淫蕩学校
 クラスにいる石油王の息子が、夏休みを利用して、無人島でもって一ヶ月間の乱交パーティーをしようと言ったのは、プールから上がって冷えた身体を光の下で、爬虫類みたいに暖めている、鼻水を垂らしながらのことであって、僕は水泳パンツの下で乱交パーティーを夢想して勃起した。石油王の息子は名前をタカシといって、顔がアラン・ドロンに似ていて、クラスの女子からキャー・キャー言われる人間だったが、強姦が好きで和姦を嫌っていて、クラスの女子からむしろモテない事を望んでいて、石油王の財産でもって顔面を奇形に――彼は逆整形手術と言っていた――することを望んでいて、その奇形と化した顔でもって、いやがる女を強姦する事を夢想していた。
 一方で僕はといえばハンセン病を病んでいて、髪はすべて抜け落ちていて、表皮は硫酸をかけたみたいに爛れていて、そんな僕をタカシはかっこいいなあと言って、それから僕たちは友人となった。友人となった僕たちは時に性交をしもした。六時間にも及ぶシックス・ナインで、互いの性器を舐め合ったり、執拗なアナル・セックスをしたりした。そこには愛などというものはなく人間から肉へと下降する事の喜びしかなかったがそういった事が僕たちは好きであった。
 そういう事の延長としての無人島での乱交パーティーは、僕たちに大きな期待を抱かせた。僕とタカシとは学校中の女子たちに声をかけた。乱交パーティーというのは伏せておいて、無人島でバカンスとだけ伝えると、アラン・ドロンみたいな顔したタカシに声をかけられた女子の三分の二くらいが承諾した。しかしタカシは、無人島に行く直前に、奇形の手術をすることを目論んでいて、キャー・キャー言う女子へ嘲弄の笑みを浮かべていた。
 僕はといえばハンセン病者の知り合いへと声をかけ、セックスをしに無人島へ行かないかと声をかけると、その顔ゆえに風俗でしかセックスした事のない彼らは、僕と同じような硫酸を浴びたような顔をほころばせて承諾した。
 一学期が終わり夏休みに入り、タカシは前々から望んでいた逆整形手術を施した。僕は彼の宮殿に訪れると、ベッドに座っている彼の顔面にはぐるぐると包帯が巻いてあった。僕はやあと声をかけると、彼はおもむろに包帯を解いた。そこからは見事な奇形顔が現れた。大きな才槌頭、溶けたように垂れた瞼で僅かにしか見えない眼球、ひん曲がった唇、そぎ落として二つの穴だけになった鼻。僕はかっこいいと呟くと、彼は本当の自分になった気がするよと言って奇形の顔面を歪ませて笑った。
 やがて無人島へと行く日が近づいて、僕たちはクルーザーが停泊してある湾岸へと集合した。タカシは顔を包帯で巻いていた。多くのハンセン病者たちが異様な空気を放ちつつ集い、学校の女子たちは不可解な顔をした。僕がいる事でさえ彼女らは嫌な顔をしていたが、それでもアラン・ドロンみたいなタカシとバカンスする事は魅力的であったようだ。全員がクルーザーへと乗り、岸から離れて出発した。潮の香りと何処までも続く水平線は、これから行うこととは裏腹に、透き通った気分にさせた。
 やがて無人島につき、タカシの別荘である城へと向かった。城は森林の奥に、暗く聳えていた。城に入るとタカシは女子らの並ぶ前に立ち、包帯を解くと、女子らは悲鳴をあげた。逃げようとする彼女らを、タカシの屈強な従者らが取り押さえた。そして彼女らを大広間へと連行すると、服を切り裂き、全員を全裸にした。
「やっとこの時が来た」
 タカシは奇形と手術した顔を歪ませて笑い、自分も全裸になった。タカシが奇形と手術したのは顔だけではなかった。全身を切り刻んだような傷を纏っていて、その跡はミミズ腫れみたいになっていた。不意にタカシの股間に目をやると、そのペニスもまた手術したようで、二股に裂けていた。
「俺がアラン・ドロンだって? あんな俗物と俺を一緒にしやがって豚どもが」
 タカシはそう言って二股に分かれたペニスを隆々と勃起させると、一人の女子の、前門と肛門とに、同時に挿入した。女子は泣きながら喚いていたが、やがて死んだ蚯蚓みたいに無抵抗になった。他のハンセン病者たちも一様に全裸になり、泣き叫ぶ女子らを強姦した。僕もまた強姦をした。かつて何度か強姦した事のある僕は、さして感動もなく性交した。
 僕たちは人間から肉へと下降する生活を一ヶ月間続けた。人間やめて肉になる喜びといったらなかった。女子たちは度重なる暴行に疲弊して、虚ろになっていた。一日中、性交を続ける生活を一ヶ月間つづけて、やがて夏休みも終わりに近づいた。僕たちは無人島から帰ることにして、クルーザーへと乗った。無人島から徐々に遠ざかっていく。
 タカシは海に女子たちを捨てようと提案した。そして女子たちを次々と海に放り込んだ。虚ろになった彼女たちは、死ぬ事にもさしたる感動も覚えないほどになっており、まるで精巧な人形を捨てているようだった。
 僕とタカシは捨てられた女子らを見届けると、濃厚なキスをした。どこまでも続く海を背景にして。
昼野
2012年05月12日(土) 19時08分14秒 公開
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読んでいただいた方、ありがとうございます。
感想などあればよろしくお願いします。

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No.7  葉津京一  評価:30点  ■2012-06-06 04:37  ID:noq/Xz4zFfc
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初めまして。
久しぶりにここを訪れたら、面白いタイトルに惹かれて読んでしまいました。

