ひとりじゃない
手のひらに目をやるとうっすら汗が滲んでいた。

時折吹く風はまだ冷たさが残っていたが、以前のような肌を刺す冷たさはなかった。空気はどことなく春の匂いを帯び、草木の香りが心を落ち着かせる。陽の光にも強さが戻りつつあり、身体を動かしていれば少し汗ばみそうな陽気である。

「お待たせ」
玄関から出てきた彼女は真新しい制服に身をつつみ、手には大きなスポーツバッグを抱えている。
「それじゃあ行こうか」
「うん」
 僕は彼女からバッグを受け取り車に向かう。ふと隣を歩く彼女に声をかける。

「おまえ、また背伸びた?」

               * * *

家に着く頃には夕方の5時を過ぎていた。日が長くなってきたとはいえあたりはだいぶ薄暗くなっている。3月に入り気温はだいぶ暖かくなっていたが、夕方の冷え込みはまだ厳しい。上着の襟を立て両肩をすぼめる。
寒いのは苦手だ。
荷物を手に車から降りると足早に玄関へと向う。
扉の前に立ち呼び鈴を押そうと腕を伸ばしたがそこで手を止める。そして直接扉に手をかけ横にスライドさせた。ガラガラと小気味良い音を立てドアが開く。敷居をまたぎ玄関に足を踏み入れる。
「おじいちゃん、おばあちゃん、ただいま」
大きな声で家の中へ呼びかける。
玄関に腰をおろし靴を脱いでいると後ろの廊下から足音が聞こえてきた。立ち上がり後ろを振り返ると元気そうな祖母の姿があった。
「おお、光太郎。お疲れ様、元気だったかい?」
「うん大丈夫、この通り元気だよ」
僕の顔を見つめる祖母の顔は楽しそうに笑っていたが、1年ぶりに見るその顔は心なしかシワが増えているように感じた。
リビングにあがりソファで人心地ついていると祖母がお茶を出してくれた。
そのお茶をすすりながらテーブに置いてあったリモコンでテレビをつける。幾つかチャンネルを回すが目ぼしい番組が見当たらなかったのでそのまま電源を切った。
ふと時計が目に入る。いつの間にか時刻は6時を過ぎていた。
窓から外を覗くとあたりはすっかり暗くなり、空に星が輝いている。

「おじいちゃんたち見かけないけど、どうしたの?」
台所で夕食の準備をしている祖母に声をかけた。
包丁で大根を切っていた祖母が振り返り口を開こうとしたちょうどその時、玄関の方で扉が開く音がした。
「ただいま」
聞き慣れた声が聞こえ、ドタドタと足音が近づいてくる。
リビングの扉が開き顔を出したのは祖父だった。頭髪はだいぶ薄くなり白髪も目立つようになっていたが、相変わらず肌には張りがあり年齢よりもずっと若く見える。
「おかえり」
僕の声に一瞬びっくりしたような顔をしたが、すぐに僕だということに気づき笑顔になる。僕はそのまま視線を祖父の後方に移し同じように声をかけようとした。
ところが僕は声を発することができなかった。
まるで僕の時だけ奪われたように、その場に静止してしまった。



部活を終え着替えを済ませると足早に校門へ向かった。あたりはだいぶ薄暗くなり、空には星たちが瞬き始めている。時折吹く風が頬に突き刺さる。もう3月だというのにコートが手放せない。
寒いのはあまり得意ではない。
校門を出るとおじいちゃんの車が道路脇に止まっていた。車に近づき助手席の窓を叩くと、私に気づきドアを開けてくれる。
「ただいま」
声をかけ車に乗り込む。
「おかえり」
いつものように優しい笑顔を向けてくれるおじいちゃんであったが、その顔はいつもより嬉しそうに見えた。
家に帰る車の中、私はぼんやりと外の景色を眺めていた。
時々おじいちゃんが何かしら話しかけてくれていたようだが、その内容はほとんど頭に入ってこなかった。私の頭の中はほかのことでいっぱいだったのだ。
10分ほどで家に着く。
車から降りるとおじいちゃんの後ろについて家に入る。
玄関に見慣れないスニーカーが一足あるのが目に止まった。おばあちゃんが履くには大きすぎるし、おじいちゃんが履くにもデザインが若者向けすぎだ。私はすぐにその靴の落ち主の見当がついた。
少し鼓動が早くなる。
「ただいま」
そう言いながらおじいちゃんがリビングへと向かう。私もその後に続く。
前方で「おかえり」という聞き覚えのある声がした。
その声を最後に聞いたのは1年ほど前だったはずである。しかし、1年ぶりに聞いたというのにその声は以前と同じように、私の心へ染みわたってきた。
リビングに入ると、おじいちゃんの前に一人の男の人が立っているのが目に入る。
 私は思わず笑みがこぼれた。
 
 

 僕は祖父の後ろに立つ少女に僕は目を奪われていた。
 雪のように白い肌と大きな瞳が印象的な綺麗な少女である。背が高く、すらっと伸びた長い手足、胸はいやらしさを感じさせない程度に膨らみを帯びており、腰のラインは綺麗にくびれを描いている。
世間一般で言うところの「モデルのような体型」とは、まさにこのことを言うのではないかと思わせるような見事なプロポーションである。
 しかし、僕が彼女に見とれた理由はほかにある。
 僕はその少女に見覚えがあったのだ。
 ただし、僕の記憶にあるその少女は今僕の眼の前にいる彼女よりもずっと小柄で、メリハリのない子供っぽい体型をした少女であったはず。とてもではないが今眼の前にいる少女と同一人物とは思えなかった。
思えなかった、が、状況的にそう思う以外の選択肢はなかった。
 
 「おかえり、お兄」
 僕のことを「お兄」と呼ぶこの少女は、間違いなく僕の妹、陽子である――

陽子は僕より5歳年下で、現在は中学二年生である。性格は明るく誰とでもすぐに仲良くなることが出来る。責任感があり、学校ではよく学級委員に選ばれていた。頭もそれなりに良く、勉強はできる部類に入る。小さい頃から運動が好きで、小学生の時に始めたバスケットボールを今も続けている。
そんな彼女の唯一の欠点といえば背が低い事だった。そのことで男子にからかわれ、家に帰ってきて部屋で泣いている彼女を慰めたのは一度や二度ではない。学校では明るく人気者の彼女も、兄の僕からすれば意地っ張りで心配症で泣き虫のただの女の子であった。
ちなみに彼女の通う中学校はバスケットボール部が強いらしく、入学当初背の低かった彼女は入部を迷っていた事がある。見かねた僕が背中を押してようやく入部をしたのだ。
もともと運動神経が良かった彼女は入部してすぐに準レギュラーになれたのだが、やはり身長の低さがネックとなり控えにまわされることが多かったようだ。昨年秋にレギュラーに定着したというメールを受けたが、なるほど今になってその理由がわかった。

