少年猿飛佐助  〜本能寺の謎〜
このところすっかり耳慣れた音が嵐の首を掠めていった。
「今ので、殺られていたかもしれない」
もし、本当戦いだったら……忍者の命は切ないものだ。次の瞬間、カカカッと胸板が鳴った。三本の小刀が刺さっていた。
「殺られた」
大声で言って立ち上がる。向こうの葦の茂みから相手が姿を現す。まだ、少年だった。
「もう、おまえに敵うものはこの谷にはいない」
服の下から防護用の板を取り出す。小刀は深く刺さっている。板がなかったら致命傷だった。嵐は自分の半分の重さしかないこの息子に、自分が勝てる日はもう来ないと確信した。

「俺、本当は忍者なんか嫌だ。死にたくない」
佐助は正直に語った。狩の帰り。二人は猪の子をしとめて谷へ向かっていた。
「今は乱世。しかし、誰かが天下を取れば……戦がなくなればワシらの仕事も楽になる。上手くすれば鍛練だけしていればよくなるかもしれぬ。それまで生き抜くのじゃ。」
「この谷が仕えている人が天下を取らなかったら?」
「腕の良いお前はどこへでも行けるて。」
白雲は佐助を不憫に思った。自分は運よく四十歳まで生き残った。が、佐助は技がたちすぎる。あまりにも敵の標的にされてしまうだろう。
「俺たちは誰に仕えてるの?」
「それは嵐しか知らぬ。」
「その人、今、どの辺かな?」
佐助の言っているのは、その人が天下統一に向かってどの位置までいっているかということだった。佐助がいつも白雲にする質問だった。彼の気質は戦いには向かなかった。いつも平和な生活を夢見ていた。
「ワシ等は普通の百姓のようには働いていない。上様から頂く米を食ってひたすら修行に励んでおる。皆、星の定めじゃ。百姓だって年をとれば山に捨てられておる。侍だって戦でバタバタ死ぬ。」

夜。嵐がそっと起きだす気配に佐助は目を覚ました。梟の鳴き声に答えるようにヤモリの落ちる音……。
佐助は星空を見上げていた。夜目の利く彼には普通の者には見えない、今にも消えそうなかすかな点のような星星が空一面に瞬いているのが見えていた。嵐は外へ出て行った。

佐助に初仕事が来た。正確には父親の嵐にだったが。翌朝、飯がすむと佐助のほかに二人が呼ばれたのだった。
今回の件は重大な任務で危険も大きい。
「お前も俺も死ぬかもしれぬ」
佐助は頭を垂れた。
「泣くなっ!」
嵐はすかさず喝を入れた。佐助は泣きべそを拭って答えた。
「泣かないヤイ。俺だって忍者だい!!」

佐助は仲間達と共に谷の外へ連れ出された。目には目隠し、耳には耳栓。どこへ向かうのか絶対に知ってはならないらしい。もっとも谷の外にでたことのない佐助には意味がなかったかもしれないが。
馬に乗せられ、何十刻、いや、何日かがたったようだった。一言も発してはならないとのことだったので全く見当もつかなくなってしまっていた。腹が減って倒れそうになったころ、やっと何刻か休んで、その間に眠った。
ついに目的地に到着したらしく、立ったまま静かにしているように言われた。それから更に数刻経過したのだろうか?緊張のあまり空腹をも覚えない。一体、今、自分がこの世にいるのか、何処か奇妙な世界へ入り込んでしまったのかも分からなくなったころ、ようやく一人の人間の足音が聞こえてきた。周りの仲間が目隠しを解かれているらしい音。佐助の番が来た。目隠しを解かれるとホッとして一息つきそうになったが、周りの異様な緊張感に飲まれて、瞬時に吐き出しかけた息を止めた。夜。流石の佐助も目が慣れるのに少しかかった。そばに編み笠の男が立っていた。嵐と後、二人の谷の仲間もいる。笠の男は粗末ななりをしていたがなにやら得体の知れない“気”のようなものに包まれており、只者ではない雰囲気が体中から迸っているようだった。
「この人……」
佐助は色々と質問したいのをグッとこらえた。やがて命令されるまま、門の外に出た。この笠の人物の護衛が自分たちの役目だと知らされた。あたりに注意を払う。どんな気配も見逃してはならない。佐助の目に今、自分たちが出てきた建物が入った。大きな堀の有る建物。城か?いや、城にしては小さい?そして、ここはどこだ?りっぱな家が立ち並んでいる。どこか、名の有る都に違いなかった。が、今は真夜中らしい。あたりは静まり返っている。本当にここには人が住んでいるのかとさえ感じられてくるほどの静寂。何度目の角を曲がったのか、もう思い出せなくなった頃、佐助の耳に例の音が聞こえた。

本能寺の変の謎 その一
何故、信長は本能寺に宿泊したのか?
本能寺の防御性は現在の発掘捜査ではまだ明らかになっていない。堀をめぐらせた相当のものだったという説も有る。信長が宿泊したことを考えれば当然の説である。が、それほどではなかったという見方も有る。いずれにせよ千人規模の兵力で信長を殺害できてしまうのは確かである。しかも信長は僅かな手勢しか本能寺に配備していなかったという。戦国乱世、下克上が当たり前の時代に何故、防御の薄い施設に宿泊するという危険を犯したのであろうか?


カキッ!
と手裏剣を跳ね返す音がして突然、戦闘が始まった。無言の戦い。佐助は兼ねての打ち合わせどおり、敵中に飛び込んでいった。何人いる?佐助は手裏剣を放ちながら数えていった。九人。間違いない。既に一人、佐助の手裏剣に倒れたものがいる。あと八人。佐助は手裏剣を投げまくった。彼の手裏剣は彼独自の工夫が凝らされた三枚羽のものだった。薄く出来ていて投げると、始めまっすぐ、途中で浮き上がったり曲がったり、自由自在だった。七人。六人。五人。敵がバタバタ倒れていく。あと四人となったとき
あっ
という小さな声が耳に入った。そちらを見ると笠の男が揺らめいていた。そばにいた嵐が先に倒れ、続いて笠の男が倒れた。佐助は七人目と八人目に小刀を投げた。七人目は倒れ、八人目は小刀をよけた。そして直ぐ手裏剣を投げてきた。見たこともない速さだったが楽によけられた。佐助は八人目に突進していった。八人目は逃げた。それを庇うように九人目が襲ってきた。突然、佐助が消えた。次の瞬間、九人目の喉から血が迸った。
バタっとその男が倒れるとあたりは急にまた元の静寂に戻った。嵐も、仲間の二人も、そして笠の男も死んでいた。
「どうすれば?」
佐助は笠の男が死んだ場合の指示を受けていなかった。父親が死に、守らねばならない笠の人物も死に、こんな未知の時空にいきなり一人置きざりにされた佐助の精神は崩壊しそうだった。叫びたい気分だった。周りの静寂、大きな建物に圧殺されそうな感覚だった。
「どうすれば?」
自分は死なずにすむのだ?彼はそう考えていた。さっき逃げた敵が直ぐにも仲間を呼んで襲い掛かってくるに違いない。とりあえず、この場から去る?それで自分は助かるのか?これは誰だ?ここは何処だ?早く、何かしなければ。その時、佐助の頭に、とある倒錯した考えが浮かんだ。
「この、笠の人物の死体を消してしまったら?」
その考えに一旦とりつかれると彼の頭にはもう何も浮かばなくなってしまった。


