私は御馳走

「おいおい、あいつらまたやってるらしいぜ」
「また懲りずに奪い合っているのか?」
「本当は仲がいいんだろ?」
 それぞれの仲間内から呆れた中傷を知らずに受けている二人……二人?
 この場合なんと象徴したら言いのだろう、あえて二人とするなら一人は髑髏しゃれこうべの頭で肉も皮膚も無い、骨のみの身体を黒装束で覆い、大きな鎌を骨だけの手でもっている死神。
 もう一人は服もまとわず、全身の色は紫、頭は狼、翼はコウモリで、手は鋭い爪に鷹の足の悪魔。
 二人とも体の大きさは人間の一般的な成人男子より一回り、二回りぐらいは小さいだろう。
 宙に浮いている二人はとある男の上で、距離をとって牽制している。
 この二人、死神と悪魔に憑かれている男は自宅の一室で最新の医療器械に繋がれ、布団の中にいた。
 三ヶ月前から男は布団から出ることはなかった。
 すでに治療の施しようもなく、逃れられない死へとただ退屈に待っているだけだった。痛みがないのが唯一の救いとも言える。
 周りの人間からは「報いが来ただの、早く死ねだの、本当に死ぬのか?」などと陰で誹謗を浴びている。
 事実、喜ぶ、安堵の息をおろすものはいても男が死んで悲しむ人間はいない。
 身内ですら男を恐れていた。
『人はすぐ裏切るが、お金は決して裏切らない』
 それが人生を通しての男の教訓でもあった。
「あいつは死んだ後でも金を持っていくだろう」
 実際、莫大な財産の半分を誰も知らないところに隠していた。
 男は自分の死と一緒に金をも葬り去ろうとしていた。
 それをどこで嗅ぎつけたかしらないが、家にいる誰もが死ぬ前に何とか男から聞き出して独り占めしようとしている。
 なにせ見つけた者勝ちで、一生遊べる金なのだ。

(……幻覚を見ているのか? ……私も、もうお終いか……)
 悲観した男の目の前、真上で想像上の死神と悪魔が言い争っている。
「おいおい、後から来といて横取りなんてないんじゃない?」
 悪魔が翼を使わず宙であぐらを掻き頬杖をいている。
「何言ってんだ、俺はずっと前からこいつに目をつけていたんだ」
 死神はフラフラと漂い浮いている。
 どこかの部屋で常に待機している家族、何人かの会社の重役、弁護士や医者を呼ぶ緊急用のボタンを押さず、黙して二人を見ている男。
「ずっと前からって、お前今、ここにいなかったじゃねえか」
「当たり前だろ、俺はお前みたいな下級悪魔と違って忙しいの」
 言われた悪魔はあぐらから立つ体勢に変え、
「俺は下級悪魔じゃなくて使い魔だ、間違えんなよ、このいつまでたっても役職に就けない平の死神のクセに」
 聞いた死神は鎌を持ち直した。
 どうやら二人は顔見知りみたいだ。
 お互い痛い事をつかれたらしく『何だよ』とした格好で睨みあっている。
 それを見ていた男は他人事のように、
(……何だか退屈しないですみそうだ……)
 男は久し振りの笑みを浮かべていた。

