スケッチブック
 結婚五年目の記念日は、朝から雨が降っていた。
「お前に何かある時は、いつも降るねえ」
 そんな母の言葉に、小学生の私はテレビの前でむくれたものだった。楽しみにしている遠足が近づくと、予報士のお姉さんはいつも決まって、週末の雨を知らせた。
 小さい頃から『小澤は雨男』だと言われ続けたものだから、こういう特別な日に限って天気が悪いのは、慣れたものである。
 オフィスを出てビニール傘を差すと、透明なフィルム越しに濁った空が見えた。
 腕時計に目を落とし、私は立ち止まる。何か、気の利いたプレゼントの一つでもあった方がいいだろうか。今日は八時からレストランを予約してある。
 ――それにしても、五年か。
 長かったようであっという間の日々だった。大学を卒業してから二年の同棲。その間に娘の涼子が生まれた。近いうちに籍は入れるつもりだったから、娘の誕生をきっかけに、私と花穂はすんなりと夫婦という枠組みに収まった。
 今朝、予約のことを花穂に話した。台所で味噌汁を温めていた彼女は、エプロンの端で指先を拭うと、意地悪そうに笑って見せた。
「さて、あと何年忘れずに覚えていられるかしら」
 ……ふふ。どうして黙るの? こちらに背を向けて、花穂は火を止めた。記念日だからなのか、今朝の味噌汁の具は、私の好きなジャガイモと玉ねぎだった。
 ビーズのような雨粒がはらはらと傘の表面を滑り落ちていく。不意に、私はポケットの携帯電話が震えていることに気が付いた。
 なんだろう。涼子の迎えだろうか。今日は義母が涼子を預かってくれるから、代わりに行ってくれるはずだが……。
 滑り込むように近くのバス停に避難して、傘を畳む。携帯のディスプレイには、義母の名前が表示されていた。私は傘を立てかけながら、慌てて電話を取った。
「……もしもし、拓海さん? まだ会社かしら」
「いえ、今ちょうど出たところです。涼子の迎えですか?」
「幼稚園にはさっき行ってきたわ。それで、涼子がおもちゃを取りに帰るっていうから、いったんあなたたちの家に寄ったのよ。そうしたら花穂が……」
 そこで、義母は口をつぐんだ。
「花穂が、どうかしたんですか?」
                  ***

 私と花穂の出会いは、大学時代のサークルだった。
 校内の掲示板にあった、『あなたが見たことのない世界』というポスターに惹かれて、私が入ったのはワンダーフォーゲル部。いわゆる、軽い登山やハイキングを楽しむという部活である。
 まぁ、『軽い』というのは少し語弊があるかもしれない。コンパスを持ち、登山道から外れた森の中を歩いたり、多くの場合はテントを張って野外泊をしていたから、本格的な登山部とほとんど遜色のない活動ではあった。
 重いザックを背負って千メートル級の山々を登り切るのは、女子部員にとってなかなかハードだったと思う。そんな同期の中の紅一点が、花穂である。
 花穂は登山をするようには見えない、華奢な体つきの女の子だった。しかし意外にも、彼女は一番にサークルの門戸を叩いた新入部員第一号らしい。
 軽い旅行気分で入ったという不純な動機の私が、その部活を四年間続けたのは、そこに花穂がいたからだった。
 ようするに、私は彼女に一目惚れしていた。
 理学部で生物を専攻していた私は、文学部に所属する彼女とはあまり接点がなかった。むしろ、同じ文学部の同期が彼女と一緒にテスト勉強しているのを、遠巻きに眺めているような位置にいた。
 きっかけは些細なことだった。確か奥多摩の三頭山を登った時のことだ。
 私たちは数人のパーティーで山道を歩いていた。千メートルを超えた辺りから足取りが覚束なくなってきた花穂を見かねて、先頭を歩く部長の藤沢先輩が切り出した。
「おい小澤。お前、花穂ちゃんの荷物少し持ってやれ」
 肩幅が広く、無口な藤沢先輩が言うと、それだけで迫力がある。先輩は全員に聞こえるように声を上げた。パーティーが一斉に歩みを止める。
「じゃあ今井さん、ゆっくりザックを下ろして」
「ごめんね、小澤くん……」
 申し訳なさそうに俯いた花穂に、私は「気にしないでよ」と声をかけた。赤みを帯びた瞼の縁と、上目遣いの可憐な表情に、思わずどきりとする。
 男らしいところを見せるチャンスだと、私は内心ガッツポーズをしていた。
 やがて、鬱蒼と茂る枝葉の間から、淡い緑色の水面を湛えた奥多摩湖が顔を覗かせた。美しい光景に目を奪われているうちに、目的地に到着した。花穂は息を切らしていたが、達成感から来る高揚なのか、頬を赤らめていた。
 テントを設営し終えた頃には、辺りはすっかり夜になっていた。炊飯と食事を終えて、翌日のルートを確認する。藤沢先輩の指示を受け、全員が寝袋に入った。
 すっかり寝袋で寝ることにも慣れていた私は、すぐさま眠りに落ちる。
 気が付くと、入口の隙間から月の光が漏れていた。
 ――トイレに行こう。
 テントの外では、暗闇の中で林立するブナの木が夜風に梢を揺らしていた。その一部、開けた場所に、誰かの姿があった。
「あ、小澤くん」
 振り返ったのは、花穂だった。斜面に腰を降ろして夜空を見上げている。
「何してるの?」
 私は彼女の隣に腰を下ろした。
「高い場所にいるからかな。星がすごく近くに見えるんだよ」
 虫の音に耳を傾けながら、私たちはしばらく星の降る夜空を眺めた。
 暗闇に目が慣れてくると、彼女がノートのようなものを持っていることに気が付いた。
「それは?」
「これはね、スケッチブック。いつもこうやって夜抜け出して、絵を描いたりしてるの。昼はゆっくりする時間なんてないから、写真で我慢だけど」
「今井さんってスケッチとか好きなんだ。……いや別に、意外ではないけど」
「高校の頃は美術部だったから」
 彼女の手元のスケッチブックには、月明かりを映す夜の奥多摩湖がデッサンされていた。
 ちらりと見えただけだが、かなり上手かった。
「でも写実なら、写真で十分なんじゃないの? わざわざ描かなくても」
「あのね、絵を描くことは、写真に残すよりずっと記憶に残るんだよ。小澤くんも描いて見れば分かると思う」
「ムリムリ。俺そういう才能ないからさ。美術はずっと3だったし。普段描いてる実験のスケッチも、ひどいもんだよ」
「ああ、小澤くんは生物科だったね――」
 彼女が私の学科を覚えていたことに、嬉しくなる。できることならそのまま話していたかったけれど、外は寒かったから、私たちはすぐにテントに戻った。
 それから、テント泊の夜には二人でテントを抜け出すようになった。そうして私たちは少しずつ、寄り添うように、距離を縮めていった。