眼の前にいるのは妹で間違いないようだ。しかし、僕はこの期に及んでもまだその事実を受け入れることができていないらしく、そして何を思ったのか間の抜けた質問をする。
「陽子……だよな?」
「そうだよ、お兄」
 自分でも本当に間が抜けていると思う。それ以外の回答などあるわけがない。
彼女はいぶかしそうな目をして僕の顔を覗き込む。
気を取り直し再び彼女に話しかける。
「大きくなったな」
「へへ、驚いた?」
 彼女は得意げに胸を張る。
「そりゃあ驚くよ、昔と全然違うじゃないか」
「お兄がいなくなってから身長が20センチも伸びたんだ」
「そんなに?!」
 驚異的な数字である。
成長期の男子ならともかく、女子でその数字は素直に驚いてしまう。1年ぶりに会う妹の身長が20センチも背が伸びていたら戸惑うのも致し方ない。
「それに、髪型も替えたよ」
彼女は肩まで伸ばした髪の毛を細く長い指にクルクルと巻きつける。黒く艶のある彼女の髪の毛が、部屋の電気に照らされ輝きを放っていた。
そういえば僕の記憶にある彼女はいつもショートヘアだった。もしかすると、その髪型が昔の彼女をよけいに幼く見せていたのかもしれない。
「おまえ変わったな」
僕の問いかけに彼女は急に表情を固くし、こちらを睨むような目つきで見つめてくる。目には真剣な光が宿っている。
「どう変わった?」
 声のトーンが先ほどとは明らかに違う。彼女の真剣な態度に僕は一瞬たじろいでしまったが、素直に思ったことを伝えることにした。
「なんて言うか――大人になった。まるで別人みたいだ」
 僕の言葉に彼女はすぐには返事をしてくれなかった。目を伏せ、何かを考えているように見える。
だがすぐにまたこちらへ目を向ける。その目には怒りの色が表れていた。
「だってお兄がいなくなってからもう1年だよ。私だって成長くらいするよ。たまには顔見せに来てくれればいいのに全然来ないし……それにこっちが連絡したってろくに返事もくれなかったじゃん。ずっと心配していたんだからね……」
彼女は顔を真赤にしていた。
彼女の剣幕に押されなんとかその場を取り繕おうと言い訳を探したが、すぐにそれをやめた。よく見るとついさっきまで怒っていると思っていた彼女の目に、大粒の涙が浮いていたのだ。
赤く染まった頬を一筋の涙がつたうのが目にとまった。

「心配かけてごめん」
顔を赤く染め、目には涙をためた彼女を僕はそっと抱き寄せる。
俯いたまま肩を震わせている彼女は消え入りそうな声で「ばか、ばか」と呟いている。彼女の頭に手をやり優しく撫でてやる。
手に触れる彼女の髪の毛は、シルクのようになめらかで柔らかく、しっとりとした手触りがする。時折優しく懐かしい香りが漂ってくる。僕のよく知るその香りは彼女が小さい頃から使っているシャンプーのものだった。
大きく成長した彼女の頭の位置は、いつの間にか僕の肩の高さを超えるまでに達していた。一年前はまだ、僕の胸くらいの位置だったはずなのに。
彼女は確かに成長しているのだ。



おじいちゃんとおばあちゃん、兄、私の4人で食卓を囲んだ。
こうやって4人で食事をするのは久しぶりである。兄が大学進学のため家を出て行って以来なので、かれこれ1年ぶりだ。食卓にはおばあちゃんの手料理が並ぶ。いつもより品数が多い。きっとおばあちゃんも嬉しいのだろう。
口に出したことはないが、おばあちゃんも兄のことをかなり心配していたようだ。兄がいなくなってから、仏壇の前で手を合わせる時間が増えたのを私は知っている。
おじいちゃんはおじいちゃんでいつもよりお酒を飲むペースが早い。だいぶ酔いもまわっているのか、顔は赤く目がとろんとしている。
「お兄こっちにはどれくらいいるの?」
 デザートのイチゴに手を伸ばしていた兄に尋ねる。
 兄は手を止め一瞬考えるような顔をしたが、すぐにまた手を伸ばしイチゴを一つ掴むと、へたを取り一口で頬張った。
「そうだなあ、一週間くらいはいれると思うぞ」
 イチゴを口にいれたまましゃべる。
「じゃあさ、買い物連れてってよ」
「買い物?」
「うん。駅のそばに大きなショッピングモールができたんだ。」
「そういえばこっちに来る途中に見た気がする。なんか欲しいものでもあるのか?」
「色々とね。ほら、私背伸びたでしょ? 春物の服とか去年のもう着られなくなっちゃって」
そういって私は席を立ち、兄に見せつけるように両手を横に開いてみせる。
服の袖は手首よりもだいぶ肘よりにあり、裾はかろうじておへそを隠している程度である。しゃがめば背中が丸出しになりそうだ。一応胸のあたりもそれなりにきつくなっている。
兄はそんな私をちらっと見ると、納得したような表情で頷いた。
「仕方ないな、たくさんは無理だからな」
 兄の言葉を聞き私は少しホッとした。
「ありがとう」
兄に礼をいうと残り一つになっていたイチゴを奪いお風呂に向かった。
 
脱衣所に入り服を脱いでいると鏡に映る自分の姿が目に入った。目の前には一年前に比べ大きく成長した自分の姿がある。
――大人になった――
確かに兄のいったとおりだ。
1年でこんなに成長するなんて誰も思わなかっただろう。私自身こんなことになるとは思っていなかった。兄が驚くのも無理はない。
ただ、そういった時の兄の態度に、私は少し距離のようなものを感じた。
取り立てて気にするようなことではなく勘違いという可能性が高かったのだが、今の私はそのことが気にかかってしまっている。だから無理に理由を作ってでも兄と二人で出かけてみようと思ったのだ。兄の様子をうかがうために。
着ている服に目をやる。
ふと冷静になり、さすがにやり過ぎだったかなと思う。
小さくなったTシャツを脱ぎ脱衣カゴに入れる。
 鏡に映る自分と目が合った。火照っているのか少し頬が赤い気がする。



 翌日、昼前に僕は家を出た。家を出て10分ほど車を走らせると目的の建物が目に入る。
 陽子の通う中学校だ。
 今日はこれから彼女と買い物に行くことになっている。
 今朝彼女にいつ買い物に行くか聞いたところ、今日の午後が良いと言い出したのだ。僕は今日の午後に予定が入っていたので違う日に出来ないかと言ったが、彼女は「今日が良い、今日しか無理」と譲らなかった。
結局午後の予定を急遽午前に変更して行くことになり、彼女とは学校で合流することになった。彼女の強情な性格は相変わらずのようだ。ただ、強情を張る彼女の姿を見て僕は少し安心していた。
昨日1年ぶりに再会した彼女は僕の想像をはるかに超え成長していた。その姿に僕は思わず戸惑ってしまった。彼女はもう僕の知っている妹ではないのではないか、という心配までしてしまった。しかし今朝の彼女の姿を見るかぎりそれは僕の思い違いだったようだ。見た目は大きく成長したが、中身は昔とたいして変わってないのだなと感じたのだ。