正気にかえると、彼は谷に戻って来ていた。どこをどう走って?分からなかった。とにかく目の前に谷があった。くたくたになって返ってきた佐助に目の覚めるような大騒動が待っていた。
「光秀様が謀反を起こし、信長公が死んだ!!」
誰も彼もがこの話で持ちきりだった。佐助が返ったというのに任務の成否を問うものがなかった。
「信忠殿は光秀様と潔く決戦なさるつもりだ!」
「信忠殿討ち死!」
の報もまもなく入った。

本能寺の変の謎 二
光秀は何故、本能寺と同時に妙覚寺を攻めなかったのか?
信忠のいた妙覚寺は本能寺から数百メートルしか離れていない。信長を殺害しても信忠を逃してしまったら謀反の意味がない。信忠は既に織田家の家督を継いでいたからだ。光秀には同時攻撃を仕掛けるだけの十分な兵力があった。にもかかわらず妙覚寺は攻めていない。信忠は光秀が謀反を犯すからには自分が脱出する隙があるはずがないと考えた。そこで潔く妙覚寺で戦って死ぬ。が実際には信忠の思い込みだった。一緒にいた弟の長益は脱出しているのである。本能寺を攻めてから妙覚寺を攻めるまでに何時間かのタイムラグがあるのである。まるで信忠の存在を忘れていたかのようである。光秀ほどの戦上手が何故、このような可笑しな軍事作戦を取ってしまったのであろうか?


ようやくひと段落して佐助の首尾を尋ねるものがあった。
「実は……」
佐助の話を聞いて、皆、息を飲んだ。
「それでは、村は一体どういう運命にあるのだ?」
自分たちがどの国に、どの武将に雇われていたのか知っているものがいなくなってしまったのである。皆、うろたえて混乱状態になった中、
「とりあえず、その首を見てみよう」
といった者があった。佐助は重かったそれを背中からおろし、くるんでいた布を広げた。
「誰だ?これ?」
誰も見た記憶がない顔だった。皆が首を囲んで騒いでいると白雲がやってきた。そして、首を見て叫んだ。
「信長公!!」
全員が硬直した。その中、疲れすぎて緊張が失われている佐助が自然な疑問を口にした。
「え?おかしいよ。信長公が殺されたのは今朝だろ?これ、切り離したの、夕べだよ」
「すると、これは本物ではないのか?影武者か?」
知っていたのは嵐だけだった。極めて物騒な事になった。信長の首など。
「若しこれが本物なら、村ごと殲滅させられるような事態になるかもしれない。いや、影武者の首だとしても危ない。天下の信長公に係る極めて重大な事件に係ってしまった。」
白雲が唸った。嵐がいなくなった以上、今は白雲がこの谷の長だった。
「とにかく大切なのは情報だ。これが、本物なのか?誰が信長公を殺したのか?我々は何者に雇われていて、敵は誰なのか?それが分からないことには我等が生きる道は絶たれよう」
皆、蒼白になっていた。
「そして佐助、この村の掟により、その責任は全てお前にある」
係った仕事の責任は最後まで取るのが谷の掟だった。



柴田勝家にはどうしても分からなかった。

本能寺の変の謎 三
光秀の軍勢が京へUターンしているのに何故、信長が気づかなかったか?光秀はその朝、大軍を率いて秀吉のいる高松へ援軍に向かう予定だった。本来なら「軍が今、どこそこに到着」と逐一、信長の下に知らせが入るはずである。専門の連絡係が存在していなかったと考えるのは極めて不自然である。予定と逆方向に折り返しなどしたら「すわ!謀反!」とたちまち察知されてしまうはずである。


光秀謀反の報を受けた時、勝家は越中で上杉と戦っていた。直ぐに京へ向かいたかったが、目前の、上杉が反撃にでてきていて動けないでいた。
「早く京へ。光秀を討ち取って自分こそ信長公の後継者であると名乗りを上げたい。さもなくば誰かに先をこされてしまう」
そんなとき、妙な話が入ってきた。
「信長公の首を売ると申すものが……」
動乱に乗じて奇妙な噂を流すものがいるのは慣れている。勝家は相手にしなかった。

丹羽長秀のところにも同じ話が舞い込んでいた。長秀は直感的に何かがひっかかった。
「光秀の謀反には黒幕がいるのではないか?首を巡って内輪もめを始めたか……?」
しかし、それは今、入っているだけの情報だけでは考えてみても仕方がない。またじっくり情報を集めている時間もなかった。
「その情報は切り捨てよう」
最速で自分の道を切り開かなければ未来はない。死あるのみだ。彼は自分にとっての最良の道を選ぶために全頭脳を振り絞っていた。

本能寺の変の謎 四
家康は何故、堺に行かされたのか?
変のあったとき、家康は家臣三十名ほどと堺にいた。戦国武将が家臣三十人と歩いているか馬に乗っているか判明しないが、いずれにせよ危険極まりない。自分の配下の城の近くならいざ知らず遠く離れた地である。ちょっとした裏切りでそれこそ簡単に殺されてしまう。戦国にあってはいつどこで誰に狙われるか予測の範疇はあまりにも広い。家康が好き好んで堺へ出かけたとは考えられない。しかもこの時、家康に同行していたのは本田忠勝をはじめとしたそうそうたる徳川の重鎮ばかりである。これは何を意味するのであろうか?

