母の子と私の子

わたしたちの周りには神さまがいる、私たちの血族しかみえないようで、それは信仰の対象でありましたが私の母には違ったように見えていたようでした。
      ◆
 母は人の子ではありません、まるでバケモノの子のようでした。
わたしが10歳の時、15歳でわたしを産んだ母は25になっても背が低く15歳で成長が止まっているが如く童顔で、若いではなく幼いという言葉が当てはまるようでした。白く透き通る肌で生きているような暖かさは無くセミロングの髪は子どもながらに欲情するほど綺麗でした。
わたしたちの家系は皆正気の沙汰ではない考えをしている訳のわからないことしか言わぬ。あいつらはキ○ガイだと近所では評判の家系でありましたが無論わたくしたちは自分で自分の事をキ○ガイなどとは思っておりませんでしたので10歳の頃には自身はそれではないという考えを持っておりました、わたしたちに見える神さまは狂気の沙汰ではなく正気の沙汰なのです、わたくしが見る神さまは酷く人間に似ており所かまわず欲情する獣のような所など母親そっくりでありました。だけどもその母が生まれた時にくれたお守りは、今でもわたしの宝物なのであります。
 そんな人の子のようでない母から生まれたわたしであります、生まれながらに奇形でありました。
産まれた時の性別がわからなかったのです、女性器と男性器の両方がついており困惑した母から男と女と書かれたくじ引きで性別をきめられました、引いたくじには女と書かれておりそれからわたしは女として育てられたのです。幸い体と心は女性の物だったようで胸は膨らみ初潮も迎えました。そのころからでございます、母が人が変わったように書物を詠みあさり始めたのは。
       ◆
子どもが生まれる何年も前、古くからの家系だろう、幼いころからたくさんの人間じゃない人間にそっくりな神さまを見てきた。
祖母に聞いた時、気がふれそうになった。初めて神さまを見た時に女性の形をしたそれに初めてを奪われてから成長がとまった、どうやら神さまだとかはよほどの色情狂らしい。それを大事にしようとする親族の気がしれない。そのおかげで私達の家系はみなキ○ガイ扱いなのだたまったものではない。
それから私は頭の螺子が飛んでしまったかのように吹っ切れた。色情狂の神さまたちの相手を毎日の用に引きうけた。私はよほどのマゾヒストなのであろう嫌悪を感じながらも毎晩自分は色情狂のやつらの相手をして慰み者になっている現実に少なからずはまっているのだった。

 紫陽花が咲く頃にある男が毎日私のもとにやって来るようになった、来る日も来る日も一言だけを私に告げて行く。
最初はその辺の神さましかり、私の体のみを求めているとしか考えていなかった。
「ぼくとお付き合いをしてください」
しかし一向に体を求めることをしてこなかった。
男の年齢は私よりも年下であろう、見た目よりもうんと年の高い私の見た目よりも若いまるで異邦人のような男だった。
不思議なことで、毎日のように言い寄られると興味がわいてくる。
どうやら毎日のように見知らぬ神さまを相手をしているようことで嫌悪感というものは私の脳の中から欠如しているらしい。
次第に男と会話をするようになっていた。
「今日もあなたには見えない男と女であろう者の相手をしたわ」
ああそうだったこんな事を一族そろって言うのだから私たちはキ○ガイ扱いだったのだ、、また村八分まがいのことでもされるのだろう。この男も汚物を見る目で私を見るにきまっている。
「どんな男と女だったんだい?」
意外だった、あろうことかその行為の詳細を聞こうとしてくる、汚物どころか玩具を見つけた子供のようなまなざしだ。
その日は男と12時間会話をした。
 初めてその男と寝た、正確には襲ったのだが。
男はそれを抵抗もせず受け止め涙をながし、私に讃美の言葉を何度も何度も投げかけてくる。私はその時初めてこの男の中に居続けてやると考えたのだった。
それはあの紫陽花が咲く季節が3度巡ってきた頃、雨が降る中神社の境内の中だった。