                  ***

 花穂の搬送された病院は、アパートから一番近い、海辺の市民病院だった。私は焦りと不安を感じながら、海岸に沿って伸びる国道に車を走らせた。
 ――今ちょうど、救急車で病院に着いたところなのよ。
 義母が涼子を連れてアパートに寄ってくれたのが幸いした。物音がしないことを不審に思った義母がリビングに入ると、頭を押さえた花穂が、フローリングに横になっていたというのだ。
 突き飛ばすように病室の扉を開く。ベッドに座る花穂と椅子に腰かけた義母が、一斉にこちらを振り向いた。窓の外はしとしとと雨が降り続いている。
「花穂……?」
 息も絶え絶えに私は問いかけた。そんな私に、花穂は普段と変わらず、とぼけた表情をして見せる。
「あらら。そんなに急いで来なくたって大丈夫だったのに。なんてことないのよ。ただの貧血みたい。なんだか、今年は散々な記念日ね」
 ただの貧血――。安堵にほっと胸を撫で下ろす。すると、背後から「お父さんだぁー」という涼子の声が聞こえた。どうやらトイレに行っていたらしい。
「お母さんがね、おうちでゆかにねてて、あたまがいたくて、たいへんだったんだよ」
 身振り手振りを交えて話す涼子の後ろから、肩幅の広い、白衣を着た男性が歩いてくる。黒縁の眼鏡をかけていて、どこかで見たことのある面差しだった。
「もしかして、藤沢先輩……」
「久しぶりだな小澤。――お前らの結婚式以来か? まさかこんなところで会うとはな」
 私が入学した頃に、藤沢先輩はもう医学部の五回生だった。私と花穂が大学を卒業して七年になるから、先輩も医者としてはそこそこのキャリアだろう。最近では連絡をとっていなかったが、まさかこの病院で働いているとは知らなかった。
「意外と近くにいたんですね」
「そういうことだ。さっき花穂ちゃんに聞いたら、お前たちの家、すぐ近くみたいだな」
 私と先輩のやり取りに、花穂は懐かしそうに目を細めていた。昔を思い出すのだろう。
「わざわざ顔を見せに来てくれたんですか。すみません」
 私が軽く頭を下げると、先輩は右手で頭を掻きながら、花穂の方に向き直った。
「いや。そうじゃなくて、俺が担当医なんだよ。花穂ちゃんのな」

 病室では、三人でたわいのない昔話をした。とりあえず今日の内は涼子を義母に任せることにして、義母と涼子は先に帰した。
 面会時間が終わる前に、私と先輩は病室を後にした。先輩の勧めもあって、花穂は今日一日入院することになった。
「小澤、ちょっと」
 先輩が私の肩をぐっと掴んだ。体重の軽い私は簡単によろける。困惑する私をよそに、診察室の扉が開かれた。
 先輩は奥にいた看護師に話しかけると、私に椅子を勧めた。
「あのな、小澤。花穂ちゃんのことなんだけどよ……」
 奥の部屋から現れた看護師は、先輩の後ろにあるパネルの上に、次々と黒のフィルムを並べていった。いつになく真剣な先輩の表情に、胸がざわつく。
「これがCTの画像。こっちが右から見たやつ。これは左だ。いいか小澤、よく聞けよ。花穂ちゃんの頭の中にはな――このくらいの、ちっこい腫瘍ができてる」
「……腫瘍?」
 冗談はよしてくださいよ。そう笑いかけようとしても、先輩はにこりともしない。鋭い眼光が、私の動揺をぴしりと射抜いた。
「取ってみないことには保障できないが、たぶん、悪性じゃない。切除すれば十分助かるはずだ。ただな……」
 先輩が背もたれに寄りかかる。座っている椅子が、ぎい、と不快な音を立てた。
「場所が悪い。恐らく、視神経を傷つけずに摘出するのは無理だろう。かといって放っておけば、神経麻痺が起こったっておかしくない。だから、すぐに手術が必要なんだ」
 私は思わず息を飲んだ。摘出、神経麻痺。聞き慣れないその響きに、私の意識は一瞬、ふっと遠くなった。
「手術をしたら、どうなるんです?」
 空調の効いた病室はやけに喉が渇く。絞り出すように唾液を飲み下すと、喉の鳴る音が部屋中に響いたような気がした。
 俯いていた先輩が、おもむろに顔を上げる。
「命は助かる。その代わり――失明は避けられない」

 翌日の昼になってから、ようやく私は花穂の病室を訪れた。なかなか迎えに来なかった私に向かって、彼女は明らかに不機嫌そうな顔を見せた。
「今日はゴミ出しもしなきゃいけなかったのに。ああ、そういえば三時に町内会の集金もあるんだったわ。早く帰らないと」
 花穂はすっかり身支度を済ませていた。私は口を開こうとしたが、言葉が出てこない。
 いったい、彼女にどうやって伝えたらいいのだ。その瞳が光を失うことを知ったとき、彼女はどんなに深く絶望することだろう。
 暗い穴に落ちていくような思いだった。それをなんとか振り切り、私は顔を上げる。
「……帰れないんだ」
「え?」
「帰れない。君はしばらく、ここにいなきゃいけない」
「ちょっと待って。あなた何を言ってるの? 別に心配することなんて何もないのよ。 昨日、藤沢先輩もただの過労だって言ってたし――」
 私は意を決して、彼女に話した。頭の中に腫瘍ができていること。それが視神経と癒着しているから、手術をすれば視力を失うだろうということ。私がその手術を受けることに同意したこと……。
 黙って話を聞いていた花穂は、全てを話し終えた私に向かって、一言だけ呟いた。
「少しだけ、考えさせて……」

                  ***

 電車を降りて、駐輪場に近い改札を出る。私はサドルをまたぎ、花穂が普段使っている自転車を走らせた。後ろに子供用のシートが付いた、赤いシティサイクルだ。
 涼子の幼稚園に向かうまでの間に、やらなければいけないことを考えた。
 帰りにスーパーに寄って、夕食用の惣菜と弁当を買う。朝食には、食パンと卵があれば十分だろう。家に着いたら洗濯をして……。
 花穂がいない。改めてそのことの重さを実感した。そして、彼女が無事に帰って来るかどうかも、分からないのだ。
 幼稚園で涼子を後ろに乗せる。そのまま近くのスーパーに立ち寄った。
「ほら、危ないから走るんじゃないよ」
 勝手の分からない商品の並びに困惑しつつ、食パンの棚を探す。足元でちょこちょこと動き回る涼子は、あっちへ行ったりこっちへ行ったりと忙しい。
「あのね、今日だいちくんがころんで、わたしが『いたいのとんでけー』やったんだよ。まえに、お父さんがおしえてくれたやつ」
「そうか」
 適当に相槌を打ちつつ、カゴに商品を入れていく。帰ったら洗濯をして、明日の会議の資料に目を通さないと――。そんなことを考えていたら、急に涼子が立ち止まった。
「お父さんが、おはなしきいてくれない」
 気が付くと、涼子は瞳を潤ませて私を見上げていた。
「ちゃんと聞いてるよ」
「うそ。だって、さっきからわたしの顔みてくれないもん」
「あんまり困らせないでくれよ……」
 思わず、語尾にため息が混じる。涼子は私の顔を覗き込むようにした。
「お母さんはいつかえってくるの? どうしてずっとびょういんでねてるの?」
「お母さんは病気なんだ。だから、休ませてあげないといけないんだよ」
「やすんだら、なおるの?」
 私たちにとって『治る』という言葉は、元通りになるという意味ではない。腫瘍を取り去ったとしても、もう今までのようには暮らせないだろう……。
 自宅に着いた。明かりの消えた玄関を見るのも、二人きりの夕飯も、初めてだった。
 アサリの煮つけをご飯にかけて、涼子が頬張る。食べたい物を選んでいいと言ったら、なぜかパック詰めされたこれを持ってきたのだ。アサリの煮つけが好きな五歳児って……。子供らしくない娘のチョイスに、私は少しだけ気持ちが楽になった。
 洗濯を済ませ、涼子をお風呂に入れる。そのまま歯を磨かせて、布団に寝かしつけた。
 涼子のそばで添い寝をしていると、絵本を読んで欲しいと言われた。
「いつもお母さんによんでもらうんだよ」
「……」
 言葉が出なかった。視力を失えば、花穂が涼子に絵本を読むこともできなくなるだろう。先の見えない不安と恐怖に、私は今にも押し潰されてしまいそうになる。
 今までは私たち夫婦で娘を見守ってきた。けれどこれからは、私ひとりで涼子と花穂を支えていかなければいけないのだ。