運に恵まれた男だった。
敵の中にも金で動くものが容易に見つかった。家康は全身が打ち身や擦り傷だらけになりながらも伊賀を越えるめどが立ってきた。そこへ首の話が転がり込んだ。
「信長様のお首を買わないかと言うものがあります」
「バカ!今更、あいつをサマなんて言うんじゃない!ノブ公と呼べ!なに、ノブ公の首だと?贋物だろうどうせ。うっちゃっておけ!!」
忍者は面食らった。彼は家康に直接モノを伝えたのは初めてだった。あまり良いお人ではないと噂には聞いていたが。この忍者、笹山大輔はサッといずこかへ去ったと見せかけて迂回して本多忠勝のところへやってきた。彼等はほとんど腹話術で会話をした。
「どうします?」
「誰が持ってるんだ?」
「まだ、不明です」
「例の護衛の忍者か?」
「もう、誰かの手に渡ったかもしれない」
井伊直政が口を挟んだ。
「どうする?」
「ほうっておこう……今更、首が出たところで本物扱いはされまい」
笹山はうなずくと、いずこかへ向かおうと二人の前を辞した。そこへ家康が近づいてきた。
「さっきのクビの件だがな。面白いじゃないか。あいつの首を京の町に晒すんだ。でな、“夜中に人の女房を犯しに出かけた処を逆に亭主に殺された”と言いまわるんだ。どうだ、いいザマだろ」
夜中に百姓の女房を犯しに出かけるのは家康の趣味だった。


加茂川のほとりに奇妙な看板が立っていた。酷い字で
「信長公の首、売ります」
とある。洗濯をする者、炊事用の水を汲みに来る者、魚を釣る者。京のはずれとはいえ夏の盛り、人の数は少なくなかった。そんな中に佐助の姿があった。浅瀬に入ってタニシを採っている。土手の上には七厘があり、タニシの貝殻が山になっている。佐助は時々、そちらに目をやる。
「信長の首、売ってちょうだいな」
土手の上から若い女の声がした。無視する佐助に
「あんた、このへんのモンやないやん」
やっと気がついた不利をして佐助は顔をあげた。真っ黒に日焼けしたツヤの良い女のコがいた。女のコはみそのと名乗って本当に首を売ってくれと言った。
「ああ、あの立て札か?俺、字、読めないんだ」
「ふ〜ん」
みそのは佐助が気に入った様子だった。どこから来たかとか、おとんはどうしたとか、どうでも良いことを年も佐助と同じくらいだというのに根掘り葉掘り聞いてきた。佐助はうっとうしく思いながらも適当に話をしてみた。みそのは佐助と同じくらいの背丈で締まった体をしていて黒くて歯がきれいで陽気だった。
「お前の家、なにやってんの?」
「忍者よ」
みそのはにっと笑った。佐助は実はさっきからそればかり気にしてみそのの体をジロジロ見回していたのだった。
「うそよ。釣り道具屋なの」

半刻後、みそののあとつける影があった。みそのは京の町へ入っていった。時折、影が入れ替わる。
「あっ」
不意にみそのが躓いて転んだ。持っていた包みを落とすと何かが数個、ころころと転がった。美しい小粒なそれは鮠釣りにつかう“浮き”だった。

伊賀の山中。獣道に三十人の侍が擦り傷だらけの体を休めつつ握り飯を食っていた。家康は女がやってきたときいて食事を中断した。こんな場面でも女を手配する家康の遊びに注入される体力は凄まじいものがあった。そこへ忍者の笹山が現れた。笹山は「例の首は本物のようです。その証拠に大勢の忍者が監視しています」と報告をした。家康は
「面白いぞ。そのキャツの首を手に入れろ」
とはしゃいだ。それに興味ないフリをして飯を食っている本多と井伊。しばらくして笹山がやってくる。
「どうします?」
「ほうっておけ」
もう、時代は今までとは異なる方向へ動いている。用のないものを追って貴重な人材を失うことはない。二人はそう考えた。
家康は小道の奥へ女を揉みに行くと見せかけてこっそり戻ってきていた。
「半蔵」
背の高い男が現れ出た。家康十二武将の一人、服部正成。
「上様、御言葉ではございますが、私、既に……」
「ええ、良いではないか!」
家康は服部を近くへ呼び寄せた。周りに誰もいないにも係らず、服部の耳に口を寄せて何事かをつぶやいた。


「首を売ってくれ」
タニシを串に刺す手を止めて見上げると虚無僧だった。編み笠を頭からすっぽり被っている。僧服は擦り切れて襤褸。どうみても年季の入った修行のみにしか見えなかった。
「いいとも」
佐助は快活に答えた。
「いくらだ?」
「御代は情報でござい!」
「金でよこせ」
「村人の命が掛かってるんだ!そうはいかないよ」
「斬るぞ」
「お前は既に、死んでいる!」
「なに?」
「もう、俺の金縛りに掛かってるってことさ!」
佐助はすくっと立ち上がると腕組みをして相手を睨み付けた。
「ほら」
ポンと僧の肩を叩く。
「こうすると急に尺八が重くなる。どんどん重くなる」
虚無僧の左腕にズシっと重みが加わった。重くない振りをすればするほど重みは増した。佐助は腕組みのままニッコリ笑った。
「ムムゥ……」
しまいには持ちこたえられなくなり尺八を持った手が地面にピッタリくっついてしまった。

その日の丑三つ時、とある廃寺。黒い小さな男が腕組みをして絶っていた。
「首はどうした」
まるで空耳かと思えるほどにかすかな声だった。
「近くにおいてあるさ」
相手は姿を現さず。物音ひとつしなかった。
「俺を絞ったって只じゃ渡さねぇぜ」
「本当に譲って欲しいのだ」
さっきとは別な声がした。
「話しな!」
沈黙。双方しばらく待った後、佐助が声を発した。
「そちらの主君は?」
暫くして返事が来た。さっきの二人とは更に別の声が別の角度から静かに響いた。
「明智光秀殿だ」
「本能寺で信長様の護衛を忍者に依頼したのもそうか?」
「知らぬ」
「こっちはそれが知りたいのさ」
「俺たちにお前たちを敵にする意図はない。首さえ渡してもらえれば」
「俺らを敵に回そうって奴等は誰だ?」
「お前等の敵?……フフフ、そうか。お前等は自分が何者か知らないんだな?」
どこかから、低い音がして周りにコダマした。
「おうよ!笑うない!首は渡さねぇぜ!」
「教えてやっても良かろう。お前たちの主人はな……その前に首はどこだ?」
「そっちが先だ」
「よし、いいだろう。お前等の主人は……」
その瞬間、例の聞きなれた風のうなりを聞いた。
シュドッ!!
一人が倒れた。これで十一人になった。立て続けに三人倒れた。
「強い!」
直感した直後に何者かが突っ込んできた。
「おや?斬らない?」
次の瞬間、刃が唸った。佐助はかろうじてよけた。新手の人数は分からなかった。だが、今、斬りかかってきた一人で判断材料は十分だった。一人で戦ったら勝てない。
「ターッ」
佐助が叫んで飛び上がると、忍者たちの動きに変化が生じた。あちら、こちらに小さな赤い光が点ると忍者たちの動きはおかしくなった。火縄のにおい。佐助は駆け出した。一人斬り生地へと走る。どの線を走れば敵の予測を裏切って脱出できるか察知する能力に自信があった。もう一人斬った。一人、追いかけてくるものがあった。佐助は全力で走った。相手が立ち止まれば、手裏剣を投げる頃合を計って横にかわせば良い……。佐助は相手が立ち止まるのを待った。が、相手は追ってきた。彼は脚には最も自信を持っていた。だが、相手は追ってきた。
「俺より速い?」
佐助は久々に自分がムキになるのを感じた。いつか、村の忍者と腕比べをしたとき、もう少しで嵐に追いつきそうだったとき……。楽しかった。自分と同じか少し上くらいの奴がいるってのは。佐助はいつのまにか先ほどよりも速く走っていた。全力だと思っていたのは全力ではなかったのだ。それでも後ろの男はついてきていた。佐助は相手の顔を見たい衝動を抑えられなくなった。振り向いた。三間ほど後ろを背の高い黒い男が走っていた。自分と同じく覆面をしていたが目は見えた。目が合った。鋭い殺気がこもった目だった。行く手が行き止まりのようになっていた。佐助は手前の松の枝を利用して塀を飛び越えた。
後ろの男は意表を突かれた。小道は行き止まりではなく左に直角に曲がっていたのだ。まさか、高い塀を飛び越えるとは予測しなかったのだった。男は左に鋭く曲がるべく体制の準備をしてしまっていた。