「俺だって言ってんだろ」
「いや、俺が先だ」
「じゃあ、証拠を見せてみろ」
「それなら、お前だって言う証拠も見せてみろ」
「何言ってんだよ、ガイコツ頭が」
「お前こそ、この狼頭が」
 死神と悪魔は鎌で切ったり、火を吐いたりなどはせず、たわいもないやり取りを繰り返す。
 言っていることは子供の喧嘩で進展する気配はない。
 いささか男が少し飽きてきた矢先、
「なあ、お前、俺のほうがこいつより早く来たよな」
 不意に紫の狼の頭を近づけ、悪魔が寝たきりの男に聞いてきた。
「何言ってんだよ、俺のほうが早いよな」
 悪魔を押しのけ死神がガイコツ頭を男に近づける。
 口と目と鼻の形の穴があり中は空洞だ。
 目の焦点は合わせられない。
『俺のほうが先だよな』
 男に向かって二人は声を揃えた。
 今さら二人に男は驚かないが、少し考える間を置き、
「分からない、気が付いたら二人ともいた」
 男の返答に、
『マジかよ』
 二人は激しく肩を落としうなだれる。
 どうやら先に男を見つけた方が何かの優先権があるみたいだ。
 本当はどっちが先に来たか男は知っているが、生き生きとした二人の子供じみた嘘をついてまでの必死さが、迫る死の恐怖を和らげ気持ちを楽にしていた。
 ゆえにここで終わらせるのは勿体ない気がしていた。
 それでも「よし」と膝を叩き、死神より先に悪魔が簡単に立ち直る。
 不気味な狼の笑みを浮かべ、
「……お前の願いを三つ叶えてやろう。しかし、不老不死や寿命を延ばしたり、願いを増やしてくれというのは駄目だぞ、後、過去や未来にはいけないからな、他なら何でもいいぞ」
 男は悪魔の誘惑に気持ちが揺らぐが、
「だまされるなよ、三つ目の願いはこいつの願いだから、言うことなんて聞くなよ、痛い目見るぞ」
 死神がそれを阻止する。
「フザケンなバカ、ばらすなよ、お前は悪魔か」
「アホ、悪魔はお前だろ」
 醜い争い、男は二人の言い争いが滑稽でまじめで何とも言えず面白かった。
「この間、バイトの死神にノルマで抜かされたんだって? 今世紀の昇進も難しいんだってな。仕事向いてないなら俺が紹介してやろうか?」
 ムッとした死神が言い返す。
「お前の方こそ、この間酔っ払って教会の屋根で寝たそうだな、聞いたらカラスの変身が解けてたんだって? お前、そりゃイケねえよ、天使達がブチギレて地獄にも手配書出して血眼になってお前を探してるぜ、さっき呼んだからもうすぐ来るんじゃねえか?」
「マジで!?」
 悪魔があせって飛び立とうとするのを見て、
「ああ……嘘だよ、お前、何ビビッてんだよ、笑わせんなよ」
 悪魔が逃げ出そうとする様が心底面白いのか、鎌の柄を叩いて喜ぶ死神。
「お前、フザケンなよ!」
 男の目に映っているのは仲のいい悪友が、お互いけなしながら楽しそうに喋っている。
「お前、少しも変わってないな」
「そういうお前こそ成長のかけらも見られないぞ」
『………』
 奇妙な間、沈黙が二人を包んでいる。
「止めようぜ」
「そうだな」
「じゃあ、こいつに決めてもらうしかないな」
「そうだな、恨みっこなしだぞ」
『俺とこいつどっち選ぶ?』
 再び二人は男に選択を求めた。
「………選んだことにより、私がどうなるか教えてくれないか?」
 男は率直な疑問で二人に返した。
『………』
 男の問いにすぐ答えられないのかしばらく二人は考え込む。
 それでも先に口を開いたのは悪魔だった。
「……そうだな……こいつは見た目通り平の死神で、こいつを選んだらお前は間違いなく地獄行きだ。しかもお前みたいな悪党はそういるもんじゃない。間違いなく永遠に苦しむぞ、止めとけ俺を選んどけって」
 即座に死神が反論する。
「お前何言ってんだよ、こいつはな、悪魔で悪人のどす黒い魂が大好物なんだ。お前死んでまで食われるんだぞ、こいつに食われるんじゃなく上級の悪魔に差し出されたらそれこそ、漬物にされたり、干物にされたり、まだ地獄の方が楽だって」
 お互いを非難しあう二人、
(……どちらも選びたくないな……)
 男は死んだ気になって生前を悔やんでいた。
 もう少しいいことをしていればと……
「眠りたいから返事は待ってくれ」
 男は目を閉じ二人を消した。
 もはや男に『死』そのものの恐怖はなくなっていた。
 何しろ死んだ後のことが二択しかなく、どちらも決していいものとは言えない。
 ある程度予想はしていたがこうも予想に当てはまるとは、やり直しのきかない自分の人生を呪う、やりきれない自分がいた。
 聞こえるのは、悪魔と死神の口喧嘩だった。

