと、あのアイドルのように笑われそうだ。とりあえず、みうらじゅんが好きだと答えたものの、それが正解なのかよくわからなかった。相手はふうん、そうなんだといった。会話はそれで途切れた。

 彼らがプロジェクターでゲームをする姿を体育座りでぼんやりと見ていた。自分が異物のように感じる。彼らと自分との趣味の違いは埋められそうに思えなかったが、大勢で集まって何かする時に発せられる熱気で寂しさを忘れられた。単純にテレビゲームが楽しかった事もある。そしてそれが情けなくもあった。この時、アマチュアとはいえ小説を書いている者として、彼らに対する好奇心もあったのだが、自分が流される性格で、嫌といえないばかりに散々な目にあっている事をつい忘れた。

 次も誘われて、ぐずぐずとその集まりに通うようになった。なんとなくあいさつを交わすようになり、会話をするようになった。いつも男は朝まで騒いでいたが、女は日付が変わる前に帰った。彼女もそうした。行ったり行かなかったりしたものの、そこへ通うようになって半年くらいが過ぎた。

 アニメと漫画とパソコンとゲームとAV機器の話しかここでは通じなかった。彼女は自分が外人のようだと思った。相手は日本語で話しているのだが、彼女には意味がわからない。わかるように説明してくれる人がほとんどだったが、それが妙におかしかった。彼女は自分のことはあまり話さず、聞き役に徹した。人つきあいの本にそう書いてあったからだ。異物感は相変わらず消えない。

 人が集まる場所では揉め事が起こる。問題を起こしやすい人物がここにも何人かいた。そのうちのひとりに彼女はよく話しかけられた。同い年の男で、イラストを描くのが趣味だという。揉めごとは避けたかった。それ以上にその男がなんとなく苦手だった。

 その男の起こす揉めごとを見ているうちにパターンがあることに気がついた。たとえば、その男がイラストを描いたので、感想が欲しいとまわりの者にいう。他の者が感想をいう。するとその男は、いや、そこはこれこれこうなので変えることは出来ない。いや、その君の意見はおかしい。と感想や意見を受け入れなかった。彼の中でこの絵はこういうものだという答えが決まっていて、そこから外れた意見は徹底的に拒絶しているように見えた。自分が認めたおかしなところ以外は一ミリたりとも受け入れない我の強さが見えた。そしてケンカになるのだ。聞く気ないなら聞くなよ! と。もしよければイラストの感想言ってをくれないか? と最初は低姿勢なのだが、いつのまにか、お前の意見はおかしい、間違っていると挑発的な評論家のような口調になるのだ。感想をいってくれといわれたのでいうとバカにされる。立場をするりと逆転するその男を見ていると、計算でやっているのなら恐ろしいが、そうは見えない。無意識なのだろう。だから余計にタチが悪い。彼女はそう思ったが、口には出さなかった。

 その男は孤立していった。そうしているうちに、気の弱い彼女が男の相手、話やゲームをすることが多くなっていった。彼女にとってその男の相手は重かったが、誰もそのことに気がついていない。ふたりの姿を見た者が、イラスト男専用係と彼女のことを揶揄した。へらへら笑って返したが、とても嫌だった。

 男のイラストは下手ではないと思ったが、彼女は嫌いだった。アニメ絵の女の子がぽつんと1人いるだけの絵がほとんどだった。複数の人物も背景も描かれることはなかった。なぜ背景を描かないのか男に聞いたことがある。背景はデジカメで撮るから、という答えが返ってきた。話がずれているのだが、意識してずらしているのか、無意識のうちにずれてしまったのか。よくわからなかった。

 彼女は嫌なことを嫌といえない。ここでそれなりに楽しんでお世話になったから、という思いもあるが、いじめられはしなかったものの、学生時代から孤立しがちな彼女にとって、男をほおっておけないという思いがあった。けれど、その男の相手をするのが苦痛になってきた。それにオタク趣味は、彼女にとって金がかかりすぎる。徹底的に嫌いになるよりは、その前にフェードアウトしようと考え、仕事が忙しいなどと理由をつけて、集まりに行かなくなっていった。