「あれ?本当に釣具屋だ」
「だから言ったでしょ。なに猿みたいな顔してんのよ。入りなさいよ」
みそのが自分は釣り道具屋の娘だとあくまで言い張るので佐助は案内させてみたのだった。どこからどう見ても釣具屋でしかも釣り道具に詳しいし、ここにずっと住んでることも確かなようだった。そこへ男が入ってきた。
「らっさい、なんだおとんか」
おとんは佐助がさっと消えたのにも気がつかなかったようだった。いきなり興奮した様子で近頃もちきりの話題を切り出した。
「あの、羽柴秀吉ってのはスゲェ男だぜ」

本能寺の変の謎 五
なぜ秀吉はたった一昼夜で三万もの兵を百五キロメートルも移動できたのであろうか?三万の兵の移動となると通常は一日、二十キロでもきついくらいである。三万が全て移動したとしなくても数千頭単位の馬の交換が必要であったはずである。変が二日。移動開始が六日。四日で数千頭を準備できたとは到底考えにくい。
その前に情報の速さが不思議である。変が二日、秀吉が知ったのが三日とされる。おかしくはないだろうか?百キロも離れた地点にいる秀吉がどうしてその情報が確かであると確認できたのであろうか?敵の策略かもしれないではないか?ありがちな偽情報ではないか。敵に騙されて三万もの兵を撤退させてしまったら只で済むのか?敵の罠だったら?後ろから追撃されたらどうなる?


店を飛び出した佐助は白雲たちに情報の確認をしていた。
「まさか」
「しかし」
「さすが」
訓練の行き届いた忍者たちも、秀吉の今回の大技に関してはいつしか話しに夢中になって声が大きくなってしまいがちだった。


昨日買った魚篭に今日は気分を変えて鮠を釣った佐助はみさとの釣り道具屋へ行ってみた。店はしまっていて横合いの地面が荒れている。見ると裏木戸が壊れている。佐助は意識を集中させて気配を探った。なにもない。と、いうことは……。
みそのも、みそののおとんも死んでいた。
「やはり忍者だったか」
なにかがグラリとした。「地震か」確かめるまもなく家が崩壊してきた。

捉えられた佐助は拷問にあっていた。敵の長はあの背の高い忍者だった。
「首はどこだ?」
「俺は誰だ?」
「は?」
「教えたら教えてやる」
「謎かけか?」
「本気だ」
この際、佐助は全部、本当のことを言ってしまった。自分たちは誰に仕えていて誰が味方で誰が敵なのか?教えたら首をやると。
忍者たちは面食らった。「本当だろうか?」「騙すつもりでは?」「魂胆は?」「逆に上手く騙す手はないか?」
結局、何もいわないでひっぱたく事になった。佐助は死ぬほど打たれたが喋らなかった。残念だが、自分はここで死んでしまうんだなぁと覚悟した。今夜も星が数多、瞬いていた。

背の高い忍者は少し嫌になってきていた。自分の部下は低脳ばかりで虐めをもてあそんで満足している。今回の命令もつまらない任務だった。彼は父親から任務の意味についても知らされていたのだ。
「殿の命令はいつも下らない。俺もいつか本多さまや井伊さまの命令で動きたい」
それに自分の名前さえも白状しない、この技の切れる小さな若い忍者は殺すには惜しい気がした。
「!」
不意に来た。
「明智だな!」
背の高い忍者は手裏剣を投げ返した。忍者隊対忍者隊の激しい戦闘が始まった。新手の忍者隊を仕切っているのはクノイチのようだった。数が多かった。背の高い忍者は一通り戦ったがどうしても戦闘意欲が上がらなかった。
「引け」

クノイチは、みそのだった。
「あれは影武者。双子の妹。」
情勢がある程度、固まってきたのか、みそのは自分の知っていることを佐助に教えてくれた。
「私は明智の忍者。あなたは信長殿直属の忍者よ。さっきのは徳川」
「首の人は?」
「知らないわ」
「首の人を襲ったのは?」
「それも知らない」
「知りたい」
「知ってどうするの?」
「全部知らなきゃ生きのびていける気がしないんだ」
「首と交換ってことでいい?」
「もちろん」


光秀は馬上、京へ向かっていた。これより、吉田兼見に会見し、旧足利幕府陣営や朝廷を味方につける算段を整えるために。そこへ「……」何者かが何事かを告げた。光秀の喉から安堵の息が漏れた。一通り話を聞き終えると
「連れてまいれ」
光秀は思い出していた。
−あの日―

本能寺の変の謎 その六
何故、信長は光秀を折檻したのか?
武田氏戦の祝勝会で光秀が「これで、私が骨を折った甲斐がありました」と言ったのを信長が聞きとめて逆上し「おんどれが何時、骨を折ったっちゅうんじゃーっ!!」とヘッドロックして柱の角に頭を叩きつけた。と言うのは、あまり信憑性の高い資料に基づく話ではない。また、領地を没収したという話も然りである。が、この物語の中ではあえて“そういうことがあった”という設定にした。
だとすると、非常に疑問である。光秀の功績は織田家臣随一と言っても良いくらいで、その光秀を折檻したり苛めたりしたら他の家臣にどういう心理的影響を与えるか?それこそ光秀でなくても謀反を起こすトリガーとなってしまう。光秀の居城、坂本城は安土城から一番近い城である。他の兵はそれぞれの武将に率いられて遠くへ行っており、信長の近辺においてまとまった兵を扱っていたのは光秀だけだった。つまり光秀は信長にとってコントロールするのに最も神経を払わなければならなかった部下なのである。何故、わざわざ墓穴を掘るような行動をとったのか?