 朝、常駐の医者が夢から覚めた男の点滴を変え、無言で男の体の検診を行い、黙々と機械の状態を事務的にチェックする。
 それが終わると、いつものように男の耳元で、隠した金のありかを尋ねる。
 善意をたてに、私は医学のためにと。
 医者以外にもわずかな隙を見計らい、一人で会いにきては誰もが男に、会社の発展のためやら、まだ死なないからとか、どこにあるか知っているぞ、などと聞きだそうとするが男には教える気はさらさら無い。
 男は目を閉じたままいなくなるのを待つだけだった。
 医者には二人の姿は見えないのだろう。
 男は医者が悪魔と死神の二人を見たら驚くんじゃないかと期待したが、はずれに終わった。
 二人は警戒しあうように宙で立ったまま静止して寝ている。
 いびきこそ掻いていないが医者に気が付かないほど熟睡している。
(悪魔も死神も眠るものなのか……)
 観察しているのも退屈なので、男はわざと激しく咳を行い二人の目を覚まさせる。
 人間らしいあくびと伸びをし、二人は目覚めた。
「お前、忙しいって割りにはずっとここにいるじゃねえか」
「うるせえ、これも仕事のうちなんだよ、お前がこいつの夢の中に入らないように見張ってたんだ」
「俺がそんな姑息な真似するわけないだろ」
「いや、お前ならする」
 朝から二人はいがみあう。
「……死神の仕事は何をしているんだ?」
 男の興味本位に悪魔が答える。
「こいつの仕事っていうのはな、悪人の魂を地獄に連れて行くことなんだ。悪いことをしていた奴ほど魂の色が黒い、黒ければ黒いほど評価につながり、数をこなしていけば階級も上がり役職がつくというわけだ。合ってんだろ」
「まあ、だいたいそんなところだ」
「私の魂はそんなに黒いのか?」
「いや、生きている状態ではまだ分からない」
 今度は死神が答える。
「俺もこいつも生きている人間からは魂の色は分からない。死んで初めて魂が抜けるから分かるんだが、まあ、あらかじめ調べればそいつがどんな奴かは簡単に知ることができる。お前が悪人ってことはお前自信一番よく知っているはずだろ」
「それもそうだ……」
 他にも退屈を紛らわすために、男は様々なことを二人に聞いた。
 二人は閉ざすことなく、包み隠さず躊躇せず男の質問に答えていく。
『地獄の対称として天国があり、そこには天使が善人を連れて行くということ。
死んだ人間の魂は其処ら中に浮いている、隠れているということ。それを死神や天使が見つけ地獄、天国に連れて行く。
悪魔が食事の為、狩ったりする。
魂の中には自ら天国や地獄に行くものもいる。
天国や地獄で暮らす魂もいれば、善行や、悪行により、生まれ変わるものもいる。
いつの時代も世の中、悪人が多い、悪人は決して絶えない、天国と地獄のバランスを保つため、悪魔が悪人の魂を好んで食べて悪い人間が増えすぎないようにする。
悪魔が男の夢の中に入り、誘惑しようとしたように、死神、天使も人間の夢の中に入ることができる。
悪魔、死神、天使はさまざまな動物、人間に変身することができる。
変身が解けるまで、それをお互い見抜くことはできない。
こんな間の抜けた悪魔、死神はそうそういない』
 こんな事を聞いても、今更どうしようもないけどなと思いつつも、
「私は天国には行けないのか?」
 一通り疑問を解消した男は希望を打ち明ける。
『それは無理だな、俺が保障する』
 男のわずかな望みは瞬時に途絶えた。
「早く決めてくれないかな、俺も暇じゃないんだ」
 死神は黒い袖から銀の懐中時計をチラッと覗いて男をせかす。
 その行為に気付いた悪魔が、
「今、お前時計見たろ、もうすぐこいつ死ぬのか? 教えろよ」
 悪魔を無視し、死神は男の顔色を窺う。
「……私はもうすぐ死ぬのか?」
 男は力なく死神に問い詰める。
「本当は規則違反なんだが……お前は後三時間もしたら死ぬ、できればそれまでに決めて欲しいものだな」
 真顔の狼とガイコツは黙って男を見下ろす。
「…後、三時間か……」
 男は過去を振り返ることはしなかった。
 決して幸せな人生とはいえないだろう。
 家族ではなく、死神と悪魔に見守られながら死に至るとは思いもよらなかった。
「……私が決めずに死んだらどうする?」
 最後であろう男の問いに二人は腕を組んで考え込む。
 首を捻ったり、空中で旋回したり、真剣に睨み合ったりして、どうにか自分の物にしたいと知恵を絞る悪魔と死神。先に口を開いたのは、
「…そうだな、もう、じゃんけんで決めるか」
 悪魔が投げやりに提案する。
「まあ、それでもいいか」
 あっさりと承諾する死神。
「…そうか…」
 しばし男は目を閉じ自分の運命を受け入れていた。
 その間、二人の声は男には届いていない。
 もしくは、二人は口を閉ざしていたのかもしれない。
 それでも男は穏やかな死の前に、緊急ボタンを押し、待機している弁護士を呼びつけると、死神と悪魔に聞こえないよう、二、三耳打ちし、再び目を閉じ、残りの二時間以上を黙したまま、静かに眠りながら息を引き取った。
 耳打ちされてすぐ、弁護士は誰にも気づかれずに男の家を出ると、こらえていた笑いを解放した。
「やったぞ! ついにやったぞ! してやったりだ!」
 金の隠し場所につくまで弁護士は太ももを何度も叩き、アザができるまで腫らしては、その痛みも喜びに変えていた。