なんといえばいいのか……。
なんだか惹かれてしまいますね。
どう言えばいいのだろうか?という感じです。

このブラックさは癖になります。
次回作も是非読ませていただきたいです。
No.6  昼野  評価:--点  ■2012-05-25 22:10  ID:FJpJfPCO70s
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皆さん感想をありがとうございます。

>Phys さん
感想ありがとうございます。というかこんなものを読んでいただいて恐縮です。
アラン・ドロンはかっこいいですね。もう爺さんですが、それでもかっこいいです。渋いです。なんかでも実はこういうのもかっこいいみたいな感じでこれを書いてみました。
ありがとうございました。

>zooeyさん
感想ありがとうございます。
明るく感じられた、というのは嬉しいです。
非道さが当たり前になってるのは作風ですね。異常なことを当たり前に書きたいみたいな。でもそういう意見が出るという事は作品に強度が足りなかったのかなと思います。
美しさはおっしゃるとおり今作ではなかったですね。なんかイメージが曖昧なまま書いてしまった感じです。もうちょっと明確にして書かないとです。
タカシという名前がやたら出てくるのは半分は惰性と、半分は手塚治虫がやってるスターシステムみたいな手法取り入れたいみたいな感じです。
ありがとうございました。

>ぢみへんさん
感想をありがとうございます。
そうですね、そういう感じで書きました。
評価はむずかしい作品かもですね……。
ありがとうございました。
No.5  ぢみへん  評価:20点  ■2012-05-21 15:04  ID:64MGDiR2nqY
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過去の作品を存じませんので、あくまでもこの作品だけ読んでの感想なんですが、どこまでもアンチモラルで、肉欲や欲情といったものを描こうとしているのかな、と。でも一方で、実際の行為の生々しさはない。静謐で機械的なタッチを使い、言葉の持つ象徴とイメージの力を多用して、あくまでも白昼夢のような狂気、現実にはないところを狙っているのかなと思いました。

これをどう評価したらいいのか分からないので点数は低いですが、ある意味、その評価不能と感じさせることに価値があるのかもしれません。
No.4  zooey  評価:40点  ■2012-05-20 01:04  ID:1SHiiT1PETY
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読ませていただきました。

チャットでも少し話しましたが、奇形を「かっこいい」というその言葉がとても好きでした。
手術で奇形になったことで、本当の自分になったような気がする、という部分にも同じく、
タカシの美学とか、作品の美学を感じていいなあと。
そういった美学と、美学にのっとった非道さがからっと明るく描かれているのも好みでした。

ただ、読んでしばらく、なんとなく引っかかる感じがあったのですが、
それは、おそらく、そういった美学や非道さが、何だか作品の中で当たり前のことになってしまっていることかなと思いました。
タカシの感覚を他の男子たちもみんな持ってしまっていて、それではその考えが異質なものでなくなってしまうというか。
奇形をかっこいいという感覚は、異質であるからこそ強烈であり強い意味を持っていると思うので、
タカシの感覚はタカシのものだけにしてほしかったなと思います。

せっかく語り手が外からタカシを眺めるという形を取っているのだから、
独特の美学を持つタカシに語り手が感化されていく様子とかも見れたら、怖くてより面白かったかもしれません。

その方がラストの少女たちを捨てた後のキスも、印象に強く残るのかなと思いました。

あとは、私は昼野さんの作品を読む時に、
視覚的に、醜さの中に美しさが見えてくる感じが好きだったのですが、
この作品にはそういった描写がなかったのが、少し残念ではありました。

あと、どうでもいい話ですが、
昼野さんの作品のキャラクターにタカシが結構出てくるのはなぜだろうな、と思いました。
No.3  Phys  評価:30点  ■2012-05-19 18:56  ID:QV0ue66.VUk
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拝読しました。

すごいですね。読み終えた印象は今までの中で一番ひどかった気がします。笑
本当に、昼野さんの頭の中がどんなイメージや空想で占められているのか、
想像だにできないですし、私にとってはとても不思議に思います。

いやもう、倫理観的な面から言ったら『文章だけで犯罪』というレベルな気が
しました。昼野さんが狙っているものがこの方向性だとするなら、相当ネジが
外れたものになっているような……。本当に、これは一体、何なのでしょう。

アランドロンさん、実は存じ上げなかったのですが、ものすごく格好いいひと
なんですね。逆整形するなんて勿体ない気もします。でも、逆整形ってむしろ
形を崩す行為なのだから、崩形と言うべきなのかもしれませんね。

毎回あまり役に立たないコメントを残して申し訳ありません。ただ、とにかく
非凡だし、他から一線を画する個性をお持ちだなあ、といつも思います。気に
なって読んでしまいます。

次回作も期待しています。
また、読ませてください。
No.2  昼野  評価:--点  ■2012-05-14 19:26  ID:FJpJfPCO70s
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>まささん

感想をありがとうございます。
自分でも好きと言えるものを書いた気がしてるのでそう言っていただけると嬉しいです。
もっとブラック話、書いてみたいです。
ありがとうございました。
No.1  まさ  評価:40点  ■2012-05-13 18:08  ID:L6TukelU0BA
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読ませていただきました。
非現実で勢いに任せたようなストーリーと、全体的に差別的なブラックジョークな内容がすばらしい。
嵐のような激しい話のように感ぜられました。差別要素を含んでいる部分も背徳感によって快感へと変わりとても爽快な気分です。
もっともっとブラックな話を描いていただきたい。
とにかく内容が好きであり、文法など目に見えません。
ありがとうございます。
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