 彼女の勤める会社に悪気はないけれどデリカシーのないおじさんがいる。このあいだ風俗に行ったんだけれど、と彼女がいる部屋でいう。俺についたそのコ、はじめは歳をごまかしてキャバクラにいたそうだ。でも、キャバにも派閥があって、その派閥の連中とうまくいかなくてヘルスに来たんだと。ここは個室で、他の女の子に気を使わなくていいから楽だ、といってたけど、聞いててなんだかなあ、と思ったよははは。このオヤジ最低と思いつつも、彼女は落ち込んでしまう。ひょっとしたら自分も、キャバクラに行ったらそんな目にあうのかもしれないと思ったからだ。

 建築業界は冷え込んでおり、倒産する会社が激増していた。彼女の給料は安いままで、このままここにいても上がるとは思えない。暗い未来しか予想できなかった。

 金のためにポルノかBLを書いてみようと思った。作家というよりは売文業だな、と思うと、なんとなく卑屈になった。ためしにひとつ書いてみた。ゴミにしか思えなかった。誰に見せることもなく、パソコンから消した。

 イラスト男からメールが来た。日曜日の午後とても大事な用事があるので会いたいという。とても嫌だったが、彼女は断れなかった。具体的な用件を聞いたが、はぐらかされた。当日彼女の家の前に軽自動車が来た。イラスト男の車で、来たのは男ひとり。しばらく男は車を走らせると、ホームセンターの駐車場に軽を止めて、イラストを描いたので感想が欲しいといった。そして彼女にノートパソコンを渡した。腹が立ったが、顔に出す勇気がなかった。それにしても、なぜホームセンターの駐車場なのか。彼女はわからなかった。男なりに考えがあるのだろう。その考えを知りたいとはまったく思わないが、男はファストフードや喫茶店に入りたがらないし、入らないのを彼女は知っている。リヤ充がどうのこうのいって、そういう場所へ行くのを嫌がるのだ。もっとも、そういう場所でノートパソコンに映るオタク絵を見せられたら、たまらないとも思ったが。

 男の絵は相変わらずどれも背景は描かれていない。複数の人物を描いているものもない。デニム越しに伝わるパソコンの熱で、ふとももが熱い。隣の運転席にいる男はポツリポツリとヤフオクで安く落としたとか、フルHDがどうとか、ノートパソコンについて話している。どうでもいいと彼女は思った。

 男は彼女の目や顔を見て話をしない。彼女がパソコンの画面ではなく、窓の外を見ていることに気がついていない。しかし、いい加減無言のままだとまずいと思った。少し考えていった。
「この絵を描いて、どうしたいの? 」と彼女はいった。
 男は口をあけ「は?」という顔を彼女と目を合わせずにした。
「いや、ネットで発表するとか、同人誌にしたいとか、そういういの」といった。
 すると、ああなるほど、という顔をした。感想をいわずにこの言葉はずるいと自分でも思いながら、彼女は答えではなく質問をする。だが、男が自分の感想なんてものを求めていない事を知っている。
「ネットだね。ネット。うん」
「ネット用なんだ。ウェブサイトとか持ってたっけ?」と彼女は男の顔を見ながらいった。男の顔を見たくはなかったが、自分のずるい対応からくる引け目から、見てしまった。
「いや、あの、ダウンロードサイトで売ろうと思って」
「そうなんだ。ダウンロードサイトで売ろうと思ってるんだ。じゃあこの絵は、そのための絵なんだね」 
「まあ、そうだね」男はいった。
「そうなんだ。じゃあ、絵を売るためにさ、いつもはしないようなこととか、した?」彼女は揉めないように、男のいった言葉を繰り返すように話す。

 今人気のアニメのキャラを描いたという。そのアニメについて彼女は何も知らなかった。彼女は自宅でひとりでアニメを見ない。アニメは嫌いではなかったが、アニメの話は苦痛になっていた。とくにこの男とは。だが相手はアニメとパソコンとAV機器の話しかできなかった。そう、そういう話が好きでよくする、というレベルじゃない。あんたはそういう話しかできないんだ、と彼女は心の中で怒鳴った。男はぼそりぼそりと、そのアニメが好きという訳ではないけれど、人気があるから売れるだろうと思い、描いた、という話をしていた。彼女はいらいらしたが、顔に出ないように努力した。別に私の感想なんて聞きたくないんだろ。こうして、私に構って欲しいだけなんだろ、あんたは。と、思う私は性格が悪いのだろうか。そう、私は性格がよろしくない。屈折している。意地が悪い。でもそれ以上に度胸がない。その言葉を口に出す勇気がない。