馬を寄せてきたのは少年だった。
「忍者なら、唇は読めるな」
「はい」
少年の知りたい事に全て答えるという条件でお首を頂くという取引になった。
少年は粗野な顔立ちではあったが言葉はハキハキと明るく、目は輝いていた。光秀は何故か少年の目を見ていると「生き延びたい」という欲望が頭をもたげてくるのを覚えた。彼は目を閉じ、念仏を唱えるが如く、声にならない言葉で語り始めた。

本能寺の変の謎 その七
そもそも何故、変を起こしたのか?
どんな説にせよ光秀に勝算がなければ成立は難しい。勝算があったのか?ないことはないのだが非常に希薄だった。賭けと言うか見切り発車と言うか。事実、味方につくと踏んでいた武将が軒並み二の足を踏み、ついてこなかった。十分に読めたと言うより当然の結果となっている。どうしてこのようにビジョンの欠如した行動に走ったのか?


<作者より>
さて、やっとここまできました。文章の書けない私にとってはいとも長い道のりでした(笑)。
ところで、ここは本と言う無機質な物体の中ではなく、ネットと言う生きた世界の中であります。ネットには本にはない面白さがあります。そこで私はプレゼンしたいのです。ネットの特色を生かして私と楽しいプレイをしてみませんか?つまり、久々に、あの言葉を言ってみたいのであります。


「私は読者に挑戦する。
私がここまで描いたストーリーは読者を本能寺の世界へ誘うためのものである。信長オタクの方もそうでない方も一通りの復習ができたり予備知識が入ったりしたであろう。思い出せない部分は今すぐググって調べれば良い。時間は十分に有る。なにしろあなたは何時までにといった制約を受けていないのだから。

私がここまで紡いできた物語を元に、掲げた本能寺の七つの謎を解いてみよ。
変、以降四百年余。今までに存在しなかった新しい角度から、変の実態を伺い見ることが出来るだろう。
このストーリーは、やや誘導尋問的になってしまったのが難点ではあるがそれ故に、もしもこの七つの謎が解けなかったらあなたの完敗である。もちろん解けた場合は私がそれを認める。」

と、いうことで答えは来週発表します。
と、いいたいところですがサイトのルールがありますのでそうもいかないでしょう。皆さんはここで一度、読むのを止め、答えを考えてレス欄にレスしていただき、しかる後に最後まで読んで全体の感想を述べられたら、通常と一風変わったネットライフを味わっていただけることになるでしょう(笑)。


×    ×    ×    ×     ×     ×


佐助は光秀の唇を読んだ。どういう心境がそうさせたのか佐助には分からなかったが、驚いた事に彼は敬語を使って話していた。いや、語っていた。光秀は美しい顔立ちをしており佐助には嵐よりも年上には見えなかった。そして彼は……いや、その人は……女だった。

「……信長様が自分を苛めたり、急に家康をかわいがったりするのは心変わりめされたのだと思いました。
……殿と私はあんなに強い絆で結ばれていたのに。
……柱に頭をぶつけられて足蹴にされて領地も没収され、尚も私が毛虫のように嫌っていた家康の接待まで……

……でも、謀反と言う言葉が頭をよぎった瞬間、私は信長様の本心をはっきりと読み取ったのです。」

本能寺の変の謎 八
山崎の合戦で光秀は本気で戦ったのか?
天王山のふもとには大きな門が二つあった。麓の村の防御のための門である。つまり、天王山から麓に攻め込むにはこの門しか道がなかったことを意味している。山から門への道は狭く、大軍が一気に攻め降りることは不可能。麓側のほうに陣を敷いている側が圧倒的に有利だった。フロイスの“日本史”によると「明智軍が麓側から門を叩いたので山側の軍が耐え切れず、門を開いて攻め降りた。」とある。明智川の誘導に秀吉側が乗ってしまった瞬間であり、普通なら勝負あったといったところだ。ところがこの戦いで秀吉側が勝利してしまっている。秀吉側が明智側の倍の三万のだったとしたら、いつ、どのように麓に集結したのであろうか?“日本史”には書かれていない。光秀側は一万六千だったという。八千くらい降りてきた時点で攻め込めば楽に勝てる。それを四回繰り返せば良い。(実際には二回目あたりで山側が諦める。)それが最も勝機の見える戦いであることは古戦法では常識である。なのに光秀はそうしなかった。秀吉軍が隘路を通ってだらだらと降り集まってくるのを明智光秀ともあろう武将がボケッとして待ってしまったのだろうか?或いは只うろたえて眺めていたのであろうか?不思議としか言いようがない。


「……敵を騙す前に味方を騙せ。
ある奇妙な質問をされたのを思い出したのです。
“あの海を見よ。水平線までの半分のところはどの辺りか?”
同じ質問を徳川殿の本多と井伊にもしていたと森が言っていました。彼等も私と同じ答えをしたといいます。
“それは、あの水平線の辺りでございます。”
この質問は人の知恵を測るのに恰好だったのです。殿は人材を欲していたのです。有能なものを掘り出したかったのです。誰も答えられなかったので難しすぎたかと訝って、私や本多で試したのです。京に残っているものは誰も答えられませんでした。殿は失望されました。ただ、その代わり、家康の配下に有能な者が非常に多くいることをお知りになったのです。
……今後、天下布武に向かって戦線が延びます。どうしても有能な部下がたくさん欲しかったのです。しかし、家康やその武将を使うと見返りに領地をたくさん与えなければなりません。そうすると、それはそれで一つの脅威となってしまします。かといって家康を殺すなどすれば……武将たちは信長様のために知恵を絞ることがなくなるばかりか何時、裏切るか分からない危険な相手と化してしまします。
……そこで考え出されたのが私をおとりにしたこの罠です」


大浜城の天守から、徳川の軍勢が見えた。
ようやく家康もホッとした。それまでの鬱憤を晴らすかのように服部の頭を殴る腕に力がこもった。正成は屈辱に耐えるというより子どものわがままに振り回されていると思って我慢した。家康の手には草鞋が握られていた。
「ノブ公の首を逃すんじゃない!さっさと持ってくるように言え!でないと息子にこの草鞋を食わせるぞ」
本多や井伊が気の毒そうに服部を見ていた。


「家康様接待と堺への誘いは“お前をいつでも殺せるぞ”という信長様の脅しです。伊賀を超えさせたのは圧力だったのです。
……苛められている光秀には謀反の気持ちが生じているのでははないか……?
……殿は私を信じておられたからこそ私を騙したのです。家康から謀反の誘いがあれば必ず私が殿へ報告すると信じて。そのために敢えて無防備で本能寺に泊まられたのです。
……しかし、殿はご自分の知恵に溺れてしまわれた。
……罠であるからには万一を考えて本能寺から脱出しておかなければならない。」
佐助の脳裏にあの夜の光景が稲妻に照らし出されたようによみがえった。
「……家康側はこの罠には絶対に気がつかないだろう。と、殿は考えられた。……しかし……」
(そうだったのか)
佐助にもやっと全体像が見えた。ちなみに秀吉はこの罠の件を信長から知らされており、家康と構える結果になった場合を考慮していつでも高松から返ってこられるように全てが手配されていた。
「……自分の策に溺れて忍者に斬られてしまうなど……天下を目指した信長様にはあまりに惨め。
……本能寺のことは殿の死の名誉を高めるための私の捏造だったのです。
……自分で言うのもなんですが、私こそ、織田家一番の武将。私の謀反に倒れたとあれば後世にも……
家康がこう動けば光秀がこう……と。家康が動いてくれればと殿が期待なさったことを私がしたのです。
……信忠様はお助けしたかったのですが潔の良すぎる方で……」