次の紫陽花が咲く季節に男は血だらけで倒れて死んでいた。
      ◆
僕は機械のように働いていた。借家を借りて僕の他には男一人と女3人で麻の葉を栽培していた。
その日も麻の葉に水をやり売れた分量を量り購入者に売りさばく、それだけの作業だったが金は余るほどに僕たちの元に降ってきた。
 梅雨の季節に僕はある女と会う、童顔で小さく毎日濁った眼で空を見つめていた。
紫陽花の花が咲く季節ですね、と話しかけてみたが無視される。その時からなんとしてでもこの女を振り向かせてみたくなった。女の着ていた着物が肌蹴ていて胸元は大きくあいていたので最初は誘っている白痴の女かと思っていたがそうでも無いらしい。
次の日から毎日その場所にきまった時間にいる女に麻の葉入りの煙草を吸って会いに行った。
夢心地になり在らぬ妄想ばかりが膨らんでいく、まいにち夢心地で会う女はそれはそれは天女のようだった。言葉を話すのもやっとで
「ぼくとお付き合いしてください」
としか言葉は言えず、これ以上話すと自分が廃人のような事しか言えぬ、現に目の前に女がいるのに意識をそらすと麻の葉が見せる夢の中で女と僕は情事を繰り返している。
妄想が現実を食ってくれと何度この時が来るたびに思ったことか。
そんな事を13カ月続けて行った、14か月目に女は口を聞いてくれた。なんという会話だったかは覚えていないが僕の妄想の中ではとても文化的でお洒落な会話をしていた。
15か月目に彼女と寝た、その間も僕はぼくとお付き合いをしてくださいと言っていた。
それから次の梅雨の季節まで女と愛し合った、心地が良く麻の葉を育てるだけだった生活から毎日機械の様に女と寝ることを機械のように行ってきた。

 梅雨の季節が終わるころ部屋にもどると借家の中で一緒に麻の葉を育てていた男1人と女2人が額から血を流し倒れていた。
部屋の中に麻が散乱しておりそれを片付けようと窓の前を通りすぎた時に僕も額から血をながして倒れた。

さようなら愛した女、さようなら愛した女。
眼の前がかすむ前に、意識が飛んでしまう前に僕は麻の葉を吸い、自分を慰めると死んでしまった。






      ◆
私を愛していた男は額から血を流し、男は麻の葉が詰まったシガレットを握りしめ下半身を脱ぎ子種をまき散らした状態で死んでいた。
第一発見者は私で、死後硬直であろう硬くなったままのものを握りしめ満面の笑みを浮かべていた遺体を見ては少々好感度も落ちたがそれでもこの集落の住人や一族の人間よりは愛おしい存在だった。
ここで男が起き上がり嘘だよと言ってくれるのを2時間待った、だけどもピクリともしないで起き上がってくれない、途端に悲しみが襲ってきた。
もういないのだなと実感が湧いた、私にも人並みの感情が残っていたことには喜びを感じたもののもう人間と交わることがなくなるのだろうと思うと、もう神さまとしか交わることが無いのだろうと思うと、気が気でいられなかった。
家に戻りスプーンを持って男の家に戻る、男の眼にスプーンを付きたてくりぬく。同じ要領で私の右もくりぬく、抜いた目玉を私の差し込み針で縫うと男にも同じように差し込み、針縫う、祖母から裁縫を習っていてよかったと、この時初めて一族に感謝した。
しかしそれでも寂しいもので男の眼は私の眼として確かにいるのに、見える世界に男はいない。
悲しくて仕方がない、私は最後にもう一ついただくことにした。男の髪の毛をカミソリで綺麗に剃ってゆく全部剃り終わると、流行りのバターソテーにして食道のなかへと押し込んだ。

 バターソテーを食べた日から生理がこない。
毎日ひどく気分がわるい、つわりが始まる。
あの男の子を身ごもったのだ、毎日神さまと交わっていたので正確にはわからないのだがそう思うことでしか自分を保てなくなっていた。
一族の者たちは神さまの子を身ごもったのだと痴呆のように喜んでいる、きっと生まれてくる子は大切に育てられるのだろう、これで2回目の感謝だ。