 しばらくすると校門から何人かの女子生徒が出てきた。その中には陽子の姿もある。彼女はまわりの子と比べても頭半個分ほど飛び出しているのでよく目立つ。しかし目立つのは単に身長が高いからだけではなく、その見た目もすっかり垢抜けていて、まわりの子が子供っぽく見えてしまうほどだ。きっとまわりが標準的な中学二年生で、彼女が特別なのだろう。
「お待たせ」
友達と別れた彼女が疲れた顔をして車に乗り込んできた。
そして助手席に着くなり大きくため息をつきシートに寄りかかる。寄りかかった拍子にスカートの裾が少し上がり、白い太ももがあらわになる。
僕は視線を前方にやり、買っておいたペットボトル飲料に手を伸ばす。
「お疲れさん」
 声をかけ、ペットボトル飲料を渡す。
それを受け取りながら彼女は曖昧に頷く。
「大丈夫か? だいぶ疲れているみたいだけど」
「うん、平気。いつもこんな感じだから。うちの顧問練習ハードなんだ」
 シートに寄りかかりながらペットボトルの中身を一口飲むと、彼女は大きく息を吐いた。
「でも明日は試合だろ?」
「明日は練習試合だから関係ないんだ」
「ふーん、そんなもんか」
「そんなもんだよ」
そういう彼女の顔は赤かった。
練習の後だからだろう。
僕は車を発進させた。

駅前のショッピングセンターに向かう車中、彼女は眠っていた。
練習がだいぶハードなのだろう、気持ちよさそうに寝息を立てている。眠っている彼女の横顔はあどけない少女の顔をしていた。

ショッピングセンターに到着すると彼女を起こし、僕たちは建物へと入っていった。
話し合った結果ひとまず先に食事を済ませることになり、案内表示で場所を確認する。建物は5階建で様々な種類の店が入っている。僕が名前を聞いたことのある店も何箇所かあった。さらに最上階の5階にはどうやら映画館まであるようだ。
一階のフロアにフードコートがあることがわかり、僕たちはそこに向かうことにする。
フードコートに着くと春休みということもあり、平日の昼間だというのに沢山の人で賑わっていた。子連れの母親やカップル、学生といった層が中心だ。フードコート内には美味しそうな食べ物の匂いが漂っている。
人が多いので座れるかどうか不安だったが、運良く席を立つカップルがいたのでその空いた席に彼女と向かい合わせで座る。
彼女に何か食べたいものはあるかと聞くと、「かるくて食べやすいもの」と言われたのでうどんをチョイスした。テーブルにうどんを持って行くと彼女は感心したような表情で僕の顔を見てきた。
「そんなので足りるのか」
 彼女はうどんを半分以上残した。
「まあね」
「まあねって。練習後なんだし、ちゃんと食べないと体力回復しないぞ」
「さっき寝たから大丈夫!」
 妙に明るい笑顔で親指まで立ててアピールしている。
「ホントかよ」
「それよりさ、気になるお店があるんだけどそこ行っていい?」
「いいけど、あんまり高いのは無理だぞ」
「大丈夫大丈夫」
「他人事だなあ」

服を選ぶ陽子の姿は様になっていた。
店員も彼女を見つけると目の色を変えて近寄ってくる。スタイルの良い彼女に似合いそうな服を次から次へと持ってきては試着を勧める。彼女も断りきれず何度も試着を繰り返す。まるで着せ替え人形のようだ。
しばらくして彼女が疲れた顔で店から出てきた。足元かふらついている。
買ったのは春物のジャケットにスカートで、どれも彼女がはじめに自分で選んだものだった。
「結局これにしたのか。あの店員さんも色々勧めてくれたのにな」
「だってどれも趣味じゃないし……」
 彼女はげっそりとした様子で頭を垂れる。
「確かに。ちょっと地味すぎたな」
 店員の勧めていた服はどれも良いデザインなのだが、彼女の年齢からすると少しおとなしめで地味なものが多かった。ただ、それでも彼女が着れば様になっていたから流石といえる。
「あのお姉さんしつこいんだもん、疲れちゃったよ」
「まあ、おまえみたいにスタイルのいい奴が来たら、向こうが張り切ってしまう気持ちわからなくもないな」
「え?」
 彼女は驚いたような表情で顔を上げる。
「ん? どうかしたか?」
「いや、何でもない……」
 そういうと彼女は再び俯いた。
「あ、そうだ。俺も買いたい物あるんだけどちょっと付き合ってくれないか?」
「いいけど、何買うの?」
「何って、まあ雑貨だな」
「雑貨?」
「ああ、雑貨」
 先ほど案内板を見た時に見つけた雑貨屋へ向かう。
 それにしても元気が無い彼女の様子が気にかかる。

しばらく歩くと雑貨屋が目に入った。
店内には様々な商品が並んでいた。食器などの日用品からアクセサリーに至るまで多種多様な品物が所狭しと陳列されている。僕はアクセサリー等の小物類が陳列されている一角で目当ての物を探すことにした。
それを見つけるまでにそう時間はかからなかった。たくさん種類がある中からいくつか手にとってみる。その中で僕のイメージに沿うデザインのものがあったので、それに決めレジへ持って行き会計を済ませる。店を出る際に陽子に声をかけようとしたが彼女の姿は店の中にはなかった。
店を出て通路を見渡すが見つからない。
周辺の店を覗いてみるがその姿はなかった。もう一度周囲をよく見渡してみる。
すると通路の端にあるベンチに座る陽子の姿が目に入った。
ベンチに座り俯いている彼女に声をかける。
「こんなところにいたのか、探したぞ」
「…………」
 彼女は俯いたまま黙っている。
「陽子?」
 もう一度声をかけるが返事がない。
不審に思って顔を覗きこむとつらそうな彼女の顔がそこにあった。うっすら顔が赤い。
「どうした陽子?!」
「ごめん……ちょっと頭痛い……」
「頭痛いって……体調悪いのか?」
「少しね……」
「少しって、おまえ……」
 体調が良くないのは明らかだった。色白の彼女の顔は赤く紅潮しうつろな表情を浮かべている。声にも覇気がない。額には汗が滲んでいる。彼女のおでこに手を当ててみると素人でも容易にわかるほど熱をおびていた。
「おまえ熱あるじゃないか! すぐに帰るぞ!」
熱のせいか足元もおぼつかない彼女を僕はおぶって車まで運ぶことにした。耳元に感じる彼女の息遣いは荒く、僕の背中を通じて振動が伝わるほど心臓は激しく脈打っている。おぶられている最中、彼女はうわ言のように「ごめんね」とつぶやいていた。
無理しやがって、買い物なんていつでも連れて行ってやるのに。
体に感じる彼女の重さは、昔よりいくぶん重く感じた。



家に着くとすぐに2階の自室に連れて行かれた。
おばあちゃんに手伝ってもらい制服を着替える。熱のせいで大量の汗をかいており、下着がグチョグチョに濡れていた。ひとまずタオルで汗を拭い、新しい下着に履き替えパジャマを着る。
ベッドに横になるとまるで全身が鉛で覆われたかのように重く感じた。頭は時折締めつけられるような痛みに襲われ、そのたびに朦朧とした意識がはっきりとさせられる。心臓の鼓動が長距離走をしたあとのように激しく、呼吸が浅くせわしない。
扉が開く音がしたのでそちらを向こうとしたが、身体が言うことを聞いてくれない。顔を向けることはおろか、まぶたを開くことすらままならない有様だ。耳元で「大丈夫か?」という声が聞こえ、兄が入ってきたということがわかった。
私も返事をしようと口を開いたが、言葉が出ない。
「薬買ってきたけど飲めるか?」
 私は顎を引き兄の問いかけに答えるのがやっとだ。
「頭あげられるか?」
 私が小さく首を振ると、兄は「ちょっと我慢してくれ」と言い私の頭を少し持ち上げると薬を口に入れ水を流しこんでくれた。
薬を飲み終えた後もしばらく兄は私のそばにいて手を握ってくれていた。大きな兄の手が私の手を優しく包み込む。兄の手のぬくもりを感じていると今日の出来事が思い出された。
熱が出たのは残念だったが、無理を押してでも行って正解だったなと思う。
そういえば、兄は雑貨屋で一体何を買ったのだろう。