自分たちは本当に信長公直属の忍者集団だった。主人を失ったにも係らず、佐助の気持ちは弾んだ。馬をけって早くあの釣り道具屋へ。途中、待ち構えていた者達が有った。戦闘が始まると、直ぐに別な集団が現れた。
「とりあえず、味方するわね!」
新手は光秀の忍者隊だった。激しい戦闘が始まった。佐助はその場をみんなにまかせ、一人駆け抜けた。

釣り道具屋の井戸では、背の高い忍者が待っていた。足で塩漬けの首の入った箱を踏んでいた。
「いくぞ!」
佐助は襲い掛かった。背の高い忍者と激しい戦いになった。佐助の得意の三枚歯手裏剣は通用しなかった。百発百中だった投げ小刀も全てかわされた。その代わり、佐助のほうも敵の手裏剣には当たらなかった。走っても斬りあっても投げても跳んでも二人は互角だった。しまいに背の高い忍者が言った。
「そんなにその首が欲しいのか?」
「欲しいやい。ちゃんと供養してもらうんだい!」
「そうか、じゃ、いいだろう。呉れてやろう。いつかとるお前の首と引き換えにな」
「なんだと?」
「はっきり言って今は互角だがいつか俺のほうが強くなる。そしたらお前の首をアッサリ斬ってやるからな」
「それはこっちの台詞だ、お前なんかそれ以上強くなるもんか」
相手は覆面を取った。それはあの服部正成と同じ顔だった。佐助は正成の顔を知らなかったが相手の若さを見て驚いた。自分と同じくらいの少年だったとは。
「忍者にはありえんことだがな、お互い名を名乗ろうじゃないか。お前も俺も、どこかでくたばるかもしれない。楽しみがなくなったときにそれと分かるようにな」
「よし、お前は誰だ?」
「俺は徳川の忍者。三代目、服部半蔵だ!お前は?」
「俺は……」
“佐助だ”といいそうになってすんでのところで飲み込んだ。相手が服部半蔵という格好の良い名前なのに自分は只の佐助では。服部半蔵。服部のハと半蔵のハってのが音があってて決まっている。自分は佐助だから、“さ”。だ。さ……さ、さささ……!
「俺の名は猿飛佐助だい!!」
でまかせに叫んだ。それを聞くと半蔵は噴出した。
「お前みたいな田舎忍者に字なんかあるはずがない」
佐助は悔しくて睨み付けた。
「はははっ……だが、いいだろう。覚えておこう。猿飛!いつか決着をつけるぞ!!」
半蔵は煙と共に消えた。


天王山の麓。こじ開けられた山門から秀吉の軍がそろそろと麓に集まりだしていた。
「姉者、天下が取れますぞ」
養子の秀満が言った。
「私が勝ったら本当の謀反人になってしまう殿に殉じたい」
「ならば、なぜ、ここまで戦ってこられたのです?」
「一度、秀吉と勝負がしてみたかった」
「ならば」
「もう、勝負はついている」
秀満は暫し黙した。
「兵が犬死でございます」
今度は光秀は暫し黙った。
「では、この鎧、そちに授けよう。秀吉の兵がこちらの兵と同じ数になるまで待たれよ。それよりは、お主が光秀となり、存分にやってみるが良い」


山間の里を行く、奇妙な女の姿があった。侍でもなく百姓でもなく。
「お嬢さん、どこへ行くんだい?」
声がした。
「出家しに参ります……なんだ、お主か」
佐助は光秀と並んだ。
「これからどうするのだ?」
「俺、徳川の敵につきたいんだ」
「ほう、私も家康は嫌いだ」
「誰がいい?」
「そうよな……秀吉、では当たり前すぎて面白くないか……真田なんてのはどうだ?真田昌幸様は野心満々。ご息子どのも極めて聡明と聞く。特に次男殿が。面白いぞ」
「うん、じゃ、それにする!」

行く手に宵の明星が見えていた。
(自分の星も案外、でっかいかもしれないぞ)
と、佐助は思った。若者らしく胸が弾んだ。





おわり



鮎鹿ほたる
http://www.geocities.jp/fxrxq965/index.htm
2011年03月07日(月) 16時00分42秒 公開
■この作品の著作権は鮎鹿ほたるさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
ワードからコピーしますと、何故か一文字下げが詰まってしまいます。大変申し訳ございませんが、これでお願いします。

この作品の感想をお寄せください。
No.11  鮎鹿ほたる  評価:0点  ■2011-03-20 12:16  ID:O7X3g8TBQcs
PASS 編集 削除
いやぁ、いい意見をありがとうございます。
どうも、ドリーミーな話なので、最初、武将を全部、女のコにしてファンタジーにしてしまおうかなとも思ったのです。私は戦国のことを詳しく知れべてなどいたら疲れて書く気がなくなってしまうタチなのでそうしたほうが良いように改めて思いました。今作の資料は、学研の歴史群像シリーズの
俊英 明智光秀 と 「本能寺の変」時代が一変した戦国最大の事変
を読んだだけであります。あと、適当にググりました。それプラス今まで読んできた何冊かのやはり歴史群像シリーズの知識で書きました。
クライマックスで「あ、そう? で?」
・・・こういうブッチャけた感想をいただけて投稿した甲斐がありました。私の投稿作にはとにかくブッチャけた意見が何よりサンクスです。
書いたハナはどうしても自己マインドコントロールにかかってしまっていますのでブッチャけボロカス書いていただけるとそれが解けて客観的に読める時期が早まります。このストーリーはもうちょっと置いておいてしかる後に書き直して又、投稿したいと思います。また、見ていただければ幸いです。
ドグラマグラ・・・よく聞くタイトルですね。まだ読んでないので必ず読みます。司馬遼太郎・・・スイマセン司馬作品にはどうしても入っていけないのです。
No.10  永本  評価:0点  ■2011-03-20 00:37  ID:p5LYep6bafE
PASS 編集 削除
一番の欠点として話がコロコロコロコロ転がりすぎて悪い意味でのジェットコースター的な物語になっています。途中でばばんと蘊蓄を放り込むのは良いのですがそういったものはなるべく話の中に自然と入れるのがいいですよ。いきなりあれを見せられてもちょっときょとんとしてしまうので。
そしてクライマックスについてもそのコロコロと転がりすぎるのと伏線を上手に張れていないのとで「あ、そう? で?」という風になってしまいます。
そしてやはり一番の欠点は「雑学・蘊蓄」が全然盛り込まれておらず日本史の物語を読んでいるのにまるで「妄想少女のお花畑ストーリー」を読んでいるかのような気分になってしまいました。
そもそも忍者って派手な戦闘というか戦闘自体滅多にしないんですね。何故なら彼・彼女らは情報工作をメインに活動していたスパイだったから。(もちろん暗殺などの任務も行いましたが、侍のように戦場でえいやーと戦うことはありません)忍者の持ち物には理由があってそれらは「戦闘用」ではなく「緊急回避用」でだったんです。戦闘を極力避けるためのものだからぽいぽいと投げるようなものではないんですね。
だから最初に戦うところをみたときに「ああこの作品は崩れているな」と直感でわかりました。むしろライトノベルだったらこれくらいはっちゃけてもいいと思うんですが、作品を読む限りどうにも歴史小説としての色が濃いのでこのようなことをされると萎えてしまう。「資料を調べつくしていない」「想像で物を書きすぎている」これこそが骨が出来ていない最大の原因だと思います。
私事ですが初めて2時間物の脚本を書きプロの方に見せたところ「お前の貧相な想像で物を書くんじゃねえ」と言われてしまいました^^;
ただこの骨作りをきちんとすればきっと面白い物が書けると思います。