「私そういうのよく知らないけれど ……それにしては、絵の数が少なくない?」
「もう一人友達がいて、そいつと一緒にやろうと思ってて…… 」
「ふうん、そうなんだ」
「でもそいつの絵、俺嫌いなんだ」
 彼女は思った。ああなるほどね。それを話したかったのね今日は。でもまだいってないことがあるよね。嫌いなのは、その人の絵ではなくて、その人なんでしょ、たぶん。

 男はその友達の絵のどこがダメかについて話し始めたが、彼女のことは見ていなかったし、彼女も男の話を聞いていなかった。

 彼女は液晶画面に映る女の子を見た。笑っている。何が楽しいのだろう。描く人に能力がないから複数の人物を描けなくて、ひとりぼっちなのに。その笑顔の意味がわからない。いや、わかりすぎるくらいわかる。でも言葉にしたくない。裏表のない、薄っぺらいその笑顔。ただ単に絵を描くことが楽しかったときのことを忘れ、お金欲しさに描かれたあなた。あなたは目的ではなくて手段なんだよ。けれど連中、プライドが邪魔をして、金儲けに徹することもできずにいるみたいだよ。でも、ひとりぼっちはつらいよね。ふふ、その笑顔は媚びているつもりなのかな。誰かにかまって欲しいのかな。その気持ち、わからなくもないけどさ。ちやほやされるって、とても気持ちがいいよね。いろんなことを、忘れられるよね。でも、変な奴もいっぱい来るよ。やめときな。心が減るよ。

 家に帰った彼女は、男と自分がさほど違いがないような気がしていた。卑屈に笑ってみたが、心は晴れなかった。人間というのは、自分にとって都合がいいのなら人形だってかまわないのだろう。人の形をしていればいいだけのだ。そんな気がした。

 彼女は都会に出た。そして仕事を探した。コスプレとかメイドなどの記号や象徴、そういったものが強い仕事を探した。ついにメイド居酒屋で仕事を見つける。彼女は外見に自信があったわけではない。だが、こういう仕事はそれが決定的なものではないという確信があった。客が求めるテンプレートな対応を身につけるには苦労したが、田舎でひとり人間関係で悩んでいたときより、はるかに楽だった。人間としてではなく、キャラクターとして生きればいいのだ。必要とあらばアニメのコスプレもした。これもテンプレートな対応で対処できた。それらの対応方法は、ネットやテレビなどのメディアが教えてくれる。自分で考える必要など、ひとつもなかった。それどころか下手にオリジナルを出すと不評なことを知った。今の彼女にとって、本当の自分なんてものは邪魔だった。彼女は自分がなくなっていく感じがした。人気が出て、指名されることが多くなり、彼女の収入は増えた。すると本を買う金ができた。そうして読書量は増えたが、以前のように好きだから、という理由で本を買って読まなくなった。必要だから、投資として、読む本はそういうものに変わってしまった。ここ都会では、本当の彼女を知る者はまわりにいなかったが、それは田舎にいたときと同じだった。何も変わらないことについて、彼女はどう考えているのか。それはわからない。
蒼井水素
2012年05月21日(月) 21時59分56秒 公開
■この作品の著作権は蒼井水素さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
違う場所と名前で、オタクが出ている話を書いた事があります。その時、オタク叩きだとエラくいわれましたが、そういう意図は、その時も、今も、ありません。今回は、幼稚な人間を書きたかったのですが、だからといってオタクの人が幼稚だ、という事を書いた訳ではありません。ちょっと神経質な書き方かもしれませんが、ご理解いただけたら嬉しいです。
5/25追記 
『「いや、ウェブサイトやネットで発表するとか、同人誌にしたいとか、』を、『「いや、ネットで発表するとか、同人誌にしたいとか、』に。

この作品の感想をお寄せください。
No.8  蒼井水素  評価:0点  ■2012-06-12 00:06  ID:7Uh7vqaRCtQ
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ひじりあや様

感想ありがとうございます。
そして返事が遅くなってすみません。

> プロットを読んでいる印象がしました。

おっしゃられるように短すぎると思います。そして、長すぎるとも思います。プロットに毛が生えた程度の長さに思えますし、暴力的にもっと短くすれば現代的になったかなあ、とも思います。いまはこの長さは中途半端だな、という気がしています。

> 去年、旅行で泊まったホテルのすぐ裏にメイド居酒屋があったので行っみたら満席で「申し訳ございません、またのご帰宅をお待ちしております」と帰宅拒否をされた苦い思い出があります(^_^;)