翌朝になると熱はすっかり下がったようで、全身を覆っていただるさと締めつけるような頭の痛みはだいぶ治まっていた。兄が飲ませてくれた薬が効いたみたいだ。しかしまだ全快というには早く、足元がおぼつかなく頭もすっきりとはしていない。さすがに部活に行くのは無理そうだった。
電話で顧問に休むことを伝えるとかなり心配していた。あとで家に顔を出そうかとまで言ってくれたが、さすがにそれは恥ずかしいので丁寧に断った。
電話を終えると空腹を感じた。よく考えると昨日のお昼にうどんを半分食べただけで、それ以外は何も口にしていなかったことに気づく。何かお腹に入れておいた方が良いと思いパジャマ姿のまま1階に向かう。
家には誰もいないようで室内はしんと静まり返っていた。階段を降りる私の足音がやけに大きく聞こえる。リビングに入り隣接するキッチンに向かうと鍋におかゆが炊かれていることに気がついた。祖母が私のために作っておいてくれたようだ。
おかゆを食べ終えると2階に戻り再びベッドに横になる。
明日までには体調を万全にしておかなくてはいけない。



家に帰る頃にはあたりはすっかり闇に包まれており、街路灯の明かりが周囲を優しく照らしている。
祖父とともにリビングに入ると陽子の姿があった。ソファで横になりテレビを見ている。顔色はだいぶ良くなっていて、昨日は焦点の定まらない様子だった目にも光が戻っていた。
僕達に気づくと「おかえり」と笑顔で声をかけてくれる。
僕はほっと胸を撫で下ろす。隣にいる祖父も安心したのだろう、目尻に深いシワを寄せ頷いている。
夕食を終え食卓で祖父と翌日の最後の打ち合わせをしていると、先ほどまでソファで雑誌を読んでいた陽子がやってきた。
「明日の打ち合わせ?」
 彼女は僕達が広げていた紙に視線を落としている。
「ああ、最後の確認が終わったところだよ」
「大変だね」
「まあ、大体はおじいちゃんがやってくれたしさ」
 そういうと僕は正面に座る祖父に視線を向ける。
「なあに、私は少し手助けをしたまで。明日は光太郎が頑張るんだぞ」
 祖父はかけていたメガネを外しテーブルの上に置く。
「うん、頑張るよ」
 僕の言葉を聞き「うん」と頷くと祖父は風呂に入るといって席を外した。
「ところで、体調はもういいのか?」
 祖父と入れ替わるように僕の正面の席に腰を下ろした陽子に声をかける。
「うん、薬が効いたみたい。ありがとうね、お兄」
「礼なんていいよ。それより体調悪いことなんで言わなかったんだ?」
「だって、言ったら買い物に連れて行ってくれなかったでしょ?」
 彼女は指先で髪の毛を弄びながら機嫌を伺うような上目遣いでこちらを見てくる。
「当たり前だ」
「ほら、だから言いたくなかったんだよ」
「だいたい、なんでそこまでして買い物に行きたかったんだ? おじいちゃんにいつでも連れて行ってもらえるだろ」
「だって……」
 左の頬を下にしてテーブルに顔を突っ伏しもの言いたげな目つきでこちらを見つめる彼女に、僕はさらなる疑問を口にする。
「しかもおまえ、あの小芝居はなんだ?」
「え?」
「え? じゃない。一昨日の晩飯の時に見せた服。あれ、小学生の時に着ていたやつだよな。」
 彼女は上体を起こすと椅子の上であぐらをかき、両手で自分の足首のあたりを持ちイタズラがバレた子供ようにはにかんだ表情で状態を左右に振る。
「バレてた?」
「当たり前だ」
「そんなあ、わかっていたなら言ってくれればいいのに。少しでも罪の意識を感じて損した」
 頬をふくらませながら頭を後ろにのけぞらせる彼女の様子は、まるで小さな子供のように感じた。
それにしても先ほどから表情がよく変わる。僕が帰ってきてから今日で3日になるが、ようやく以前のような表情豊かな妹になった気がする。昨日は熱があったから仕方なかったとして、一昨日はどうもぎこちない感じがした。まあ、お互い様ではあるが。
文句のありそうな彼女を制して僕はいう。
「あのなあ、普通に言えば済む話だろ」
「そうだけど……お兄忙しいじゃん? もしかしたら私にかまっている暇なんてないんじゃないかと思ったんだよ。それに……」
「それになんだよ?」
 彼女はもじもじとして俯き、何かを呟いたかと思うと急に立ち上がり大きな声を出した。
「だってお兄家を出て行ってからまったく顔見せてくれないし、連絡しても全然返事くれなかったじゃん! それでもしかして私のことなんて、もうどうでも良くなっちゃったのかなって。そう思ったら私怖くて、不安で、でもどうしようもなくって………………お兄に会ったら大丈夫だと思っていた。でもお兄に会っても完全には不安がなくならなくて。だからお兄と出かけて確認したかったの。お兄は私の知っているお兄なのかって。それで……」

 最後の方は消え入りそうな弱々しい声だった。
 さみしげな顔で僕をじっと見つめる彼女に、僕は返す言葉がない。
この1年、理由があったにせよ彼女をほったらかしにし、さみしい思いをさせたのはほかならぬこの僕なのだ。それはどんな言葉を紡いだところで許されることではないと思う。
ただ僕は今の彼女の言葉を聞き少し嬉しくなっていた。
「まったく、相変わらずだな」
「え?」
「いや、なんでもない。それより、俺がおまえのことをどうでもいいなんて思うわけがないだろ」
「でも……」
 彼女の表情はまだ暗い。
「そりゃこの1年顔も出さず、ろくに連絡もしなかったのは悪いと思っているし反省しているんだ。ごめん」
「うん……」
「でもな、俺はおまえに会うのをすごく楽しみにしていたんだ。家を出て行って1年、お前のことを考えなかった日なんて1日たりともなかった。元気でやっているだろうか、怪我などしてないだろうか、少しは成長しているだろうかって毎日おまえのことを考えていたよ」
「そうなの?」
 彼女は目に涙をためて僕を見つめる。僕はそんな彼女の目をじっと見つめ返し、ゆっくりと口を開いた。
「ああ、もちろんだ。俺はお前のことが一番大切なんだ」
僕は胸を張る。
彼女の目からは今にも涙がこぼれ落ちそうだ。大きくはなったが中身は昔と変わらず意地っ張りで心配性で泣き虫なままの僕の妹。
彼女を元気づけるように僕は続ける。
「だって俺はおまえのお兄ちゃんだからな」