面白いSF・ファンタジーというと、ファンタジーなのかどうかは分かりませんが僕がお勧めするのは夢野久作の『ドグラマグラ』です。あれほどまでに人の精神に効いてくる猛毒のような小説は他にないと思います。歴史物でいうとありきたりですが司馬遼太郎ではないでしょうか。歴史物をあまり読まないので(三国志すら読んだことがないです…)これくらいしか名前を挙げられないのですが、司馬さんの作品は最高のお手本になると思いますよ。
頑張ってください!
No.9  鮎鹿ほたる  評価:0点  ■2011-03-19 22:46  ID:O7X3g8TBQcs
PASS 編集 削除
こんにちは。感想ありがとうございます。
構成の文法が滅茶苦茶だからなのか、それとも歴史物におけるタブー「雑学無視」をしているからなのか、はたまたこの作品そのものの骨格が脆いのかはわかりませんが・・・
そこんとこが分かるといいんだがなぁ・・・
どうも皆さんの感想を読んでいると
細部が書けてないので・・・細部が・・・細部が・・・細・・・
正直、恐縮なのですが細部もいいですが骨格の批評が一番頂きたいのです。スイマセン。調理や味付けよりも先にネタの良し悪しを言っていただけるとよりありがたいです。

よく出来た歴史物・ファンタジー・SF。読みたいです!是非、ご紹介ください。
No.8  永本  評価:10点  ■2011-03-19 21:52  ID:p5LYep6bafE
PASS 編集 削除
この作品は歴史物+ライトノベルと解釈していいのでしょうか? もし歴史物だとしたらあまりにお粗末すぎるし、ライトノベルにしても何か子供のようなすっとんだ感もなくどちらにしろ中途半端というのが正直な感想です。
この作品を歴史物とするならば、鮎鹿さんが付け焼刃の知識で書いたのが露呈しています。天祐さんも書いていますが歴史物を書くときには資料と類似作品を徹底的に読みこみ蘊蓄をこれでもかってくらいに盛り込んでください。そうすることによってよりリアルになり作品の出来が飛躍的に上がります。「細部に神が宿る」と言ったのはかの黒沢明です。次回歴史物を書くときには「細部」にこだわってみてはどうでしょうか。必ず素晴らしい物語になるはずです。
いきなり辛口になってしまい申し訳ありません。
私はよく出来た歴史物、ファンタジー、SFを読むと子供のようにドキドキしたりワクワクしたりするのですが、この作品はそういったものがあまりありませんでした。構成の文法が滅茶苦茶だからなのか、それとも歴史物におけるタブー「雑学無視」をしているからなのか、はたまたこの作品そのものの骨格が脆いのかはわかりませんが、もっとワクワクさせてください。せっかく「本能寺の変の真実」なんて最高の題材を持ってきたのですから最高の調理と味付けをお願いします。ここまで書き上げることが出来たのですからきっと鮎鹿さんには何でもないことだと思います。
次回もし歴史物を書くならば「本能寺の変」などのメジャーなものではなく、マイナーなあまり人が注目しないようなことを書いてみてはどうでしょうか。それかこの作品では忍者が主人公ですね。なら忍者にこんな阿呆みたいに戦闘させるのではなく、本当の姿を書いてみてはどうでしょうか。地味な諜報員としての忍者、一介の工作員にしか過ぎない忍者、むしろそういう下っ端忍者が戦国の世においてどのような働きをしたのか、いかにして戦国という時代において情報戦を繰り広げたのかそういったことを書いたほうが私ははるかに面白くなると思います。
中途半端なのに偉そうなことを言って申し訳ありませんでした。
次回作に期待しています。
No.7  ( ̄ω|  評価:0点  ■2011-03-15 22:45  ID:qwuq6su/k/I
PASS 編集 削除
猿飛佐助でぐぐってみた所、信長暗殺に就いては全く触れられて居らず それ所か、架空の人物で何かアニメか漫画の長編を見ないと、彼がどういう人物か分からないやうでした。それで猿飛○○、本能寺 信長と入れてぐぐった所、猿飛○○と信長の関係を分かり易く書いてくれてるサイトは一つも無く、、、。結局、テニスの入門者みたいに向こうへ玉を飛ばし(無辺世界でなく)又向こうから来た玉を打ち返すにも、相当の訓練や努力が必要な様に 歴史物を楽しむにも それなりの素養や基礎史実の知識が要るのが 分かりました。自分は、頭も悪く向学心も無いので、大昔 遠藤氏が信長を暗殺した黒幕は、秀吉だという連載小説を今更、読んで検証する気力が無かったんで。この作品を読んだら、コンパクトに記されてるんじゃないかと・・・先刻 柴田勝家という名を見、思い出しました。知人の高校日本史の先生と話してた折りその名が出たんで「誰?それ」と応えますた。矢っ張り、阿呆には難し過ぎたやうです。
No.6  鮎鹿ほたる  評価:0点  ■2011-03-15 20:13  ID:O7X3g8TBQcs
PASS 編集 削除
それはもう、全く書けてないということでしょう(笑)。
ちなみに猿飛佐助は真田十勇士の一人で一番のヒーローです。
秀吉の死後、豊臣と徳川で決戦になっていく過程とクライマックスの大阪の陣で活躍する架空の人物です。
No.5  ( ̄ω|  評価:0点  ■2011-03-15 04:40  ID:qwuq6su/k/I
PASS 編集 削除
 何しろ猿飛佐助が、名前こそ知れ一体誰なのか?信長側か、秀吉側か?彼のボスが誰なんかも知りません。で、ネットで猿飛佐助をぐぐってみない事には、読もうにも読めないんす。多分、歴史なんか学校でも居眠りしてたし、さ程興味無いんだと思います。ネットで、猿飛が一体誰で、信長暗殺に関してどういう位置に居た人か、調べる程 興味もありません。
No.4  鮎鹿ほたる  評価:0点  ■2011-03-14 12:32  ID:O7X3g8TBQcs
PASS 編集 削除
うわ〜感想ありがとうございます。
この投稿で私が一番知りたいのは
佐助個人の心のドラマがイケてるのかイケて無いのかという点です。
どなたか言っていただけると嬉しいです。
なんなら点数だけで教えて頂いてもOKです。
よろしくお願いいたします。
No.3  ( ̄ω|  評価:30点  ■2011-03-14 00:07  ID:qwuq6su/k/I
PASS 編集 削除
何か、信長を討ったのは、秀吉らしいと言うのを何十年も前、週刊誌で連載していた歴史物に書かれていたらしく、遠藤周作著。親が云々してたのを憶えています。が、自分は学校でも、歴史とか特に怠け 暗記物で嫌だなあと言う手合いです。小学校の5、6年の担任が割と源平合戦?とか身を以て演じてくれたんで日本史もお陰で薄っすら憶えており・・・。この作品だと かなりその辺の歴史にある程度詳しくないと入りにくい所があります。猿飛び佐助も誰なのか知りません。名前は聞いた事あるんですが。信長の手下が秀吉位は知ってるんですが。明智光秀が、濡れ衣を着せられたらしい位も分かるんですが・・で、さういう馬鹿相手にも分かるやうに、前提というか、基礎的な史実をもう少し説明して戴ければ、かなり面白さうな歴史ものが書かれているやうなので・・・。
No.2  鮎鹿ほたる  評価:0点  ■2011-03-10 16:27  ID:O7X3g8TBQcs
PASS 編集 削除
こんにちは。感想をいただけて大変嬉しいです。
「嫌いな人は見向きもせず・・・
そ、そういえば私が読んだのは三国志と武蔵と剣客商売だけでした。全体的には歴史ものに見向きもしないタイプです。私は歴史モノが好きではなかったのだ!!ガーン。
ライトノベルを意識・・・
そうなのです。ライトノベルなのです。
棒手裏剣・・・始めて目にする言葉です。うう・・
なぜ、谷に帰ってこれる・・・
考えないといけなかったのですがどうしても自分に甘くなってしまい、そのまま投稿してしまった部分です。
嵐ひとりがいなくなっただけで・・・・
なぜ、嵐一人しか情報を持っていなかったのかとか、なぜ嵐が死んだ後の指示がなかったか?はストーリー上の謎仕立てにしないといけない部分だったのですが自分に甘くなってしまっていてそのまま投稿してしまいました。
会話の単語について・・・私にはハードルが高いです。が、今後、努力していきます。