 花穂が入院して、一週間ほどが経った。
「タオルが二階の押入れに入っているから。それと――」
 電話で伝えられた着替えと雑多なものを持って、私は病院に向かった。
「食事はいつも外で食べているの? 洗濯は? 掃除はきちんとしてる?」
 彼女の質問に、何も問題はないと伝えた。本当は仕事と家事の両立はかなり大変だったけれど、病気以外のことで彼女を不安にさせたくなかった。
 検査の結果や私たちの生活のことなど、なるべく当たり障りのない話ばかりしていて、手術の具体的な日程に触れることはなかった。それを言ってしまったら、この平衡状態が崩れてしまいそうで、訊けなかった。
「頼んだもの、持ってきてくれた?」
「そこに入ってるよ」
 私が視線で示すと、彼女は私が持ってきた有名な子供服チェーンの紙袋を手に取った。中には花穂からお使いを頼まれたものが入っている。
 彼女は袋の中から一冊のノートを取り出すと、私に開いて見せた。
「それって」
 端の擦れたノートには、私が初めて、画家としての彼女に出会った夜が描かれていた。鉛筆で引かれたいくつもの線が紡ぐのは、月明かりを映す夜の奥多摩湖だ。
「私、手術を受けることにしたから」
「花穂……」
 唇を引き結んだ彼女の表情からは、確かな覚悟を感じた。
「あのね。視力を失くしてしまう前に、私、山に登りたいの。どうせ見えなくなるなら、今のうちに描いておきたいものがたくさんあるから。手術は二カ月後にしてもらったわ。藤沢先輩が、それ以上は待てないって」
 大学を卒業してから、同期から何度か誘いは受けていたが、二人とも登山をすることはなくなっていた。育児で忙しかった彼女が、スケッチブックに絵を描くこともなかった。
「お願い。最後の二カ月だけ、私のわがままを聞いて」
 その間にも、彼女の病状は悪化するかもしれない。取り返しのつかないことになるかもしれない。けれど、私は最後まで、彼女の思うようにさせてあげたかった。
「分かった。君のやりたいようにすればいいよ」

                  ***

 まず向かったのは、登山用品を扱っているショップだった。
 押し入れの奥に入っていた水筒や登山靴には、いつの間にかカビが生えていた。何年も放っておいたのだから当然だ。
 とりあえず、そこでひととおり道具は買い揃えた。子供用の装備も充実していたので、涼子の分も用意した。新しい靴を履いた涼子は、上機嫌に家の廊下を往復した。
「これでどこにおでかけするの?」
「お母さんが行きたい場所に行くんだよ」
 藤沢先輩には、何かあった時の対処の仕方や、体の不調を感じたらすぐに下山すること、なるべく標高の高すぎる山は避けて欲しい、といった注意を受けた。
「病気の進行を薬で抑えることはできる。もちろん、無理は禁物だからな。二カ月が経たなくても、病状次第ですぐに手術ってこともあり得る」
「ありがとうございます。無理言って」
「患者の意思、ってやつを尊重しないとな。まぁ山に行きたいって気持ちは俺も分かる。そういや最近、忙しくて全然行ってねえなぁ」
「それなら、ご一緒にどうです?」
「ありがたいお誘いだが、あいにく今は仕事が恋人なんでね。俺にも休みの言い訳になる相手が欲しいもんだ。お前はしばらく仕事のことなんか忘れて、花穂ちゃんのことだけを見てやれよ」
 じわりと胸が熱くなる。ふと、いつもパーティーの先頭を歩いていた先輩の後姿を思い出した。どんなに険しい山だって、先輩は絶対に疲れた様子を見せなかった。この背中について行けば大丈夫だ――。そういう頼もしさが、そこにはあった。
「先輩だけが頼りなんです。花穂のこと、お願いします」
 まいったな。頭を掻いて、先輩は少し照れ臭そうにした。
「その言葉、もっと早く聞きたかったぜ。言っとくけどよ、あのサークルで花穂ちゃんのこと狙ってたの、お前だけじゃねえからな」

 翌週の日曜日、私たちは茨城県に車を走らせた。入院が続いていたこともあり、花穂の体調が心配だったが、見た目には元気そうだった。
 行き先は茨城県の中央部――筑波山。標高九百メートル程度の、初心者でも比較的登りやすい山だ。
「ねえお母さん。たんぼがいっぱいだよ」
「外は暑いから、ちゃんと帽子を被りなさい」
 天気は快晴。雲一つない青空から強い日差しが降ってくる。『雨男』の例にもれず雨が降ることも危惧していたが、ふたを開けてみれば絶好の行楽日和だった。
 フロントミラーをちらりと見る。花穂は眩しそうに目を細めて、じっと窓の外に広がる田園風景を眺めていた。私は後部座席に向かって声をかける。
「どう? 歩けそう?」
「分からないけど、頑張ってみるわ」
 麓までやってくると、山間の道に沿って、土産物屋や温泉宿が目につくようになった。曲がりくねった道を進み、駐車場に車を止めた。
「あれにのるのー?」
「そうだよ」
 奥にはロープウェーが設置されており、麓と山の中腹をギターの弦のように結んでいた。その下を箱状のゴンドラがゆったりと往復する。確か、この先に展望台があったはずだ。部活で春のハイキングに来た以来だから、記憶はおぼろげだが。
 三人分の券を買って、ロープウェーに乗り込む。休日ということもあり、眼下に見える登山道はそれなりに盛況だった。自動アナウンスがこの地方の名所や歴史について説明を始めた。
「なんかこうやって山に来ると、思い出すな。まだ『小澤くん』って呼んでた時のこと」
 花穂の頬にほんのり赤みが差している。久しぶりに山に来た興奮のためだろう。体調も悪くなさそうだ。
「いつまでも懐かしい気分ばかりじゃいられないぞ。上に着いたらひと登りするんだから。ちゃんとついて来れるか」
「はいはい。いつも拓海さんは私の前を歩いてたもんね」
 花穂が私と目を合わせて微笑む。手術をしてしまえば、こんな風に彼女が私に向かって笑いかけてくれることも、なくなるのだ。
 喪失の予感は胸の奥を突き上げたけれど、私はその痛みに、気付かないフリをした。