 機械が男の死を感知し異常を知らせ、医者を呼び込む。
 医者と一緒に家族、戻ってきた何食わぬ顔の弁護士、会社の人間、二人を含め、総勢十五人も男を囲った。
 男を惜しむ声は聞こえない。
 死神は銀の懐中時計を見て、男の死を確認する。
「散々待たせやがって、さあ、早く決めようぜ、恨みっこなしだぞ」
 悪魔は手を組み手首の柔軟をし、じゃんけんの準備をする。
「まあ、待て、どんな魂か拝見しようぜ」
 あせる悪魔を静止させる死神、
「どのくらい黒いか楽しみだ」
 二人は男の亡骸から魂が抜けてくるのを今か今かと待ちわび、笑顔で見下ろす。死神に表情筋は無かった。
 間もなく男の口から二人の念願の魂が……
『あれ?』
 その色を見た二人は笑顔を失った。
『何で?』
 それは思った黒ではなかった。
 灰色に満たない白く濁った魂。
『一体どうなってんだ?』
 死神と悪魔は同時に頭を抱え込んだ。

 男は亡くなる日の朝、夢の中で天使を見ていた。
 服を着ていない、小学生にも満たない男の子が白い羽を生やして、光りを発し輝いていた。
 天使は一言、
「残された時間を有効に使いなさい」
 それだけ言うと男は目覚めていた。
 その夢に男が悔い改めたかは知るよしもないが、その後男は弁護士を信じ、隠してある金のありかを教え、それを全て恵まれない国の子供達に寄付するように言い渡した。
 時間がない、生きているうちに今すぐやってくれと。
 男は金による悪行を金によって帳消しにした。
 生きている間に何とか間に合うことができたのだ。

『ああ、なんてこった……』
 悪魔と死神の目の前を通り、白く濁った男の魂は自ら天へと昇っていった。
 二人は声を揃えて男の魂を見送ることしかできなかった。
「ご愁傷様です。落ち着き次第、後日連絡いたします」
 男の回りに集まっている人々にそう言い一礼すると、弁護士は一番早くその場から離れた。
 死神や悪魔、一同に背を向けて部屋を出て行く弁護士。
 その勝ち誇った満面の笑みは、悪魔や死神の笑顔よりも醜くゆがんで本性をあらわにしていた。天使の面影もないほどに……