色々、書いていただき大変参考になりました。
どうもありとうございます。
この作品はライトノベル的観点からも感想が欲しく思っています。そしたら、また、書き直して投稿したいと思いますのでそのときは、また是非おねがいします。
No.1  天祐  評価:20点  ■2011-03-10 02:06  ID:ArCJcwqQYRQ
PASS 編集 削除
拝読しました。
こちらに歴史物を投稿される方には必ずお伝えしているのですが、歴史物とは

「嫌いな人は見向きもせず、好きな人は目を皿のようにして読む」

ものだそうです。
これは私が以前、ある方にいただいた感想の中にあった言葉です。私もその通りだろうと思います。
読者を選ぶ歴史物というジャンルでなおかつテーマが本能寺。すごくハードルが高いですね。果敢に挑戦された姿勢は素晴らしいと思います。

全体の感想としては歴史物としては軽薄ですね。
ライトノベルを意識されているのでしょうか、軽いノリが随所に見られます。戦国時代にしては全体のイメージが軽すぎていますね。
会話が軽妙なのはいいと思います。それとは別に忍者が存在する背景や人物の描写、為人や服装、武具、鎧などの時代考証等が絶対的に薄いと感じます。

 忍者も農業をしています。平時は畑を耕し、有事に際して召集されるものです。ですから服装は農作業用の野良着です。それは逃走の際にすぐに農民に身をやつせるという実用性も備えています。
「小刀」とありますが、「小刀」とは通常「脇差」を指します。投げて使うのであれば「棒手裏剣」、もしくは「苦無」のイメージでしょうか。ただし、「苦無」は投げ捨てる武器としては高価なため、通常はナイフやスコップの代わりに使用します。
 歴史物が好きな読者は小さなことも気にかかってしまい、物語に感情移入できなくなってしまうものです。逆にそこがしっかりしているだけでも読み応えのある作品になります。
 
 話の流れも唐突な感があります。
 目隠しをされて連れて行かれたのに、谷に帰ってこれるのでしょうか?
 嵐ひとりがいなくなっただけで村全体が動揺していますが、それでは戦国の乱世は生き残ってこれないでしょう。いくさに赴く際には綿密に情報を共有し、自分がいなくなったら誰が後を仕切るのか、女子供はどうするのか、もし男が死んだ場合、旦那を失った女の再婚相手まで決めていくという描写がされることもあります。この村の描写では戦国を生き抜いてきた忍びの里としてはいささかお粗末ではないでしょうか。

 会話の単語について。
 「バカ」といっている場面がありますが、このばあい、「たわけ」や「痴れ」「ぬかせ」などのほうがしっくりくるのではないしょうか。
 また「情報」という単語ですが、これが日本で初めて使われたのは1876年のことだそうです。つまりこの作品の時代には存在していない単語です。
 「訓練」や「直属」、「忍者」など他にも会話の雰囲気を乱す単語が散見されました。

 と、いろいろと難癖をつけてしまいましたが、歴史物を読むまた、書く人間としてはTCで歴史物が読めることを大変うれしく思っています。できればその質をどんどん高めてもらってそのジャンルの読み手、書き手が増えてくれればというエールを込めての辛口感想です。
 歴史物を書くときに一番重要なことは私は「雰囲気づくり」だと思います。そのためにはかなりのことを調べなければいけません。時代考証(服装、慣習、言葉遣い、礼儀作法、立ち振る舞い等)はもとより、気象条件や星の位置などまで必要な場合があります。結局は推測するしかないのですが、より史実に近い形での描き方が必要不可欠だと思います。その制約がある中でいかに面白く読ませるかというのが書き手の醍醐味ではないでしょうか。

 謎解き以前の次元での感想となってしまいました。これだけの分量を書き上げた努力に敬意を表しての点数です。
 今後も挑戦を続けてください。楽しみにしております。偉そうに感想でした。
総レス数 11  合計 60

お名前(必須)
E-Mail(任意)
メッセージ
評価(必須)       削除用パス    Cookie 



<<戻る
感想管理PASSWORD
作品編集PASSWORD   編集 削除