 ロープウェーの到着した場所はちょうど男体山と女体山(筑波山は双子の山だ)の間に位置していた。そこから左右どちらかを選んで登ることができる。
「どっちにする?」
「涼子に選ばせてあげようか」
「あっちの、たかいやまがいい」
 あ、ちょっと待ちなさい――。勇んで駆け出す涼子に声をかけながら、私は花穂に向き直った。彼女は一度だけ頷き、ゆっくりと登山道に足を踏み出した。
 登り始めは、順調な足取りだった。私の注意はむしろ涼子の危なげな足元に注がれた。花穂の方はというと、「わたしもまだまだ現役みたい」と口元を緩めていた。
 うっすらと汗をかき始めた頃、休憩を取ることにした。まだ行程の三割くらいだった。道も、これからが厳しくなる。
 水筒のふたに麦茶を注ぎ、花穂に勧めた。
「疲れた?」
「昔よりは、ずっとね。いいダイエットになりそうよ」
「無理はしないように先輩からも言われてるんだ。こまめに休憩をとろう」
「休むのはいいことよね。立ち止まれば、また一歩踏み出せるんだから」
 明るく振る舞ってはいるが、私の見ていないところで彼女が泣いていることを、何度か義母から聞いた。本当に辛いのは彼女だということも、痛いほど分かっている。
「ここからが大変だけど、一緒に頑張ろうな」
 そして、私たちは頂上に到着した。立派な山小屋だったり、記念撮影の場所があるわけでもなく、殺風景で景色以外は何もない岩場だった。
 登っている時は視界が薄霧に覆われていたが、私たちが山頂に着く頃には晴れていた。隣に立つ花穂が前髪を押さえる。少し、風が出ている。
「なかなかの絶景じゃないか。良かったな、晴れて」
「一時間くらいで終わるから、あなたは涼子と遊んでいてちょうだい」
 彼女は背負っていたリュックから色鉛筆とスケッチブックを取り出すと、ちょうどいい大きさの石にもたれて絵を描き始めた。眼下に広がる関東平野と、遠く霞んで見える山々。世界がくれた一瞬を、彼女はその手で切り取るのだ。
 邪魔をしてはいけないと思い、私は涼子を連れて反対側の岩場に遊びに行った。

                  ***

 それから、一週間ごとにいろいろな山を登った。八王子の高尾山や千葉の麻綿原高原。少し足を延ばして、埼玉の長瀞で渓流下りをしたこともあった。
 毎週どこか旅行に行けるということで涼子は喜んでいたが、道の途中で花穂が辛そうな顔をすることも多かった。病気のためというより、体力の問題なのだろう。
「どうした?」
 立ち止まった花穂に気が付いて、私は声をかけた。背中を冷たい汗が流れ落ちる。
「ちょっとだけ、頭がふらふらするの。でも大丈夫。そんなにひどくはないから」
「横になるか?」
 花穂はその場に座り込んだ。涼子はいつの間にか先の方まで行っている。呼びかけると、涼子は不安げな顔をしてこちらに帰ってきた。
「お母さん、どこかいたいの?」
 花穂は何度か首を横に振った。足元に咲いていた花に触れ、「お花を見ていただけよ」と言って立ち上がろうとする。
「いや、無理をしない方がいい」
 私はそれを制して、持っていたリュックを枕代わりに頭の下に差し込んだ。
「やっぱりいたいの? どこ? あたま?」
 花穂が頷くと、涼子はそこに手を当てて目を瞑った。魔法の呪文を唱えるようにして、
「いたいのいたいの、とんでけー!」
 涼子は何度も繰り返した。母を気遣う娘の健気な姿に、私の視界はじわりと滲んだ。
「ありがとう。もう痛くないよ。すぐ歩けるからね」
 それでも、涼子は止めようとしない。もういいのよ、と花穂は困ったように笑った。
「だって、お母さんないてるもん。まだいたいんでしょ」
 気が付くと、微笑んだ花穂の頬には、涙が伝っていた。
 杖をついた老夫婦が、こちらに会釈して脇を通り過ぎた。
「……お母さん歩けないみたいだから、涼子がお父さんのリュックを持ってくれないか」
「どうして?」
 涼子が首を傾げる。不思議なものを見るような目で、花穂が私を眺めた。
「お父さんの背中をお母さんのために空けなくちゃいけないからだよ」
「ちょっ、ちょっと待ってよ。少し休めばまだ歩けるわ。そんな、この歳になっておんぶなんて、恥ずかしい……」
「照れるなって。部でも、足くじいた時には前にいる奴が背負う決まりだっただろ?」
「でも……」
 わーいおんぶだおんぶだー。涼子は嬉しそうにぴょんぴょん跳ねている。
 観念したのか、背中を向けた私に、花穂はおずおずと身を預けた。彼女の足を支えて、膝頭に力を込める。
「ねえ、拓海さん」
「なんだ? 心配しなくても、『重くなった』とか言わないから安心しろよ」
「なんか、汗くさい」
「降りろ」
 ぶんぶんと腰を振って、背中の彼女を振り落とす真似をする。
 肩に回された彼女の両腕に、ぎゅっと力がこもった。
「……ごめんね」

 こんな調子で、私たちはゆっくりと自分たちのペースで登山をした。頂上、時には山の中腹で、彼女は適当な場所に腰を降ろすと、小一時間ほど紙の上に鉛筆を走らせた。
 昔からそうだった。彼女は絵に集中すると周りが見えなくなるから、私は邪魔をしないように離れたところから彼女を眺める。そうして、彼女のことを一生見守るのだと誓ってプロポーズをした。今でも、その想いは変わらない。
「お父さん、ちょうちょそっちにいったよ!」
「え、なんだ?」
「あー。どっかいっちゃったぁ。お父さんがよそみしてるからだよ」
 涼子と遊びながら、スケッチブックと向き合う彼女を遠目に見つめた。そうしていると、あの頃の彼女と今の彼女が重なり、瞼が熱くなることもあった。
「あー。またお父さんないてる」
「ゴミが入ったんだよ。風が強いから」
「かぜなんてふいてないよ?」
 平日には花穂も病院に戻った。そこで、藤沢先輩とこれからのことを話し合った。幸い彼女の体調が悪くなることはほとんどなかったから、先輩は今まで通り、山に行くことを許可してくれた。
「あと一週間だな。今週はどこに行くんだ」
「最後なので、奥多摩の三頭山に行きたいと、花穂は言ってます」
「三頭山……。どうしてまた、そんな辺鄙なところに」
「思い入れがあるんです。いやまぁ、この辺は夫婦のプライベートなので」
 私がにやけて言うと、先輩は私の胸を小突いた。
「披露宴で挨拶してやった恩を忘れたか」
「先輩緊張して、茹でダコみたいになってたじゃないですか」
「そうだったか?」
 都合がいいですね、と私が冷やかすと、先輩は私を真っ直ぐに見据えた。その眼差しが私に微かな勇気と深い安心を与えてくれる。パーティーの誰かが怪我をしたり、想定外のことが起きたとき、誰よりも的確に対処してくれる『部長』の顔だ。
「まともな医者なら、脳腫瘍が見つかった患者に二カ月待つなんて許したりしないんだ。でもな。俺は医者である前に、あの部の部長だからよ。お前らに後悔させるくらいなら、医師免許なんてドブに捨てたっていい」
「先輩は世界一の名医です。医師免許なんてなくても」
「おい勝手にモグリにすんな。たとえ話だっつうの」
 花穂の――誰よりも大切にすると誓った人の両目が、やがて光を失い、闇に閉ざされてしまう。それなのに、私には何もできない。藤沢先輩のように、花穂を助ける力は私にはないのだ。私が彼女のためにできるのは、先輩を信じ抜くこと。ただ、それだけだった。