 これで二度目だ。
 一度目は兄が帰ってきたその日。
 そして今夜、再び私の頬を涙がつたう――


 小さな頃から私は兄のことが大好きだった。
優しくて面倒見が良く勉強もスポーツもでき、その上背も高い。そんな兄が私の自慢だった。母が亡くなった時は仕事と家事で忙しい父の代わりに私の面倒をよく見てくれ、父が亡くなった時は私の手を引いて導いてくれた。兄の存在が私の励みであり、しるべであった。
そんな兄が家を出ていってからこの1年、私は一度もその顔を見ることがなかった。それどころか連絡すらまともにつかなかった。はじめのうちは新しい生活が始まって兄も忙しいのだと思い我慢をしていた。しかしいくら経っても兄は姿を見せず、連絡をしてもほとんど繋がらない。
そのうちに私は、兄が自分のことを嫌いになったのではと思い始めた。兄に助けられてばかりだった私に愛想を尽かしたのではないかと。もちろんそんなことあるはずがないと自分に言い聞かせたが、不安な気持ちは消えず、ことあるごとに私の胸を強く締めつけた。
 だからおばあちゃんから兄が帰ってくることを告げられた時、正直なところ私は不安だった。もちろん久しぶりに兄に会える喜びもあった。だがその一方で、1年ぶりに会う兄にどう接して良いのかわからなかったのだ。兄は私のことを見てどう思うだろうか。昔のように接してくれるのだろうか。避けたりはしないだろうか。そんなことばかり考えた。
兄の帰宅日が近づくにつれて、不安は募っていく。ドアを開けると、そこには私の知らない兄が立っているのではないか。そんな妄想が頭をよぎり、私の胸はキリキリと締めつけられた。

そしていよいよその日がやってきた。

家に帰る車の中で、私は不安な気持ちと戦っていた。
兄はどんなときも私のことを守ってくれたではないか。たった1年で優しかった兄が変わるはずがない。兄は変わらず昔の優しく頼りになる兄のままだ。
そう自分に言い聞かせる。
家に着き、玄関で見慣れぬスニーカーを目にした時、私の心臓は激しく脈打った。自然と手足に力が入る。普段は玄関からリビングまであっという間の距離なのに、その日は果てしなく長い道のりに感じた。一歩、また一歩と廊下を踏みしめるように進む。私の足がリビングの扉に差し掛かろうとしたその時だった。リビングから聞き覚えのある声がした。その声を聞いた途端、私の身体から力が抜けていった。その声には昔と変わらない暖かさが感じられたのだ。
リビングに入ると兄がいた。
1年ぶりに見るその顔は少し痩せたように見えたが、昔と変わらない優しい目をしている。短く切りそろえられた髪型からは凛々しさが伝わってきて、顔とは対照的に一回り大きくなった身体は頼もしく見える。
いくつか言葉を交わすと、私は気持ちが高ぶってしまい思わず涙を流してしまった。そんな私を兄は優しく抱きしめてくれた。
これで不安はなくなると思ったのだが、1年間溜まりに溜まった私の不安は一筋縄ではいかないようで、少しぎこちなく私に接する兄の姿が心に引っかかってしまった。
私は無理を言って買い物に連れて行ってもらうことにした。この際だから完全に不安を取り去ってしまいたかった。きっとたくさん言葉を交わせば、わだかまりなどすぐに消えてしまうだろうと思ったのだ。
そのために昔の服まで引っ張りだした。

買い物へ行く当日、私は朝から熱があった。
熱といっても微熱程度で、たいして気にすることもなく部活へ向かった。それに仮に部活を休むとなると、必然的に午後の買い物も中止せざるを得ない。それだけはどうしても避けたかった。わがままを言って兄に予定を空けてもらったということもあったが、どうしてもその日のうちに行っておきたかったのだ。私の中の不安を取り除くためにも。

練習を終え兄の待つ車へと向かうが、どうも体が重かった。無理して練習に参加したせいで体調を悪化させたらしい。兄に気づかれないよう平気を装うが頭も少し痛かった。
ショッピングセンターに向かう車の中で私は眠ってしまった。ただ、そのおかげか学校を出た時よりもいくぶん身体が軽くなった気がし、これなら何とかなりそうだと思えた。
 ところが買い物をしに入ったお店で思った以上に体力を削られてしまい、私はフラフラになっていた。
 その後は体調がどんどん悪化していき、買い物は中止になり本来の目的も果たせなかった。ただ、帰る際に私のことをおぶってくれた兄の背中は昔と変わらなかった。大きくて、暖かくって、頼り甲斐があって、そして何より安心できた。
懐かしいお兄ちゃんの背中がそこにはあった。

結局兄とゆっくり会話ができたのは土曜日の夕食後のことだ。
ひとまず前日のお礼を伝えると、無理をしていたことを怒られた。更に小芝居のことも指摘されてしまい適当に言い訳をしようと思ったが、そこで思いとどまり本音をぶつけることにした。
その時兄が返した言葉は、私の心に残った不安を綺麗に吹き飛ばしてくれた。
そして、まさか兄がそこまで想ってくれているとは思わず、兄の言葉を聞いて泣いてしまった。
兄の気持ちが嬉しかったということもあるが、少しでも兄を疑った自分が恥ずかしかったからでもある。


 思えば私が小学生の頃、背の低い事でからかわれ学校から帰ってきて部屋で泣いていると、母の代わりに励ましてくれ、中学で身長を気にしてバスケットボール部への入部に二の足を踏んでいた私に、大丈夫と背中を押してくれたのは兄だった。
そしてあの日、おじいちゃんおばあちゃんと暮らすことになった時、俺がついているからと手を握ってくれたのも兄だった。

気がつけばそばにいつも兄がいた。
兄はいつでも私の兄だった。
常に私の前を行き、私を導いてくれる。 



春らしい暖かな陽気のなか、父の三回忌は無事異終わった。
 今回は僕が施主を務めるということになっていたので、滞りなくすすめることができるか不安だったのだが、祖父が事前におおまかな準備を済ませておいてくれたおかげで、施主の僕は特に苦労することもなくことが済んだ。
「光ちゃん」
参列者の見送りを終え父の墓の前でその報告をしていると、後ろから声をかけられた。振り返ると叔父の義昭が立っていた。
義昭は父の6歳下の弟で、東京で弁護士をしている。長身でがっしりとした身体に日に焼けた肌をしており、髪の毛は短く切りそろえてある。外見は弁護士というよりスポーツ選手といったほうがしっくりくる。実際、大学生の頃はラグビー部に所属しており全日本選抜に選ばれるほどの実力だったらしい。ただ、弁護士としても優秀らしく、テレビの法律相談コーナーに出演しているのを見たことがある。面倒見が良い性格で僕達のことも自分の子供のように可愛がってくれた。
父とは昔から仲が良く頻繁に連絡を取り合っていた。父が亡くなったときも東京からすぐに駆けつけてくれ、葬式から相続のことまですべてこの人が面倒を見てくれた。
「おじさん、今日はありがとうございました。何から何まで手伝ってくださって」
「なにを言っているんだい、俺で良ければいつでも力になるから」
 さわやかな笑顔でそういう叔父の口元で白い歯が輝く。
「ありがとう、おじさん」
「いいって。そういえば陽子ちゃんの姿がさっきから見えないけど、どうしたんだい?」
 参列者の見送りが終わると姿を消した陽子のことが気になっているらしい。
「ああ、あいつなら桜の木を見に行くって言っていましたよ」
「そうか。それにしても光ちゃんも陽子ちゃんも成長したなあ」
「いえいえ、僕なんてまだまだ……」
「そうか? だいぶたくましい顔つきになってきているぞ」
 おじさんにそういわれるとまんざらでもない気になるのだから不思議だ。
「でも何より驚かされたのは陽子ちゃんだ。ちょっと見ない間にずいぶん大きくなったな。だいぶ女らしい雰囲気も出てきたじゃないか」
「それについては僕も驚いています。1年見ない間にあんなに成長しているとは思っていなくて。はじめ会ったときは別人かと思いました」
「女の子っていうのは一気に成長するからなあ。うちだってそうだよ。ついこの間までパパって言ってくれていたかと思ったら、いつの間にか寄り付かなくなって。終いにはうっとうしいとまで言われてしまったよ。今じゃ海外に留学中だ。まったく、子の成長は早い」
 叔父さんは寂しそうにも嬉しそうにも見える表情で空を眺めている。
「そういえば舞子さんいつ日本に戻ってくるんですか?」
 おじさんの一人娘の舞子さんは、今イギリスに留学していると聞いていた。僕より3歳年上の彼女は僕の大学の先輩でもある。昔よく遊んでもらったがあまり良い思い出はない。陽子はよくなついていたが僕は正直苦手だ。
「うーん、あと1年くらいしたら帰ってくるようなことを言っていたが、よくわからん」
 困ったような顔で首を傾げる。舞子さんに振り回されているのだろう。
あと1年か――
あと1年もすれば僕の状況もだいぶ変わっているだろう。