メイド居酒屋は行ったことはないのですが、数年前雑誌で知りました。遠い場所だったので行けませんでしたが、その記事を読んだ時、居酒屋という英国となんの関係もない場所にまでメイドがいることを知って、ああ日本的だなあ、と妙に感心しました。

それにしても「またのご帰宅を〜」って言葉、自分の家のメイドに言われたと考えると、非常にシュールですね。
No.7  ひじりあや  評価:30点  ■2012-06-01 23:06  ID:ma1wuI1TGe2
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読みました。

感想への返信を読んでいるとこの文章は狙ってやっているというのは伝わるのですが、プロットを読んでいる印象がしました。最初が説明的になりすぎているというのもありますが、それ以降も、もっと描写しても良かったのではないかと思います。
個人的には文体そのものへの違和感はありませんでしたし、彼女が抱える孤独は共感できるものでもあるので、もっとストレートに書いてほしかった気がしました。

ちなみにどうでもいい余談ですが。
去年、旅行で泊まったホテルのすぐ裏にメイド居酒屋があったので行っみたら満席で「申し訳ございません、またのご帰宅をお待ちしております」と帰宅拒否をされた苦い思い出があります(^_^;)
No.6  蒼井水素  評価:0点  ■2012-05-28 21:12  ID:ZE8nCbMKwjU
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Phys様

ありがとうございます。

10代後半から20代が持つ、やがて過ぎ去ってしまう幼稚さが書けたらなあ、と思っていたのですが、ちょっと表現がきつかったかも、と今は思います。

感情移入されにくいという理由から、今はこういう書き方(語り手が作者)はあまりされないそうですが、そういわれると、やってみたくのなるのが私でして…… ただ、冒頭が描写や会話ではなく、説明を書いたのはやりすぎだったかもしれません。

オタク男というよりも、若い男にしたかったのですが、そうすると、記号と象徴などがわかってもらえにくいかな、と思い今回はオタクとしました。

イラスト男については、都合上とはいえ一方的に悪く書きすぎた、と思っています。ですが、そうしないと彼女が都会に行ってくれない…… この文体だと、なぜかつい意地悪く書いてしまう…… 困りましたが、これが私の実力なのでしょう。

あ。念のために書いておきますが、フィクションですよこの話。ただ、人間関係で悩んでいた時のことを参考にしたといいますか、書いていて思い出してしまいましたが。あと、漫画「ホムンクルス」から、記号によって形づくられた人間など、少し影響を受けました。

キャラ子は相手をオタクとラベルを貼り付けてしまいましたが、相手を理解しようとする時、レッテルを貼り付けると、きちんと見えなくなると思っています。けれど、ついやってしまいますね私も。

オタクというのは記号なのか、違うのか、私にはよくわからないところがあります。「オタクはこうするべき」なんて書き込みをネットで見かけると、本人達もオタクという記号にとらわれているのかも、なんて妄想してしまいますね。
No.5  Phys  評価:40点  ■2012-05-26 17:47  ID:X63HRgJWA.s
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拝読しました。

洗練された文章だ、と一読して思いました。淡々とした書き口でぐいぐい読ま
されました。ぢみへんさんの仰るように、ノンフィクションのようにも読める
作品ですね。

>オタク叩きだとエラくいわれましたが・・・幼稚な人間を描きたかった
私は大学、大学院まで理系だったので、少なからず独特の趣味をお持ちの方は
周囲にいましたが、そういう方の類型的な性格を上手く書けているように思い
ました。蒼井さんの仰るとおり、あくまで傾向ですが。ちなみに私はとくべつ
マイペースな人に抵抗がありません。自分も変わっているので……。

最近は、就職活動でも「コミュニケーション能力」なんて測定不可能な指標を
重視する企業が多いようですね。そもそもコミュニケーションは人間と人間の
相性で特徴づけられるものなのだから、単一の人間のコミュニケーション能力
なんて定義できないはずなのに、と思ったりもします。

私の中でおたく的な趣味をお持ちの方は「すごい人」の一言に集約されます。
というのも、本作の男の人のように利己的で他者の価値観を受け入れない人は
何かと対人関係のトラブルを起こしがちですが、私の大学では、そういう人の
方がずば抜けて天才だったりしました。

普通の学生なら一か月で仕上げるプログラムを、彼は一晩で書き上げて装置を
動かしていました。正直、この人は自分と同じ人間なのだろうか……とわが目を
疑いました。身勝手と能力の高さはトレードオフの関係にある気がします。