 三頭山は関東では珍しい、千メートルを超す高山だ。病気を抱えた花穂や子供の涼子が登るには、それなりに覚悟がいる山だった。
 途中で何度も休憩を挟みながら、私たちは一般の登山道をゆっくりと歩いた。
「手を貸そうか?」
「いい。今日だけは、一人の力で登りたいの」
 そこかしこに野鳥を観察するための小屋が並ぶ舗装道を抜けると、やがて急峻な階段が現れた。私は花穂の様子をつぶさに気にかけていたが、先に根を上げたのは涼子だった。
「もうあるきたくない」
「情けないな。お母さんがこんなに頑張ってるのに」
「そうよ。止まってたら、お母さんたち、涼子のこと置いてっちゃうわよ」
「やだぁ」
 慌てて横に並ぶ涼子と、絞り出すように一歩を踏み出す花穂。顔には出さないが、私にとっても楽な行程ではない。それでも私は、家族のために強くありたい。そう思った。
 やがて、樹皮に迷彩を纏ったようなブナの木が目につくようになり、千メートル地点を告げる看板が目の前に現れた。ここから少し進んだ先に、奥多摩湖を望める場所がある。
 そこは、大学生だった私たちがテントを設営した、思い出の地だった。私たちはそこに腰を降ろして、夕陽に輝く奥多摩湖の湖面を眺めた。
「前に来たときと同じだな」
「……うん」
 涼しげな風が首筋を滑っていく。ふと私は、花穂の肩が震えていることに気が付いた。
「どうした?」
「別に、なんでもない」
「何でもないってことはないだろ。震えてるじゃないか。寒いなら上着を貸そうか?」
 着ていたオーバーオールを花穂の肩にかけると、彼女は私の左腕を強く掴んだ。
「黙ってたけど、一週間くらい前から、目が霞んでるの。白い膜が貼られてるみたいに、ぜんぶぼやけちゃって。きっと、そのうち拓海さんと涼子の顔も――」
 私、怖いよ。大事なものが見えなくなっちゃうのが、すごく怖い。
 怖い。苦しい。助けて――。今まで一度も私の前で弱音を口にしなかった花穂が、その小さな身体に抱えていた思いを吐き出した。
 忘れかけていた痛みが胸の奥に蘇り、息が詰まりそうになる。嗚咽をもらす彼女を抱き寄せて、私は背中を丸めた。悲しいこと全てが、私たちの上を通り過ぎることを願った。
「どうして泣いてるんだろ……。これで、この景色を見るのも最後なのに」
 私たちの間に、言葉はなかった。私の腕には、彼女に掴まれた右手の跡が、いつまでも赤く残っていた。

                  ***

 そして、手術の日がやってきた。
「緊張してるか?」
「うん。ちょっとね」
 午後一時に、藤沢先輩が病室に迎えに来てくれることになっている。
 先程から花穂は、ベッドの上で手を組んでじっと白いシーツを見つめていた。この日を境に、彼女の世界からは『白』が失われる。それまで、あと数時間――。
 自分の目を潰すことで、彼女の代わりになれたらどんなにいいだろう。どれだけ彼女のことを強く想ったとしても、光を失うのは彼女であり、私ではない。もう二度と、彼女が私の顔を見つけて微笑んでくれることはない……。
 けれど、この世界にある様々な色彩を、美しいものを、この二カ月の間に彼女に見せることができた。目に映る全てを彼女と共有することができた。そのことに悔いはない。
「拓海さん。最後の、最後のお願いなんだけど」
 おもむろに、花穂が口を開いた。「どうした?」と私は平常心を装って答える。
「私の絵を描いて欲しいの」
 気が付くと、涼子が隣の空きベットで遊んでいた。綺麗にベッドメイクされたシーツをくしゃくしゃにしていたので、私は慌てて涼子を抱き上げた。
「絵を描くって、俺が?」
「そうだよ。ここに――」
 言葉を続ける花穂の手は、小刻みに震えていた。持っていたスケッチブックがベッドの下にぱさりと落ちる。私は抱いていた涼子を下ろして、床に落ちたそれを手に取った。
「おい、これ……」
 スケッチブックをめくると、初めのうちは夜の山林を描いた風景画が続いた。おそらく大学生の頃に描いていたものだ。
 そして、あるページを境に、描かれた絵はどれも同じものに変わった。
「それが、わたしの描きたかったものだから」
 筑波山の岩場で遊ぶ、涼子と私。蝶々を追いかける、真剣な涼子の顔。ゴミが入ったと言って、涙を拭う私の笑顔。涼子。私。涼子。私……。
 花穂が山を登って描いていたのは、風景ではなかった。そのスケッチブックの中からは、仲の良い父と娘の無邪気な顔が、怒った顔が、笑った顔が、いくつもいくつも、繰り返し現れた。
「あなたたち、私のことなんてお構いなしに楽しそうにしてるんだもの。ずうっと、この幸せな絵の中に自分がいないことが辛かった」
 ――でも写実なら、写真で十分なんじゃないの? わざわざ描かなくても。
 ――あのね、絵を描くことは、写真に残すよりずっと記憶に残るんだよ。小澤くんも描いて見れば分かると思う。
「ほら、だから私の絵をここに描いて。それで初めて、この家族が一つになれるの。瞼の裏にその記憶がある限り、わたしはどんな暗闇だって怖くない……」
 花穂が私にスケッチブックと黒鉛筆を手渡す。そして、彼女は涼子を膝の上に乗せると、その首筋に頬を寄せた。
「絵なんて描けない……下手くそで……」
「上手くなくたっていい。その絵を完成させられるのは、拓海さんしかいないのよ」
 お父さんがおえかきするの? 声を上げて、涼子は囃し立てた。
 溢れそうになる涙を必死で堪えて、私は花穂の顔を正面から見返す。
「分かったよ。でもな――。そんな顔じゃ、俺は描いてなんかやらない」
 花穂の目元から、大粒の涙がいくつも生まれては、白いシーツに滴り落ちていた。頬を伝う涙をシャツの腕で拭うと、花穂は無理やりに微笑んで見せた。
「とびきりの美人に描いてちょうだいね」
「びじん、びじん」
 優しい空気に包まれた病室の中で、涼子の元気な声だけが、いつまでも響いていた。