仕事があるという叔父を祖父が駅まで送りに行った。
僕は陽子を探しがてらあたりを散策する。
ここには昔花見に来たことがある。春休みに祖父母の家に家族で泊まりに来た時だ。その頃はまだ父も母も健在で、家族4人で花見を楽しんだ。満開の桜の下で食べる母の手料理は普段の何倍も美味しく感じ、父も母も陽子も幸せそうに笑っていた。
母が亡くなったのは僕が小学6年生の頃だ。
買い物に行った帰りに車にはねられほぼ即死だったらしい。それ以来、父が男手一つで僕達兄妹を育ててくれた。仕事で疲れて帰ってきても弱音一つはかず僕達の面倒を見てくれる父の姿を見て、僕も頑張らねばと心に誓った。それまで以上に陽子の面倒をみて、家事も出来る限り手伝い、父の負担を少しでも減らそうと僕なりに一生懸命やったつもりだ。
ところがそんな父も2年前に病気でこの世を去った。仕事中に突然倒れそのまま帰らぬ人となったのだ。
当時高校生と小学生だった僕達兄妹は父方の祖父母に引き取られることとなった。はじめは義昭叔父さんが引き取るといってくれたそうだが、その頃叔父さんの奥さんが体調を崩していたということもあり、最終的に祖父母の家でお世話になることに決まった。
父の葬式が終わり祖父母の家に向かうとき、僕は泣きじゃくる妹の手を引いてやった。その時の妹の悲しいのか嬉しいのかわからない表情が僕の脳裏に焼き付いてはなれないでいる。
しばらくすると陽子の姿を見つけた。桜並木に沿うように設置されたベンチの1つに座り、じっと桜の木を眺めている。どの木にもつぼみはついているがまだ花は開いていない。
近づいて行き声をかける。
振り向いた彼女の目には涙が浮いていた。



桜の木を眺めていると自然と涙が溢れてくる。
最後に家族4人で桜を見に来たのはいつだったか、懐かしい記憶が呼び起こされる。
母が亡くなった時、私はまだ小学1年生だった。
その頃の私はまだ「死」という言葉の意味を理解しておらず、母はいつか帰ってくるものだとばかり思っていた。来る日も来る日も母の帰りを待つ私を、父はつらそうに見ていた気がする。月日が流れ、しだいに私も「死」というものを理解できるようになり、気がつくと母の帰りを待つことをやめていた。母はもう帰ってこない。そのことを思うとつらかったが何故か涙は出なかった。もしかすると母にはもう会えないということにずっと前に気づいていたのかもしれない。
それに私には父と兄がついていた。二人ともいつも私に優しく接してくれた。特に兄は父の分まで私の面倒を見てくれ、いつも気にかけてくれていた。私は父と兄さえいれば寂しくはなかった。
しかし私が小学校を卒業する頃に父も私の前から姿を消した。
私は激しく動揺した。母を亡くした頃と違い成長した私は「死」というものの恐ろしさをよく理解していたのだ。底知れぬ恐怖が私の心を真っ黒に塗りつぶそうとしていた。
そんな私を救ってくれたのも兄だった。泣きじゃくる私の手を握り優しい顔で語りかけてくれた――俺がおまえのそばにいる、おまえは一人じゃない――その言葉に私はどれほど救われたか。そうだ、私にはまだ兄がいる。私は一人じゃない。兄の言葉は私を勇気づけてくれた。



「こんなところにいたのか」
 彼女の涙には気づかなかったふりをした。
「あ、うん。もう大丈夫なの?」
 一旦俯き僕に気づかれないよう細い指先で涙を拭ってから彼女は笑顔をこちらに向ける。
「ああ、全部終わったよ」
「そっか」
 彼女は再び桜の木に目をやった。
 僕は黙って彼女の隣に腰を下ろす。そして彼女と同じように桜の木に目をやる。花はまだ咲いてはいないが、よく見ると枝にはたくさんのつぼみがついていて、その一つ一つが大きく膨れている。開花も近いのだろう。
「なあ覚えているか、昔、父さんと母さんと4人で花見に来たよな」
 突然そんな話をされたからか彼女は少し驚いたような顔をこちらに向けた。しかしすぐに笑顔に戻り前を向く。
「うん、なんとなくだけど」
「その時おまえ桜の木によじ登ろうとしていたよな」
「そうだっけ」
 とぼけたような表情をこちらに向ける。
「そうだよ。それで父さんに叱られて泣いていたじゃないか」
「えーそんなの覚えてないよ」
 彼女は少し恥ずかしそうに下を向く。髪の毛のせいで表情がよく分からないが、かろうじて見えた彼女の口元は少し緩んでいるような気がした。
「それでなんで木に登ろうとしたんだって聞いたら、お前なんて言ったか覚えているか?」
「……桜をもっと近くで見たかった」
 少し間を置いてぼそぼそと彼女がこたえる。
「なんだ、覚えているじゃないか」
「ふんっ」
 彼女は口をとがらせそっぽを向いてしまう。
「俺が肩車してやったらすごく喜んでいたよな」
「そんなこともあったかも」
「結局それが家族4人での最後の花見になっちゃったな」
その年の夏に母は亡くなったのだ。それ以来花見には来ていない。
「お兄はさあ」
「ん?」
 気がつくと彼女はベンチの上で体育座りをし、顎を膝の上に乗せ小さくなっている。
「お兄はお母さんが死んだ時つらくなかった?」
「つらかったよ。つらくて悲しくてたくさん泣いた。でも……」
 一番つらかったのは父だ。母が亡くなってから父が僕達を育ててくれた。父もつらかったはずなのにそんな素振りは一切見せずに。
僕達を育てるのに精一杯で悲しんでいる余裕がなかったということもあるかもしれないが、僕達に心配をかけたくなかったに違いない。父はそういう人だ。自分がつらくてもそんなことおくびにも出さず周りの心配をする。父はみんなの笑顔が大好きなのだ。そんな父を見ていると僕もいつまでもめそめそしているわけにはいかなかった。
「でも?」
「いや、なんでもない」
「お父さんが死んだときは?」
「そりゃあつらかったさ、母さんが死んだ時のようにつらくて悲しかった」
 父が亡くなった時、僕は途方に暮れた。これからどうすればよいのか、どうなってしまうのか。正体の見えない不安に押しつぶされてしまいそうだった。それまでは父がいてくれたから頑張ってこられたが、父が死んで僕はしるべを失った。足元で何かが音を立てて崩れようとしていた。
そんな崩れ落ちそうな僕の心を繋ぎ留めてくれたのは、妹の陽子の存在だった。
隣で泣きじゃくる彼女の姿が、母を亡くした時の僕の姿と重なって見えたのだ。その時不意に父の気持ちが理解できたような気がした。そして僕はバラバラになりそうな心を必死で繋ぎ留め気持ちを奮い立たせた。僕がしっかりしなくてはいけない。僕が彼女を守るのだと心に強く言い聞かせながら。
「お兄、あれ」
 突然立ち上がり、桜の木を指差す。
 すっと伸びた彼女の長い指が差す方向に僕も目を向ける。
「あっ」
 彼女の指差した先には綺麗なピンク色をした花が一輪、風に揺られながらも力強く咲き誇っていた。
 