 男は気が付くと人々の列に並んで歩いていた。
 いつから並んでいるかは思い出せなかった。
 顔以外で確認すると自分の姿は生前で、死んだままのパジャマを着ている。
 濃い霧がかかり先は全く見えない。
 列をはみ出して見ようとも、幅一メートルぐらいしかない道の脇は真っ白な雲だった。
 もし、落ちたりでもしたらと嫌な予感をよぎらせ、誰もがゆっくりとだが確実に進んでいく。
 前後二、三人しか男は窺うことができない。
 前は小太りの中年、指には本数以上の金や銀や宝石の重そうな指輪をはめ、鮮やかな三原色を織らした豪華な布地を体に巻いている。
 それとは対照的に後ろは人の良さそうな栄養失調気味の青年が、色の原型のない泥でボロボロに汚れたシャツとズボンを着ている。
 進んで行くにつれ、前後でひそひそ声が聞こえる。
 後ろの青年も、
「こんなところは、私初めてで緊張しますね」
 男に話しかけてきた。
「ええ、そうですね」
 尋ねられた男は誰もが初めてでは? を引っ込め、無難に答える。
 それぞれ会話は続かず終わってしまう。
 ここは天国ではなくまだ道なのだ。
 誰もが期待と不安の中、進む事しかできない。
 それでも疲れや、空腹、喉の渇きもない、まあ、死んでいるのだから。
 やがて霧が晴れて道の正面に半円の門が見えてきた。
 門の奥からまばゆい光が発している。
 近づくにつれ温かく、当たる光はどこか気持ちがいい。
 その門の先が天国に間違いないと男は確信した。
 虹でできた巨大で壮大な門を白い羽根の天使がくぐったり、出てきたり、虹の上で眠るのもいれば、体に合ったハープを奏で歌ったり、じゃれ合って飛んでいるのもいた。
 見る者の心を癒してくれる朗らかな光景、時間の流れも感じさせず、すぐに男は門の目の前に着いていた。
 それもそのはず、何人もの帳簿を持った天使が門の前で人々を、
「あなたはこっち」
「さあ、あなたはこっちです」
 とふわふわ飛んで、迅速に右へ左へと誘導していた。
 すぐに男にも天使がついた。
「ややっ、凄いな、あなたをここまで来させるなんてたいしたもんだ、これは昇進ものだ」
 体に不つり合いな帳簿と男を交互に見比べ天使は驚いてみせた。
「では、あなたはこっちです」
 男は門の中央から、天使に左への道に誘導されていく。
 虹の門をくぐり、ふと右に誘導された人々を見ると、男の前にいた身なりの華やかな小太りの中年がいた。
 他にも札束を抱えた者、嬉しそうに金歯で笑っている者もいた。
 左はというと、何てこともない質素な服装な者ばかりだった。
 その中に後ろの青年もいた。
 同じく天使に誘導されながらも男に気づくと、
「あなたもこっちですか、ここまでこれて、生きてて、いや、死んでよかったです!」
 喜びながら自ら走って左へと進んで行った。
 何か気がかりで男は右に移りたかったが、天使の引っ張る力が、穏やかな笑顔とは別にもの凄い力で、
「さあさあ、何をためらっているのですか? あなたはこっちですよ」
 抵抗できずに両手首を持ち上げられ、足を地面から離されると、もう、男は諦めるしかなかった。
 左に進む道の奥から、天使に運ばれていく男の耳に、何人もの悲鳴、絶叫が聞こえてきた。
 その光景は無惨にも、とてつもない大きな穴に次々と天使に落とされる人々。
 男も同様に穴の中央で天使に手を放され、
「がんばって、また来て下さいね〜」
 どこまでも落ちていく男に、無邪気な笑顔で天使は可愛らしく手を振っていた。
「何てこった……ああ、そうだった、私はこのために金を隠していたんだっけ……」








みんけあ
2017年09月18日(月) 02時15分46秒 公開
■この作品の著作権はみんけあさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
よろしくお願いします。

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No.1  昼野陽平  評価:40点  ■2017-10-16 17:15  ID:53q5Jg1XSBY
PASS 編集 削除
読ませていただきました。
前半の死神と悪魔のやりとりが微笑ましいです。
後半のあの世の雰囲気も出てるなと思います。
コミカルな内容ですが描写がしっかりしてるせいか陳腐ではない感じです。
さらっと読めて良い気分になれるものだと思いますが、個人的な好みとしてはもっと大きい感情を揺さぶるような要素も欲しかったかなと思いました。
自分からは以上です。
総レス数 1  合計 40

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