                  ***

 波の打ち寄せる音がする。
「ん、いい匂い。潮の香りがするわ」
「ああ」
 花穂が大きく息を吸い込む。私は彼女を乗せた車椅子を押して、海岸沿いの道を歩いていた。防波堤の先で、カモメが同じ場所をくるくると旋回していた。
「砂浜に人はいる?」
「いい天気だけど、誰もいないよ」
「うみだー」
 涼子が砂浜に向かって駆け出す。海の方を見ると、南からの強い日差しが目に入った。突き抜けるような紺碧の空には、雲一つない。
 ――お前に何かある時は、いつも降るねえ。
「俺の雨男も、最近はだいぶ良くなったみたいだな」
「拓海さん、雨男なの?」
「そうそう。小さい頃は遠足のたびに雨が降ってね」
 それでクラスの奴に「お前が来ない方が晴れる」なんて言われて、喧嘩になったっけ。懐かしさに浸りながら、私は足を止めた。
 相変わらず、涼子は嬌声を上げて海岸を走り回っている。
「それなら、私と逆ね。私、昔から晴れ女なの。だからあなたと登山をしてた時も、雨が降ったことなんてなかったでしょ」
「なるほど。やっと謎が解けた」
 一人でいれば止まない雨だって、彼女と一緒なら晴れ間に変わる。そうやって手を取り合い、私たちはこれからも、太陽の下で生きていく。
「そういえば、涼子は何をしてるの?」
「砂浜を疾走してる。よだれ垂らしててすごい顔だ」
「なにそれ。見てみたいわ」
「たぶん、見ない方がいい」
 花穂が声を上げて笑う。きれいな貝殻でも見つけたのか、涼子が何かを大事そうに手に持って帰ってきた。
「お父さんお母さん、あさりみつけたよ!」
「……頼むから、そのまま食べたりするなよ」
「ちがうもん。わたしもお父さんみたいにおえかきするんだよ」
 花穂が膝の上に乗せたスケッチブックを、涼子に手渡す。
「おい、そのページは開かないでくれ。お父さん恥ずかしいから」
 たとえ目には見えなくたって、大切なものはいつもここにある。
 こんな天気のいい日には、なんだか、何かいいことがありそうだ。


おしまい
Phys
2011年10月08日(土) 08時20分41秒 公開
■この作品の著作権はPhysさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
 調子に乗って、連続投稿とかしちゃいました。なんだか、最近筆が進みます。(仕事は
たくさんあるのに……)
 前作はかなりイロモノ設定の話を書いてしまったので、今回は地に足を着けた作品を
書こうとおもいました。
 統計上、2分に1組の夫婦が離婚をしていることになるらしいですが、お互いのことを
大切に思えば、どんな困難も乗り越える力になるはず。という願いを込めて書きました。
いわゆる、夫婦円満キャンペーン小説(?)です。
 毎度ながら、自分では気づいていない部分で不自然だったり、展開がおかしかったり
すると思いますので、気が向きましたら批判・激励等頂けると作者はうれしいです。
 最後までお読み頂いた方には、ありがとうございました。

この作品の感想をお寄せください。
No.11  青空  評価:40点  ■2013-12-21 03:09  ID:wiRqsZaBBm2
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 感動できる。甘いスイートな夫婦関係が円満の秘訣なのでしょう。

 しかし、なんかパラパラと雨が降るように読みにくい箇所があって、それが、物語の源流にある切なさや儚さの邪魔をしていて、大変勿体ない感じを受けました。特に登場人物が多数出る箇所に多く見受けられました。
 普通、三人称になると読者は読みやすくなる、というのをどこかの本で見ましたけれど、この著書になると主人公の視点が主体なので、三人称になると、何が云いたいのかが不明確になりやすいのかもしれません。

 ファンになりそうなぐらい上手な物書きさんなので、少し辛口にさせていただきました。

 しかしながら、なんだか胸にすっと入り込んで、欲しいものをぱっと出せる筆致は見事としか言いようがありません。

 どんどん、じゃんじゃん、どしどし、いっぱい書いて、もっと納得させるものがあったとしたら、プロ顔負けなぐらい好きだといえる作家さんであることは間違いないです。

 すごいなぁ。ファンになりました(笑)

 
 
No.10  楠山歳幸  評価:30点  ■2011-10-12 01:33  ID:3.rK8dssdKA
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 読ませていただきました。

 感動したこともありますが、その前に読みやすい中にやさしい雰囲気のある文章、登場人物の気持ちがじん、と伝わり、凄いなあ、と思いました(当たり前ですが、僕みたいな活字初心者なんかにはとても真似できないです。点数が辛目なのは僕がひねくれ者で、もう少しギスギスしたものが好み、と言う感じです)。
 すでにベテラン様方の素晴らしい感想がありますので、他に少し感じたことを。どうでもよいことですので聞き流してやってください。
 夜の風景のスケッチだと黒の世界を素早く描くことになるため線が勢いよく荒荒しくなってしまうと思います。逆に、家族スケッチだとやさしい線になるのではと思います。そういった描写が欲しいと思いました。あと、いくら遊びに夢中でも、嫁さんがこちらを真剣に観察していて気づかないかなあ、とも。そして失明後の花穂は家族にできるだけ負担をかけないように何か模索しなかったのかな(これは知人が失明後変にいじけているのを見ましたので)、と思いました(すみません。あわせてTC利用者様方、水を差してすみません)。

 >「たぶん、見ない方がいい」
 >「おい、そのページは開かないでくれよ。お父さん恥ずかしいから」
 ラストのこの台詞、とても良かったです。

 変な感想、失礼しました。
 
No.9  Phys  評価:--点  ■2011-10-10 10:12  ID:U.qqwpv.0to
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貴音さんへ

たびたび感想ありがとうございます。お褒めの言葉、気恥ずかしいながらも、
たいへん嬉しく思いました。

>ここで投稿されている皆さまの作品は読むたびにどれもすごい
私は全くダメダメ初心者ですが、小説投稿サイトの方々の中には「どうして
この方はプロにならないのだろう」という人が多くいらっしゃいます。私も
そんな人たちに追いつきたくて、楽しみつつ、何かを学び取りながら作品を
鑑賞させて頂いています。(貴音さんの小説もその一つです)

>医師という立場で、先輩として主人公たちを心配するなら、花穂さんの登山を簡単に許可しないのが自然ではないか
仰る通りだと思います。正直、かなり非常識なことで、リアリティを損なって
いるかもしれないと思いました。物語のアイディアを展開させるために、登場
人物たちを機械的に配置してしまったことの表れでもあります。

