その形がいろは坂を上から見たように
 ワタシの肩に枯れ葉がひっついていた。鮮明な黄色の葉であった。ひきはがしてみると、裏に何かくっついている。匂いを嗅いでみたがほぼ無臭で、色は白く濁っており、それが昆虫の糞のように細く、デジタル信号みたいに繋がっているのだが、その形がいろは坂を上から見たようにくねくねしており、おや、これはもしやと思い老眼鏡をポケットから出し見てみると、ほう、なるほど、これは何かの文字であるな、と感じとりワタシは天を仰いだ。さて、まあとにかく白の濁りはよくわからないけど、この文字を読み取ってやろうと思い、並木道散歩を中断してベンチに座った。三つ子の男の子が向かいのベンチで同じ方向を見つめていた。あの視線の先に母親がいるのだろう。まあ、とにかく枯れ葉の文字を読み解くことが重要なわけで、他の事はどうでもいい。それにしてもこの文字。どこかで見たことがあるぞ。見た瞬間にそう思った。ワタシの記憶の倉庫に触れたわけだ。コートの内ポケットからブラックニッカをとりだし一口飲んだ。向かいの三つ子は同時にワタシの方を向いた。すぐに笑顔をつくりワタシは帽子をもちあげ挨拶をしたが、三つ子は何の反応も示さなかった。しかたあるまい。きっと、そういう状況ではないのだろう。ワタシは葉っぱの文字をじっくり観察した。やっぱり、これは文字で間違いない。でなければワタシはもう正常な人間とは言えないではないか。ブラックニッカをもう一口飲んだ。

 三十分考えて、ワタシはあきらめた。これは文字なんかではないのかもしれない。ワタシの記憶がもうイカレてしまったんだ。金輪際、自分が正常だなんて思うことは止そう。そう決めた。夢中になっている間に三つ子はいなくなっていた。

 過去になった三つ子。さようなら。
クロアチア博士
2011年12月09日(金) 23時48分28秒 公開
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No.3  クロアチア博士  評価:--点  ■2011-12-12 23:48  ID:mWPJnUMHTjo
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なんとなく難しいですな
描写というやつは……
一瞬間の重要さが
欲しいですね。

文学むずかしいですね。

二人のコメントとっても参考になりました。
たすかります。
No.2  弥田  評価:30点  ■2011-12-10 17:06  ID:ic3DEXrcaRw
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主人公がいきなり自棄になるところと、飲んでいるお酒がブラックニッカだ、というところが好きです。
内容はあまりよくわかりませんでした。ごめんなさい。
No.1  STAYFREE  評価:30点  ■2011-12-10 01:55  ID:eM8nTjX2ERc
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拝読させていただきました。
自分の読解力にあまり自信はないのですが、主人公は神様的存在の人ということなのでしょうか?
”私”ではなく”ワタシ”とカタカナ表記だったのがなんかそれっぽく感じたのと三つ子は何の反応も示さなかったという文章からそのように感じました。
もしそうだとしたら、神様が正常な精神ではないのはとても恐ろしいですね。
的外れな感想だったらお恥ずかしいです。
僕はこの作品を読んでこのように感じました。
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