翌日、僕は家を後にすることにした。
陽子には散々文句を言われ、祖父達も残念そうな顔をしていた。

「一週間くらいいるって言っていたのに」
助手席の陽子は不満そうな顔をしている。昨日の晩からずっとこんな調子だ。
「まあそんなに怒らないでくれよ。俺も帰ってやらなきゃならないこともあるんだよ」
「やらなきゃならないことって?」
「いろいろだよ。学校のレポートとか」
 レポートというのは嘘だ。1年生の僕にこんな時期に出さなくてはいけないレポート課題などありはしない。咄嗟に浮かんだそれらしい言い訳がこれしかなかったのだ。昨日から何度も言い続けているが彼女は納得してくれない。
「ほかには?」
 これも昨日から何度も繰り返したやり取りだ。そろそろ本当のことを伝えて良いタイミングだったので、彼女にそれとなく言ってみる。
「あとは、引越しの準備とか」
「引越し? お兄引越しするの?」
 彼女はきょとんとしている。鳩が豆鉄砲を食ったような顔とはまさにこのことを言うのだろう。
「ああ、今のアパートじゃちょっと狭くてな」
「なにそれ、私聞いてないよ?」
「まあ、俺としても言うべきタイミングってやつをいろいろ考えていたんだ」
 僕の言っている意味を理解したのかどうかは分からないが「ふーん」と言うと彼女は小さく頷き話を先に進める。
「ていうか一人暮らしなんだから狭くて別にいいじゃん」
「そういうわけにはいかないんだよ」
「なんで? あ、もしかして彼女と同棲するとか?!」
 なぜか興奮気味にこちらに顔を近づけてくる。
「ちげーよ。そもそも彼女はいない」
「ほんとに?」
「ほんとだよ」
 僕の言葉を聞き彼女はなぜかほっとしたような顔になる。そして少し落ち着きを取り戻し、改めて質問をしてくる。
「じゃあなんで引越しするの?」
「だから……」
そろそろちゃんと伝えるべきだろう。そう思い僕はポケットの中に忍ばせていた鍵を彼女の顔の前にかざした。
「なにこれ?」
 彼女は鍵を受け取るとまじまじとそれを見つめそして僕に視線を移す。
「鍵」
「そうじゃなくて、どこの鍵なの?」
「家」
「怒るよ!」
 眉をハの字にして僕を睨めつけてくる。
「俺の家の鍵だよ」
「え?」
「おまえ、中学卒業したら俺の家に来いよ」
「え、どういう……」
 彼女は状況をうまく理解できないのか、口を開けたまま固まっている。そんな彼女を横目に僕はこの1年抱き続けてきた思いを口にする。
「俺、大学進学で家を出るってなった時に決めたんだ、いつかおまえのことを迎えに来るって。でも、そのためにはまず俺自身が成長しないといけないと思った。それでひとまず出来る限り自分一人の力で生活しようって決めたんだ。家に顔を出さなかったのも、みんなの顔を見たら甘えが出てしまうんじゃないかって思ったんだよ。まあ、結果的におまえにまで心配をかけてしまって申し訳ないと思っている。でもお陰で何とかやっていける自信がついた。いつでもおまえを迎えることができるって」
「お兄……」
「でも、いざ1年ぶりにおまえに会ったら俺ビビっちゃって。だっておまえすごく成長しているんだもの。一瞬誰かわからなかったよ。それで思ったんだ、もしかしたらもう俺の知っている陽子じゃないんじゃないかって。まあ、そんな心配も杞憂だっておまえと話してわかったけどな。どんなに見た目が成長しても、中身は俺のよく知る陽子のまんまだったよ」
 助手席に目をやると彼女は大粒の涙を流していた。ただ今までと違ったのは、彼女の顔には笑顔がこぼれていたことだ。
「これで三度目だな」
「え?」
「俺が帰ってきてからおまえが泣いた回数だよ。正確には4回だけど1回はおまけしておいてやる」
「もー変な回数数えないでよ」
彼女は恥ずかしそうに頬を赤く染める。
「相変わらず泣き虫だな」
「だって、お兄がそこまで考えてくれていたなんて。私嬉しくって……」
 せっかく泣き止んだかと思ったらまた泣き出しそうな顔になる。そんな彼女にわざとおどけた調子で声をかける。
「当たり前だろ、俺はおまえのお兄ちゃんだぜ。誰よりも優しくて頼りになる世界一のお兄ちゃんだ」
「自分で言う? そういうこと」
「だってそうだろ?」
「ばーか」
 車内にはふたりの笑い声がこだましていた。

「ほら、着いたぞ」
「えーもう?」
「車だとたいした距離じゃないからな」
「もう少し話していたかったのに」
 心底残念そうにそういってくれる彼女を見ていると、僕も名残惜しい気持ちになる。
「また今度な」
「今度っていつ?」
「そうだなあ、ゴールデンウィーク辺りになるんじゃないかな」
「ゴールデンウィークか、当分先だね」
 指折り数える彼女の姿はまるで遠足の日を楽しみに待つ幼稚園児のようだ。
「まあ、これからはまめに連絡するようにするから、おとなしく待っていてくれ」
「はーい。その代わり今度来た時も買い物付き合ってね」
「仕方ないな、ちょっとだけな」
「ラッキー」
 満足そうな表情を彼女は浮かべる。本当はずっとその顔を眺めていたい気分だったが彼女の部活の時間が迫っていた。
「ほら、そろそろいかないと本当に遅れるぞ」
「げっ、まずい。じゃあお兄ありがとうね」
 そういうと彼女は助手席側のドアを開け車から降りた。
「おう、気をつけてな」
「はーい、行ってきます」
 助手席のドアを半分ほど閉じたところで彼女は手を止めた。そして車の中を覗きこむと楽しそうに頬を緩め僕を見つめた。
「なんだ? まだ何かあるのか?」
 すると彼女は右手を顔の横に持ってきて先ほど渡した鍵を掲げた。
「このキーホルダー可愛いね」
 そういうとドアを閉め、彼女は校門へ走っていった。
僕はポケットの中から自分の鍵を取り出すと付けてあるキーホルダーに目をやる。
桜の花びらをかたどった飾りが日に照らされ輝いていた。