忌憚なきご意見、ありがたく受け取らせて頂きました。これから、もし機会が
あれば、またよろしくお願いします。失礼いたします。
No.8  貴音  評価:40点  ■2011-10-10 02:07  ID:te6yfYFg2XA
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読ませて頂きました。
お話の運びがとてもきれいでさわやかでした。(悲劇ですけど)
ここで投稿されている皆さまの作品は読むたびに
どれもすごいなあ・・・・・・と思います。
あたたかいお話で、奇をてらった感じのない作品という
のでしょうか。設定ではなくて、内容で読ませてくれる
物語ですね。やはりすごいです。
色々な設定が上手に絡まるとこんな感じになるんだと
伝えて頂いているようでした。
すごく良かったです。
一つだけ、先輩のことで気になることがありました。
医師という立場で、先輩として主人公たちを心配するなら、花穂さん
の登山を簡単に許可しないのが自然ではないかなと。
悪性腫瘍ではなく命に危険はないのに、思い出作りのために2カ月も期間を設けるのはお互いにリスクの方が高いのではないのかなと思いました。
エピソードがどれも感動的で、だから気になってしまったのだと思います。
私自身を棚上げにして指摘している感があり、すみません。
こういう安定した文章力、とてもうらやましいです。

No.7  Phys  評価:--点  ■2011-10-09 23:19  ID:U.qqwpv.0to
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HALさんへ

こんばんは。お久しぶりです。いつもながら、稚作に対して温かい激励のお言葉を
頂きまして、大変ありがたく思っております。HALさんの影響を強く受けて、私も
少しずつ、描写力を身に付けようともがいている今日この頃です。

心理描写も叙述力も、まだまだ足元にも及ばないレベルですが、読書と分析を
積み重ねて、一歩ずつ頑張っています。

>素直に胸に迫ってくるぬくもり、情
それが私の描き出したいすべてなのですが、まだまだ理想や勢いばかりで、技術が
追い付かないというのが現状です。正直、表現したいものが書ききれなくて、結局
完成を待たずにやめてしまう作品が多く、歯がゆい思いをすることもしばしばです。

いいものを、まっすぐに正面から書くためには、揺るがない筆力が不可欠だと私は
想像しています。TCの方の作品に触れることで、読書不足や人生経験の浅さを補う
ことができればと思っています。HALさんの作品は、何度も読み返しても勉強になる
「味わい深さ」があるので、これからも参考に(盗作にならない程度で……)させて
頂きます。

また、新作も楽しみにしていますね。ファンタジーやミステリーのおすすめ等も
教えて頂ければ嬉しいです。では、失礼します。


らいとさんへ

らいとさんの感想を読んで、自分の作品が抱える決定的な欠陥に気付かされました。
>失明の話ですね。とても深刻な事態だと思います。
>ですが、何か、みんないい子すぎるなあと思いました。
こういった視点で読み返すと、ものすごく白々しい物語に感じられてしまいました。
私は何を書いてるんだ、とも思ったりしました。(もし、お気を悪くなさったら申し訳
ありません。うじうじしているわけではないのです。素直に反省をしています)

>失明するとなったら、もっとひねくれたり、絶望して暴れたり、当たり散らかしたりするんじゃないかなあ
>みんな出来のいい人たちばかりで、それが何か人間の深みを描いていない
この一文に返答するにあたり、らいとさんの旧作を読み返してみました。そして、
自分が持たないもの、足りないものがそこにあると感じました。

私の作るお話は、見せかけの美しさや、倫理と道徳の枠組みに囚われたもので、
良くも悪くも「フィクション」の典型なのかもしれない。と思いました。その一方で、
らいとさんの小説作品は、圧倒的なまでに「人間本来の姿」や「激情の発露」を
描くものです。そこには、確かな文学性が感じられました。

したがって、きれいごとを並べるだけの私の姿勢、物語への向き合い方は、決して
文学ではないし、まして表現ですらないのかもしれない。と絶望的な結論を出して
しまいました。(自分で、です。笑)

この感想を頂くことがなければ、そんなことにすら気付かずにいたかもしれません。
構成や展開の枠に囚われず、もっと人間を描ける書き手になりたいと思いました。
リアリティとサスペンス。それがこれからの私にとっての課題だと認識しました。

勉強になりました。らいとさんの作品は私に足りないものを教えてくれると確信して
おりますので、次回作を待っています。(これは、単純に楽しみなだけです。汗)
お読みいただきありがとうございました。失礼します。
No.6  Phys  評価:--点  ■2011-10-10 07:43  ID:U.qqwpv.0to
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陣家さんへ

こ、これは――陣家さん秘技、褒め殺しですね。笑

作品の本質をズバリと見抜かれる陣家さんのことですから、これだけ手放しに
褒められてしまうと、「あなたの感想の書き方は相手にこういう印象を与える
のですよ」という戒めのように感じてしまい、怖くて、素直に受け取ることが
できませんでした。(うそです。とてもうれしいです)

>ノーブルでけれん味のない筆致
>深い絆でつながったことがピシャリとフレームインする感覚
むしろ、陣家さんの感想文がノーブルな筆致でした。私自身が力を入れて描写
した場面を的確に抽出して頂き、その一つ一つに丁寧な感想を示して下さった
ことに感激しました。

どの場面も手を抜かず、読んで下さる方に対して恥ずかしくない所まで詰めた
ものを書かなきゃいけないな、という初心を思い出しました。(今、初心者が
なぜか初心を語っています)

陣家さんは、登山部だったのですね! 私は先日に友達と三人で筑波山に行く
機会がありまして、その際に見た景色を描写してみよう、と考えました。ですので、
山登りサークルの場面や風景については完全な想像です。専門家の方を前に、
付け焼刃の専門用語を使わなくてよかった……とホッとしました。

最後になりますが、温かく過分なお言葉、ありがとうございました。私の辛口
批評は、難しいかもしれません。基本的に、どうしても納得できない点以外は
作者様の個性として味わうようにしています。それがネット小説の楽しみでも
ありますし。

また、陣家さんの作品も読ませてください。失礼します。


STAYFREEさんへ

丁寧な感想、ありがとうございます。細かく読んで下さったのが伝わってくる、
嬉しいお言葉でした。

>重さの加減がちょうどいい
>花穂さんも旦那さんも前向きに生きている
病気をテーマにすることは、正直、あまり品のいい作劇の手法ではないと、私は
自覚しています。可哀想な人を外面的に描写することで涙を誘うことは、小説を
単なる人形劇に貶めるものだとすら思います。

しかし。実のところ、私はそういった感動の呼吸・リズムを持つ作品を読むのが
好きです。徹底的にフィクションであり、ステレオタイプであるにも関わらず、
何度読み返しても心の琴線に触れる物語には、人間の持つ美しい部分の一端が
宿っていると信じています。

なんとなく、STAYFREEさんの描かれるお話からは、善意の物語であるという点で、
好きな小説が近いような印象を受けました。(勘違いだったらものすごく恥ずかしい
のですが……汗)
そういった意味で、こちらこそこれからも勉強させて頂きたいと思います。私も
負けないように頑張りたいです。

最後になりましたが、私には勿体ないご感想、ありがとうございました。また
新作も読ませて下さい。


zooeyさんへ

前作に引き続き、読んでいただきまして本当に嬉しいです。zooeyさんは「私が
絶対に持ち得ない魅力」を持った書き手さんなので、お言葉は真摯に受け止め
させて頂きました。