>趣味は読書なんていうものなら「どんな本を読んでいるんですか?」と無邪気に聞く人がいる

確かに多いかもしれない、と思いました。私はいつも「ミステリーとか恋愛
ものをよく読みます」と答えています。ジャンルで答えれば話し相手の方が
自分から知っている小説について例示してくれるからです。

感情的に何かを解決しようとするのではなく、淡々と、流されるままに生きる
主人公さんの姿がいかにも現代人らしくて、そしてそのことに気付かされて、
ちょっと悲しくなりました。

楽しい読書体験でした。次回作も楽しみに待っています。
また、読ませてください。
No.4  蒼井水素  評価:0点  ■2012-05-25 02:43  ID:txFwK.9kIMg
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ねじ様

感想ありがとうございます。

> それが狙いなのかもしれませんが、個人的にはもう少し主人公と距離が近くなれる話のほうが好きです。

実はこの話、一人称と三人称、同じ話をふたつ書いていたのです。

小説を書くとき、語り手はどうしたらいいのか。ちょっと悩んでおりまして、試しにふたつ書いてみたのですが、ひょっとしたら、一人称だと距離が近くなれたかもしれません。

ただ、作者の「私」と、登場人物の「私」(この話の「彼女」です)を混同したといいますか、作者が思っていることを登場人物にいわせているだけなのか、そうではないのか、冷静に判断できなくなりまして、一人称の話は完成できませんでした。 ……情けない話です。

◆◇◆

ぢみへん様

感想ありがとうございます。

> 多分、ノンフィクションをよく読むからだとも思います。

この話の語り手は、「登場人物以外の人物」なのですが、どのように語るか、迷いました。

名前をど忘れしてしまったのですが、以前借りて読んだ、元実録犯罪ものの記者だった作家が書いた海外ミステリーの文体を思い出しながら、この話を書きました。

地味ですが、なんとなく記憶に残る文体でした。なのにタイトルと作者の名前は忘れてしまったのですが…… 

そのミステリは、もっと透明無機質な語り手だったと記憶しているのですが、私はちょっとだけ個性を出すようにしてみました。

◆◇◆

楠山歳幸様

感想ありがとうございます。

今回文章が非道いです。愚痴っぽく、いいわけっぽくなりますが、仕事が終わった後、夜遅くまでキーを叩いていると、だんだんと、へろへろに……

知識がないので感想は書けなかったのですが、「あずさ弓」の作者に読まれていると思うと、恥ずかしいですね。

残酷な言い方になりますが、「彼女」は若いからキャラクターとして客に受け入れらたのだと思っていますし、「彼女」もそれをわかっているような気がします。

私は、社会に適応することと、幸せになることは、イコールではないと思っていますが、一人称で書くことが出来なかったのは、ひょっとしたら、そういう考えが根っこにあるからなのかもしれません。
No.3  楠山歳幸  評価:40点  ■2012-05-24 23:26  ID:3.rK8dssdKA
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 読ませていただきました。
 突き放した雰囲気に凄みを感じました。大人子供の普通と狂人ぎりぎりみたいな描写、しっかりした自我を持ちつつ流されやすい彼女の葛藤、終わりの、初めからこの女性は居なかったのかと思わせる、今風の歪の中でたくましく生きる姿。殺風景の中に人間を感じる作品でした。

 こう言って良いかわかりませんが、良かったです。失礼しました。
No.2  ぢみへん  評価:40点  ■2012-05-21 23:58  ID:lwDsoEvkisA
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淡々としていて、でもちゃんと一人の女性の変遷を書いていて自分はこういうのは好きです。多分、ノンフィクションをよく読むからだとも思います。
心の埋めがたい溝をもったまま、それが何かわからず、別の安易な型にはまってしまう、そういう大人になってしまうことを、リアルすぎず、それとなく、空気のように書いているのが良いですね。それこそが「彼女」の人生と一致した筆致であるのだから。
No.1  ねじ  評価:40点  ■2012-05-21 22:22  ID:uiv4pJVFId6
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読みました。

好きだな、と思いました。
構成もキャラクターもよくできているなと思いました。
ただちょっと寓話に徹しすぎているというか、いまいち入り込めないところがあります。それが狙いなのかもしれませんが、個人的にはもう少し主人公と距離が近くなれる話のほうが好きです。

面白かったです。ありがとうございました。
総レス数 8  合計 190

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