              * * *

「この1年でまた5センチ伸びた。170センチ目前だよ」
 隣を歩く陽子はふくれっ面で嫌そうに言った。
「お陰で去年の服がもうピチピチだし」
「服ならまた買ってやるから機嫌なおせ」
「本当?! やった!」
 彼女は笑顔に戻り車の助手席に乗り込んだ。
 僕はバッグを車に詰め込むと、玄関先に見送りに来てくれた祖父母に声をかける。
「じゃあ行くよ」
「ああ気をつけてな」
「何かあったらすぐ連絡よこすんだよ」
 心配そうなふたりに僕は笑顔でこたえる。
「おじいちゃんおばあちゃんも体に気をつけて。また顔を出すよ」
「ああ、達者で暮らせよ」
「元気でね」
「うん、それじゃあ」
 ふたりに別れを告げ車に乗り込んだ僕は、助手席でファッション雑誌を眺めていた陽子に声をかける。
「忘れ物はないか?」
「うん」
「それじゃあ行くか」
「お兄」
「ん?」
「迎えに来てくれてありがとう」

彼女の言葉を無視し、僕は車を発進させた。
もぐら
2013年03月23日(土) 17時39分05秒 公開
■この作品の著作権はもぐらさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
処女作です。
読んだ方があたたかい気持ちなればと思いながら書きました。

批評よろしくお願いします。

この作品の感想をお寄せください。
No.3  織方  評価:30点  ■2013-04-21 22:59  ID:.kbB.DhU4/c
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感想です。
なんというかそうのう、美談のように語られてますが、ようは、年老いてこれから足腰弱ってからだが言うこと聞かなくなって色々生活に困っていくだろう祖父母を置いて都会に出て行く若い兄妹の恩知らずな話しですよね。
うーむ。
登場する人物がなんだか、容姿も能力も性格もハイスペック過ぎてなんだか嘘っぽい気が……。
まぁ、展開とかは嫌いじゃないんでにやにやしながら読んでましたけどね。
初めてというには読みやすくて楽しめました。
一歩退いて、客観的に見れれば上記のことはすぐに気付くと思うんですけどねぇ。
No.2  もぐら  評価:--点  ■2013-03-27 11:48  ID:YaZzxm5kXEk
PASS 編集 削除
陣家さまコメントありがとうございます。

どれもこれも的を得たご指摘で大変参考になりました。
小手先だけのテクニックに頼らず、表現力を磨くことに精を出していこうと思います。
No.1  陣家  評価:20点  ■2013-03-27 04:46  ID:98YScwpXzig
PASS 編集 削除
拝読しました。

まだ書き始めて間もないとのことですが、なかなか読みやすく、文章的にはそこそこのレベルには達していると思います。
で、内容ですが……
こういう物を書きたくなる気持ちはめちゃくちゃよく分かります。



    めちゃくちゃよく分かります。



まずはそこをお伝えした後、本作がもっと良くなるためにはどこに着目すべきか、考察を述べさせていただきます。


冒頭から
>手のひらに目をやるとうっすら汗が滲んでいた。
手に汗を握る、という表現があることからも、一般的には手に汗をかくのは精神的に緊張した状態を表すことがほとんどなので、読者としては主人公が緊迫した精神状況にあると読みとってしまうでしょう。
つまり、直後の
>身体を動かしていれば少し汗ばみそうな陽気である。
という、単に陽気を表すための表現としてはふさわしくないでしょう。

また、冒頭の節で主人公が“彼女”に会い、次節で家に着いたとくるならば、当然二人揃っているものと思って当然なので、実は一人で帰宅したとなるとどうにも違和感があります(額縁形式にしたかったのでしょうが、それは最後まで読み進めないとわかりませんから)。

>夕方の冷え込みはまだ厳しい。上着の襟を立て両肩をすぼめる。
と来た後に、
>荷物を手に車から降りる
と来ると、オープンカーだった、ということでもなければ変ですね。

>「おじいちゃん、おばあちゃん、ただいま」
そもそも、この時点では、久しぶりに帰宅した実家という情報はないので、家族構成も分からないわけですから、当然主人公を迎えたのはおじいちゃんと、おばあちゃんだと読み手は思ってしまいます。
なので
>「おじいちゃんたち見かけないけど、どうしたの?」
これも唐突に感じるわけです。

こんな感じで、書き終わったあと見直す際にはなるべく頭をクリアにして読者に与えるべき情報を過不足なく記述するように配慮しましょう。

構成についてですが、一つのシーンをキャラクターの視点を変えて記述する、いわゆる○○サイド的な書き方は
例えば奈須きのこ作品のようにし、視点を変えてトリックを作り出すような効果的な使い方もできますが、今作のようにお日柄を語るところから同じように始めてしまうと、ほとんど同じ内容を二回読まされている気分になってしまいます。
主人公視点からだけでも相手のセリフと所作から登場人物の気持ちを表現できるように書いた方がいいと思います。
またその視点切り替えも自由奔放かつ唐突に切り替わるのでかなり分かりにくいです。

キャラクターについてですが
主人公は長い前髪で目が隠れていてのっぺらぼうなのは目をつぶるとして、妹の身長については非現実的です。

>「お兄がいなくなってから身長が20センチも伸びたんだ」
>「そんなに?!」
>驚異的な数字である。
驚異的すぎます。女子の場合は通常初潮を迎えた後は、男子よりも身長の伸びはゆっくりになるものですが、一年間で二十センチとなると、もはやホルモン異常による病気を心配するレベルです。
いかにファンタジー妹といえども限度というものがあるでしょう。
キャラの色づけとして背の低いことをコンプレックスに抱えていたという特徴を与えたかったのでしょうが、背の低い女子というのは一般的には男子にも女子にも受けが良いはずです。

妹の描写は主人公に比べて、過多とも思えるほど豊富なわけですが、
>胸はいやらしさを感じさせない程度に膨らみを帯びており、腰のラインは綺麗にくびれを描いている。
>白い太ももがあらわになる。
など、あまりにもエロ視線です。
こういう部分は主人公の主観を交えず、さらりと描写する方がいいでしょう。

ストーリーについて
空をバックに主人公のモノローグ
離れて暮らしていた見違えるほど綺麗になった妹との再会
妹とお買い物
熱を出した妹をおんぶ
両親ジェノサイド
同棲END
と、テンプレートの目白押しですね。

ともあれ、
>僕は祖父の後ろに立つ少女に僕は目を奪われていた。
のように、見直しで簡単に発見できるレベルの悪文があまりにも多いので、まずはそこから直していくのが良いと思います。
忌憚無く言わせてもらえば、はっきり言ってヌキエロゲの悪文テキストのようです。
美少女ゲームの場合はその後に待っている○シーンがあればこそ、少々の尺稼ぎ悪文に目を瞑って、必死にクリックする作業にも耐えられるわけですが、小説の場合はやはり、文章その物に味があるとか、ストーリーに吸引力がある、等がないと読み進める気が失せてしまうと思います。

いろいろ好き勝手言わせてもらいましたが、書き続けていれば文章力は自然に上がっていく物なので、後はアイデア次第でおもしろい物が書けるはずです。

それでは
総レス数 3  合計 50

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