>伏線をきちんと回収していくということが完璧になされて
伏線を張り、それを後からせっせと回収する作品・構成が好きなのです……。
完璧、とまで大仰な評価を頂く水準ではないのですが、そういったテクニック
的な面を褒めてもらえると、頬が緩んでだらしなくなってしまいます。
ありがとうございます。

>物語に起伏があるのに、文章には起伏が少ない
>娘の涼子ちゃんが、言葉の節々からお利口さんすぎる
このご指摘には、ハッとしました。私は美しく物語を構成することに汲々とする
癖があり、起承転結の展開にばかり気を取られて、肝心の盛り上げ方に難が
あることが多いのです。「人物を展開を進めるための駒のように扱っている」
といった内容の指摘を受けたこともあります。その意味で、まさに核心を突かれた
思いです。

>地の文も、ここぞというところでは、描写を厚めにしたり
アドバイス、ありがとうございました。zooeyさんはどんな方の作品にも本質的な
問題点を提示し、作者の今後の向上を考えて言葉を選んで下さいますね。私も
もっと的確なコメントを残せるようにしなければ、と思いました。

>読めてよかったです。また読ませてください
こちらこそ、だらだらとした作品ながら、感想を付けて下さったことを大変うれしく
思います。また、zooeyさんの新作を待っておりますので、その際には拙い感想を
寄せることになるかもしれません。よろしくお願いします。
No.5  らいと  評価:30点  ■2011-10-09 15:05  ID:sAatbHKtSqg
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拝読させて頂きました。
失明の話ですね。とても深刻な事態だと思います。
ですが、何か、みんないい子すぎるなあと思いました。
こういう人たちが大多数で僕みたいなのが少数派なのかもしれないですけど、
失明するとなったら、もっとひねくれたり、絶望して暴れたり、当たり散らかしたりするんじゃないかなあと思いました。
ここに出てくる人たちはみんな出来のいい人たちばかりで、それが何か人間の深みを描いていないように見えてしまうのです。(あくまで私見ですが)
もう少し、汚い感情があっても良いような気もしました。
拙い感想失礼しました。
No.4  HAL  評価:40点  ■2011-10-09 11:13  ID:nf2b31Kgq4o
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 拝読しました。

 やさしいお話でした。まっすぐ、素直に胸に迫ってくるぬくもり、情。メッセージ欄で書かれている、まさにそのとおり、地に足の着いたストーリーでした。いいものを、まっすぐに正面から書けるというのは、書き手にとって何より大きい、素晴らしい力だと思います。

 花穂さんが描いていた絵が、風景ではなくふたりの姿であったとわかるくだりなど、胸がじんわりと熱くなりました。ラスト、自分の描いた絵に照れる主人公の姿もよかったです。

 いいものを読ませていただきました。ありがとうございました!
No.3  zooey  評価:30点  ■2011-10-09 02:53  ID:1SHiiT1PETY
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こんばんは。読ませていただきました。

他の方も仰っていますが、とても完成度の高い作品だなと思いました。
一つ一つのエピソードも、登場人物も、どれも大切な役割を果たしていて、どれが欠けてもいけないと感じました。
逆に言うと、きちんとそれぞれを生かしていて、私ができない伏線をきちんと回収していくということが完璧になされていて、すごいなあと思いました。
文章も、無駄がなく、とても読みやすかったです。

ただ、気になったのが、物語に起伏があるのに、文章には起伏が少ないかなという点です。
会話文にしても、もっと動揺してもいいところでも、きれいにまとめられてしまってるので、なんだかその動揺が、焦りが、伝わってこない感じがしました。
たぶんそれと関係することですが、娘の涼子ちゃんが、言葉の節々からお利口さんすぎるなあなんて印象を受けました。

地の文も、ここぞというところでは、描写を厚めにしたり何か読者を惹きつけるようにすると、感情移入しやすくなり、より感動的になる気がします。

ただ、展開、伏線の敷き方回収の仕方、登場人物の活かし方等、とても勉強になりました。
指摘した点も、私自身を振り返ると、うまく出来ていない部分も多く、自分自身の課題としても注意していきたいと思いました。

読めてよかったです。また読ませてください。
No.2  STAYFREE  評価:50点  ■2011-10-09 01:57  ID:eM8nTjX2ERc
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拝読させていただきました。
とても良かったです。感動しました。通勤の電車の中でスマホで読んでいて、思わず泣きそうになりました。
なんていうか、重さの加減がちょうどいいなあと感じました。重大な病気にかかり、本人も家族も絶望のどん底に叩き落されそうな状況ですが、花穂さんも旦那さんも前向きに生きている。それに娘の涼子ちゃんに悲しさの感情を持たせなかったのが、とてもよかったような気がします。読んでいて清々しい気持ちになりました。
一番良かったのは、やはり花穂さんが書いていた絵が旦那さんと涼子ちゃんの絵だったところですね。
”あのね、絵を描くことは、写真に残すよりずっと記憶に残るんだよ”この一文がとても好きです。
素晴らしい作品を読ませていただいて、ありがとうございました。
僕もこういう小説を書けるようになりたいです。
No.1  陣家  評価:50点  ■2011-10-08 10:29  ID:1fwNzkM.QkM
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拝読しました。

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良かったです。
今までのPhysさんの作品の中でもダントツに完成度の高い安定感のある作品だと思いました。
このノーブルでけれん味のない筆致は読んでいてとても気持ち良かったです。
登場人物のすべてに血の通った存在感が感じられました。
主人公が受けた衝撃、動揺、そして決意。
丁寧に描かれるエピソードと、納得のいく心理描写は胸に迫る思いがしました。
病気に対する描写も過不足無く、リアリティが感じられました。

>「お父さんが、おはなしきいてくれない」
この辺のスーパーでのエピソードなどは主人公の拓海の焦燥感がよく出ていたと思います。

医師である藤沢先輩も良かったです。
>「その言葉、もっと早く聞きたかったぜ。言っとくけどよ、あのサークルで花穂ちゃんのこと狙ってたの、お前だけじゃねえからな」
粋なセリフです。ヒロインである花穂に当時思いを寄せていたなんてのはお約束ですが、だからこそ男らしく頼りになる先輩の姿を描き出せていたと思います。

登山関係の描写もすばらしかったです。変に専門的な用語に頼ることなく、さりとて首をかしげるようなおかしな描写も無く、安心して登場人物たちのパーティの一員として大自然の空気を感じることができました。

>彼女は私の左腕を強く掴んだ。
ここから以降の場面はどきどきしました。そして残された時間へのせつない思いがリアルに伝わってきました。

ラストの海岸のシーンはありがちだけれども家族がいっそうの深い絆でつながったことがピシャリとフレームインする感覚でした。
娘の涼子ちゃんがあさりを拾ってくるくだりは微笑ましくも周到な小ネタで、にんまりさせられました。

本当に良かったです。
元山岳部の陣家でした。

追伸、誤変換でいじわるなこと言ってごめんなさい。
Physさんに辛口批評もらうにはこれくらいしないとだめかなあと、ちょっと思ったんですが、僕がバカでした。すいません。
でわでわ。
総レス数 11  合計 310

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