 生まれてきた子は半陰陽で、私はすこし気を落としたがこれが男と作った子供だと思うと愛らしく思えた。
どちらの性別として育てるのかは悩んだが、麻の葉のシガレットを吸うとすぐに解決した。
私はその時だいぶキテいたらしく、くじ引きを即興で作りそれに男、女、非人と書き祖母に引かせて性別を決めた。
この子は私と同じように神さまの慰み者にしてたまるものか、この子には私の代わりにこの一族の呆れた思想からは外れていてほしかった。
しかしそんな願いなど叶うことなどなく、私からは引きはがされ私は一切の育児を放棄されまた色情狂の神さまたちの相手をさせられて過ごすしかなくなった。
 これは少しでもの抵抗、神社で一つお守りを買い中に私の思いを託してまだ赤子の我が子に託して、いつかは自分が自分ことをわかっていて私はまた慰み者としての生活に戻った。
     ◆
母がくれたお守りには小さく12になったら一人でこれを開けなさいと書いてあり、12になった晩に誰にもばれないようにそのお守りをあけた。
中には黒い髪の毛と一つの紙、紙にはこう書いてあった。
「私が読む本を読みなさい、あなたが眼でみる人達は半分が人間ではない。それに気付いたら本を読みなさい、私が読んでいる本を読みなさい。」
黒い髪の毛から漂うバターの香りを嗅ぎながら、私は母の元へと足を運んだ。
母は笑いながら本を貸してくれた、初めて見る母の笑顔はとても可愛らしく欲情しそうになる。本を開けると中にバターソテーの作り方のメモが挟んであった。これを作れと言うことらしい必要な材料は麻の葉、髪の毛、母の右目と私の左目、スプーンでわたしと母の目を取り出して麻の葉を売人から買い、お守りの中の髪の毛をバターでいためた、とてもおいしくて涙があふれるように出た。麻の葉の量がおおすぎて、煙が家に充満した。
食べ終わると母はスプーンで左目をくりぬくとわたしの右目にそれをはめてくれた。両目のなくなった母をみていると、なぜだか全てがわかったような気持ちになって、母を背負って家を出た。

私の家が麻の葉の煙で充満しているすきに私と母は家を出た。
これからはどこへでも行ける、私達は各地を転々とし泊まった先々で実家に向けて文章を書き切手を貼って送った・

それからしばらくして、私達は子を授かった。
男の子で名は茉莉、手の指が7本もある変わった子だったがわたしたちを慕ってくれた。
紫陽花の花が咲く季節にわたしたちは実家に戻った。
家全体が紫陽花の花に埋もれていて、ひいおばあちゃんの骨だけが玄関に置いてあった。
もう私達はそこから転々とする必要はなくなり、毎日をそこで過ごした。母は神さまはもういない、だれも不幸にならずにすむと喜んでいたが、わたしにははっきりと見えていた、人の形をした色情狂たちが骨を犯しに毎日のようにやってくるのを、だけども茉莉の7本の指を握るたびもう大丈夫と勇気づけられた。

命は短い、恋もした、乙女ではなくなったけれどもそれを失って手に入れた両目がない母と指の多い茉莉はとても楽しそうに笑っていた。
紫陽花の花が咲く季節だった、今日の夕食のバターソテーは髪も眼も麻もはいっていないけどあのときと同じ味がした。

これがあと100年続くよう、毎日茉莉の指に願う。母にそれを言うとわたしたちはまた交わった。
七曲
2010年12月29日(水) 21時24分53秒 公開
■この作品の著作権は七曲さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
残念と普通の間でカエルが宙返りしているような感じのできでありました

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No.1  弥田  評価:30点  ■2010-12-29 22:02  ID:ic3DEXrcaRw
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拝読させていただきました。

面白かった! です。上手くは言えないけれど、よかったです。勢いというか、なんというか、そういうものがあってよかったです。

背景は普通に白のほうがいいと思います。あと段落下げもちゃんとしたほうがいいと思います。なんだか読んでて悪酔いしてしまいました。それはそれですごいことだとは思うのですけれど、あまり気分がよいものではないので、直した方がいいと思います。あと、個人的にキチガイはキチガイでいいと思います。伏せ字にするとちょっとギャグっぽくなるのであまり好きではありません。

バターソテーのくだりが好きです。母がわたしに目をはめるシーンとか特に好きです。
次回作もぜひ読ませていただきたいと思います。では。
総レス数 1  合計 30

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